山賊王ヒグマ
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始動するヒグマ
前書き
辻褄を頑張って合わせてみました
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世は大海賊時代である。
海賊が世界を動かし、海の治安は荒れに荒れている。海賊の被害を受け滅ぶ国もあるほどだ。
だが待って欲しい。違和感を持たないだろうか?何故海だけが荒れているのだろうか。
確かに海は地球の7割程度を占めるほど広い。しかし人間が基本的に暮らすのは陸地である。
つまり、荒くれ者にとっては海より陸地の方が旨味がある筈なのだ。海には海軍はあるが山にはない。取締りを受ける可能性が下がる以上、根城にするにはうってつけな条件が揃っている。なのに山賊などは海賊に比べてその数が非常に少なく非常に大人しい。
この現状にある憶測を仮定すると全ての辻褄が合うのだ。
そもそも海がここまで荒れているのは荒くれ者の王の座が空席だからである。四皇と言われる者を筆頭に数々の勢力がしのぎを削り王座を奪い合っているわけである。
つまり山賊の中で圧倒的な力と勢力を持つ王が既に存在し、政府や海軍、更には海賊からの干渉を断っているとすれば山は荒れようが無く、全て筋が通る様になるのである。
これからも私はこの謎を追っていくつもりだ。
【フリーライター】アブサ
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《マリージョア》[五老星の部屋]
「あのスクープ屋め‼︎我らが彼の存在を隠すのにどれ程の労力を費やしたと思っているのだ⁉︎」
「《山賊王》ヒグマ…世界政府は彼に大きな借りがある。イム様からも彼の機嫌だけは絶対に損ねるなと言われておるだろう‼︎」
「ともあれ大失態だ‼︎今すぐ謝罪の連絡を…」
《マリンフォード》[海軍本部]
「このアブサという記者を今すぐ探し出せ‼︎‼︎」
「ぶわっはっはっ‼︎奴の情報がとうとう漏れたか‼︎」
「何を笑っとるんだガープ‼︎奴は平穏を望んでいる。それが脅かされたら何をするか分からんぞ!」
「奴には大きな借りがある…ともかく‼︎奴の存在だけは明るみに出すわけにはいかん‼︎」
「遅かれ早かれバレてたじゃろう。山だけがあれ程平穏なのは流石に不自然じゃ。」
「あの…センゴクさん。山賊に大きな借りとは一体…?」
「グザン…そういえばお前は奴の事を知らんかったな。」
「ロジャーが海賊王になる前にも海に皇帝はいた……当時の海軍はそれに対処できるほどの力はなかったのだ。困った五老星と海軍上層部は奴に頭を下げ、勢力の強くなりすぎた皇帝を間引いてもらっていた。最近では百獣のカイドウの捕獲を依頼し、逮捕へ協力して貰っている。海軍が山賊に頼りきっているのは世間体が悪すぎるためこの事は歴代元帥にのみ伝えられている極秘事項だ。絶対に漏らすんじゃないぞ」
「あの〜、どのくらい前から奴は生きてたんです?」
「殺した皇帝の数は56人と伝えられている。数百年は生きとるだろう。悪魔の実の能力と合わさって間違いなく世界最強の男だ」
【東の海】[赤髪海賊団]
「お頭本当にやるのか?」
「ああ…奴に喧嘩を売る。」
「突然東の海に行くっつうからおかしいと思ったらそういう事か…」
「奴が動けば時代が動く。俺たちの目的を果たす為には奴が表に出てくる必要がある…!」
本人の知らぬ間に世界は動いていく。ヒグマは楽しんでいた平穏を崩されようとしていた。
「俺の情報が探られてるだと?何をやってるんだ⁉︎とっととその新聞屋を消せ!」
(五老星の小僧共……ヘマしやがって‼︎)
酒でも飲まなければやってられない。そう思いながら飲もうとしたが酒が切れていることに気付いた。
「予備も尽きてるな……買いに行くか」
「邪魔するぜェ」
(こいつぁ四皇のガキか?何故東の海に?)
