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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第55話 同調する悪夢


 
 夢を見た。小さい頃の震離が遠くで泣いてるのに、近づけない。直ぐ側に居るはずなのに、こんなに近くて、遥かに遠い。
 何度目かの瞬きで、小さい震離が、成長した……今の震離へ切り替わった。

 寂しそうにこちらを見たかと思ったら、困ったように、にひゃっと笑って―――


――side響――

 目が覚めるとそこには……

「……やっちまった」

 寝息を立ててるフェイトさんの顔が見えました。
 
 うわぁと、そっと両手で顔を覆うと熱くなってるのが分かるし、直前の光景を思い出すとまだ熱くなっていく。
 
 まーた俺は人の胸元で眠っていたのかと、恥ずかしくなるのを感じながら、眠ってるフェイトさんを起こさないようにゆっくりと抜け出す。これは正直な所助かったと喜んだ。

 しかし、昨日の事を全く思い出せん。眠くなって眠ったはずが、そのままこの時間まで来たらしい。

 とりあえず……お手洗い行きましょう。うん、2日連続はないって……ほんとマジで……。

 ―――

 一通り身だしなみを整えて、部屋に戻ってきたら……。

「響、おはよう」

「はい、おはようございます」

 なんかどっかで見たことあるような白いロングスカート型のワンピースに着替えたフェイトさんがそこにいました。
 
 時刻を見れば普通に朝。いつもなら朝練してるから、起きれるはずなのに……普通に寝過ごしてしまった。
 
「キャディ店長、戻ってきてないけど……何か食べる?」

「作るんでしたら何かお手伝いを」

「あ、私がやるから平気だよ。と言っても勝手に使う以上、簡単なものしか作れないけど」

 拒否が早かったなーと。
 今フェイトさん以上に小さくなってるから、危ないって判断されたのかな?
 
 とりあえず2人でキッチンの方へ向かって、簡単に調理を始める。
 俺は包丁とか火とか使わない、サラダを作ることに。フェイトさんは普通にベーコンエッグを作りながら、色々話をしてみる。
 流が料理好きなんだということを伝えて、他には日本料理も作れることも話した。
 ……なんというか、普通に話してると。また違った安心感というか、なんというかを感じてみたりしたけど……。まぁ、あまり気にしない方向で……。


――side奏――

『奏! 前!』

「え……って、うわ!」

 なのはさんからの通信――、注意を受けて慌てて停止。空……というより、低空飛行をしていた目の前にはコンクリートの壁が、ビルとビルをつなぐ渡り廊下があった。なのはさんからの注意がなければ気づかずにそのまま打つかってしまうという場面で声を掛けられた。

『……もう、どうしたの奏? 何時もならこんなミスしないのに、何かあったの?』

「い、いえ。申し訳ないです!」

 慌てて遠くに見えるなのはさんに頭を下げる。今の時間は私となのはさんで一対一の弾丸回避訓練(シュートイベーション)の最中だった。
 ティア達4人とギンガはここから少し離れたビル街でヴィータさんを相手に模擬戦……もとい、絞られてる最中。

