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ある晴れた日に

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72部分:優しい魂よその七


優しい魂よその七

「何か随分多いですね」
「そういえば確かに」
「ロケットでもこれだけ?」
 皆ここでロケット花火を出してきた。ざっと見ただけで三桁はある。
「何でこんなにあるんだろ」
「これ全部今日一日で使うんですよね」
「花火はあれよ」 
 次に出て来たのは田淵先生だった。何時の間にか江夏先生の横に来ていたのだ。まるで影のようにそこに立っていたのである。
「派手に使わないと駄目なのよ」
「それはそうですけれど」
「こんなにあったらちょっと」
「まあよ。それならそれでいいんじゃね?」
 だがここで春華が言ってきた。
「盛大にいけるからよ」
「盛大にってどうするんだよ」
「まずはこうやってよ」
 坂上に応えながら地面にそのロケット花火を次々に突き刺していく。並んで突き刺していくのでまるでミサイルを撃つ場所のようである。
「突き刺してな」
「どうするんだよ」
「火を点けるんだよ。そうすりゃな」
 言っているその場から次々と火を点けていく。するとロケット花火がどんどん空に飛んでいく。空で爆発がこれまた次々と夜空で起こり飾っていく。
「どうだよ、これって」
「いきなりそれかよ」
「そういえば爆竹もあるよ」
 凛が爆竹を出してきていた。
「これもかなり多いけれど」
「それもどんどん火を点けてくのね」
「勿論だよ」
 また春華が答える。
「ほら、こうやってな」
「こうやって?」
「ああ、そうやるんだよ」
 本当に爆竹に火を点けて放っていく。凛もその春華に続いてやっている。
「こういうのってやっぱよ。多ければ多い程いいんだよ」
「馴れてるんだね」
「花火とか爆竹とか好きなんだよ」
 竹山に答える。話しているその間に爆竹がどんどん鳴っていく。やはり派手だ。
「昔からな」
「そうなんだ」
「ガキの頃からやってたんだよ」
「いつもなの?」
「ああ、いつもさ」
 やはりこの場でも爆竹を放っていく。流石に人には向けない。
「暇があるとやってたな」
「だから頭がそんな爆発したみたいになるんだ」
「ああそうさ・・・・・・っておい」
 半分何も考えないまま答えたがすぐに気付いて反論する。
「髪型は関係ねえだろうが」
「メイクだってそうだし」
「こりゃ姉ちゃんが昔やってたやつなんだよ」
「あんたお姉ちゃんいたの」
 恵美がそこに突っ込みを入れる。
「言わなかったか?前に」
「初耳だけれど」
「そうだったか?まあいいか」
 何か前に言ったような気がして首を傾げながらも答える春華だった。
「あたし三人姉妹の真ん中なんだよ」
「そうなの」
「そうさ。結構立場的に辛いんだよな、真ん中って」
 少しぼやいた言葉になっている。
「姉ちゃんも妹もおっとりしてるしよ」
「御前だけそんな感じなのかよ」
「そんな感じはねえだろ、おい」
 坪本に対してすぐに返す。
「そんなってのはよ」
「だってよ。言葉遣いだってよ」
「これ自然になったんだよ」
 本人の弁である。
「小さい時は男とよく遊んだしな」
「だからかよ、それは」
「ああ。それでなったんだよ」
「そうだったのか」
「それでか」
「そうさ」
 こう皆に返す春華だった。
「おかしいか?やっぱり」
「おかしいっていうかな」
「おしとやかっていうのがなあ」
 野茂と佐々がそこを言う。
「御前そういうのねえからな」
「何か山猫相手にしているみてえだよ」
「あたしは山猫かよ」
 流石に猛獣扱いされては不愉快になるようだ。
 
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