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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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Duel:02 Innocent StrikerS

――side響――

 流と震離の説明を受けて、こっちに来たばかりの俺たちは呆気にとられた。それ程までに現実味が無い話だから。

 だからこそ。

「……あー……マジで?」

「大マジ」

「えぇ、本当ですよ」

 二人して苦笑してるのが余計に事実なんだと認識してしまった。

 二人曰く、今……俺たちのいるこの世界とは、俺達の居た世界から見れば枠外の世界。いわゆる平行世界と言われる世界……らしい。
 
 曰く、俺達は……この世界に転移してきた7人は同じ世界出身だというが、なぜこの面子なのかは説明がつかないらしいし、解らないと。
 そして、何より驚いたのが眼の前のこの二人……震離と流についての事。

 二人の体感時間は既に数年経過し、流と震離と、もう一人? は、この世界で既に1年経過しているらしいのと。

 こちら側には魔法技術ない。もっと言えば時空管理局も無いし、ミッドチルダを探してもどうしても見つからないらしく。文字通りこの場にいる者だけが魔法を使えるということ。一応それに類似した言葉はあれど……それはゲームのお話らしく、なんとなくでも意味が通じるから気にしなくていいと伝えられた。

 そして何よりも……。

 俺と奏、そして、はなの三名は自由に動いてもいいが、他の4名はどうしようかと言われた。

 なぜなら、この4名。フェイトや、はやてさん。ギンガにスバルは……この世界に存在していると言われたから。

 しかもその家族も皆居るし、ナンバーズの子達もそれぞれ普通の人として生活しているんだ、と。

 最初その言葉の意味が分からなくて俺と奏は首を傾げて……直ぐに思い出し、気づいた。あの4人からすれば居ない人が、ここでは普通に生存し、生活しているのだと。
 特にはやてさんは心当たりがあったらしく。自分達の飛ばされたあの場所で聞こえた、あの女性の声は? と、声を震わせて二人に質問をし、そして伝えられた。

 貴女が言う、初代リインフォース・アインスがいる。
 こちらでは、アインスさんと呼ばれていると。勿論、また留学先へ行ってしまったけどツヴァイ……俺達の言う所のリイン曹長も存在しているらしい。

 次に、ギンガやスバルだが。こちらでは二人のお母さんが生存しており、なんと6人姉妹との事。しかもギンガが長女で、スバルが四女らしい。こちらには、ナンバーズ……だったというべきか微妙だが、チンクや、ディエチ、ノーヴェ、ウェンディが居るとの事。
 勿論他のナンバーズも居るが、嘗てヌルと呼ばれてたレイは、オットー、ディードはツヴァイと同じく留学先に居ると。
 しかも驚いたのが、この世界にもスカリエッティと、残りのナンバーズの子達も居るが……基本無害らしい。
 もの凄く無害らしい。
 だから、手を上げてはいけないと、何重にも釘を刺してきた。

 というのも、嘗てとある事情でスカリエッティ、いや、プロフェッサーは半殺しになりかけたらしい為に、この処置をしているとのこと。
 らしい、というのは、流と震離が遠回しに言うもんだから推測だけど。

 で、最後にフェイト。まずエリオやキャロもちゃんと居るが、留学先に居ると真っ先に言われたが、元々の世界とは違って、お互いに認識はある。でも遠い親戚くらいの感覚との事。コレにはちょっとだけ寂しそうにしていた。
 次に、この世界のフェイトは、ハラオウンの姓を名乗っていないのと、後は……。

 彼女には姉と母親、そして、家政婦さんが居る、と。伝えられた。

 それを聞いた時……いや、四人共、居なくなった人が居ると伝えられた時。その言葉にただ驚いて、そして、自然と涙を流していた。 

 だが、その上で。

 この世界の四人は……未だに子供らしい、と。伝えられた時、呆気にとられて。

「……あー……マジで?」

「大マジ」

「えぇ。本当です」

 苦笑してる二人を見て、乾いた笑いしか出なかったなぁと。

 だから、二人共悩んでいたが……面倒になったのか、震離が前に出て。

「で、こんな世界で缶詰とかさせたくないし居住区的な問題も発生するからさ。だからあれだよん。上のフロアに皆居るだろうから、会わせようかと。
 勿論口裏を合わせて、ねー。つかもう考えるのが面倒。
 だけど、その前に。皆から、一旦デバイスを借りたいのと、このルールデータに目を通してほしい」

