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木の葉詰め合わせ

作者:半月
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本編番外編
日常番外
  結婚事情は人それぞれ


「この様な物を持ってくる暇があれば仕事をしろ、ヒカク! こんな下らぬ事にオレの時間を使わせるな!!」
「――ああ、頭領!」

 書類を片手に火影邸の中を歩いていたら、そんな怒声が響いて閉まっていた扉から人が飛び出して来る……訂正、蹴り飛ばされた。
 なんだなんだと思っていれば、見知った顔だ。それも、顔見知り。

「ヒカクさん? どうしたんだ、一体――あぁ、成る程」
「は、柱間――いえ、火影様!?」

 軽く口元を押さえながらも懸命に立ち上がろうとしていたヒカクさんが、私を見て動揺した様に瞳を揺らす。
 彼の足下……というか周囲に散らばる色鮮やかな色紙サイズの物を目にした私は大きく溜め息を吐いた。

「マーダーラー。お前、もう少しヒカクさんに優しくしてやれよ。幾ら何でもこんな扱いは酷すぎるだろ」
「貴様が知った事ではないだろうが」

 部屋の奥で肩を怒らせていたマダラが吐き捨てる。
 その返答に溜め息を再度吐きながらも、その場に膝を付いて周囲に散らばったそれらを集める。

「ほ、火影様! 火影様のお手を煩わせる様な事では……!」
「いーの、いーの。にしても、そんなに厭がらなくてもいいじゃないか。彼女達にも失礼だぞ」

 ヒカクさんの辺りに散らばる冊子には、それぞれ色とりどりの衣を身に纏った美しい女性達の姿が描かれていた。どの顔も正面を向いて、にこやかに微笑んでいる。これらは俗に言う、お見合い写真の様な物だ。

「縁談も手紙も来ている内が花って言うじゃないか。どの女性達も才媛で知られる名家の方々ばかりだ」
「ですよね! それなのに頭領と来たら、オレが必死に集めて来たお見合いのための似姿をこうもあっさりと……」

 よよよ、と泣き出すヒカクさん。
 可哀想に、よっぽど堪えていたのだろう。上司が酷いと部下は大変だよね。

「マダラもなぁ、顔はいいけど性格にちょっと問題があるからなぁ。マダラの嫁さんに成る人はよっぽどの人格者じゃないと大変だろうな」
「ほ、火影様!!」

 ヒカクさんがいたのでオブラートで包んだが、本当はちょっとじゃなくてかなりだ。
 マダラの性格はかなり問題がある。私だったら、どんなに顔が良くてもそう言う男は即アウトだね。
 うんうん、と頷けば、ヒカクさんが顔を青ざめさせて、マダラの顔が鬼の様になっていた。
 彼の纏う須佐乃乎の最終段階の二面四腕の鬼なんて目じゃないぞ。

「他人事だな、柱間」

 ……他人事ですもの。
 いやあ、楽しくってしょうがない。マダラをからかうと後が怖いが、それを有り余って尚おつりが来る程愉快である。
 ぷふふ。まさか天下無敵に傲岸不遜が代名詞なうちはマダラにこんな苦手な物があっただなんて。

「心が広くて、度量の深い人がいいと思うぞ。お前の傍若無人振りに付き合える人だな、やっぱり」
「火影様ぁ!?」

 なんでかヒカクさんが泣きそうになっているが、ここは無視して言葉を綴る。
 マダラのお嫁さんに成る人って絶対大変だよね、結婚してからが。なんたって、結婚してからの人生を共に過ごす事になるんだし、よっぽど我慢強くないと。

「――で、ただ単に守られているだけの女性をマダラは余り好まないらしいから、いざと成ったら背中を預けられる人がいいんじゃないか? ……とすれば、くのいちだな」
「つまり、頭領のお嫁さんは同業者から探せと……?」
「日向とかもいいんじゃないかな? あそこは才媛が多いし」

 でも、日向とうちはは仲が悪いから……あ、だから結婚すればいいのか。
 真剣に考え出したヒカクさん。
 この分じゃ今回だけでなく、前にも似た様な事があったのだろう――本当に御愁傷様である。

「かといってあまりにも気が強すぎる女の人じゃ、そう遠くないうちに絶対破局するね。だから、お前の性格に付き合えるだけの優しくておおらかな気質の人がいいと思うぞ」

 ここ重要。
 そういう人でなきゃ、絶対に嫁さんに実家に帰られると予想出来る。

 そんな事を考えながらマダラを一瞥すれば、眉間の間の皺が凄い事に成っていた。
 ああ、そうそう。一番大事な事を忘れてた。

「それっぽい事を言ってみたけど、一番重要な事を忘れてたな」
「火影様?」

 首を傾げるヒカクさんの横を通り過ぎて、マダラの正面に佇む。
 いつもの仏頂面を目にして、軽く微笑みが零れた。

「多分、これが一番大事だな。――どんな人にしろ、お前が一緒にいて笑い合う事の出来る相手が一番いいと思うぞ」

 眉間の間の皺が凄い事になっているので、眼下の黒い旋毛をわしゃわしゃと撫でる。
 ちょっと惚けた様にマダラが私を見つめているので、もう一度笑ってしまった。

 
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