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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第58話 極寒地帯の罠!祐斗とマッチ、友情の一閃!

side:祐斗


「く、クソがぁぁぁぁ!!」


 小猫ちゃんと滝丸さんが戦っていた男の声が聞こえた、どうやら小猫ちゃん達が勝ったみたいだね。


「なら僕も負けていられないね!」
「ミンチクラーッシュ!!」


 男の攻撃をかわして攻撃を仕掛けるが腕に付けた防具で防がれる。マッチさんと協力してこの男と戦っているがかなり強い、聖魔刀の一撃を難なく防ぐ防具に見た目からは想像もできない身のこなし……流石は美食會の幹部、一筋縄ではいかないようだ。


「死ねやぁ!」


 男の一撃をジャンプしてかわした僕は太刀を構えて勢いよく振り下ろした。


「龍鎚閃!」


 男の頭を狙った鋭い一撃、だがそれは男の頭に付けている防具に弾かれてしまう。


「ミンチクラッシュ!」
「ぐうっ……!」


 突き出された拳を聖魔刀で受け止める。ぐぐっ、なんてパワーだ……力だけなら小猫ちゃんはおろかイッセー君にも匹敵するぞ……!


 僕は自分から後ろに跳んで攻撃をいなすが体制を崩してしまう。その隙を見逃さなかった男は頭を振りかぶって叩きつけてきた。


「『肉たたきヘッド』!!」
「させるか!一刀両断『かぶと切り』!!」


 僕に攻撃が当たる前に男の頭上にマッチさんが移動して刀を構え勢いよく振り下ろした。完全に不意を突いたその一撃は普通なら当たるはずだった。


 なんとその男は驚異的な反射神経でマッチさんの攻撃を回避したんだ。あの巨体からは考えられないほどの身のこなしと速度……一体どんな体をしているんだ?


「チィ……ちょこまかと鬱陶しい奴らだぜ。社会のゴミであるヤクザなだけあってまるでゴキブリだな」
「てめぇこそデカイ図体で動き回って気持ち悪いんだよ。筋肉キャラなら図太い動きでもしていろ」
「強がってんじゃねえよ、2対1で追い詰められているのはお前らの方なんだぜ?」


 ……悔しいが奴の言う通りだ。こっちの攻撃は全部防がれてしまうのに対して奴の攻撃は着々と僕達にダメージを蓄積させてくる。ああいうタイプは小猫ちゃんみたいなのが有利なんだけど、今更そんな弱音は吐けないよね。


(それにしても不可解なことがある)


 男の頭突きを回避した僕はいくつかの事を考えていた。まず一つは男のスピードだ、今だって回避した瞬間にもう接近されて次の攻撃を繰り出されている。僕は騎士の駒の特徴である速さを武器としているのに向こうの方が早く感じてしまうんだ。


 そしてもう一つが反応の速さ。僕達に重い一撃で攻撃してくる男だが全く隙が無い訳じゃない、今も攻撃後の僅かな隙を見つけて反撃を試みるが、こちらの攻撃が当たる前に奴は回避してしまう。今もカウンターを狙ったマッチさんの動きを読んで逆にカウンターでマッチさんの脇腹を殴り飛ばしてしまった。


「がはっ!」


 マッチさんに追撃しようとする男に背後から攻撃を仕掛けたがそれもかわされる。男の攻撃は単純で頭突きや打撃がメインだがその破壊力は凄まじい、当たればひとたまりもないだろう。それに加えてこのスピードと反射神経の良さに予想以上の苦戦を強いられていた。


