おぢばにおかえり

「何があっても」
「ちっちは人傷付けることは避けるからね」
「絶対にね、まあとにかくバレンタインはね」
「誰か一人になのね」
「とっておきのをあげたらいいわ」
「誰でもいい訳じゃないわよね」
「そこはね」
　言うまでもないといった返事でした。
「ちっちもわかるでしょ」
「ええ、それじゃあね」
「そうした人いえ子にね」
　ここでこう言ってきたのでした。
「あげてね」
「わかったわ。けれど誰なのかしら」
　私はそんな人今の私にはいないのにと思いました、しかも子とか言いましたので年下の子なのかしらとも思いました。
　それでその日どうしてもわからなくて詰所で白石さんの奥さんに尋ねました。
「私にそんな人いるでしょうか」
「いるんじゃないかしら」
　奥さんは私に笑ってこう言いました。
「ちゃんとね」
「います？」
「それもすぐ傍にね」
　そうだというのです。
「だからもう買っておくべきよ」
「そうしたチョコレートを」
「それでその人にですか」
「あげてね」
「このこと友達にも言われたんですが」
「皆わかってるのよ、じゃあね」
　それならというのです。
「あげなさいね、その子に」
「その子にですか」
「絶対に大喜びするから」
「わかりました。ただバレンタインってキリスト教ですよね」
　私はどうしてもこのことが気になりました、とはいっても本当は仏教のお盆もやっぱりキリスト教のクリスマスもお祝いしていますけれど。