 いつの間にか流が皆の側に来て、一人ひとりデバイスを預かって回っていく。唯一はなだけは一緒に連れてかれてしまった。融合騎だもんね、仕方ない。

 で、説明を聞いて驚いたのと何よりもちょっと羨ましいなぁと。


――side流――

 隣にはなを……もとい、花霞を座らせたまま、データを入力していく……けど、そのモニターには。

『コレが……ブレイブデュエル……』

「うん、この世界のゲームの一つ。私達で言うシミュレーターと殆ど変わらない新しいゲーム。ゴメンね。本当はこちらのサーバーにデバイスの皆を登録するだけのつもりだったんだけど。花霞だけは……」

『いいえ、気にしないでください流様。コレも私の想い出になりますから。貴重な体験ですよ』

 花霞のデータを登録しながら、各デバイスをプレイヤーデータを保存するためのデータカートリッジとして登録して、人数分のブレイブホルダーを……と言っても中身は無いけれど。
 本来なら必要なものだけど、この世界の皆さんには、ヴィヴィオ()が来た時と同じ様に、表向きは未来からの来訪者と伝える予定。でも実際は平行世界だし、使ってる技術ももう(・・)関係ないものだから……調整が難しいし。

 花霞にデータを読み込ませている間に、各デバイスの皆さんからそれぞれの主のデータを収集、そして、その姿が印刷されたダミーカードを生成してホルダーへと入れていく。残りは響さんと花霞だけなんだけど……。

 響さんをどうするか……あの方だけはこの世界のあり方が異なりすぎるんですよね……。イレギュラーとイレギュラー、しかも寄りにもよって男の姿ではない辺りに作為的な何かを感じるし。おそらく女性化しているのは、男の方の怪我(・・・・・・)の治療のためだろうし、仕方ないと思うけれど……。
 あとは花霞。もう数年前の出来事とは言え……花霞という名称だったかな? なにか違和感があるし、はなという愛称は覚えていたけれど。どうだったかな?
 
 ふと、カードローダーの窪んだ部分に光が集まりカード作成が始まったのを確認して。ホッと一安心。やがて光が収まって、コトンと受け取り口へと落ちて、それを手にとって確認すると。

「……げ」

 思わず苦い声。というのも、普段ならカードに表示されるのは一人のみ。しかもデバイスを構えたカードが現れるはずが……響さんのカードには、二人の黒髪の男女が背中合わせで刀を手に持ってるそれは……。

『それ、フェイト様にあげたら喜びそうですね。男女の主が写るなんて』

「う、うーん……そうなのかな。だけど、コレは……」

 それを違う機械で読み込むと……。

「やはりか。どっちの姿でも使える」

 今度こそ胸を撫で下ろす。後ははなのデータを取り込むだけだけど、それと並行してスキルカードの設定をして……。

 うん、今更ながら、主催者権限とかいろんな物をフル活用しているなぁって。未来でもしてるという設定の元、ある程度のカードを用意してるけど、中々ずるいなぁって。

『あの、流様? 私は主とユニゾンは可能なのですか?』

「んー、本来の意味のユニゾンは可能だよ。だけど、ゲームの中ではカードの組み合わせでなら出来るけど、花霞の思うユニゾンでは無いかな。だけど、主である響さんとユニゾンリライズ出来るし、解析した所フェイトさんともユニゾンリライズ出来るのはすごいね」

『そうなのですか!?』

 ニコニコと喜ぶ花霞を見ながら、こちらでも違うんだなと。他の組み合わせも確認してるけれど……奏さんとの組み合わせは不発らしいし。ちなみに、他の組み合わせでは、響さんとフェイトさんの組み合わせも可能なのは通じ合ってるからなのかなと。

 ちらり、と向こうに居る皆さんの方を見ると、震離さんが説明してるのが見えた。おそらく口裏合わせと情報交換をしているのかなって。

 画面に視線を戻すと、花霞がクスクスと笑ってるのが見えて首を傾げる。

『なんというか、流様が震離様に似てきてるように見えて、笑ってしまってごめんなさい』

「フフ、気にしてないよ。にてるって言われるのは仕方ない。だって……六課に居る時の何倍も一緒に居るからね」

『笑顔が素敵です。キャッ!』

「……私は花霞の性格が明るくなったことに驚いてるけどね」

 お互いに笑い合ってる間に、花霞のデータも登録できてこちらの用意は出来た。

『改めて。はな、とお呼び下さい流様』

「はい。よろしくね、はな?」

『はい! では、データ登録が出来たということで、私に戻ります』

 私の隣に座ってる、花霞の……はなの体が動いたのが分かる。無事に戻ってきた事に安心。
 でもはなを見てると、どちらかと言うと姉妹に見えるんですよね……。言ったら怒りかねないけど、きっと震離さんなら言ってくれるでしょう。