 で、そんな中で私は……。

『……一旦訓練は終わろっか。おいで奏、ちょっとお話をしよう』

 モニターが開いて、画面の向こう側のなのはさんが苦笑いを浮かべてる。特に調子が悪いわけではない……だけど、気になることは確かにある。でも、それは……。

 いけない、そんな事無いはずなのに……。直ぐになのはさんの待つビルの屋上へ飛んでいって、適当な瓦礫に座るなのはさんの元へと向かって。

「申し訳ございませんでした!」

 直ぐに頭を下げる。ミスして突っ込んだのならまだしも、気を抜いてると捉えられても文句言えない。真剣味に欠けると叱られても仕方のない事をしてしまった。

 けど。

 ポスっと頭になのはさんの手が置かれて……撫でられて、思わず目が丸くなるし、頭を上げる事が出来ない。どうしようと考えてると。

「いいよ。珍しいことも有るんだねっていうのが1つ。何か悩んでる……って言うより、何か気になることでもあったのかなって思ってね」

 手が離れたのを感じて、ゆっくり頭を上げると。にゃははと笑うなのはさんの笑顔が見えた。

 気にかけてもらっているのに、話さないのは失礼じゃないかという考えが頭に浮かんで……。

 話すことを決意する。だけど、その前に。

「申し訳ないです。戯言だと斬っていただいてかまわないので、少し……話しても?」

「うん。私で良ければ喜んで。ほらほら座っていいから」

 空いた瓦礫に案内されるがまま、そこに腰掛けて……更にその隣をなのはさんが座った。膝の上に両手を組んで、少し考える仕草を取る。話すと決意したとは言え……、我ながらアホなことを言おうとしてるんだ。ちょっと緊張してしまう。

 軽く深呼吸をしてから……ゆっくりと。

「……今朝……いえ、寝た直後に夢を見たんです、何というか……その、震離が居なくなる夢を、居なかったことになった夢を」

 そこからポツポツと話を続けた。

 昨晩見た夢はヤケにハッキリしていてよく覚えてる。私達幼馴染の皆で行動してる時の夢だった。なんて事無い普通の休みだったり、皆でご飯を食べてたり。
 だけど、そこに居るのは6人のみ。震離のいた場所だけが、自然と消失してた。

 皆で写真を取れば、本来居るはずの震離の場所は自然な形で背景が写っていたり。皆で食事をすれば、震離が居るであろう場所は無かった。
 極めつけが夢の中の皆が……響でさえ、震離と言う人を認知していなかったこと。これが一番しんどいくて、辛かった。

 それでも私は震離を覚えてる! とか考えてると、不意に現れた震離が、ただ悲しそうに涙でぐしゃぐしゃになった顔でごめんなさいと、呟いて背を向けて消えてったこと。 

 よくある夢だというのなら、悪夢にも程がある。何よりも居なかったことにしていた自分が嫌になるし……それを受け入れてた皆も……嫌だったし、悲しかった。

 だけど、嫌な夢を、悪夢を見たからって……。物理的に気が抜けるのとは話が違うでしょう……。

 話してると途中から、なのはさんの方を怖くて見れなくなってきた。訓練する気があるのかって叱られてもおかしくない。その為のお話……かも知れない。

 話し終えて、しばしの無言……。
 違うんです。やる気が無いとかそういうわけじゃなくて……、ダメだ。全部言い訳になってしまう。
 隣に座るなのはさんが、無言で立ち上がって、俯く私の前に立つ。

 叱られるような事をしたとはいえ、やっぱり怖いなぁと。さっきから冷や汗が止まりませんし……。

 そして、ぽんと、頭に手を置かれて一言。

「教導官としては、もっと気を入れなさいというのがあるけれど。私個人としては……ちょっと難しいなって」

「へ?」

 お叱りの言葉がきたーと思ったら予想外の言葉に思わず顔をあげてしまう。

「私も夢でそういう事……何か危機のような事を感じたことがあるし。何より、夢が切掛で魔法を知ったようなものだから」

 ニコッと笑うなのはさんを見て、思わず呆気に取られる。PT事件で魔法と出会ったとは聞いたことあったけど……まさかその事を言ってるのかな?

「それに、そろそろ震離と流から何かしらの連絡が来るかもしれないし、フェイトちゃんと響も帰ってくる頃だと思う。皆ちゃんと帰ってくるといいんだけどなぁ」

「……えぇ。本当に」

 流との繋がりはまだ薄いからか、夢には見なかった。だけど、あの震離の夢はなんだったんだろう?

 何事もなければ良いのだけれど……。


――side響――

 ジリジリと、ベッドを背にフェイトさんから離れるように距離を取る。あちらも、ジリジリと少しずつ距離を詰めてくる。その手に細い紐のような白いリボンを持って。

 事の発端は。ご飯食べている時に黒髪のツインテールも似合うんじゃない? と言われたこと。初めは普通に拒否、と言うか流石にそれはちょっとってなったんだけど。
 食べ終わって、部屋に戻る際、どこからか取り出した白いリボンを持って、俺の手を取って一度でいいからやってみようよと詰められる。