「ミンチクラッシュ!」


 大振りで放たれた拳を身を低くして回避する、そして上段から太刀を振り下ろすが男は足に着いた防具で蹴るようにそれを防いだ。


「クラッシュ!クラァ―――シュ!!」


 連続して殴りかかってくる男の攻撃を2本の小太刀に変化させた聖魔刀で受け流す、そして隙をついて『流水の動き』を発動させる。


「むっ、小僧の姿が増えやがった?どいつが本物か分からねえなあ」


 緩急自在に動き周り相手を翻弄する。よしっ、後は隙をついて必殺の回転剣舞で……


「っと言うとでも思ったのか?」
「ぐはっ!?」


 男は僕の実態を見つけ出すと腹部に重い一撃を放ってきた。な、なんで僕の居場所がこんなにも早く分かったんだ?流水の動きは完璧のはずだったのに……


 意識が飛びそうになるが歯を食いしばってそれを耐える。だが予想以上にダメージが重く直ぐには動けなかった。


「祐斗!?このクソ野郎が!これでも喰らいやがれ!!」


 マッチさんは懐からアイスマシンガンを取り出して男に連射する。だが男は回避する動きも見せずにその場に立ったままだ。


「『オイルショック』」


 男の体に弾丸が当たるがまるで滑るかのように軌道を変えて全くの見当違いの方向に飛んで行ってしまった。


 だがこの隙を見逃さなかった僕は小太刀を一本鞘に戻しもう一本を太刀に変化させて居合の構えを取り男に突っ込んでいく。


「飛天御剣流……九頭……」
「甲羅シールド!」
「龍ゥゥ閃ッ!!」


 渾身の力を込めて放つ全9方向の斬撃、だがそのすべてが身を丸めた男の防具によって防がれてしまった。


「そんな、傷すら付けられないなんて……」


 そのあまりにも悲痛な現実に僕は愕然としてしまう。男は体勢を整えると防具に付いた痣を見て少し感心したような表情を浮かべた。


「ほう、俺の『甲羅』を斬っても刃こぼれしないとは流石は和道一文字なだけはあるな。見た目は少し違うがもしかすると新たに作られた物か?」
「……刀に詳しいんだな」
「俺は美食會の調理器具を調達するのが仕事だからな、武器にも詳しいのさ。まあ例え和道一文字であろうとこの甲羅シールドを斬る事などできやしねぇさ」


 男は腕に付けた防具を見せびらかすように上にあげる。


「こいつは海の暴れ亀『クラッシュタートル』の甲羅を加工して作った特製の防具だ。自然界でも指折りの耐久性と強度を持つこいつの甲羅は剛性や靭性に優れ硬度の鉄の数倍、今では手練れの職人によって鍋やその他の調理器具にも多く加工されている」


 そんな化け物亀の甲羅を防具にしていたのか……通りで硬いはずだ。


「クラッシュタートルだと?捕獲レベル60の化け物亀を仕留めたっていうのか?」
「ああ、そいつは俺が仕留めたぜ。俺は美食會第4支部の支部長バリーガモン!お前らも俺が仕留めてやるぜ!」


 男……いやバリーガモンは左右の拳をゴンゴンと叩きながら僕達を威圧してくる。


「お前の実力は良く分かった、だが俺が不可解なのはその防具よりもお前自身の身体能力だ。俺や祐斗の攻撃に反応する反射神経、身のこなし、スピード……この氷の大陸でそんな寒そうな格好をしているのにどうしてそんなに早く動けるんだ?」


 確かにマッチさんの言う通りだ。バリーガモンはアイスヘルという-50度は常にあるこの極寒地獄でパンツ一丁という自殺行為にしか思えない格好をしているのにまるで平気そうにしている。


 僕がそう思っているとバリーガモンの体がテカテカと光りだした。


「何だ?こんな寒い場所で汗をかいているのか?」
「コイツは汗じゃねえ、不凍液だ」


 不凍液?知らない言葉に僕は首をかしげるがマッチさんが教えてくれた。


「不凍液……確か0℃以下になる海に住む生物が作る不凍性のタンパク質だったな。そいつで体温を高い状態で維持しているって訳か。さっきマシンガンの弾がお前に当たらず滑ったのも不凍液を大量に出して摩擦を軽減したからだな」
「ボクサーが相手のグローブとの摩擦で瞼などをカットしないように塗るワセリンのようなものだね」
「もっとも俺の不凍液はワセリンの何倍もなめらかだけどな」