「よし、無事に戻りました。デバイスの皆様は私が」

「うん。私はホルダーを皆さんに配るからお願いね」

 大事そうにデバイスの皆を抱えるはなを横目に、ブレイブホルダーを持って皆さんの方を見ると……。

「「……わぁ」」

 なんか、遠目で分かるほどはやてさんとスバルさんが、ショック受けてるというか、なんというか……なんとも言えない顔をしてるのは何でかなぁと。

 反対にギンガさんが感激してるように見えるし。フェイトさんは嬉しそうにしてるし……。

 さ、一時間位練習すれば、あの子達と勝負できるくらいになるかな?

「あれ? へいとなんだか大っきくなった?」

「え、あぁ。ある意味未来の……え?」

 ギギギと首を動かして、その声の主を見つけて……。

「へ、あの。流様……この方、え?」

「未来? あ、そういう! ねぇねぇ、にゃがれ! あれと勝負したい!」

 元気いっぱいに飛び跳ねる青い女の子に見つかったことに頭が痛くなる。

「ちょっと待ってもらっていいレヴィ? 勝負なら、レイド用に調整した私が相手するから」

「えー。僕、未来のへいとと戦いたーい!」

「うーん。どうしても待てない?」

「待てなーい……でも、一番最初に勝負するなら待つ!」

「うん、させるから……チョット待ってね」

 心臓がばくばくと動いてるのが分かる。さっきの画面見られて無いかなと心配するけど、おそらく見られてない……筈。

 幸い、あちらも説明を聞くことに集中してるのが幸いだったなぁ。
 
 しかし、妙だな。なんでフェイトさんをメインに告げているんだろう? それじゃあまるで、響さんはフェイトさんと一緒に……いや、そんな筈は。

――side震離――

 画面の向こうで、ブレイブデュエルを実際にプレイしてるはやてさんや、スバルにギンガ、フェイトさんに奏が、空を舞ったり攻撃の撃ち合いをしてる様を見て、その吸収速度、戦術の構築がされていくのをみて、感激のため息が漏れてしまう。

 やはり現役って凄いんだなぁ。しんり。

 って、違うわ。そんな事してる場合じゃないわ。さっきは死ぬほど焦った。何をどうしてここに来たのか分からないけど、レヴィがここにいたことにすっごく驚いたわぁ。流れもぎこちなくなってたし。
 まぁ、一時的な口止めは出来たみたいだから問題は無いとして、だ。

 問題がなぁ……こちら側の人が何処まで信じて受け入れてくれるかなんだよねぇ。幸い、私達の事情を知ってる両博士はすんなり了承してくれたし、プロフェッサー(スカさん)に関しては、私の悪巧みの結果と言えばいいさ。と言ってくれたし。今回はそれに甘える事に。

 幸い、皆の陸士隊の制服と、フェイトさんの執務官服は、T&Hの皆さんがイベント時に着る服だからって誤魔化しも効く。何より、転移の際に記憶の混同があってーというの誤魔化し方も出来るが……。

 一部にはそれでもバレそうだからなぁ。

(震離さん。私はレヴィを一端上に連れて行って来ますね)

(ん、了解。それと―――)

 ここまでのやり取りと、事情を知ってる博士達の動き、そして、私が皆に伝え教えた内容を流に伝えて。

(了解しました。それを踏まえて私も動きますねと、各店舗……いや、T&Hの皆様にはこちらからお伝えしますか?)

(んー。いや、それは待った。リンディさんは納得するだろうけど、プレシアさんが突っ込んでくるからダメ)

(フフ、了解しました。それでは)

 流との念話を切って、再び皆がプレイしている様子を観察。ちなみに響はと言うと……。

『あー、カードの組み合わせで変わるんだ』

『はい。私と主のカードを組み合わせれば従来のユニゾンに。流様曰く、フェイト様のカードと組み合わせることも出来るそうですよ?』

『へぇ。じゃああれかな? はなとフェイトのカードだと、あのユニゾンになるのかな? その逆もあれば……楽しいな』

 早速花霞……いや、はなとユニゾンの話をしてるし。流も敢えて余分にカードを与えたみたいだし。

 ……れっきとしたチートだけど、コレあれなんだよね。未来から来たって言い張るための話だし。

 あ、やべ。流の姿について何も言ってなかったけど……まぁ、いいか。
 
 ……それにしても。皆無事で良かったって口々に言ってたけど。私、ちょっと遠くに行ってくるって言ったよ……ね? 
 それと、花霞って名前だったっけ?