 申し訳ないけどって、断ってたんだけど……。徐々に誘い方が激しくなって、今ではすっかり……。

「一度でいいからやってみようよ、ね?」

「その一度でいいからが嫌なんです!」

 くそう、フェイトさんを躱して扉にたどり着ける気がしないっす。というか、隙が無さ過ぎて抜けれる気がしない。

「……分かった。じゃあ諦める」

 悲しそうにするフェイトさんに若干の罪悪感を感じた―――のが間違いだった。

 一瞬で消えたと感じた頃には、瞬時に前に詰めらたと同時に両手首を取られベッドに押し倒されて。

「捕まえた」

「……ぇ」

 正直驚きました。こんなに早いとは……と言うか、こんなにも分かりやすい引っ掛けに掛かる俺って……。 
 
「さて、響?」

「い、ぃや……」

 いつもの様に笑ってるはずのフェイトさんがの笑顔が、何処と無く威圧感……というより、ちょっと恐怖を感じる。何処と無く声まで上ずってしまうし。

 だけど、そんな俺とは裏腹に、俺を抑えてるフェイトさんは……。

「……ぁ」

 俺の顔を覗き込むフェイトさんの顔がどんどん赤くなって。グラグラと揺れてると思ったら。フッと力が抜けて俺に覆いかぶさる。

 体を重ねられてるという恥ずかしさもあるし、白いワンピースにシワが付くとか色々思う所はあるけれど。

「フェイトさん? あの、恥ずかしいんですけど?」

「……」

 あれ? 返事がない。抱きしめるように覆いかぶさっているから、顔が隣にあるのは分かるけれど……。うまく体を動かせないし、フェイトさんの顔を伺うことも出来ない。

 モゾモゾと体を動かそうにも押し倒されてるせいで、体を動かせないし、抜け出す事も出来ない。

 あれ? この状態で動けないって……色んな意味で、やばくね?
 
 
――sideシャーリー――

 響の実家に有ったと言われる2つのデバイス。一対の夫婦刀のアームドデバイス、暁鐘と晩鐘。そして、融合騎。

 そのスペックを見た時素直に感動した。アームドデバイスは間違いなく現存しうるデバイスの中でも相当古い物だ。
 はやてさん、正確にはヴォルケンリッターの皆さんのデバイスも古いもの、でもこちらは違う。同じ古代ベルカのものと言えど、その構造や耐久は現代の比にならないほど高いスペックだ。
 カートリッジシステムを入れてるわけでもない、特殊な効果……はまだ不明だが、調べた限りではないと思う。だが、単純なワンオフ機、使い手に完全依存のデバイスなど見たことがない。簡易AIすら入っていないから、防御を始めとした魔法は全て自分で使わないといけない。
 強いて言えば、高性能な自己修復機能だけが入っている。
 形態変化も入っていないし、連結機能も無い。本当に刀をデバイスに収納したと言う表現が似合うデバイス。

 だが、驚いたのは魔力伝導率や、その切れ味に、何よりも対魔力に置ける能力だ。1つ目の、魔力伝導率は脅威の90%を超えている。そして、2つ目は切れ味だ。二本共一度現物を見ようと取り出して抜いてみた。
 暁鐘は緋色の刀身、その名の通り、夜明けから、朝になる時の夕焼けを連想する綺麗な刀身だ。晩鐘はその逆、黒い刀身。夕方から夜になるような、そんな連想をする刀身。
 けど、この二本の上に紙が一枚落ちたら、その紙が自分の重みで切れてしまった。他にも刃を下に向けた状態で落としたら、床を貫いてしまった事。怖くて刀身を触れない。ちょっと触るだけで切れてしまいそうだから。

 そして一番驚いたのが、対魔力の効果だ。二本共、魔力攻撃を斬って落とせる事が分かった。魔力変換を持った人の、炎や雷、氷は防ぎきれないかもしれないけど、単純な魔力攻撃なら斬れるという事は、防御を容易に抜ける可能性があるという事だ。

 でも不可解な点が1つある。スペック上、その機能を確認しているけれど、実際に発動している様子は無い。それどころか今の所、頑丈で切れ味の良い刀でしか無い。
 その機能を確認してからシールドを置いて実際に機械のアームを使って斬りかかったり、魔力スフィアを展開しても普通のデバイスと同じようにしかならず、いつかのシグナムさんが魔力砲を斬った時の様にはならなかった。

