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デート・ア・ライブ~Hakenkreuz~

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第二十二話「来禅高校修学旅行・Ⅱ」

「漸くついたな!常夏の島!沖縄に!」

「…ではなくて或美島な」

安田のボケに士道は苦笑いで突っ込む。安田は沖縄から或美島に修学旅行先が変更した時最後の最後まで反対した男だった。毎日、担任の岡峰珠恵(タマちゃん)に食ってかかっており更には旅行会社に非難の手紙まで送っていた。最終的に安田が折れ皆との修学旅行を楽しむ方向になった。

「し、シド―!こ、これが海か!」

片や士道の隣では十香が興奮した様子で両手をバタつかせていた。

「十香は海初めてだったもんな」

「うむ!以前琴里や四糸乃と行ったプールもすごかったが海はもっと凄いな!」

「そりゃそうだ…ふぁ」

士道はそう言いながら欠伸を一つこぼした。かなり早めの集合時間だったため大して寝れておらず加えて飛行機内での十香と折紙の騒ぎ(十香が一人騒いでいただけ)のせいでろくに寝れずそれなりの眠気に襲われていた。

こりゃ今日の夜はぐっすり眠れそうだな、と士道は心の中で思いながらクラスのいる場所に向かおうとした時であった。

「ぬ…」

突然士道に背を向け海を見ていた十香が厳めしい顔をして振り返った。そこには先ほどまで無邪気に海を見ていた表情とは全くの別物であった。

「ん?どうした十香」

「いや、誰かに見られている気が…」

十香はそう言いながら辺りを見回す。釣られるように士道は周辺を確認する。周囲には来禅高校の関係者以外はおらず強いて言うなら遠くからこちらの方にカメラを向けて写真を撮っているカメラマンがいるだけであった。

「今のカメラじゃないのか?」

あの人さっきから俺たちの事結構撮っているし、と心の中で呟く。恐らく美少女である十香を前面に押し出したいのだろうと士道は考えるが当の本人は難しい顔のまま唸っている。

「ぬ~、」

十香は左右に首を振ると今度は上空を見上げた。

「…まだ、見られている気がするのだが…」

「え?」

「それも複数に」















「これが例の捕縛対象者か」

太平洋上空に一つの巨大な艦が飛んでいた。DEM社が保有する空中艦より小さく、シンプルな形状をしたその艦の艦首付近には黒と白で描かれた鉤十字が堂々と記してあった。

空中艦「グラーフ・ツェッペリンⅡ」。それがこの艦の名前であった。

そのグラーフ・ツェッペリンⅡの艦橋にある艦長席に座る初老の男は目の前にあるメインモニターに表示された捕縛対象者、五河士道を見て呟く。

ナチス時代の海軍提督の制服を着たその男はメインモニターから視線を外し自身の真下にあるコンソールを動かしていく。

程なく艦橋に取り付けられたスピーカーから独特の接続音が響き渡った。

「大尉殿、あと一日で捕縛対象者がいる島に到着します」

『…』

『えっと、大尉は分かったって感じだよー』

初老の男の言葉に返事をしたのは少年の声だった。決して大尉と言われるには適さない声は喋らない大尉に代わり返事をした。

「現在我が艦はアメリカやオセアニア諸国の目をかいくぐるため不可視迷彩(インビジブル)を展開し無音航行で進んでいる。その為多少遅れがちになるがそれでも明日の夜には遅くても到着する。そのつもりでいてください」

決して一つの艦を預かる艦長が大尉に対していうとは思えない下手に出た口調。知らない者が見れば驚く光景だが彼ら(・・)の中では決して珍しくない、それどころか当たり前とも言える光景だった。

『…』

『りょうかーい。大尉もそれで了承しているよー』

「艦長!捕縛対象者がいる島に異変が…!」

「何?」

艦長は艦橋下段にいるオペレーターの言葉にメインモニターを見る。そこには先ほどまで映っていた士道の画像は無く代わりに士道がいる島、或美島の全域を映した映像があった。

その映像には普通ではあり得ない速度で島を包むように動く雲の姿があった。それを見た艦長は「この任務、もしかしたら一筋縄ではいかないかもしれないな」と呟くのであった。
 
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