 僕は以前小猫ちゃんとイッセー君が武術の特訓でボクシングをしているときにイッセー君が小猫ちゃんの顔にワセリンを塗っていたのを思い出した。
 

 その後小猫ちゃんはワセリンじゃなく何故かローションを持ち出してイッセー君にぶっかけて襲っていたけどそれは思い出さなくてもいいか。


「不凍液で体温を維持しているのは分かった。だがそれでも俺達の方が早いはずだ、そんなデケぇ図体の奴に身軽な俺達が速さで負ける訳がねえ」
「分かってねぇなぁてめぇは。俺が早いんじゃねーよ」


 バリーガモンはいつの間にか僕達の前方に移動していた。そしてマッチさんの腹部に強烈なボディブローを食らわせる。


「ぐふっ……!?」
「マッチさん!?」


 僕はバリーガモンを攻撃しようとするがそれよりも早く奴の拳が僕の顔面を打ち抜いた。


「がはっ……!!」
「お前らが遅いんだよ。さっき自分で言ったじゃねえか、ここは氷の大陸だってよ。立っているだけで体力を奪われるこの氷点下の世界でお前らいつも通りに動けていると思っているのか?」


 そうか、さっきから何かおかしいと思っていたけどそう言う事だったのか!この氷点下の中で体の熱を奪われて体力を消耗している。そんな状態じゃいつものように動くことなんてできないはずだ。


(バリーガモンは体温を高く維持できるから普段通りに動ける、でも僕達はここに長くいればいる程動きが鈍くなっていく。この場所はあいつにとってとても有利な場所なんだ……!炎系の魔剣で体を温めようにもこれ以上は魔剣を創れない……)


 拙いな、神器は所有者の心……精神力に影響される。体力も気力も限界に来ている今の僕ではこれ以上魔剣を生み出すことができない、圧倒的に不利だ。


「……」


 マッチさんは静かに立ち上がると目を閉じて自然体になる。あの構えは船で見た脱力?


「お?なんだ動かなくなっちまったぞ?潔くミンチになる気になったか?」
「……」
「よぉし!じゃあ望みどおりにミンチにしてやるぜ!」


 バリーガモンはマッチさんにトドメを刺そうとする、だがそこに僕が割り込んで攻撃を防いだ。


「まだ僕がいるぞ!」
「ん―――?そういやまだゴミがいたな」


 バリーガモンは腕を振るってラリアットをしてくるがそれをしゃがんで回避する。


(マッチさんは脱力で勝負を決める気だ!なら僕が攻撃までの間時間を稼ぐ!)


 マッチさんは脱力に入ったがあれは大きな隙を作る技だ、マッチさんほどの男がそれを知っていながらあんな簡単には使わないはずだ。


(マッチさんは確かに僕に視線を送っていた……)


 黙って脱力に入ったのは敵に策があると悟られないため、そして僕が時間を稼いでくれると信じて脱力をしようと思ったのだろう。ならその期待に応えて見せる。


「すばしっこいガキだぜ、どうやらミンチよりもバラバラになりたいみたいだな」


 バリーガモンはパンツからメリケンサックのような物を取り出すとそれを指に装着した。汚いな……

 
「行くぞ!」


 バリーガモンはメリケンサックを付けた拳で打撃を放ってくる。一瞬受け流そうかと思ったが嫌な予感を感じた僕は回避に専念した。そしてバリーガモンが腕を振るうと氷の大地に切りこみが生まれた、なんて切れ味なんだ。


「こいつは全身が刃物でできた竜『スライスドラゴン』の鱗でできたメリケンサックだ。そいつの鱗は触れただけで肉を裂いちまう鋭利さが売りでな、この通りだ」
「成程、ますます当たれないってことだね」


 軽口を叩くが状況は最悪だ。マッチさん、出来れば急いでください……!