――side流――

「えー、レイド戦のテストプレイ!?」

「の前の、その設定を用いたフリープレイね」

 わーいと、歓声が上がってるけれど。若干申し訳ない。サプライズと言う名の嘘なんですよね。今回追加されるレイド戦というのは、端的にレイドボスに設定された人……又はNPCと正面切って戦う新たな対戦方法。
 かねてより、チーム合同でなにか出来たら良いという声を聞いての開発と調整をしていたんだけど。ちょうどよいタイミング。

 しかし。この場に居る面子を見ると、改めて凄いと思う。

 まずはチームT&Hから、なのはに、フェイト。アリサにすずか、そしてアリシアさん(・・)の5人。そして、ダークマテリアルズからは4人。本来ならあと二人の姉妹が居るのだけど、高校生というのも合ってまだ学業に勤しんでるようです。
 ただ……。

「王様~、僕、ちょっとだけフラゲしてきたよー!」

「レヴィ……いないと思えば……すまない流。なにか余計なことはされなかったか?」

「フフ、気にしないで下さい王様。ただ口止めだけはさせてもらったし、その報酬も用意したけどそれだけですよ」

 途端に眉間にシワを寄せる王様……もといディアーチェを見ながら私も苦笑を浮かべる。

「レヴィ。それで何があったんですか?」

 冷静な様子で話しかけるなのはさんにそっくりな女の子。シュテルが自然な様子で話しかけるけれど、新しい情報が気になって仕方ない様にも見える。

「えっとねー……ぁ」

 ニッコリとレヴィに笑みを浮かべて、視線をぶつける。勿論その内容は一つ。

 ―――まだダメですよ?

 ―――いえす、さー!

「……まだ内緒!!」

「……残念です」

 自分で口に手を当てて絶対に言わないという意思をシュテルに伝えてるのが、ちょっと面白い。

 そして、最後の面子はチーム八神堂から、はやてさんと、ヴィータ。そして、面子が足りないからと、スバルとティア、そして付添でやって来たギンガの5人。

「初のレイドってことやから。楽しみやわぁ。で流ー? せっかくこんだけ居るんやからちょっと位情報公開してもええんちゃう?」

「そうだよー。ジェイルおじさんも何も教えてくれないし、今日までずっと楽しみにしてたのにー!」

 ニヤニヤと笑うはやてに、口を尖らせてるスバルの言葉で若干気まずくなる。

 確かに言われてみれば、実装するって言ってから、音沙汰も何もなくて、今日やるよって突然言っただけですしね……。
 レヴィも持ってる情報以外が欲しいみたいだし、まぁちょっとくらいなら。

「レイド、と言っても。まだまだ調整の段階だけど、それでも皆さん強いですよ。今回はテストなので勝負だけですが。きっと、良い経験になるかなぁって」

「はい。ちなみに強いというのはどの程度で?」

 効果音がつきそうな位の素早さで手をあげるシュテルにちょっと驚きながらも。少し考えて……。下手に言うと感づかれそうだから、響さんを思い浮かべながら……。

「全員は言えないけど、一人はユニゾンリライズを駆使して戦うタイプ。そして、刀の二刀流で、加速減速が上手い人かな」

「それは楽しみです」

 と、彼女の目に火が灯った瞬間、他のスピード自慢2人もその言葉に反応したのを私はしっかりと見て。ちょっと嬉しくなる。

 ……そう言えばこの世界のフェイトも、響さんを気にするのかなとちょっと気になってみたり……いやないか、大丈夫だろう。

『やっほ流』

 ふと、皆が待つ第二シミュレーター室のモニターに震離さんが現れた。ということは、ある程度準備が出来たのかな?

