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ある晴れた日に

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94部分:小さな橋の上でその十


小さな橋の上でその十

「まとめ役はいいけれど頼り過ぎだろ」
「そりゃ確かに未晴はしっかりしてるし」
 奈々瀬の今の言葉はかなり自己弁護めいてきているものだった。
「優しいし。勉強だってできるし何でも必要な時に必要なもの出してくれるし」
「何処かのネコ型ロボットみたいだな」
「そう言ったら何だけれど頼りにしてるのよ」
 話すその顔が俯いてきていた。
「悪いって思う時もあるけれど。確かに」
「自覚はあるんだな」
「頼りにはしてるわ」
「そんな、私は別に」
 未晴は未晴で奈々瀬を庇うのだった。
「そんなことは」
「まあ少なくとも柳本とかはべったりだよな」
「そうだよな」
 咲が未晴にかなり頼りきりなのはもう皆わかっていた。それこそ奈々瀬の比ではない位だ。
「やっぱり頼りになるってか」
「それもかなり」
「ええ」
 俯き気味のまま頷く奈々瀬だった。
「そうよ」
「だから。私はそんなことは」
 そしてそんな彼女をまた庇う未晴だった。
「気にしていないっていうの?」
「ええ。友達じゃない」
「そうだよね、友達だよね」
 明日夢が今の未晴の言葉に笑顔で頷く。
「奈々瀬と未晴は友達だよね」
「私だって奈々瀬には助けてもらってるし」
「本当?」
「そうよ。本当よ」
 このことはしっかりと言う未晴だった。
「小学校の時からずっと一緒だったじゃない」
「そうだったわね」
「そう思うと長い付き合いなんだな、御前等」
 正道はあらためて彼女達の絆について思うのだった。
「それもかなりな」
「私一年の時に未晴と同じクラスになったのよ」
 奈々瀬はこのことを話した。
「その時一緒になって。その時から」
「友達だったんだな」
「そうよ。六人でね」
「私達と一緒だね、それって」
 明日夢は彼女の話を聞いて言ってきた。
「一緒って」
「何だよ、東ドイツもそうなのかよ」
「ええ。そうだったのよ」
 未晴達が西ドイツなら明日夢達は東ドイツである。これはそれぞれのいた中学校が八条西、八条東だからこう呼ばれているのである。
「私の家カラオケ屋と居酒屋じゃない」
「ああ」
 もうこれはあまりにも有名になっていることなので言うまでもないことではあった。
「恵美が。喫茶店で」
「同じ駅前だったよな」
「そうなのよ。それで茜が神社の娘さんでね」
「神社!?」
「じゃああいつ」
「そうよ。巫女もやってるわよ」
 神社といえば巫女である。この組み合わせは普遍のものである。
「ちゃんとね」
「あいつが巫女かよ」
「何か信じられねえな」
「だから。私達三人も小学校から一緒だったし」
「そう思うとこっちも縁深いよな」
「そうだよな」
 正道と野本は顔を見合わせて話をする。その間にも足を進めていく。相変わらずの山道だが進むのは速い。クイズは何時の間にか加山が解いていってしまっている。やはりこの四人は動いてはいなかった。左右の木々が緑に生い茂り鳥の声が時折聞こえる。純然な山道であった。
「お互いな」
「深いものがあるんだな」
「けれど少年のことろはあれよね」
 奈々瀬はここで明日夢に対して言った。
「誰かに頼りきりってことはないわよね」
「強いて言うなら恵美がリーダーかしら」
 明日夢は少し考えてから奈々瀬のその言葉に答えた。
「やっぱり」
「そうなの?」
「強いて言うならね」
 明日夢はこう述べるのだった。
「やっぱり。頭いいし」
「確かにな」
 正道もそれははっきりわかっていた。
 
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