 バリーガモンのメリケンサックでの攻撃を小太刀に変化させた聖魔刀で防ぐ。だが攻撃は止まらずに連続して攻撃してくる、僕はそれを何とか受け流していくが不意に奴は距離を少し取って回し蹴りをしてきた。


「うわっ!?」


 上半身をそらして回し蹴りを回避する。そのまま後ろに転がった僕は太刀に変化させた聖魔刀で天翔龍閃で攻撃を仕掛けた。バリーガモンはそれを両腕の防具で防ぐ。


「ふん、こんな技……ぬおッ!?」


 初撃を防がれたがその斬撃が通過した部分の空気が弾かれたことによって真空の空間が生まれ、その空間の空気が元に戻ろうとする作用で相手を巻き込むように引き寄せた。


 本来ならこの後に二回転目の遠心力などを生かして放つ二撃目があるのだが、消耗していた為それは出来なかった。だがバリーガモンは身体が引き寄せられたことによって体勢を崩した。


 その隙を見逃さずに更に龍鎚閃で追撃をしていく。バリーガモンはその攻撃をも防いだが地面に倒れてしまった。


「『牙突・二式』!」


 上空から牙突で追撃を狙うが転がってかわされてしまう。


「うざってぇなあ!」
「ウザくて結構だ!」


 バリーガモンのパンチをかわして上段から太刀を振り下ろす。だが奴の頭突きで弾かれてしまう。一瞬の隙を見逃さなかったバリーガモンは僕の首にラリアットを叩き込んだ。


 メリケンサックでの攻撃ではなかったが戦車の駒と違い防御力は脆い騎士の駒の僕には大きなダメージだ。


「……!ッ」


 意識が吹っ飛びそうになるが足に太刀を刺して無理やり意識を保つ、そして大振りな一撃を放ったバリーガモンの攻撃を回避して背後から攻撃を仕掛けた。


「龍巻閃!」


 しかしその攻撃もバリーガモンが素早く首の後ろに右腕を動かして防具に弾かれてしまう。僕は一旦バックステップで交代するがそこをバリーガモンが追い打ちをかけてきた。


「土龍閃!」


 氷を太刀で砕きバリーガモンに向けて飛ばすが大して大きなダメージにはなっていないようだ。頭突きやパンチをかわして相手の懐に入り密着する。


「これでパンチやラリアットは使えないだろう!」
「だったら押しつぶしてやる!」


 バリーガモンは両腕を広げて僕を押しつぶそうとするが、それよりも早く技を繰り出した。


「『牙突・零式』!!」


 上半身のバネのみで繰り出した牙突、その一撃はバリーガモンの脇腹を貫いた。


「ぐっ……このガキが!」


 脇腹を押さえるバリーガモン、だが不凍液で滑ったからか急所を外してしまっていた。でもダメージを与える事は出来た。


(このまま畳みかける!)


