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異能バトルは日常系のなかで 真伝《the origin》

作者:獣の爪牙
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第一部
第四章 異能バトル
  4-2

 
前書き
今日はこの時間ですが、出来る日は昼までに挙げようかなと思ってます。 

 



フォクシーが消えてから話し合った結果、今日は情報の共有だけして明日に備えようということになった。
「異能も無限じゃないからね。体力と同じで使えば減るし、回復に時間がかかる」

「明日は学校は休みですが出発の前に一度部室に集まりましょう。全員の準備が整い次第向かいます」
「はい!」
「分かりました!」
「りょうかい」
とりあえず方針は決まった。

とそこで鳩子が
「じゃあ、じゅーくんにも今日のこと伝えますね」
電話をかけようとした時、その手を彩弓さんが止めた。

「……今回、安藤くんにこの事は伝えないようにしましょう」
文芸部三人が止まった。
「え? なんで?」
「鳩子さん、安藤くんが連絡をしてこない理由を考えてみて下さい」
「それは、訓練で忙しいからじゃ……」
「それもあるでしょうが、にしてもこの状況で連絡を取らないことにリスクしかないのは彼も分かっているはずです」
「……」
彩弓さんは鎮痛な面持ちで続けた。

「おそらくはまだ安藤くんの異能は戦える段階まで至っておらず、合わせる顔がないのでしょう。だから連絡を取れない」
彩弓さんの言いたいことがようやく掴めた。

「今ここで彼に連絡を取れば彼は来て戦わざるを得なくなります。あまり言いたくはありませんが……戦えない彼を連れて行っても……」
彩弓さんは顔を伏せた。

彩弓さんだってこんなこと言いたくないはずだ。
安藤を連れていけば、標的となるだろう安藤を守りながら戦うことになる。
それは男の子にはあまりにも酷だ。

「でも、みんなで戦うって……」
「……では鳩子さんは安藤くんがもう一度、この前のように傷ついてもいいと?」
「っ!」

「鳩子の気持ちも分かるよ。でも安藤はもうひとり戦ってくれたじゃない」
「そうです。安藤くんのおかげで信頼できる先輩に会い、異能を知り、今日まで準備出来たのですから。充分過ぎるほどです」
「今度は千冬達が、安藤を守る番」
「……うん、分かりました」
みんなの意見が一致した。

「大事な戦いに男の子ひとり除け者にされるのもきついと思うけどね」
「後で怒られたらみんなで謝りましょう。それに先に抜け駆けしたのは安藤くんですから」
「弱者(アンドー)を守るのは強者(千冬)のせきむ」
「千冬ちゃん、それじゅーくんに言ったらダメだよ? 立ち直れなくなるからね?」

そういう経緯で今回は安藤抜きでの戦いになった。


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席を立っていた一十三さんに安藤について知らせた。
「そっか。安藤くんにはまあかわいそうだけどそれが一番だと思うな。うん。それと……」

一十三さんが言いづらそうに知らせた。
「ごめん。私達が手を貸せるのはここまで。申し訳ないけど……」
お別れが近づいていた。

「なに言ってるんですか、一十三さんが謝る理由なんてどこにもないですよ」

続いてみんなが思うことを口にした。
「そうです! ここまで面倒見てくれただけでだいぶ救われました!」
「一十三、ありがとう」
「ありがとうございました。この恩はいずれ返させてもらいます。それと、リーティアさんも」
そこでひょっこりリーティアが顔を出した。
「気持ちだけ受け取っとくわ。今回で犬死することは無くなっただろうから、後は好きにすれば?」

そんなやりとりになにか感じるものがあったのか。
一十三さんは背を向けて俯いてしまった。
「ちょっと目に汗が……」
それを見てリーティアは
「あんたバカ? 敵に同情してどーすんのよ。次会う時はやりあうかもしんないのよ?」
ひどい対応だ。
けど正論だった。
これは生き残りをかけたサバイバルで私達は敵同士なのだから。

でも
「全部済んだらここで祝勝会しない?」
気付いたら口にしていた。

「いいね! わたし料理作るね〜」
「千冬、お菓子持ってく」
「いいですね。ちょっと狭いですが」
みんなノリ気で賛成してくれた。
まあ安藤は後で誘おう。
てゆーか誘わなくても来るか。
なんで呼んでくれないんだよーとか言って。

「一十三さんとリーティアちゃんも、兄さん誘って来て下さい!」
「「!」」
「一緒に料理作りましょう〜!」
「一十三達なら、オッケー」
「歓迎しますよ。OBですし」

「次会う時は敵同士かもしれません。けどそんな問題も引っくるめて全部済んだら。きっと楽しいです」

暗いこと言っててもしょうがない。
明るい未来の話をしよう。

しばし無言で一十三さんとリーティアは目を合わせ
「うん、じゃあ参加させてもらうね」
「えー、食いもんあるなら」
と快諾してくれた。

一十三さんはもう涙を流していなかった。


「一十三、そろそろ行くわよ」
お別れの時間だった。
ほんの数日だったけど数日とは思えないほど濃い時間で、色んなことを教わった。
「じゃあ、みんな気をつけて。ここで学んだことを忘れないようにね」

「お世話になりました〜」
「またね、一十三」
「無事を祈ってます」
「じゃあ、また! 兄さんをよろしくお願いします」

「うん、一くんは任せて。また会おうね」

そう告げ一十三さんとリーティアは文芸部から出ていった。

そこに悲しさは無く、笑顔と共に文芸部女子陣は恩人に別れを告げた。

 
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