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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第四十八話「天央祭・Ⅸ」

『あっははははは!ブァーカ!美九お姉さまを騙しんたんだから死んで償うのが当然でしょう?死ね!早くそこで死ねっ!』

イヤホンから聞こえてくる妹の罵声に士道は顔を歪める。何時もの様なじゃれた言葉と違い本気で死ねと思っている声。実の妹からの言葉に士道の心は大きく傷ついていた。たとえそれが美九に操られた結果の言葉としても。

「シドー?」

様子の可笑しい士道に十香は声をかけるがその言葉は士道の耳には入っていなかった。

「シドー!」

「っ!と、十香…」

耳元で大きな声を出され士道は漸く十香へと顔を向けた。その顔は真っ青であり汗がダラダラと出ていた。傍目から見ても何かあったと分かる顔であった。

「何があったかは分からないが今は兎に角逃げるなり美九を対峙するなりしなければ」

「!そ、そうだな(琴里の事は気になるけど今は美九の方を優先しなきゃ)」

士道は改めてステージ上の美九を見る。瞬間、士道と目が合った。美九は士道と目が遭った事に強い不快感を表し睨みつける。

「もういいです!精霊さんたち!やっちゃってください!」

美九が再び鍵盤に這わせた指を動かし音色を変える。すると四糸乃と八舞姉妹は一斉に士道へと向かってくる。士道は十香にたいしょをさせながら必死に避けると同時に四糸乃達を説得する。

その様子を彼女は特に何もせず見ていた。当初は異変が起きた事で入ったものの対峙する二人に肩入れしなかった。

確かに美九とは三か月にわたり一緒に生活していたがだからと言って手を貸すほど仲は良くなっていない、と彼女は考えていた。それに今ではかなり薄まったとはいえ彼女には悲願がある。その目的にどちらがどうなろうと構わなかった。

「ふふふ、可愛い子たちが私の為に戦っていますぅ。最高です!」

美九はステージの端によりながらそんな事を呟く。そして、端に来ると席に座っていた彼女へと視線を向ける。

「…本当は貴方にも私の【お願い(・・・)】を聞いてほしいのですけれど、やめときますぅ」

「へぇ?てっきり美九の力で私を操るのかと思ったけど」

「ふふ、美亜さんは私にとって特別(・・)なのでそんな事はしませんよ~?もし、私の傍から離れていれば別でしたけど」

要するに美九の傍にいる限り操ろうとはしないと言う事だ。しかし、美九の傍を離れ何処かへと言った瞬間連れ戻す為にどんなことでもすると言う事でもあった。

彼女は思う。美九ならやりかねない。現にこのステージにいた人達を操り少し特殊な青年を殺そうと動かしているのだから。そうなっていたら悲願どころの騒ぎではなかっただろう。昔の自分に彼女は感謝した。

「それで?美九は可愛い子たちに全てを任せ自分は私とお喋りか」

「む~、美亜さんは意地悪ですね」

美九は頬を膨らませて抗議する。可愛らしいその表情に彼女の頬は自然と緩んでいた。それと同時にキャットウォークにて戦っている精霊を見る。そこには二体の精霊に少しづつ追い込まれていく士道たちの姿があった。

「…あちらはもうすぐ決着が付きそうだな」

「そうみたいですね。そうなったら今度は精霊さんたちと仲よく天央祭を楽しみましょう!勿論、美亜さんも一緒ですよ?」

「…分かった。その時は楽しませてもらうよ」

そう言っていると十香が〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を構えこちらへと突貫してくる。しかし、それは四糸乃が作り出した氷壁で防がれた上に八舞姉妹の突風で十香は天井を突き破り、外へと吹き飛ばされてしまう。

「う、うわぁぁぁっ!?」

「十香…!」

呆気なく吹き飛ばされた十香であったが今度は天井を突き破り美九の真上へと現れた。どうやら吹き飛ばされたとはいえそこから次の攻撃に繋げた行動に彼女は感心する。

「な、ぁ」

しかし、美九は突然の事に目を見開いたまま固まってしまう。その様子に彼女はやれやれと思いつつ右手にトンファーを握ると十香と美九の間に躍り出る。

「邪魔をするなぁっ!」

「そちらこそ、いい加減倒れろ!」

振り下ろされた〈鏖殺公(サンダルフォン)〉をトンファーで防ぐ。右腕を中心に鋭い痛みが走るもそれに気を取られる事なく右腕をずらし剣の軌道を変える。

そして右腕をずらした勢いのまま体をひねり右足による回し蹴りを十香の顔に命中させる。

「ぐっ、ああぁぁっ!!!」

もろに直撃を受けた十香はそのまま壁まで吹き飛ばされる。彼女はトンファーを仕舞い右腕を確認する。十香の一撃を受けたため右腕には激痛が走っており最悪骨にひびが入っている可能性すらあった。

単純な力なら十香に分があったが技術面も含めれば彼女が負けるはずがなかった。とは言えこれ以上の戦闘は今は難しいなと思い美九に無事かどうかを聞こうとした時であった。

天井が十字に切り裂かれそこから機械を纏った女性が降りてきた。
 
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