 僕は膝をつくバリーガモンに接近していく、そして天翔龍閃で攻撃を仕掛けた。だがバリーガモンは両腕の防具で太刀を挟み止めてしまった。


「同じ技は二度も効かんわ!」


 頭に頭突きを喰らい目の前が真っ白になった。でもバリーガモンの攻撃がそれで終わるはずもなくメリケンサックでの攻撃で僕の体に切傷が走った。


「……!!ッ」


 胸から鮮血がほとばしり口から血が流れる、思わず片膝をついてしまうがそこに奴のボディブローが炸裂した。


「ぐああアアア!!?」
「一瞬の読み間違いが死を招く、だからてめぇはゴミなんだ」


 そのまま殴り飛ばされた僕は地面を滑りながら壁に激突する。


「はぁ……はぁ……!」


 大きなダメージを受けたことで僕の体はピクリとも動かない。バリーガモンは僕の元まで歩いてくると僕を片腕で持ち上げた。


「はっはっは!粋がっていた割には大したことはなかったな!」
「ま……まだだ!」


 僕は持っていた聖魔刀を振るうがあっさりと防がれてしまう。


「いい加減死ねやぁ!!」


 地面に叩きつけられ聖魔刀を落としてしまった。そして奴の蹴りが当たってまた吹き飛ばされる。


「マ、マッチさん……」


 マッチさんの方を見てみると彼はコクリと頷いた。どうやら準備が出来たみたいだ。


「これで一人片付いたな」


 その間にバリーガモンは僕のそばまで来ていて今まさに足で踏み潰そうとしていた。僕は最後の力で踏み付けを回避して奴の片足に組み付いた。


「今だ!」


 僕の声と共にマッチさんは怒りを解き放って凄まじい速度でバリーガモンに迫った。その速度は今まで見たマッチさんの居合の中でもトップクラスのものだった。


「なにィ!?早い!?」


 そしてマッチさんの斬撃がバリーガモンに放たれた。これで勝負は決まった……!


「なっ!?」


 だがマッチさんの斬撃が当たる前に彼は何故か体勢を崩してしまった。そして攻撃は空振りしてしまいマッチさんは動きを止めてしまった。


「骨砕きスマッシュ!!」


 そこにバリーガモンのアッパーが炸裂してマッチさんは高く浮き上がってしまった、しかもメリケンサックでの攻撃だから体は切り裂かれ顎から血が噴き出していた。


「がはっ!!」


 そして地面に叩きつけられるマッチさんを見て僕は唖然としてしまった。


「何をボーッとしてやがる、次はお前の番だぞ」
「ッ!?」


 バリーガモンに首を掴まれて宙吊りにされてしまう。


「バカが、あんなあからさまに立っていりゃ何かしようとしているなんて分かるに決まっているだろうが。念のために俺の周りに不凍液をばら撒いておいたのさ、何せ剣士は近寄らなければ攻撃できないからな」


 そうか、こいつの出した不凍液で足を滑らせたからマッチさんは体勢を崩してしまったのか。


「ゴミにしては頑張ったがこれで御終いだ、所詮お前らなんぞ俺の相手じゃなかったって事だな」


 僕の首を絞める力が強くなっていく、このままでは首の骨を折られて殺されるだろう。


(ここまでか……ごめんなさい部長、皆……)


 僕は諦めて目を閉じようとした。でも不意に戦っているイッセー君の姿が目に映った。


(イッセー君……)


 僕には夢がある、いや出来たという方が良いかな。それはイッセー君と同じ場所に立って彼と戦ってみたいというものだ。


(無謀もいいところかもしれない。でも僕はイッセー君を目指したいっていつの間にか思っていたんだ)


 復讐を果たすのを手伝ってくれたイッセー君は僕にとって一番大切な友達だ。でも一人の男として彼を超えたいという野望が出来ていた、だって僕も男の子だから。


(でも今の僕ではイッセー君の足元にも及ばない……)


 そして現れたバリーガモンという壁……僕の斬撃は通用せず環境も敵に有利という最悪の状況……でもここで諦めてしまったらその夢は一生叶えることなどできなくなってしまうじゃないか!


 やっぱり諦めたくない!僕は生きてもっと強くなりたい!そしていつかイッセー君と同じ場所に立って彼を超えたい!


 僕は拘束から抜け出そうと藻掻くが、パワーでは圧倒的に負けているためビクともしない。


「うおォォォ!」


 そこにマッチさんの声が聞こえた。彼はいつの間にかバリーガモンの懐に入り込んでアイスマシンガンの銃口を直接奴の体に当てて零距離で射撃した。


「ぐおっ!?」


 バリーガモンはよろけながら後ろに後退した。その際に僕は奴から逃れることに成功する。


「チッ、銃口を直接当てて撃ったのに効いていないとはな」


 バリーガモンの体には焦げた跡があったがダメージはなさそうだ、素の防御力も高いのか。


「マッチさん!」
「祐斗、お前は逃げろ!」
「えっ……?」


 僕はマッチさんの言った言葉に驚いてしまう。逃げろだなんて……


「お前は俺を信じて足止めに徹してくれたのに俺はそれに応えることが出来なかった。その責任を取らせてくれ……」
「だからってそんな……!」


 僕の言葉を無視してマッチさんは刀を抜くとバリーガモンに向かっていった。でも無茶だ!彼だって体はもう限界のはずだ、勝てるわけがない。立ち上がろうとするが血を流し過ぎたのか立つことができない。


「ミンチクラーッシュ!」
「ぐう……!」


 必死で奴の攻撃を回避するがそれだけで精一杯だ、とても攻撃が出来るような状態じゃない!


