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占術師速水丈太郎  死の神父

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第八章

「存分に」
「そうですか、ではお言葉に甘えまして」
「思う存分ですね」
「力を使わせて頂きます」
「貴方のお力のことは聞いていますので」
「だからですね」
「信頼していますので」
 それ故にという返事だった。
「その闘いを見させて頂きます」
「それでは」
「はい、そろそろですね」
「見えてきます」
 その聖堂がというのだ、そして実際にだった。
 キリスト教それもカトリックの趣の聖堂が見えてきた、ルネサンス期のイタリア建築を思わせる古風な造りだ。
 その聖堂を見てだ、速水はすぐに言った。
「これは」
「感じられましたか」
「これだけの妖気ならば」
 まさにとだ、速水は司教に答えて述べた。
「私の様でなければ」
「対することは出来ないですか」
「はい」 
 その通りという返事だった。
「私に声をかけて下さったこと感謝します」
「そういえばこちらもです」
 司教は自分そしてバチカンに礼を言った彼にこう言葉を返した。
「依頼を受けて頂き」
「感謝されていますか」
「はい」
 その通りという返事だった。
「まさに」
「左様ですか」
「まことにバチカンとしてもどうにかしたい問題の一つだったので」
「聖職者が人々を害するなぞ」
「我々の責は人を救うことです」
 それだけにというのだ。
「絶対にです」
「有り得ないことなので」
「ですから」
「私が依頼を受けたことに」
「これ以上はない感謝をしています」
「ではその感謝にです」
 速水は一歩前に出て述べた。
「応えましょう」
「そうですか」
「これより」
 こう応えてだ、そしてだった。
 速水はその聖堂にさらに足を向けた、すると。
 妖気を尋常ではないまでに感じた、それで思わずタロットの小アルカナカードを右手に数枚出して構えた。
 そのうえでカードを前に投げた、するとカード達は空しく空を切った。だが速水は再び小アルカナのカーコ達を手に持って先程攻撃を仕掛けた方に対して言った。
「この程度はですか」
「何でもありません」
 奇怪な声だった、中年の男の声だが妙に高く女性的なものが多く入っていた。普通この世界にはない様な声だった。 
 カストラート、速水は内心かつてこの世にいた子供の頃に去勢した男性歌手を思い出しつつそのうえでさらに言った。
「そうですね、私にしてもです」
「今のは挨拶ですか」
「それ位のものです」
 まさにその程度だったというのだ。
「当たるとは思っていませんでした」
「左様ですね」
「しかしです」 
 それでもだ、さらに言う速水だった。まだ姿を見せない相手に対して。 
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