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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第十三話  多才能力者(マルチスキル)

 姫羅の身分証を受け取ってアパートに戻ってきた俺は、演算能力の確認の為にパラメーター変更能力を発動させてみた。

「あら?」

 昨日のアップデートで色々と変更されていたのは確認していたのだが、項目名ばかりに目が行っていたので気付かなかったのだろうか、『学園都市製超能力』の項目が数値ではなくなっていた。いや、数と言えば数ではある。但し、今までのように1844兆なんていう数値が入力できるような項目ではなくなっている。

 現在の『学園都市製超能力』と言う項目には『3つ』という言葉が入っていて、またもやパソコンで例えると、ドロップダウンで選択できるような感じと言えば分かるだろうか、選択肢の中には『1つ』から『7つ』までが並んでいた。

 その下には『能力名1』という項目があり、値が『念動力(サイコキネシス)』となっている。さらにその下、『能力強度』には以前俺が『学園都市製超能力』に設定していた5000万という値が入っている。その下の『演算能力』は100兆になっていた。

「はぁっ!?」

 さらにその下を見たところで、俺は変な声を上げてしまった。次の項目名は『能力名2』で、値には『量子変速(シンクロトロン)』が入っていた。そして、その下には5000万が入った『能力強度』と、100兆が入った『演算能力』があったのである。

 何となく次も分かってしまったが、見てみると『能力名3』には『発火能力(パイロキネシス)』が入っており、その下の『能力強度』と『演算能力』に関しては上に同じだ。

 どうやら木山先生の脳にアクセスしたことで、俺も木山先生と同じように多才能力者(マルチスキル)になってしまったようで、恐らく7つまでの能力なら同時に使いこなすことが出来るということになるのだろう。

 取り敢えず、『能力名3』の値を変更してみようとドロップダウンリストを見てみると、『発電能力(エレクトロマスター)』や『気圧制御(エアロプロセス)』、さらに『反応防御(リアクティブディフェンス)』や『走力強化(スピードランニング)』なんてものまであった。恐らくは現在のレベルアッパー使用者の能力がそのまま入っているのだろうが、能力名からどんな能力なのかが分からない物も結構ある。しかし、スピードランニングって……なんだか聞いたことが有るような無いような……。

 能力をエレクトロマスターに変更して、能力を使ってみるとパチッと音がして頭の前で火花が散った。超電磁砲のアニメで御坂さんがよくやっていたやつである。制御しようと思えばかなりの部分まで制御できるのは、演算能力に入れてある数値のおかげだろう。

 よく考えてみれば、学園都市製超能力を4つ以上に設定すればパイロキネシスを外さなくても良かったのだ。というわけで、3つ目をパイロキネシスに戻して4つ目にエレクトロマスターを設定し、5つ目以降をどうしようかと悩むのであった。

 その後も色々と調べてみた結果、『能力強度』や『演算能力』といった数値に関しては、上に設定した数値よりも大きく設定することが出来ないようだ。つまり、1つ目の能力に設定した数値よりも大きい数を2つ目の能力に設定することは出来ないし、当然3つ目以降も同じようになっている。しかし、同じ数値には設定できるので……というか、デフォルトが上と同じ数値なので、基本的には1つ目から7つ目まで同じ数値にしてある。

 それにしても、多重能力(デュアルスキル)というか多才能力(マルチスキル)を身に着けてしまうと気になるのが、統括理事会の変な奴とか頭のおかしい研究者などに狙われないかということである。学園都市では同時に複数の能力を使う多重能力(デュアルスキル)というのが有り得ないとされており、例えそれが多才能力(マルチスキル)であったとしても、二つ以上の能力を使うことが出来る能力者を放っておくとは思えない。

 まぁ、目を付けられたくなければ新しい学園都市製超能力を1つに設定しておけばいいだけの話ではあるのだが、折角使えるのだから使いたいという気持ちもかなり強い。しかし、使ってしまえば間違いなく気付かれてしまうのだろうから、それなら先に開示してしまうほうがいいのだろうかとも思うのだが、そうしたところで統括理事会や研究者を抑えられるかどうかは甚だ疑問である。