『とりあえず、準備できたから……誰か一人を』

「その前にどなたが?」

『んー、ひび……侍の女の子』

 思わず2人揃って苦笑い。さて、ということはシュテルが出ようとするのか、それともチームアップさせるか……。

「にゃがれー、さっきのあれ無しでいいから、僕行きたい!」

「な、レヴィ?!」

 悲鳴のようなシュテルの声を聞きつつ、レヴィが元気よく手をあげてるのを見て。さっきの約束を思い出しながら……。

「いいの?」

「うん! だって、GMモードみたいなものだし。何時でも出来るんだったら、僕は速さで勝負したい!」

「……あー、ならお願いしようかな」

 コレはタイミングが悪かったなと諦めよう。まさか響さんの話を言ったら、このタイミングで出てくるとは思わなかったし。
 それにちょっと気になるところでは有る。ゲームで戦い磨かれた彼女達と、実践を経て鍛えられたあの人達。それが交わったらどうなるか気になる所でも有るしね。

「よし、なら一番手はレヴィで。震離さん。こちらはいいですよ」

『了解、レヴィ。何時も通りセットアップをお願いね』

「了解!」

 嬉しそうに、シミュレーターの中へと入っていくのを見送りながら。

「レヴィ! 負けは許さぬぞ!」

「負けたら許しません……」

「ファイトです!」

 王様、シュテル、ユーリがそれぞれ声を掛けていって、他のチームの面々は興味深そうに対戦が始まるのを待ってる。

「それじゃあ、頑張っていってらっしゃい」

「うん! よーし」

 ふと、震離さんの方でも動きがあるのが見えるのと、向こうで響さんが嫌がってる声が微かに聞こえる。やっぱり容姿が違うのとそういう格好になるかもしれないから恥ずかしいのかな? だけど、覚悟を決めた様で……。

『「リライズ・アップ!!』」

 二人の声が重なったのが聞こえた。
 


――side響――

「リライズ・アップ!!」

 この場合、世界が変わったというのが正しいのかな? 気が付けば青空の中を飛んで、足元には海。時折流れてくる雲は眩しくて。

 ―――初めて空を飛んだ日を思い出した。

 ふと、足元が……というか、全体的にスースーするなぁと思って見下ろしたら。両腰に暁鐘と晩鐘が携えているけれど、それよりも黒色のブーツにカーゴパンツ、黒いフード付きのノースリーブ……というか、和服要素何処にも無いのはなんで?

 ……うん。

『響可愛いー』

「……う、ぅるせぇ」

 誰が言ったかわからないほど、頭の中が固まる。というか羞恥のあまり顔が熱い。

「よぉーし、頑張るぞー!!」

 ふと、声が聞こえたほうを見て、再度固まる。青い髪の少女がこちらに向って一直線で突っ込んでくるのが見える。だからこそ余計に固まる。
 何だろうあのフェイトの色違い、と。
 だが、顔立ちはフェイトを幼くしたような子だけど、それ以上に……。

「はっや!?」

「にっ!」

 思ってた以上に速くて驚く。フェイト並……とは言わんけど、体が縮んでる分、体感的に速く感じるのか。
 ……だが。

「対応、圏内ッ!」

 瞬間、バルディッシュさんに似たデバイスと刀がぶつかり合い交錯。互いのデバイスが弾かれる。その間に一旦距離を取って、二刀を抜き構えて―――

「もらったぁ! 光翼斬!」

 距離を取ったはずが、いつの間にか懐まで踏み込まれ、青いハーケンフォームで振り上げられる。
 だが、僅かに背後に下がって、間一髪でそれを回避。

 ここでちょっと震離を恨みたくなる。何が楽しいから戦ってみなよ、だ。結構ギリギリなんですけど!? 
 元々イレギュラーなスタイルとは言え、こうも簡単に詰められるのは想定外なのと。

 全体的にスースーして……めっちゃ落ち着かなくて。

 なんというか、なんというか。

 もう、どうにでもなれと。

 踏み込んで一打を叩き込もうと刀を振り下ろすと同時に、青いフェイトは一瞬で俺の背後を取る。それに合わせて踏み込んだ勢いのまま最大速度と歩法を駆使して、動きに揺らぎを加えて。更に背後を取ろうと回り込んで。
 
 ……絶句した。

 こちらの動きに追いつかんと、互いに高速戦を、純粋速度による高速機動と、加速減速の緩急を使った高速機動の対決となってしまった。二刀の閃と、青いハーケンが斬り合い、交錯する。
 だが、全体的に出力不足なのだろう。斬り合う事にその衝撃で俺のジャケットが少しづつ削られ、千切れていくのが分かる。

