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読モとダメ男が異世界で出会いました

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リアル、入学式

 俺は並下空(なみした そら)
勉強も運動もケンカもコミュ力も並以下の気がする。バカにされるのが嫌で、ひたすら空気に徹した。よっていじめには遭っていない。趣味はゲーム…パソコンのオンライン海洋冒険RPG「ネプチューンファンタジー」略してネプにはまっている。長時間プレイでテクノブレイクしないよう、休み休みやっている。

 入学式か…早く帰ってアップデートされた狩り場に行かなくては。俺は座っている間中、新エリアでの立ち回りをイメージトレーニングする。毒、しびれ、凍結、炎上、停止…どの状態異常がくるか、どの属性で攻めて守るか、まずは逃げやすいシーフに偵察をたのむか。むっ、担任が前に…聞き落としてはまずそうな気配だ。
担任宮野「式は以上、12時に教室集合だ」
12時ね、俺はメモを取ると意識を現実世界から海洋冒険世界のオーシャニアに写した。そうだ、まずは航路を確保しなければいけない。船の装備、風、潮の流れ、積み荷、クルー、モンスターや海賊への対処…そう、俺の役目は船長だ。作戦の段取りを組み、クルーや取引先の信頼を勝ち取り、不測の事態にも的確な指示を出し、強敵相手には陣頭に立ち鼓舞する。俺はオーシャニアで七英雄と呼ばれる最上位の船長だ。当然、新エリアに一番乗り!冒険野郎の血が騒ぐぜ!

 12時、一年一組教室
担任宮野「はーい、担任の宮野です。よろしくお願いします」
生徒(…)
担任宮野「よろしくお願いします!」
黄金「よろしくお願いします」
担任宮野「挨拶もできんのかい!このジャリんこどもが!あーお前は真砂黄金ね」
黄金「はい」
女子生徒「ねぇ、あの人…」
女子生徒「本物の黄金様?」
男子生徒「やべ、マジ美人」
男子生徒「やりたい」
ざわざわ
担任宮野「うるさいんじゃい!あー授業およびホームルーム中は私語を慎むように。ウチは就職に強い公立高校なんで、お前らが社会に出てバリバリ働けるように鍛えるから気合い入れるように。いいか?」
黄金「はい」
担任宮野「真砂だけしかおらんのかい!いいか?」
生徒たち「はいっ!」
担任宮野「そうだ、職場では必ず挨拶する、繰り返して行けば慣れる、下手でも良いから行動する一歩が大事だ」
そうか、行動…確かに負けを恐れていたら冒険野郎は勤まらないな。メモメモ
担任宮野「ん、感心な奴がいるな」
ひょい
並下「アッー!」
あ、あれにはネプのことがびっしり書いてある…ま、ず、い。
並下「あ、あ、あ、それはですね」
担任宮野「時刻、場所、準備、行動…ほう、お前メモを取るのが上手いな、情報が整理されている」
並下「え」
先生は賞状でも渡すかのようにメモを差し出した。
並下「あっども」
担任宮野「ちがーう!賞状は両手で受け取るんじゃい!何故か?日本社会という部族の掟じゃい!何でか考えたら負けじゃい、型を覚えて使いこなせ」
並下「はぁ」
担任宮野「メモしとけよ」
確かに理不尽なシステムや弱体パッチはあるが、嘆いても勝てない。変化した状況に適応した奴が勝つんだ。俺は頭を下げて、先生の言葉をメモした。

 解散後
明日から毎日学校か。正直ずっとネプしていたいが、ネプはオートゲインシステムがある。放置していても経験値を稼いだり、ジョブ熟練度を上げたり、お金やアイテムを稼いだりするシステムがある。次にログインするまで延々と稼いでくれるので、時間に制約があるプレイヤーに優しい。
早乙女「おーい、高校でも空気か?」
こいつは早乙女駆(さおとめかける)同じ中学だった奴だ。スポーツ万能だが、強豪校に行くほどではない。この高校なら野球部でレギュラー取れそう…というよく分からない動機でここを受験した奴だ。
並下「目立ってしまった」
早乙女「何したんだ?黄金様のスカートめくったんか?」
並下「しない、捕まるだろ」
その黄金様…真砂黄金の周りに人だかりができている。他のクラスの奴や上級生も来ている。有名人なんだな。
早乙女「ま、どうでもいいや。じゃ野球部行ってくるわ、夏にはレギュラー取るから見に来いよ」
並下「俺は野球が分からん」
ぽちゃメガネ女子「並下くん」
並下「ん?」
ぽちゃメガネ女子「私と並下くんがクラス委員だって、先生が決めちゃった」
並下「聞いてないよー」
ぽちゃメガネの委員長「増山恵です、よろしくね」
並下(…俺は成績悪いのに、ネプする時間が減ったらやだなー)

 14時、並下帰宅
さて、やっとネプができる。海が俺を呼んでるぜ!今日は18時集合だから、軽くならし運転と行くか。
母「お帰り、空」
並下「たでま」
母「あんたクラス委員長なの?先生からコミュ来たわよ」
並下「ちょwww」
コミュとはメッセージアプリ、別の世界のLIN◯のようなものだ。母のスマホを見ると、生徒と保護者全員参加のグループに、生徒の委員・係の一覧が流れている。合理的だが…怖い。
母「真砂黄金ってモデルやってる子よね、美人?」
並下「そだねー」
母「運が良いわねー」
母は邪悪な笑みを浮かべた、いや怖いから止めて。しばらくして、母出勤。近くの弁当工場で夕方からのパートをしている。俺も高校生になったら働きなさいと言われるが…工場こえええ!キツそうだ。でもその工場の弁当が高校で売られると…複雑だ。

まあそんなことより、ようこそ冒険の海オーシャニアへ!
 
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