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レーヴァティン

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第百二十三話 讃岐からその十

「わからない」
「左様でござるか」
「だがあの時はな」
「絶対にでござるか」
「信義を守ろうと思ってだ」
 そうしてというのだ。
「実際に守ることが出来た」
「よかったでござるな」
「そうだな、だがな」
「信義を守ることは」
「やはり難しい」
 こう言うのだった。
「時と場合によってはな」
「若し目の前に素晴らしいものがあるなら」
「例えばだ」
 英雄はこうも言った。
「渇き死ぬ寸前で目の前に水がある」
「その時に信義を守れるか」
「それはどうだ」
「そう言われると」
 智もだ、腕を組み難しい顔になって英雄に応えたことだった。そしてその出す言葉も同じであった。
「拙者も」
「難しいか」
「生きるか死ぬかの瀬戸際においては」
 そうした状況ならというのだ。
「真に」
「そうだな、俺もだ」
「そうした状況なら」
「果たしてな」
「信義を守れるか」
「自信がない」
 やはり智にこう返した。
「どうしてもな」
「左様でござるか」
「人は極限の状態ではです」
 紅葉も英雄にこう話した。
「どうしてもです」
「信義を守れるかどうかな」
「先程英雄さんはお水のお話をされましたが」
 このことからだ、紅葉は英雄に話した。
「盗泉のお話も」
「それもだな」
「はい、それもまた」
 まさにというのだ。
「そうしたお話ですね」
「そこで名前が盗泉といってもな」
「極限の状態では」
 それこそ生きるか死ぬかという状況ではというのだ。
「守れるか」
「盗泉を飲まない」
「そうしたことが」
「難しい話だな」
「一人しか助からない状況ですと」
 紅葉はこうしたことも話した。
「二人いますと」
「海の中の船でそうだとな」
「そこで一人がもう一人を殺して生き残っても」
「この場合はどうかという話はな」
「色々言われていますね」
「確か法的にはそれは正しい筈だ」
 英雄は自分達の世界の法学のことから話した。
「そうだったな」
「はい、わたくしもです」
 紅葉も英雄に確かな声で答えた。
「その様に記憶しています」
「そうだったな」
「例えそれが愛し愛し合う中でも」
「人は極限だとだな」
「生存本能は非常に強いものです」
 人のそれはというのだ。
「もっと言えば生物の全てが」
「生存本能が強いな」
「そうです、その中で」
「死ぬか生きるとなると」
「まことに」
 まさにと言うのだった。 
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