 さて、アームドデバイスでもこれほどだった。本命の融合騎ちゃんを見て、まず私とマリーさんは素直に思いました。

 マジかよ。

 ただ、その一言。名称はないが、この融合騎ちゃんは、リインさんの様な八神家向けのワンオフモデルとは異なり、条件を満たせば誰とでも組める子だ。
 六課に入隊してきた人達を調べて、はやてさんを始めとした、八神家の皆さんが居ない時の有事の際にリインさんとユニゾン出来るかどうか調べたが、八神家以外では1人(・・)しか該当していない。

 だが、この子の求める条件とは、魔力を保有するか否かという、当たり前のことしか要求しないことだ。適合率はやはり響に向けて作られているせいで、他の人達では少し劣るが……それでも一定の水準をキープできうる子だ。
 何より、まだ心を宿していないだけで、既に体は完璧と呼べるレベルで完成されていて、後は心を吹き込むだけ。なのだけど。ここで問題が1つ。リインさんが生まれた時もそうだったように、このデバイスは人のように歩けないし立てない。
 その事から、リインさんに協力を依頼して、その蓄積データをこの子に内蔵した。
 そうしないと、自立飛行は出来ても人のように歩くことも、立つこと、座ることが出来ない。それだと、人とユニゾンした時に困ってしまう。

 そして、この子の一番の効果は、ユニゾンした相手に、内蔵した魔力を使用させることが出来る事。わかりやすく言えば外部バッテリーの様な事が可能だ。究極的に言えば、魔力が尽きた人の元へいき、ユニゾンして魔力を分け与えられるというのは凄いことだし。
 この子に内蔵された戦闘モーションも驚いた。響とは違った居合のモーションも内蔵されてて、戦闘面に於いては問題ないと判断。

 だからこそ、後は……新規で人格を作るか、デバイスから人格を移すかの二択を改めて相談したいし、アームドデバイスの方は渡しても問題ないというのがわかっているから後は説明して渡すだけ……なんだけど。

 響がフェイトさんと任務で出てから、帰って来てないし、直接現物を見せながら説明したいから意味が無いんだよねー。

 なんて事を考えながら、朝ごはんをロングアーチの皆や、時雨達と食べてるんだけど……。

「……あれ、どうにか出来ない?」

「え、無理ですよ無理」

「だって今まで見たこと無いくらい皆沈んでますもん」

 私とアルト、ルキノで小声で会話をして、隣のテーブルを見ると。時雨達4人がお通夜に近い様子で朝ごはんを食べていた。誰かが落ち込む……調子が悪いことは今までもあったし、その度に4人の誰かがフォローしてたけど、今回は4人共雰囲気が死んでる。
 グリフィスも今までに無いことだから、どうしたものかと悩んでるし。

 私達もどうしようか、と悩んでいたら。

「おはよう……って、お前らどうした?」

 そこから朝食の乗ったトレイを片手にヴァイスさんがやって来て、思わず私もアルト、ルキノもガッツポーズ。この空気を変えてくれることを祈って。

「え、あぁ。いや、何か4人揃って嫌な夢みたなぁって」

 何時にもまして元気の無い煌が説明すると、他の3人も止まってた手を動かして朝食を摂り出す。自然な流れで4人のテーブルの空いた席に座るヴァイスさん。こういう時の気遣いって本当に凄いよねと、改めて思う。

「なんだ? フラれた夢か?」

「まさか。それも嫌ですけど……幼馴染が1人欠けてるのに、それを当然としてる夢だったんスよ」

「自分が居ない夢とかか?」

「いえ、俺達は居たんです。響も奏も居て。ただ何でかわからないんですけど、震離だけが居ないのに、それを当たり前として、過ごしてて、一番気にかけるはずの響もそれに気づいてなかった様子が死ぬほど気持ち悪かったんですよ」

 はぁっと深いため息が出てる。確かにあの7人は幼馴染だって言うのはもう分かったことだけど……まぁ、夢の中で今まで一緒に居た人が居なくなってるのはやっぱり堪えるのかな?
 私自身そう言う夢を見た経験が無いんだけど……、仮に私で考えると……フェイトさんから居ないものとして扱われたり、リインさんに無視されたりすることなのかな?

