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第二章

「そうなのに」
「お兄様は鋭い方でもあられるけれど」
「人の感情や困っていることに気付かれて」
「すぐに助けてもくれるけれど」
 それがというのだ。
「もてないとか言われるとか」
「ちょっとね」
「ないんじゃ」
「お気付きになられないということも」
 四人でそれはないと思った、それでだった。
 八条家に仕えているメイド達のうちで比較的童顔で実は教育課程を終えているが高校生に見えるある双子に調査を依頼した。その双子はというと。
 名前を巾木多恵、巾木千恵といった。二人共四人から依頼を受けるとすぐに双子で話した。二人共背は一六五程で連合の成人女性としては小柄である。平均身長が一八〇から見ればそうだった。黒髪であるが二人共母方の祖母の血で目は緑色で彫の深さも顔にはあり眉は太い。顔立ちは鏡で映した様に瓜二つで胸がそこそこのスタイルも同じだ。
 その双子が今話していた。
「義統様がもてないって」
「絶対にないわよね」
「そうよね、あの方がもてないとか」
「私達の間でも人気があるのに」
 家の使用人達の間でもというのだ。
「お優しいしね」
「いつも温厚でね」
「絶対に怒られないし」
「丁寧で謙虚だし」
「しかもチップは弾んでくれるし」
「あんないい方いないわ」
 八条家の者はチップの多さでも有名だ、それ位の気前は身に着けておけと代々教育を受けているからだ。
「しかもあのお顔立ち」
「下手な俳優さんより上じゃない」
「アジア系の美形よね」
「ご先祖には白人や黒人の血も入っておられるけれど」 
 八条家も連合の家なので様々な人種の血も入っているのだ。
「それでもアジア系の血が濃く出てね」
「あのお顔立ちだから」
「光源氏みたいよね」
「それか在原業平か」 
 日本の古典での美男子達にも例えられるのだった。
「そうした方よね」
「それでもてないとか」
「本当に源氏の君みたいにもてそう」
「学園の中でも」
 それこそというのだ。
「しかも源氏の君みたいに誰彼なしでないし」
「女性は尊重されるし」
「源氏の君ってふしだらだからね」
「よく読んでいると」
 源氏物語の作品自体をというのだ。
「義理のお母さんともだったし」
「しかも帝の奥方でね」
「それ自体とんでもないし」
「無茶苦茶だからね」
「しかも実はね」
「お子さんまで」
 このことは作品中でかなりはっきり書かれている、しかもその因縁が後で自分にも巡ってくるのだ。それが宇治十条にもなる。
「その後で小さい娘を引き取って」
「それでまた、だから」
「今言うならマザコンでロリコン」
「しかも年上も好き」
「最初の正室さんそうだったしね」
「その時も同時に何人もだったし」
 この為源氏の君を無節操と言う人もいる。
「義統様そうした方でないしね」
「女性にも清潔よね」
「そうしたところもポイント高いわ」
「女好きも過ぎると」
 女性としてはというのだ。
「マイナスだしね」
「実際源氏の君って引くから」
「何この人ってなるわよね」
「実際に読んでいたら」
 二人共源氏物語を読破している、そして源氏の君に憧れつつもその漁色家ぶりに呆れてもいたのだ。 
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