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長恨歌

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第一章

                長恨歌
 唐の華やかな頃のことである、その唐の栄華の中心には皇帝、後に玄宗と言われる彼がいたがその傍らに常にもう一人いた。
 楊貴妃、多くの花ですら敵わぬと言われるまでの美貌を誇る彼女を見て李白は多くの詩を書いたがその詩を書いてから言うのだった。
「わしだから書ききれるのだ」
「君の才があるからか」
「そうだ、わしの詩の才は天下どころではない」
 好きな酒を飲みつつ友人に言うのだった、白く長い髭と青い目が目立つ顔で。
「人はわしを詩仙と呼ぶが」
「仙人の域か」
「そのわしの才覚だからな」
「楊貴妃様の美貌を詠いきれるか」
「わしならな、しかしだ」
「他の詩人にはか」
「あの方の麗しさは詠えんさ」
 言いつつさらに飲む、その中で李白はこうも言った。
「だが何時かは終わるな」
「何時かはか」
「夢は醒めるものだよ、酒の酔いも醒めるな」
「絶対にな」
「そのことを詠うつもりはないさ」
 言いつつだ、李白はまた飲んだ。そうして二人がいる宮の方を見た。
 その宮、華清宮の中で玄宗は詩人達に次々に詩を作らせていたがどれもだった。
 宦官の高力士が見て笑って話すものだった。
「この度もですな」
「うむ、貴妃のことを詠わせてだ」
「そうしてですな」
「こうして読んでいる、どれもいい」
 皇帝は高に満足している顔で述べた、年老いているが整っており威厳と気品の双方を兼ね備えた貴相である。
「皆褒めてやらねばな」
「では褒美もですな」
「弾む、無論な」
 皇帝だ、気前が悪い筈がない。
「そうさせてもらう」
「それでは」
「それでだが」
 玄宗はさらに言った。
「歌と舞も作らせたからな」
「その両方をですか」
「貴妃の前で歌い舞わせよう、そしてな」
「そのうえで」
「うむ、貴妃が歌い舞いたいと言えば」
「そうしてもらう」
「そうしよう」
 笑顔で言うのだった、そして皇帝は実際に歌や舞も貴妃の前で歌い舞わせた。すると貴妃もその歌を歌い舞を舞った。それがまた玄宗を喜ばせた。
 庭で共に酔い醒ましを行い美味い実を共に食べた、そうした日々を繰り返していた。
 そんな中で言い合うことも稀にあったが貴妃が髪を一房玄宗に贈ると玄宗は許した。そうした日々を送っていた。 
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