 それはそれで嫌だなぁって。

「あぁ、でも夢……って割に4人共見たんだっけか。それはキツイな……。だけど、基本夢って悪い夢って反転していいことが起きる前触れだったりするとかって、この前雑誌で見たぜ?」

「そうなんですかねぇ。まぁ、いい加減シャッキとしますか。おらーお前らも切り替えていこーぜー」

「おー」

 煌の力の無い掛け声と共に、他の三人も元気はあまり無いけど、返事を返してる。

 これで切り替わってくれたらいいんだけどなぁ……。そろそろフェイトさんも帰ってきてもいい頃なんだけどなー。

 何にせよ。最近のフェイトさんは見てて可愛いから、もっとアタックを。チャンスをものにしてくれると嬉しい。バリバリ仕事のできる人が恋に狼狽えてるのは見てて面白……もとい、応援したくなるしねー。 
 

――sideフェイト――

「本当にごめんね?」

「いえいえ、仕方ない? ですし……まぁ、あのタイミングで?っていうのはありますけどねー」

 あははと隣で苦笑いをしてる響に何度めか分からない謝罪をする。あの後響を捕まえて押し倒した所までは良かったけど……甘いような、良い匂いがしたと思ったら意識が途切れちゃったんだよね。
 その結果響を下敷きにしてしまって、私が目覚めるまで動けなかったようだし……。まぁ、ツインテールは諦めて、そのかわり抱っこさせてくださいってお願いしたら、それくらいならって受けてくれて、膝の上に座って後ろから抱っこしてみた。
 本音を言うとエリオやキャロも抱っこしたいんだけど……上手く言えないんだよね。その事響に伝えたら。

 ―――案外キャロなら喜んでくれるんじゃないですか? ただし、断られたら一番説得に時間が掛かりそうなのもキャロですけど。

 それには私も同感。と言うより、普通に言っても断られそうだし……。いつか2人も抱きかかえることが出来たらなぁって。ヴィヴィオはなのはが良く抱きかかえてるし、偶に私も抱きかかえるけど……そのせいなのかな? 抱っこしたいなぁって思ってしまうのは。
 
 よし、話が来てたしちょうどいいから話しちゃおうか。
 
「さて、本題で。響達の本来経歴って地上では分からないみたいなんだけど。本局の方じゃそれなりに知れ渡ってるみたい」

 眉間にシワを寄せてしぶそうな顔に。

「……その時点であまり良い予感はしないんですけど、それで何か合ったんですか?」

「うん。六課が終わる前に紹介して欲しいって、はやての所に依頼が来てるよ」

 バルディッシュにお願いして、響にそのリストを見せる。

「一番はクロノが。他にも色んな所から来てる。事務組4人にもそれぞれ来てるし、震離や奏にもね」

 ふと、響の様子を覗くと、何処と無く安心したようなそんな笑みを浮かべてる。

 そうだったね。それぞれ夢に向かってたのにそれを潰したって、道を消したんだって。

「……まぁ、俺に関しては過大評価ですよ。でも俺以外の皆にも来てるのは嬉しいですし、何より選択肢が増えるのは良い事です」

「過大評価……ではないと思うよ。少なくとも響達7人には色んな所から話が来てるってことは確かなことだし。六課に戻ったら改めてはやてから話があると思う」

「感謝します。ハラオウン隊長」

 立ち上がりこちらに向かって敬礼をする。姿は小さな女の子だけど、しっかり響だなって言うのが分かる。いざという時にはキッチリしてるしね。

「それと……シスターシャッハから貰った途中経過のデータを見て悪い予感は当たっちゃった」

 今度は違うデータを表示する。機密メッセージだけど、響なら問題ない。
 それを少し見た後、なんとも言えない表情に。

「まだ、途中経過なんだけど……ヴィヴィオのベースになった人は、古代ベルカの誰かだって」

「……赤と青のオッドアイ。そして、古代ベルカってことは……聖王の一族の可能性が高い……と」

「そう。だからこそ、アヤさんがヘリを壊してでも連れて行こうとしたのかもしれない。
 深読みだったらいいんだけどね」

 そう考えると色々納得できる。あの日六課に来たのは恐らく情報を抜くため。そして、その最中に子供を保護したということを聞いてからヘリに乗り込んだ見たいだし。
 そして、実際にヴィヴィオを見て確信を持ったからヴィヴィオを奪取した後、ヘリを内部から爆発させた。
 そう考えると納得できるし、恐らくヴィヴィオをお土産としてスカリエッティと合流しようとしたと繋がってしまった。