臨戦態勢に入る赤髪のクルー達を不思議に思いながら入店する。
「ほほう…これが海賊って輩かい。初めて見たぜ間抜けた顔してやがる」
(俺の事は知らねえだろう……奴等も三下の山賊相手に喧嘩を売るほど大人気なくはねぇ筈だ。酒だけ買っておさらばだな)
平穏をまだまだ堪能したいヒグマは何も知らない無知な山賊を演じつつ目的の物を手に入れようとした。
「俺たちは山賊だ。–––––––が別に店を荒らしに来た訳じゃねェ。酒を売ってくれ。樽を10個ほど」
「ごめんなさい。お酒は今ちょうど切らしてるんです」
酒を飲みたい気分だったヒグマはキレそうになりながらも自分を落ち着かせる。
「ん?おかしな話だな。海賊共が何か飲んでる様だが。ありゃ水か?」
「ですから、今出てるお酒で全部なので…」
「これは悪い事をしたなァ。おれ達が店の酒飲み尽くしちまったみたいで。」
ニヤニヤ笑いながらこちらに話しかけてくる赤髪に意識を向ける。
眼に入ったのは赤髪の目。その瞳には何かを引き摺り下ろそうとする意思を感じた。
(間違いねェ。こいつは俺の正体に気付いている。その上で俺に喧嘩を吹っかける為、予め酒を買い占めていたんだろう。舐めやがって……何が目的だ?)
思い出せば確かに入店した時点で様子がおかしかった。四皇のクルーが最弱の海である東の海で山賊相手に本気の臨戦態勢に入っていたのだから。
一般人には分からない様に、正体を知っているであろう赤髪にだけ分かるように忠告をする。
「おい貴様。この俺を誰だと思ってる。ナメたマネするんじゃねェ。ビン一本じゃ寝酒にもなりゃしねェぜ」
「八百万ベリーがおれの首にかかってる。第一級のおたずね者ってわけだ。56人殺したのさ。てめェのように生意気な奴をな」
ちなみに800万ベリーというのは低すぎず、だが強い賞金稼ぎは狙わない様なライン金額を政府に発行させてこの額になった。
「わかったら今後気をつけろ。もっとも海の山じゃもう遭う事もなかろうがな」
今回は見逃してやる。だから二度とその姿を目の前に見せるな。そう言外に伝え、少しの憂さ晴らしをした後店を出る。
(身の程をしらねェガキだったがこれで懲りただろう。もうしばらくこの辺で過ごせそうだな)
「別の街へ行くぜ」
「お頭、良かったんですかい?放っておいて。」
「四皇を殺ったら流石に話題になる。そうすりゃ世間は犯人を血眼になって探すだろう。俺はのんびり生きてェのさ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜数週間後〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「今日は海賊共はいねェんだな。静かでいい…また通りかかったんで立ち寄ってやったぞ」
(今日は気分良く酒が飲めそうだ)
部下と気分良く話しながら飲んでいる最中にそいつは絡んできた。
「おい山賊!シャンクスに謝れ!」
「あ?なんだこのガキは」
楽しく飲んでいた所に水を差された腹が立った。
最近はストレスが溜まっている。四皇ならともかく山賊に絡んだバカなガキが1人殺されたぐらいでは話題にすらならないだろう。何より山賊を見下し切っているその態度が許せなかった。
「驚いた。こいつ悪魔の実の能力者か。」
(赤髪が実を与えた?となると奴の身内か。面倒ごとになるのも良くねェな。一回見世物小屋にでも売り飛ばされれば懲りるだろう。)
そう考えていたが
「悪いのはお前だ!この山ざる!」
気分が変わった。面倒ごとを避けたいとはいえ、本来ヒグマは短気な人間である。特に彼は山賊を見下す海賊が大っ嫌いだった。
(ここまでバカにされて殺さないでやるほど俺は聖人君子じゃねェ。恨むなら自分を恨めよ小僧)
そうして刃を振り下ろそうとした。
「港に誰も迎えがないんで、何事かと思えば…いつかの山賊じゃないか」
(赤髪……タイミングが良すぎるな。このガキが俺の逆鱗に触れると分かっていて介入するチャンスを伺ってやがったのか?)