 思わず舌打ちしてしまいそうになるのを堪えながら、一打一打を丁寧に捌き、この速度と威力に慣れていくことを優先する。フェイトが技術系の人ならば、この子は純然たる力を持って叩き込んでくる。
 それは、技術とかそういうのを叩き潰す暴力的なまでの力。

 正直、一番苦手なタイプだなぁと。

 力が有るということはそれだけで強い事。応用一つでスピードとパワーを両立出来るし、防御の上から叩き伏せる事も出来るのだから。
 柔能く剛を制すとはよく言うが、それは相手より強ければの話。現時点では俺のが僅かに負けている。動きが見えてるとは言え、体がついてこない。完全に裁けてる訳では無いから。

「ユニゾン使うって言うけど、全然押せないー!!」

「ユニ……あ」

 青いフェイトの言葉を聞いて、思い出す。そう言えば戦闘中にカード装填したら、特定のカードによってはユニゾン出来ると。
 そして、戦う前にはなの説明を聞いてて、とりあえず二つ有るとか言ってたな。まず全体的に強化されるはなとのユニゾン。何かが強化されるだろうと言われてるフェイトとのユニゾン。

 そして、今ほしい能力はただ一つ。思い浮かべたカードを取って。暁鐘へとカードを添えて。

「ユニゾンリライズ」

 光が俺を包んで、バリアジャケットが変わる。それは余計な装甲を省いたスタイル。事実、体からは稲妻が迸り、体が軽くなったと共に。暁鐘と晩鐘に、雷を迸らせた雷刃が付与された。
 踏み込んで青いフェイトを追い掛け、捉える。それは先程までの互角の軌道ではなくて。完全に速度で上を取り。全方位から斬撃を浴びせることが出来る。

 たまらず、更に高くへと逃げる青いフェイトを追い掛けると共に、スキルカードをロード。選ぶは一つ。
  
「撃ち抜け、雷神!」

 暁鐘を振り下ろすと共に衝撃波を放ち青いフェイトの動きを止めて。次に残った魔力を晩鐘へと送り、魔力刃を限界まで伸ばして。

「俺式、ジェット……ザンバー!!」

 高出力の一撃を叩き込んだ―――


――side奏――

 おー、序盤はヒヤヒヤしたけど、終盤は予想通り勝った……けど、問題が一つ。最後のユニゾンっぽいの、あれ先輩リスペクトなのかな? そこん所どうなんだろう?

「……フェイトちゃん。後半の響のジャケットって、ソニックフォームぽいなぁ」

「……ぅ、うん」

 真っ赤になった顔を抑えつつ、フェイトさんが小さく返事をする事から、後半のあの格好もそうなんだと確信する。ジャケットを外して、ボディスーツだけを露出した、余計な装甲を省いたの様な格好。カーゴパンツはそのままだったけど、なかったらあれレオタードっぽい恰好なんじゃないかな? しかも当たれば落ちるとかいう次元ではない。

 だけど……。

「えぇ、ペアルックやなぁ……ねぇ、フェイトちゃん?」

「……ぅぅ」

 えらくニコニコしたはやてさんが言うけれど……私も、ギンガも内心ちょっと複雑ですよ? 振られたって分かってるけど、それでもちょっと、ほんのちょっとだけ羨ましくて。いいなぁって。
 だって、この映像見せれば、響は恥ずかしがるわけで。フェイトさんも恥ずかしがってるけれど、それは嫌がってのことじゃなくて、嬉しくてのそれなわけだから、二重の意味で美味しいわけで。

 見せつけられて……悔しいわぁ。

 でもちょっと気になったのが、もし響が本来の姿ならばと考えた。きっと今の性別が女の子だったからあんなスタイルになったわけで、本来の性別で元の身長ならば……。どうなってたんだろうって。

「はい、そろそろ響とレヴィ……あ、フェイトさんの色違いの青い女の子の事ねー。その仕合が済んだから、次は5対2をしたいんだけど、相手はなの」

「私出る! 奏もどう?」

 震離がいい切る前にスバルが挙手する。

「早?! まぁ、いいけど……ねぇ震離。コレは全員戦うの?」

「ううん。別に全員戦うことはしないよ。あくまでサプライズという意味が強いんだよね。奏はそのままでいいけど、スバルは申し訳ないんだけどさ。顔を隠せる何かを付けてね」

