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ある晴れた日に

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79部分:優しい魂よその十四


優しい魂よその十四

「彼氏にしか言うかよ、こんなこと」
「えっ、御前彼氏いるのかよ」
「いるに決まってるだろ」
 今度は半分以上怒っての言葉だった。
「あたしだって十五だぞ。そりゃよ」
「相手誰なんだろうな」
「どうせ碌でもねえガラの奴なんだろうな」
 坪本と佐々は春華のイメージからこう呼んでいた。
「何処かの不良学校のヤンキーだろ」
「それかゾクだな」
「普通の学生だよ」
 しかし春華はこう返すのだった。
「同じ歳のな。幼馴染みのな」
「絶対嘘だ」
「そんな訳あるかよ」
 しかし野本達は彼女のその言葉を頭から否定した。
「御前がそんなまともな相手と付き合えるかよ」
「マジでゾクだろ、ゾク」
「ああんっ!?信じねえのかよ」
「っていうか信じられねえ」
「仮想世界の話だよな」
 こうまで言う野本達だった。完全に春華の話を信じてはいなかった。
「そんなのよ。有り得るかよ」
「じゃあ何処の生徒なんだよ。俺達と同じ歳だろ?」
「何処なんだか」
「八条高校だよ」
 三人を睨み返しての言葉だった。
「中学の時に一緒だったんだよ」
「えっ、八条高校か」
「そこかよ」
 この地域では言わずと知れた巨大学園である。彼等の通っているこの学校とも関係が深く姉妹校と言っても過言ではないのだ。
「あの学校ならよ」
「別に悪くはないよな」
「そうだよな」
 話のやり取りが少しずつ春華にとっていい感じになっていた。
「何だ、本当だったのかよ」
「まさかって思ったけれどな」
「まさかっていうか嘘だって思ったぞ」
 彼等はそれぞれ話す。
「こいつがまともな相手と付き合ってるなんてな」
「悪い冗談だってな」
「有り得ない話だよ」
「けれどね」
 しかしここで未晴が三人に言ってきた。
「春華は嘘つかないわよ」
「ああ、それはな」
「わかるけれどな」
 野本達もそれはわかるのだった。
「こいつ言葉が先に出るからな」
「しかも本音がな」
「あたしは嘘はつかねえよ」
 春華も自分からそれを言う。
「何があってもな。だから信じろ」
「凄く仲がいいのよ」
 ここでまた未晴が春華をフォローする。
「いつも彼氏の腕に抱きついてね」
「おっ、意外と尽くすタイプってか?」
「ラブコメってやつかよ」
「・・・・・・悪いかよ」
 彼等の突っ込みに顔を赤くさせる。
「それでよ。だって優しいしよ」
「彼氏がねえ」
「男の優しさは裏があるってか?」
「裏なんかあるわけねえだろうが」
 野本の言葉にまた噛み付く。
「明石君によ」
「彼氏の名前は明石君っていうのか」
「へえ」
「そうだよ。けれどこれ以上は言わねえぜ」
 また言う春華だった。
「もうな」
「じゃあいいけれどよ。まあとにかく」
「そうだよな。そろそろ先生の目がきつくなってきたな」
 三人は江夏先生を横目で見つつ話す。
「真面目に終わらせるか」
「早いところな」
「そうした方がいいわよ」 
 江夏先生の方からも言ってきた。
「それはね。それじゃあ」
「はい。わかってますって」
「掃除を早いところ終わらせてね」
「後はまあ寝るだけか」
 そんな話をしながらまた掃除に戻る。掃除はすぐに終わり一同それぞれのテントの中に入った。テントの中では毛布に身体を包んで話をしていた。
「まだ春なのに寒いね」
「そうだね」
 竹山が桐生の言葉に頷く。
「山の方はね。夜になるとまだそうみたいだよ」
「毛布もう一枚被ろうかな」
 そう言って毛布をもう一枚被る桐生だった。
「よし、これで大丈夫だよ」
「しっかし。ロッジじゃねえのかよ」
「マジでテントなんて思わなかったぜ」
 野茂と坂上も言う。
「何かよ、これって」
「自衛隊かよ」
 坂上はここで自衛隊を話にだしてきた。やはり彼も毛布で身体を包んでいる。
 
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