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夢幻水滸伝

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第百八話 低い山なれどその十二

「哲学や宗教で違うな」
「そうですね」
 吉川の今の言葉に応えたのはアグアルーザだった。
「キリスト教の天国があれば」
「イスラム教でも違うな」
「そこへの至り方も」
「キリスト教ではかなり難しい様だが」
 その教えではそうだ。
「イスラムではどうか」
「あまり、ですね」
「難しくなく思えるな」
「既にアッラ―に定められているにしても」
 この辺りはイスラム特有の神の強さから来る考えであろうか、キリスト教のカルヴァン派の予定説よりも強い。
「徳を積み神を信じてだ」
「喜捨や礼拝を行ってですね」
「ジハードで死ねば特にだ」 
「天国に行けますね」
「コーランを読んでもだ」
 聖書と同じ登場人物がアラビア語読みで多く出ている。
「聖書と全く違うな」
「これがですね」
 ベッシーが言ってきた。
「幸せな結末ばかりで」
「アッラーは滅多に怒らないな」
「コーランの登場人物達がかなりのことをしても」
 聖書では確実に延々と厳しい神罰が起こる様なことをしてもだ。
「何もないです」
「そもそも偶像崇拝をしないしな」
 アロンが聖書でした様なこともない、尚アロンはコーランではハールーンとなり弟のムーサーことモーゼを助けている。
「相当な悪人でもないと」
「そうですし」
「アッラーは寛容だ」
 それもかなりだ。
「聖書と同じ神の筈だが」
「性格が全く違います」
「そしてイスラムの天国はな」
 キリスト教、もっと言えばユダヤ教と同じ神の世界の筈だがだ。
「キリスト教のそれとは違うな」
「そうですね」
「地獄も違うがな」
「イスラムで地獄に落ちるのは」
「異教徒とな」
「相当な悪人位ですね」
 イスラムの教えを見るとそう思えるであろう。
「まさに」
「そうだ、そして仏教でもそれぞれの神話でもだ」
「天国、極楽、楽園と名前は様々でも」
「また違う。この様に楽園はな」
「それぞれですね」
「一つではない」
 こうベッシーに話した。
「そもそもな、だからな」
「人が楽園に至れるか」
「人全体が行けることはな」
「無理ですか」
「それぞれの楽園に行くならだ」
 それならばと言うのだった。
「可能かも知れない」
「その人それぞれの楽園に」
「その楽園が傍迷惑なものでないならいいがな」
「あの、僕っちの楽園は」
 楽園についてだ、ヘッドは答えた。
「食べものとお酒が」
「好きなだけある世界か」
「はい、家族が仲良くしていて」
「君の家族か」
「今も仲いいですが」
「これからもか」
「そうであれば」
 こう吉川に話すのだった。
「ほんまにです」
「幸せな世界か」
「はい」
 まさにというのだ。 
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