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シーズンを振り返り

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第四章

 その両方でというのだ、寿は通っている中学では特進クラスで部活はスキー部だ。そのどちらも結構以上の成績だ。
「そうだったよ」
「負けたらストレス発散で走ってお風呂入って」
「そうしたら勉強も思い切り出来るからな」
「それじゃあいいかっていうと」
「勝って喜んでトレーニングしてお風呂入りたいだろ」
 兄は妹に即座に言った。
「お前も」
「それはね。私もカープが調子いいと」
「気分よく勉強出来るよな」
「それでその分成績がいいわ」
「リラックスしてやる方がいいんだよ」
「勉強は」
「部活はそれで成績よくなってもな」
 トレーニングの機会が増えてだ。
「そうなるからな」
「というかこの長田から甲子園って凄い距離よ」
「二十キロあるな」
 正確に言えば二十キロは優にある。
「大体」
「自転車でも往復でかなりでしょ」
「それ位平気なんだよ」
「凄い体力ね、しかも負けたら怒り狂って全速力で帰って来るから」
 その為自転車部からスカウトもされている。
「行きは勇んで行って」
「勝ったら上機嫌で足取りも軽いしな」
「それもトレーニングね」
「ああ、けれど本当に勝ってな」
 そうなってとだ、寿は妹に切実な声で語った。
「僕は気持ちよくトレーニングして勉強もしたいんだよ」
「じゃあ来年こそは」
「阪神には優勝して欲しいな」
「それを言ったらカープもよ。それでドラフトだけれど」
 千佳はここで話題を変えた、丁度いい頃合いだと見て。
「そっちはどうなの?」
「今年も最高に決まってるだろ」
「またそう言うのね」
 実は兄は毎年こう言う、この辺りは実に阪神ファンらしかった。あくまで前向きなのだ。
「じっくり見て育成とか考えないのね」
「阪神の育成は完璧だろ」
「ピッチャーはね」
 このことは千佳が見てもだ。
「そうよね」
「引っ掛かる言い方だな」
「だっていつも先発中継ぎ抑えはいいから」
 その為チーム防御率はいつもいい、十二球団トップであることもざらだ。これも阪神の伝統であろうか。
「暗黒時代もそうだったでしょ」
「中継ぎ課味があったな」
 寿は自分の生まれる前だがこの頃の阪神のことも熟知している、勿論小山正明の頃もよく知っている。
「よかったな」
「それで言うのよ」
「ピッチャーは大丈夫か」
「打線よ、本当にあの貧打線どうにかしないと」
「それが来年から変わるんだよ」
「だといいけれどね、じゃあ今から晩ご飯だけれど」
「今日は何だ?」
 晩ご飯を聞いてだ、兄はそちらの話も聞いた。
「それで」
「おでんよ、お母さん今あっためてるから」
「そうか、じゃあテーブルに着くか」
「そうしましょう」
「食べたらお風呂入って勉強するか。阪神のことを神様仏様にお願いして」
 寿はそんなことを言いながらテーブルに着いて千佳も続いた、そうして二人は母と三人でおでんを食べつつ父が何時に帰ってくるかとかいうことを話した、この時は野球を離れていたが兄妹は夕食の後でそれぞれのチームの為に神仏に祈った。やはり二人はそれぞれのチームのことは忘れていなかった。


シーズンを振り返り   完


                 2019・10・20 
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