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レーヴァティン

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第百二十一話 即位その十一

「滅んだな」
「そういう話も知ってるしな」
「建築はやな」
「城壁とか要塞とか港は築くさ」
 そうしたものはというのだ。
「道も水道もな、けれどな」
「宮殿とかはやな」
「いいさ」
 そうしたものはというのだ。
「別に」
「そうやねんな」
「ああ、だからこれからもな」
「贅沢はやな」
「しないさ、このままだよ」
「ほなな」
「やっていくな」
 皇帝にはなった、だがそれに相応しいというような贅沢はしないでというのだ。そしてこの夜はというと。
 久志は夕食の後赤ワインをサラミとクラッカー、チーズで飲んだ。そうしつつこんなことを言った。
「これでいいだろ」
「贅沢は、か」
「ああ、充分だろ」
 チーズを食べながら言う、カマンベールチーズだ。
「これでな」
「そうか、しかしチーズもな」
「カマンベールな」
「普通に市場で売っているな」
「起きた世界でも好きだしな」
 カマンベールチーズもというのだ。
「だからな」
「こちらでも食うか」
「こっちじゃウィッシュチーズやブルーチーズもな」
 こうしたチーズもというのだ。
「こっちの世界じゃ食ってるな」
「そうなんだな」
「ああ、それでな」
「お前にとっては今の状況がか」
「充分贅沢だよ」
 正に飲みながら話した。
「本当にな」
「贅沢はそれぞれというが」
「つまり楽しめたらだろ」
「質素でも贅沢は出来るか」
「そうだろ、美味い酒を飲んでな」
 言いつつ赤ワインを飲む、発泡性の甘いものだ。
「そうしてな」
「肴も楽しむか」
「チーズにしてもな、クラッカーやサラミもな」
 こうしたものもというのだ。
「いいしな」
「そうか、じゃあ俺は俺でな」
「楽しむんだな」
「俺はビールにする」
 正がこれから飲む酒はこちらだというのだ。
「ソーセージとな」
「いいな、その組み合わせも」
「そしてビールは黒だ」
「余計にいいな、黒ビールか」
「そうだ、今夜はそれを楽しむ」
「そうか、お前も贅沢をするんだな」
「今からな、じゃあな」
「飲むか」
「そうしてくる」
 こう言ってだ、正は自分の酒と肴を出して飲みはじめた、そうしつつ久志に対して少しだけ微笑んで言った。
「これが俺の贅沢だ」
「お前も楽しんでいるからだな」
「そうだ、贅沢だ」
 木の一リットル用のジョッキで黒ビールを飲みつつ言う、そして久志もまたワインを飲み贅沢を楽しむのだった。


第百二十一話   完


                   2019・7・8 
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