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夢幻水滸伝

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第百十話 争わずともその三

「だからいいとよ」
「まあ僕ちんもアンチ巨人やしな」
「そうたいな」
「昔あそこに行った台湾の選手あかん様になったしな」
「あそこは基本助っ人の使い方下手たい」
「使い捨てにしてるか」
「あそこは生え抜きのスター選手しか大事にせんとよ」
 これが巨人のおぞましき実態である、他チームから強奪した選手は所詮消耗品としか考えていないのである。
「だから監督もたい」
「そういえばそうですね」
 ここで鬼族で動きやすそうな青い作業服と安全靴の鬼の男が言ってきた、二メートル二十位の背丈で逞しい身体つきと顔立ちだ、頭に一本の角がある以外は人間と変わらない外見だ。地雄星梁雷神である、香港出身で職業は大工である、持っている神具は大工道具でもある黒旋風の二丁斧と移動に使う斜雲の二つだ。
「あそこは」
「そうたい、生え抜きしかとよ」
「しかもスター選手やないと」
「監督にしないたい」
「極めて封建的な体質ですね」
「それが巨人の正体とよ」
 自称球界の盟主のだ、だが起きた世界では最早球界の汚物や球界の盟主(笑)と呼ばれ観客動員数も一年辺り五十万を割っている。
「そうなってるとよ」
「いや、それはまた」
「巨人だけとよ」
「他のチームはちゃいますね」
「そうたい、フロントも現場に介入するたい」
 これも巨人の『伝統』である。
「そしてチームの破壊に貢献してるとよ」
「いつもそうしてますね」
「そうたい」
 まさにというのだ。
「ほんまに」
「そうたい、しかし」
「今はですか」
「三十年連続最下位たい」
 親会社のスポーツ欄では嘆きばかりだ。
「そうなってるとよ」
「そしてそのことがですね」
「私は凄く嬉しかとよ」
「それは何よりですが」
「巨人を嫌い過ぎたいか」
「リーグが違うのに」
「そう、リーグが違うのでしたね」
 ここで李楽生が言ってきた、相変わらず明るくおどけた感じだ。
「ソフトバンクと巨人は」
「こっちはパリーグで巨人はセリーグでしたね」
「そうたい」
「それでもですか」
「私はこれまでのことがあってたい」
「巨人がお嫌いですね」
「そうたい、巨人が負ける」
 このこと自体がというのだ。
「私の元気の源たい」
「巨人の敗北を見て元気が出る」
「その次の日は明るくなれるたい」
 巨人の負けを見るだけでというのだ。
「だからもっともっと負けて欲しいとよ」
「徹底してますね」
 今度言ったのは鋼鉄の身体を持つゴーレムの男だった、服は動きやすい中世の欧州の鍛冶屋の上着とズボンだ。地理星ジャン=ラザワウナスリンである。マダガスカル出身で職業は服が示す通り鍛冶屋であり持っている神具は鍛冶道具のヘパイストスの鎚に知恵を話してくれるアテナの梟の二つである。 
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