「海賊ゥ……まだ居たのかこの村に。ずっと村の拭き掃除でもしてたのか?何しに来たか知らんがケガせんうちに逃げ出しな。それ以上近付くと撃ち殺すぜ腰ヌケ」
(このガキをダシにして何かを企んでいる様だが
思い通りに行くと思うなよ…)
「てめぇ聞こえなかったのか⁉︎頭吹き飛ばすぞハハハハ‼︎」
部下が銃を向けながら笑う。
強力な権力と世界最強の武力を持つ山賊王。
彼の前では天竜人ですら道を譲る。
正体を知ってなおその部下に手を出すことは彼の顔に唾をかける事に等しい。そんなバカな事をする奴はいないだろう。
だからこそ彼等は気が緩んでいた。
「銃を抜いたからには命を懸けろよ」
「あァ?何言ってやがる」
「そいつは脅しの道具じゃねェって言ったんだ」
次の瞬間その部下が撃ち殺された。
「や…やりやがったな てめェ!なんて事…なんて卑怯な奴らだ‼︎」
山賊王に宣戦布告をしたようなものである。信じられないと動揺する部下達。
(こりゃあ覇気込みで撃たれてんな。死んだか)
今殺されたのは連れてきてる部下の中では一番強かった者である。キリキリの実の霧人間。腐ってもロギア系の能力者だった男だ。
(油断しやがって……)
手を出してくるはずがないと油断し切っていたのだろう。マトモに戦えば少しは善戦できた筈だ。しかし見せてしまった隙は大きすぎた。
正直、他に連れてきている部下は幾らでも替えが効く雑魚である。時間稼ぎは期待できない。報復は後でじっくり出来る。今は引くか。そう考え逃走の段取りを考え始める。
「どんな理由があろうと‼︎おれは友達を傷付ける奴は許さない‼︎‼︎」
(俺がこのガキに手を出すのを見越して待ってただろうによく言うぜ。俺のメンツを潰したんだ。撤退するついでにその《友達》とやらを殺してお前のメンツも潰してやろう。それが平等ってもんだろ?)
「はっはっはっはっ!許さねェだと⁉︎海でプカプカ浮いてヘラヘラやってる海賊が山賊様にたてつくとは笑わせる‼︎ブッ殺しちまえ野郎共‼︎」
この大航海時代に海賊を心底見下し、鼻で笑える者は彼だけだろう。彼の頭の中では海賊なんて奴等は山賊に恐れをなして海に逃げ込み、一般人相手に粋がっている負け犬達、程度としか考えていなかったのだ。
合図を受け襲いかかる部下の山賊達。だが相手は四皇の副船長である。
(10秒も持たなかったか……だが煙玉の準備は出来た。俺がガキのみをターゲットに殺そうとしてる事は知らないはず。こりゃいけるな)
「…や‼︎待てよ…仕掛けてきたのはこのガキだぜ」
「どの道賞金首だろう」
そうシャンクスが言った直後の事である。
突然シャンクス達にだけ届くように制御された、覇王色の覇気に高密度の殺気を混ぜ込み放たれた事による、圧倒的殺意と威圧感が彼らを襲った。
山賊王による全力の覇王色の覇気に四皇であるシャンクスですら意識を取られかける。その瞬間煙玉が投げつけられ、意識がハッキリとした時には既にルフィが拐われていた。
「はっはっはっはっはっ‼︎‼︎まんまと逃げてやったぜ‼︎まさか山賊が海に逃げたとは思うまい!さて。てめェはもう用無しだ。あばよ」
そう言いながらルフィを突き落とす。
(部下は殺されたが上手く撤退できたな。奴のメンツも潰せた。奴を殺すと面倒ごとになる事を考えると、ここらが妥協点だろう)
ひとまず満足し帰ろうとしたその瞬間、後ろから海王類に襲われる。月歩を使い高速で上に避け、数十メートル上空から見下ろす。
すると高速で接近する赤髪の姿が見えた。
(赤髪が来たからには何も起こらなければ恐らくガキは死なない。それならばメンツを潰された俺の立場がない。赤髪には自分の実の安全かガキの命かを選んで貰うとするか)
海王類が襲うタイミングに合わせ覇気を込めた斬撃を赤髪に向けて飛ばす。斬撃を防げばルフィが海王類に殺され、海王類から守ろうとすれば防ぎきれず何らかの手傷を追うだろう。
恐らく自分の身の安全を取るだろう。そう考えていたヒグマ。しかしシャンクスはルフィを選んだ。
(情でも湧いたか?いや…あのツラは何かを確信してる…?)
こいつは今まで狩ってきた海の皇帝達とは少し違うかもしれない。海賊王となったゴールドロジャーと似た何かを感じ、次の海賊王はこいつになるかも知れない。そんな事を考えながらその場を後にする。
(東の海は荒れるかもしれん。住処を移すか)
「ふん。俺相手に喧嘩を吹っ掛けといて腕の一本で済んだ人間なんぞテメェぐらいなもんだぜ」
こうしてヒグマは住処を移し、ルフィはヒグマは死んだのだと勘違いをすることになる。皇帝となったルフィがヒグマと再会することになるのは遠い未来の話。
後書き
反応があれば続きます
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