 もし狙われたとしても少々の相手なら迎撃できる自身があるのだが、それによって逆に目を付けられるのも避けたいところだ。ということで、やはりアレイスターには開示しておいたほうが良いだろう。

 俺は暗部用のケータイで土御門さんに電話をかける。

『どうしたんだにゃー?』

「アレイスターさんに会いたいんですけど」

 いきなりだが単刀直入に言ってみた。

『なっ!!』

『ほう、どうかしたのかね?』

 土御門さんが驚きの声を上げると同時に、やはりと言うか何と言うかアレイスターが割り込んでくる。

「ちょっと大変なことがありまして、出来れば直接会いたいんですけど、いいですか?」

『ああ、構わんよ』

「ありがとうございます」

 あっさり了承してくれたアレイスターに礼を言う。多分、何かしら気付いてるんだろうなぁとは思うが……。

『それでは土御門、頼んだぞ』

『分かってる……、ちっ』

 土御門さんはやっぱり舌打ちしてるし。

「毎回毎回すみません、土御門さんよろしくお願いします」

『仕方ないにゃー、今から迎えに行くぜい』

「はい」

 電話を終えると俺はアパートの外で土御門さんを待った。男の姿でも別に良かったのだが、わざわざ着替えるのも面倒だったので、身分証を貰った時のまま姫羅の姿である。そして、それほど待つことも無く車が目の前に止まる。

「またせたかにゃー?」

「んー、そんなには待ってないかな」

 いつもの車でやってきた土御門さんにそう返すと車に乗り込んだ。車はそのまま窓のないビルに向かって走り出す。

「あー、そう言えば、お前さんの柵川中学入学が決まったぜい」

「あっ、ありがとうございます」

「おー、おめでとう」

「ありがとうございます」

 土御門さんから報告を受けお礼を言うと、運転手の人からも祝福の言葉を貰った。そして、会話に一区切りが付いたところで土御門さんが続ける。

「それで……だ。問題は神代姫羅という人物のほうなんだが……」

「問題と言うと?」

「神代騎龍と神代姫羅は同時に学校に通えないということだにゃー」

「あー、まぁそうですね」

 当然、神代騎龍と神代姫羅は両方とも俺なので、同時に学校に通うことなど出来ないのだ。色んな世界で色んな力を身に付け、ある世界では神様からチート能力まで貰ってはいるが、今現在の時点で分身の術みたいなことは出来ない。

「そこでだにゃー。学園都市での実験によって、男にも女にもなれる身体(からだ)になってしまった、っていう設定にしたらどうかと思ったんだがどうだ?」

 土御門さんから提案されたのは、そんなので良いのかと思うような設定だった。しかし、俺にしてみれば願ったり叶ったりの提案なので、これに乗らないわけにはいかないだろう。

「確かにそのほうが良いかもしれませんねー。双子の設定とかにしておくと、二人を同時に見たことが無いからって怪しまれたりしそうだし……。でも、そんな設定できるんですか?」

「ああ、出来なくはないぜい。身分証もそのままでいけるはずだ」

「そうなんですか。だったらそれでお願いします」

「分かったにゃー、それなら神代姫羅も柵川ということになるが、当然良いよな?」

「はい」

 これで騎龍と姫羅の使い分けがある程度楽になるかもしれない。とか何とか考えている間に車は窓のないビルへ到着していた。

「世話になるにゃー」

「いいわよ。別に」

 なんか、土御門さんと結標さんのこのやり取りは前にも聞いたことがあるような気がするけど……。

「よろしくお願いします」

「ええ」

 俺が挨拶をして軽く頭を下げると、結標さんは普通に対応してくれた。今、俺の姿は姫羅なので、もしかしたら男女で対応が違うのかもしれない、なんて考えている間にビルの中に転移していた。