「バカじゃねえのか?そんなボロボロの体で何ができる!」
「出来るかどうかじゃねえ、俺は俺の意志を貫くために戦うんだ!」


 必死の思いで放たれた居合、だがそれは簡単に止められてしまった。


「ミンチラリアットッ!!」


 バリーガモンのラリアットをまともに受けたマッチさんは血を吐きながら地面に叩きつけられた。


「肉叩きヘッド!」
「ごはぁッ!」
「ミンチタックル!!」
「ぐあぁぁ!?」
「ミンチクラぁ―――ッシュ!!!」
「……がぁ……!?」


 成すすべが無くなったマッチさんをバリーガモンは容赦なく攻撃していく。


「や、止めろ!バリーガモン!」


 僕は必至で叫ぶがそんな事で攻撃が止むわけがない、このままではマッチさんが殺されてしまう!


「動け!動けよ!僕はまだ……戦えるのに……!!」


 動かない体に怒りが湧いてきた。どうして僕は……いつも肝心な時に誰かを守れないんだ!


「ミンチ完了~っと」


 ボロボロになったマッチさんに唾を吐くバリーガモン、そしてゆっくりと僕のほうに歩いてくる。


「さぁ~て、後はこいつをミンチにすれば終わりだな」
「ぐっ……」


 迫ってくるバリーガモンに対して僕は睨みつける事しかできない。だがその時だった、僕の側に太刀と鞘が突き刺さったんだ。


「これは……」


 太刀が飛んできた方を見てみると、ボロボロのマッチさんが立っていた。

「子供を守るのは大人の仕事だ……でも情けないが俺はもう何もできない、だからせめて俺の刀をお前に貸そう。その刀……『竜王』でそいつを倒せ……!」
「マッチさん……刀は剣士にとって命のはずなのに……」


 剣士にとって剣はおのれの一部でもある。それを貸すと言う事はその人物を深く信頼しているという事だ。


「どうして僕なんかに……」
「み、短い間だが……俺達は苦楽を共にした仲間だ。祐斗……俺はお前を見ているとスラムの子供たちを……はぁ……思い出すんだ……絶望の中でも決して……ぐッ!?……諦めない生きようとするあの強い子供たちをな……」


