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おとろし

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第二章

「兄さんに車で運んでもらうし」
「そこまで飲むのは決定事項なんですね」
「だって安くて美味しいなら」
 そうした店ならというのだ。
「もうね」
「立っていられない位飲むんですね」
「食べてね」
 愛梨はこのことも忘れていなかった。
「そうしてね」
「飲みますか」
「いいわね、二人共足腰立たなくなる位ね」
「飲みますか」
「そのことを決定事項にして行くわよ」 
 こう言ってだった、愛梨は晋太郎を自分が案内してだった。
 その串カツ屋に連れて行った、その途中古い寺の前を通ったがその門を見て愛梨も晋太郎も眉を顰めさせた。
 そして愛梨は晋太郎にこんなことを言った。
「このお寺廃寺かしら」
「えらく荒れてますね」
「お寺も住職さんがいないとね」
「荒れますね」
「この通りね、だからね」
 それでと言うのだった。
「このお寺もね」
「荒れてますね」
「ええ、けれど」 
 それでもとだ、愛梨は。
 門にある落書きを見てだった、晋太郎にこう言った。
「落書きすることはね」
「駄目ですよね」
「全く、こんなことする馬鹿はね」
「何時でもいますね」
「何処にでもね、何処の悪ガキかドキュンか」
「どっちにしても許したら駄目ですね」
「どうせならヤクザ屋さんの事務所の看板に書けばいいのよ」
 愛梨はかなり本気でこうも言った。
「最近看板掲げてる事務所も減ったけれど」
「そんなところに書いたら」
「どうなるかわかるわよね」
「絶対に殺されますよ」
「そうなるわよね」
「はい、というかそうなってしまえですね」
「そうよ、こんなことする馬鹿は」
 それこそというのだ。
「そうしてね」
「いなくなればいいんですね」
「馬鹿は死んだ方がいいでしょ」
「こんなことをするレベルの馬鹿は」
「そうよ、全く楽しい思いする前に嫌なもの見たわね」
「全くですね」
「帰りにね、立てなくなっていても」
 ここで愛梨は晋太郎に確かな声で言った。
「ここに来て」
「それで、ですね」
「拭き取る?」
「シンナーかベンゼン用意して」
「タオルもね、幸い途中にそうしたの売ってるお店あるし」
「串カツ食べる前に寄ってですか」
「そこでシンナーとかタオル買って」 
 そうしてというのだ。
「それでね」
「串カツ屋さんにですね」
「行きましょう」
 こう言ってだった、愛梨は晋太郎を串カツ屋に連れて行った。そうして。
 様々な種類の串カツを食べビールも焼酎も飲んだ。愛梨はその店の中で言った。
「串カツって凄いわよね」
「美味しくてですよね」
「お酒にも合ってね」
 ビールを大ジョッキで飲みつつ言った。
「ほんまに」
「そうですよね、庶民的で」
「庶民の味方とか言ってた政党あったけど」
「それ嘘ですから」
 晋太郎は愛梨の今の言葉は即座に否定した。 
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