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赤米黒米

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第二章

「ですから」
「それでよね」
「神様にも感謝して」
「そして食べるべきよね」
「わたくしもそうしていますし」
 こう言って実際にだった。
 稲穂は友人達にお握りを売り自分も食べた、クラスでそのお握りを食べながらこんなことを言った。
「消費者の方々にもお米はどんどん食べてもらわないと」
「白いご飯をよね」
「はい」
 一緒に食べている伊丹雅美に答えた、雅美は黒髪をショートにしたボーイッシュな感じの少女でありすらりとしたスタイルで脚が実に奇麗だ。二人共学校指定の制服を着ているが正反対な印象を周囲に見せている。
 その雅美にだ、稲穂はにこりとして答えた。
「わたくし達生産者も困ります」
「売れないからよね」
「そうです、買ってもらって食べてもらって」
 そうしてというのだ。
「それで、ですわ」
「農家も生きていけるしね」
「パンもいいですが」 
 パンを否定はしなかった、稲穂も食べる時があるからだ。
「ですが」
「日本人の主食は」
「やはりですわ」
「お米よね」
「そうですわ、白いご飯ですわ」
「それじゃあね」
 雅美はお握り、稲穂の家がやっている店のそれを食べつつ言った。彼女も二限目で自分の弁当を食べてお握りを売ってもらったくちなのだ。
「玄米や麦飯は」
「そちらもですわ」
「主食なのね」
「はい、麦飯にしましても」
「食べてもいいのね」
「麦飯のお握りも売っていますし」
 稲穂の家の店でだ。
「いいと思いますわ」
「そうなのね」
「ですがわたくしとしては第一は」
「白いご飯ね」
「そちらですわ」
 白米のそれだというのだ。
「何といいましても」
「そうなのね」
「お米は白いものですわね」
「精米したらね」
「その白いお米を見るだけでも」
 うっとりとしての言葉だった。
「わたくしは幸せですわ」
「本当にお米好きね」
「はい、畑仕事も」
 つまり家の仕事もというのだ。
「大好きですし」
「そうなのね」
「将来は勿論」
「お家の仕事継ぐのね」
「お祖父様に長靴を履いて作業服を着て鍬を持って」
 稲穂の大好きな恰好である。
「そのうえで」
「働くのね」
「お握りを握って売ることも」
「それもなの」
「そして農業が大好きな方と結婚して」
 目をきらきらさせての言葉だった。
「そのうえで」
「農家をやっていくのね」
「そうしていきますわ」
「それで白いご飯を」
「作って食べていきますわ」
 こう言ってそしてだった。
 稲穂は白米を愛し続けていった、友人達からはそんな彼女と親しく付き合っていた。富農の家だが気さくでしかも困った時特に昼食の時はすぐに助けてくれるので尚更だった。 
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