「さて、用件は何だね?」

 アレイスターの前まで行くと向こうから話しかけられた。

「ちょっと大変なことがありまして……。まぁ、口で説明するより見てもらったほうが早いですね」

 そう言うと俺は、頭の前でパチパチと電気を放電させながら、右の掌に炎をまとわせ、左の掌に空気を集めて風を起こした。

「ほう」

「なっ!?」

 何と言うか、前も似たような反応を見た気がするけど、あまり驚いた様子ではないアレイスターと、かなり驚いた様子の土御門さんが対照的である。

「とまぁ、こんな感じで複数の能力を使えるようになっちゃったんですけど、こういうのって確か有り得ない筈なんですよね? 違いましたっけ?」

「君の場合、もはや何をやっても不思議ではないと思うのは私だけかね?」

「そうだにゃー。驚きはしたが、こればかりは俺も同感だにゃー」

 俺が尋ねると、アレイスターの答えに土御門さんも賛同していた。

「これって、このまんま外で使っても大丈夫なの?」

「確かに他のやつに知れると大変なことにはなるにゃー」

「それでは、学園都市の頂点に君臨してみるかね?」

 俺の疑問に土御門さんは当然の反応だったのだが、アレイスターさんはさらりととんでもない発言をしてきた。

「いやいやいや、さすがにそれはどうかと……」

「ふっ、まあいいだろう。それに関しても私が何とかしておくとしよう」

「ありがとうございます」

 結局何とかしてくれるみたいだけど、あれってアレイスター流の冗談だったりするのだろうか……。

「用件はそれだけかね?」

「あ、はい、そうです。色々手配してもらってありがとうございます」

「その分だけ君にはこれから働いてもらうつもりだから、覚悟しておいてくれたまえ」

「了解です」

 俺が答えた瞬間には結標さんが現れていて、次の瞬間ビルの外に転送されていた。

「また頼むぜい」

「ありがとねー」

「ええ」

 結標さんにお礼を言うと車へと戻る。そう言えば、この時点ではまだ結標さんはグループの一員ではないのだ。というか、まだ一方通行やエツァリもグループの一員になってはいないので、現時点でグループの主要メンバーは土御門さんと俺だけということになる。

「ねー、土御門さん。グループって基本的にどんな仕事をするものなの?」

 他の暗部組織はだいたいメインに4人居て、その下に下部組織があるみたいな感じだったと思うけど、グループの場合どうなんだろうと疑問に思ったので聞いてみた。

「そうだにゃー、俺だけだった時にはほとんどがねーちんとかの関係方面ばっかりで、たまにそういう関係者が学園都市に入り込んだ時ぐらいしか仕事が無かったんだけどにゃー」

「やっぱりそうだったんですね」

 だいたいが俺の予想通りといったところか。そういえば土御門さんが『魔術』という言葉を使わないのは運転手が居るからだろう。ということは少なくとも魔術に関して、土御門さん以外には話さないほうがいいということだ。

「あとは外にあるそういう方面の機関との調整なんかが俺の役目だぜい」

「へー、そうなんですねー。それならウチはどんな仕事を?」

 すでに研究所から子供たちを連れ出すという仕事はしているが、今後どのような仕事が回ってくるのかさっぱり分からないので聞いてみた。ちなみに姫羅の状態では俺の一人称が「ウチ」になるのだが、イントネーションは関西風な“ウ”にアクセントが来るものではなく、中国地方の広島や山口方面の“チ”にアクセントが来る感じの言い方である。

「まー、お前さんの場合は他の暗部組織とそれほど違わない仕事が回されるんじゃないかにゃー?」

 俺は上条さんのように無能力者と認定されているわけではないので、やはり魔術方面に関わらせることが出来ないのだろう。というか、少なくとも土御門さんは関わらせたくないと思っているに違いない。

「それじゃー、この前の仕事みたいなのが多いってことかなー?」

「そうだにゃー、基本的にはそうなると思うぜい」

 どっちにしても魔術関係で大きく動くのは夏休み初日からだから、土御門さんがどうにもならなくなるような事態に陥らない限りは、夏休みまでに俺が魔術方面に関わることはないのだろう。

 アパートの近くまで戻ってきたところで降ろしてもらい、俺はそのままファミレスへと足を向けた。時間的には5時までもうちょっとといったところだろうか、夕食時で混雑する前までには食事を済ませておこうと思ったのである。