 マッチさんはそう言うと僕に拳を突き出した。


「だ……だから勝て!最後まで生きる事を諦めるな!!」


 マッチさんはそう言って地面に倒れてしまった。


「バカが、こんなガキに何ができる?今にも死にそうな……お?」


 マッチさんの愛刀である竜王、それを手に取った瞬間体から力が湧き上がってきた。


「立ち上がっただと?」


 体は痛くて意識も消えかけたボロボロの状態、それなのに僕は立ち上がれた。


「驚いたな、そんな重症の体でよく立ち上がったものだ。流石はゴキブリなだけの事はある」


 バリーガモンは余裕そうに笑うと僕に向かって飛び掛かってきた。


「だが結局今からゴミになるんだよ!大きな生ゴミになぁ!!」


 僕に向かってくるバリーガモン、だがその動きはどうしてか酷く遅く感じてしまう。そして今にも攻撃を受けそうだというのに僕は先日出会った一龍さんとの会話を思い出した。


『祐斗君は鉄を斬れるか?』
『鉄ですか?今はまだ斬れないですね。イッセー君は鉄をナイフで斬ってしまうから凄いですよね、僕も彼みたいにいつか鉄斬りをしてみたいです。でもどうしてそんな事を聞かれたんですか?』
『ワシの知り合いにグルメ界の門番をしておる者がおってな、詳しい事は省くがそいつは人間界に侵入しようとするグルメ界の猛獣を一人で食い止めとるんじゃ』
『グルメ界の生物を!?』
『初めて会った生物が相手でも的確に急所を斬ることが出来るんじゃ。それが鉄を簡単に超える硬度を持つ装甲を持った生物だろうとな』
『凄い人ですね、きっと僕なんかでは及ばないほど凄まじい技術や技をお持ちなんですね』
『そいつは剣の修行などしとらんよ。戦いの中で直観力を磨いていきいつの間にか体が勝手に行動するようになったそうじゃ』
『そ、そんなことがあり得るんですか?何も考えないで動くなんて……』
『意外とそういうのが大事なのかもしれんぞ。祐斗君も時には己の直観力を信じて刀を振るってみたらどうじゃ』
『直観力ですか……正直よくわかりませんがその言葉は覚えておきます』


 今の僕は何も考えていなかった。唯無意識に太刀を縦に構える、そして己の直感を信じて太刀を解き放った。


「……えっ?」
「……」


 それは一瞬だった。バリーガモンを通り抜け奴の背後で刀を鞘に戻す……気が付いたら終わっていたんだ。


「いつの間に背後に逃げやがったんだ?全く見えなかったぞ」
「……」
「まあいいさ、次こそトドメを……!?」


 バリーガモンは再び攻撃を仕掛けようとしたが口から血を吐き出した。


「ま、まさか……」


 バリーガモンの頭に付けてあった防具が綺麗に二つに分かれた。そして次に腰に付けていた防具に、腕の防具、足の防具に切れ込みが走る。


「き、斬られたというのか?この最強の防具が……!?」


 防具が全て地面に落ちるとバリーガモンの体から血が噴き出した。


「お、俺がこんな……こんなゴミに……負けるはずが……!?ガアアアァァァァァッ!!?」


 全身から出血したバリーガモンは地面に倒れふせた。


「か、勝ったのか……?僕が……いや僕達が……?」


 正直どうやってあの防具を斬ったのか覚えていない、でも僕達は勝つことが出来た。


「そうだ、マッチさんは……!」


 痛む体に鞭を打って倒れるマッチさんの元に向かう、身体はボロボロで今にも死にそうだが確かに生きていた。


「貴方を死なせない、皆で生きて帰るんだ……!」


 僕は最後の気力を振り絞って回復の魔剣を生み出してマッチさんと僕に刺した。流石にアーシアさんのような超回復はできないが少しだけ傷を癒すことが出来た。


「マッチさん、貴方のおかげで勝てました。僕は……」
「……見ていたさ」
「マッチさん!?」


 僕はマッチさんを抱き起す、彼は目を開けると僕の目を覗き込んでいた。


「俺の竜王はクラッシュタートルの甲羅すらかみ砕くという『レオドラゴン』の牙で出来ているんだ。悔しいがあの時のお前は間違いなく竜王の力を引き出していた。あの居合をレオ……獅子の文字を取って『獅子歌歌』と名付けてもいいか?」
「……光栄です、マッチさん。でも僕が竜王の力を引き出せたのはマッチさんのお蔭です。貴方の決して諦めない意思の強さが僕に勇気をくれたんです……」
「……そうか、そりゃ良かったぜ」


 正直に言えば今回の勝利は運も良かったんだと思う。でも僕達は確かに勝てた……。


「イッセー君、皆……僕、勝てたよ……」


 勝利を実感する僕、その目からは涙が溢れていた。


  
 

 
後書き
 イッセーだ。小猫ちゃんも祐斗も両方決着がついたみたいだな、だが俺の方はまだ決着はつきそうにないな。トミーロッドの放つ虫たちの攻撃も恐ろしいがその数が更にヤバい、でもあいつらが根性を見せたんだ。朱乃と共に必ず勝って見せる!


 次回第59話『冷血なる虫使い!対決トミーロッド!』で会おうな。次回もいただきます! 
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