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星河の覇皇

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第七十二部第三章 ジャバルという男その二十九

「君はさらにだ」
「やるべきことがあるのですね」
「選挙にも勝たねばならに」
「主席選にも」
「私が主席に任命してもだ」
「選挙にですね」
「勝たねば主席にはなれない」 
 このことを言うのだった。
「民主政治だからな」
「その選挙もです」
「勝ってみせるか」
「必ず」
 このことも悠然として言うのだった。
「そうしてみせます」
「頼もしいと言っていいか」
「期待して頂いて結構です」
 これがジャバルの返事だった、やはりその笑みは悠然としたものだった、そこには絶対の自信があった。
「是非」
「ではな」
「その様に、それでは」
「これからだな」
「二つの政府の統合を進めていきましょう」
「マウリア政府とアウトカースト政府のな」
「その二つの政府の」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「サービス等もだ」
「統一ですね」
「そうしていこう」
「それでは」
「その為に君の力を借りる」
「喜んで」
 ここでもだ、ジャバルの返事は悠然とした自信に満ちたものだった。
「そうさせて頂きます」
「ではな、そこでまず見せてもらう」
「私自身を」
「その様にな。この世で最もわかりにくいものはだ」
「人間ですね」
「一見でもわからない、いや」
 クリシュナータは自分の言葉を訂正してこうも言った。
「何十年共にいてもだ」
「わからないものですね」
「親兄弟や妻子でもだ」
 まさに最も傍にいつもいる者達でもというのだ。
「わからないものだ」
「その実は」
「もっと言えば自分自身ですらだ」
「わからないものだと」
「私は思っている、だからだ」
 クリシュナータもというのだ。
「人間は最もだ」
「この世でわかりにくいものですか」
「一人一人がな」
 人間自体というのではなくというのだ。
「非常にな」
「わかりにくいですか」
「その人間を理解出来ればだ」
 クリシュナータはさらに言った。
「また違うがな」
「何もかもがですね」
「そうだ、私もこの妻のことで気付いたことがある」
「そうなのですか」
「些細なことだが。妻は薔薇の菓子が好きだが」
「その薔薇のお菓子で」
「特に白薔薇のものが好きだ」
 このことに気付いたというのだ。
「妻のことを何でも知っている様でだ」
「そうではないですか」
「そうだ、人間は何でも知っている様でだ」
「それでいてですね」
「何も知らない、所詮人間の知識はだ」
 それはというと。
「大海の中の一杯のスプーンでだ」
「人間一人一人についても」
「何も知らないものだ」
 例え長年一緒にいてもというのだ。 
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