 ファミレスに入った瞬間、俺に向けられた気配を感じた……というか、確実に知っている気配が4つそこにあった。とはいえ、俺が騎龍の姿ではないので不審に思っているようだ。しかし、俺はそんなことを気にする様子も見せずに店員に案内された席に着く……が、見事にそこは麦野さんの真後ろだった。

「テメェ、神代騎龍だな?」

 後ろから小声ながら迫力のある麦野さんの声が聞こえてきた。恐らくは滝壺さんの能力で、今の俺と神代騎龍とが同一人物だと気付いているのだろう。

「違うわよ。今はね」

 取り敢えずは振り向いてから否定してみる。まぁ、「今はね」の部分で暗に認めているわけだが……。

「ぷっ、そんな趣味を持った野郎だったなんてにゃーん」

 こちらに振り向くことも無く、何となく小馬鹿にしたような感じで麦野さんがしゃべる。まぁ、俺を怒らせようとしているのだろうが、今は実際に女になっているのだから『そんな趣味』でも何でもないのである。

「あー、そっか。ウチが女装してるように見えるわけね」

「なっ……、まさか、本当は女だとっ!?」

 俺が言い返すと麦野さんは驚いたように振り返った。こちらも後ろを向いているので、麦野さんは俺の顔をまじまじと見つめていた。

「間違いなく女よ。今はね」

 俺はそう言ってウインクしてみた。

「な……な……なっ……」

 麦野さんは驚いて言葉が出てこないようだけど、俺の「今はね」の言葉に気付かなかったのだろうか。もしくは気付いた上でその意味のほうに驚いたのだろうか。

「ところで、そっちの人は大丈夫? なんか変な感じだけど」

 麦野さんの向かい側に座っている滝壺さんの様子がおかしかったので、俺は取り敢えず滝壺さんの隣に座っている絹旗さんに聞いてみた。

「だいたいいつも超こんな感じですよ」

「あれ、でも、いつもとは何か違うって訳よ」

 絹旗さんが答えた後にフレンダが滝壺さんの異常に気付いたようだ。隣で見る分には気付きにくいのかもしれないが、向かい側からだと顔色が悪いのが良く分かる。

「AIM拡散力場が……おかしい」

 もしかしたら、俺の多才能力(マルチスキル)で異常になったAIM拡散力場の影響を、滝壺さんが受けてしまったのではないだろうか。

「大丈夫? 滝壺」

 麦野さんが声を掛ける。三人とも滝壺さんの様子を心配しているようだ。仕事の時には仲間に対してでさえ非情な一面を見せる麦野さんも、こういう時にはやさしいんだよね。

「大丈夫……でもないかもしれない。この前、この人の仕事を邪魔するために行った研究所で、ここに居る皆のAIM拡散力場がおかしくなった。でも、やっぱりこの人が一番おかしい」

「え? あれ、聞いたの!?」

 今、俺の仕事を邪魔するために俺の行った研究所に行ったと言ったのか……、だとしたらアイテムの面々もレベルアッパーを聞いたということになる。

「あれって、あの超変な音のことですか?」

「ええ、多分それで合ってるけど、聞いちゃってるのね」

 俺の「聞いたの?」っていう言葉に「超変な音」と返せるぐらいだから本当に聞いてしまっているのだろう。

「あの変な音に超何かあるっていうんですか?」

「ここで言うにはちょっと問題のあるモノがあるわね」

 更に聞いてくる絹旗さんに、俺は声を落として答えたのである。
 
 

 
後書き
チート強化第二弾です。
今回は書いていくうちに内容が無理やり過ぎる感じになってしまって、無理やり感が薄くなるように色々と修正したり付け足したりを繰り返してしまいました。
能力名に関しては独自創作の物も入れています。
能力名考えるのって結構難しい……。
一体いつになったら原作に入れるのやら^^;

2012/12/25 あとがきで「オリジナル」としていた部分を「独自創作」に変更しました。
「オリジナル」だと原作という意味にも取れるんですよねー。
2013/03/19 シンクロトロンを量子加速から量子変速へ変更。 
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