「んー、なんか合ったかなぁ」

 ……あー、そうか。響と私は別に顔出しOKだけど、スバルはまだ行けないのか。ということは……。

「ねぇ震離。次の相手って……」

「うん。その中にはちっこいスバルも、ティアも居るよ」

 思わずコレにはにっこり。ということはスバルがテンション高くなるなぁって。なのはさんが出てくるというのも分かってるから、やばいぞコレは……。
 
 なんて事をしていたら、そこから響が帰ってきたのが見えて。

「あー……恥ずかしかった」

 若干赤くなった顔をパタパタと手で仰ぎながら帰ってくると同時にはなが側へと駆け寄って行って。

「お疲れ様です主」

「ありがと、はな」

 よしよしとはなの頭を撫でながら響がこちらへ寄ってくる。それにしても、いつもの姿なら主従関係っぽく見えるかもしれないけど、こっちだと完全に姉妹にしか見えない。髪も二人共髪色が黒で、背も少ししか変わらないから仲良しな姉妹だなぁって。
 そんな響に、ニコニコと悪い笑みを浮かべたはやてさんが寄っていって。

「おかえり響。後半の格好の着心地はどうやった?」

「? あぁ、ユニゾンしたあれですか?」

「せやせや、あれどうやった?」

 不思議そうに首を傾げてる辺り。多分後半の格好については分かってないんだろうなぁ、あれ。

 ごめんね。響。いつもだったら助け舟出したかもしれないけど……私も先輩が恥ずかしがってる所見たいんだ、だから……残念だよ。

「えっとなー。あったあった、こんな格好してたんやで?」

 はやてさんが何かを操作すると、空きモニターに映像が出てきて、ユニゾンした直後の響の映像が流れる。
 変わる直前の姿を見て、「やっぱり恥ずかしいよなぁ」と呟いて、変わった瞬間。

「……え、な……え!?」

 一瞬で顔が赤くなった。フェイトさんも恥ずかしそうにしてるとは言え、そのリアクションを楽しんでるように見えるのは気のせいじゃないな。

「よーし、奏用意出来たから行こう!」

「はいはい、ティア程上手く出来ないかもしれないけどよろしくね?」

「うん!」

 響のリアクションをもっとみたいなぁと思いつつ、スバルと共に、シミュレーターの中へと入って。

『奏もスバルも用意はいい?』

「「いつでも!」」

 震離の声に応えつつ、軽く深呼吸をして。

「「リライズ・アップ!」」

 
――side流――

「うー、くーやーしーいー!! 似たようなスタイルだから負けないはずなのにー! 有利だったのにー!!」

 うわーっとソファーの上で悔しそうにバタバタしてるレヴィを見ながら苦笑い。あれは確かに押してたけど、響さんのユニゾンが上を行ったんだろう。
 だけど、あの姿であれということは、本来の姿ならもっと速く鋭かったわけで。

「むう、流。あれは何だ? あれがCPUではない誰かだというのは分かるが。我らはあの者を知らぬ」

「さぁ? まだ内緒ですよ」

「……うむ」

 王様の視線が鋭くなる。というのも、自分達と同等だということを認めての意味でだ。レヴィもまだ真の実力を出した訳ではないが、あんなふうに負けるとは思わなかったんだと思う。
 事実、T&Hと八神堂……いや、ヴィータ達は強いねーと新しいライバルの登場に驚いてるけれど。ダークマテリアルズと、はやて、そしてフェイトは違う。
 明らかに今までと毛色の違うタイプの出現に、違う意味で喜んでいる。特に……。

「……フフ」

 シュテルに至っては完全に火が入ったらしく。少し体がそわそわしてるのが分かるけれど……。

「さ、次は5人対2人。誰が出ますか?」

「はい!」

 と元気に5人丁度手が上がったのは、なのはにアリサ、そして、すずかとT&Hから三人と、スバルとティアナのタッグが手を上げてくれた。
 フェイトは何か考え込んでるようで、アリシアさんは頑張ってねーと応援の体勢に入ってる。おそらくスバルとティアナに譲ったんだろう。

「ルールは何時も通りのフリーバトルと変わらないから、胸を借りるつもりでね?」

「うん!」

 そのまま五人を見送る。ふと、フェイトがさっきの試合を見てるのがみえたので、そこに近づくと。小さな声ではっきりと。
 
「やっぱり剣術って格好いい……」

 ……あ、コレは初手の人選間違えたなぁと。 
 

 
後書き
 長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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