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阪神男

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第二章

「三塁側やと」
「すぐ傍やな」
「長嶋が嫌でも見えるな」
「正直嫌なもんやな」
「あいつにいつも打たれてるしな」
「それでや、あいつにや」
 その長嶋にというのだ。
「いつもヤジ飛ばせるやろ」
「そやからか」
「それえでお前いつも三塁側に行くか」
「そうするか」
「そや」
 それでというのだ。
「今日もな」
「そういうことやねんな」
「これで事情わかったわ」
「長嶋にヤジ飛ばしたいからか」
「それでやな」
「今日もヤジ飛ばすで」
 長嶋にとだ、岡田は笑顔で言ってそのうえでだった。
 実際にこの日も長嶋にヤジを飛ばしつつ観戦した、これも岡田だった。
 岡田は中学の時は中学野球大阪府大会で優勝した、そして村山の引退試合の前にだ。その村山から直接言われた。
「わしの現役時代最後のな」
「その時にですか」
「キャッチボールしてくれるか」
 その相手を務めて欲しいというのだ。
「そうしてくれるか」
「僕でええですか?」
「君阪神大好きやろ」
 村山は岡田に笑顔で言った。
「そやろ」
「はい、大好きです」
 岡田は村山に笑顔で答えた。
「ほんまに」
「そやからな」
 それでというのだ。
「最後にな」
「僕がですか」
「キャッチボールしてくれるか」
「村山さんにそんなこと言われたら」
 岡田としてはだった、誰よりも阪神を愛する彼なら。
「是非です」
「そうか、ほなな」
 村山は岡田の返事に笑顔になった、そのうえで岡田は村山の引退試合の前のキャッチボールの相手にもなった。このことも岡田にとっていい思い出となった。
 中学野球で大阪の覇者となった岡田は当然高校でも野球に励んだ、何と北陽高校で一年からレギュラーだった。
「あいつは間違いない」
「あいつは一年とかそういう問題やない」
「才能がちゃう」
「あいつはレギュラーや」
「そうせなあかん」
 こう言う者すらいてだった、岡田は一年生からレギュラーとなり。
 夏の大阪府の予選決勝でだ、何と。
 PL学園からツーランホームランを打った、これは先制となりチームの流れに大きく影響して北陽高校は甲子園に出場することになった、ここで岡田はまた言った。
「夢みたいや」
「おいおい、お前いつも甲子園行ってるやろ」
「それも子供の頃からやろ」
「三塁側におったんやろ」
「それでそう言うか?」
「夢みたいやって」
「それは観客で行ってや」
 岡田は仲間達に笑顔で話した。 
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