 ただ、これはあくまで六課が単体で調べてること。流石にこれを本局や地上に報告をしたら、今度はヴィヴィオの身に非ぬことが起きるかもしれない。
 きっとこのデータを受け取ったはやても同じことを考えてくれてると思いたい。

 万が一にでも、聖王のクローンだとしたら……それは大変なことになってしまう。もっと言えば、聖王教会が大変な事態になる。
 教会のシンボルである、聖王が居るとなれば……いや、これ以上は深読みだ。

「まぁヴィヴィオ見てると、よくいる普通の子供って感じですけどね」

「うん。普通の女の子で、普通にお母さんに懐いてる女の子。それが六課の見解」

 なのははヴィヴィオを引き取るだろう。
 今は公開意見陳述会の用意や対策で忙しいってことも合って、あとに回していると考えたい。

「……もう4日。後4日、どっちでしょうね?」

 背伸びをしながら天井を見上げて響がポツリと呟いたのをきいて、私の眉間に皺が寄るのを感じて。

「……後にも先にも外部からの攻撃があるとしたら陳述会だけだよね。地上も海も全部が見てるこの大きな会議。しかもアインヘリアルの運用に焦点を合わせてる。この場で襲われて、力を示されたら大変な事になってまう」

「だからこそ、こんなに皆さんで警戒してる。一番いいのがそんなもん起きずに、警戒しすぎたねって笑い話になればいいんですけど……」

 おや、ジト目でため息を吐いてる。

「そうすると、再三地上の各部隊に協力を要請してたはやてさんの評判が落ちますし、難しいところですね」

「……うん。ちゃんと評価してくれてる人も居るけどね」

 ため息混じりにそう言われると、何とも言い返しにくい。

「人のこと言える立場ではないですが、俺ははやてさんの今後が心配です。今回のこれが取越苦労で終わった日にゃ、二度と部隊任されない可能性だってあるんですし」

「……うん、私達にとっても夢の部隊。でも、それははやての夢でもあるからね」

「実験部隊にしても、しっかりやるべきことはやっていますし、他のロストロギア専門の部隊としては全然役に立っていますし評価もされています。
 ……しっかりと、掴める場所は掴んで、離さず胸に仕舞わないと、俺みたいになっちゃいますよ」

「……そう。だからこそ」

「えぇ、ちゃんと支えないと。取り越し苦労だった場合は色々頑張らないといけないですしねー」

 これからなんだ。私達もはやても。
 
 でも、それ以上に。
 
「ちゃんとはやての事も考えてくれて、ありがとうねー?」

「え、や……」

 響の頭に手を伸ばして撫でて……やっぱりすごく髪の毛がサラサラだなと。

 ウズリと何かを感じる。

 いやこの疼きは……、色々試してみたいなぁ。そんな疼きだ。ならば、その疼きに従って。

「……髪、梳いてもいい?」

「……構いませんけど、ちょっと顔怖いですよ?」

 言われて気付いた。眉間に指を当てると皺寄って固まってる。

「そしたら一端降りて、待ってて。すぐ用意するから」

「了解です」

 常備してある化粧ポーチを手にとって……フフフ。

 は!? 変な笑いが漏れてたような……あ、大丈夫見られてない。
 
 
 
――sideはやて――


 さー、今日も今日とて、書類整理を進めなければー。

 なんて考えてると、ピコンと私宛のメールが届いて、差出人を確認してホッと一安心。

 内容はシンプルに一言だ。

 ―――上手く行けたので、当日には風鈴と一緒に帰ってきます。

 震離からのメッセージに返信を直ぐに書いて出す。こちらの内容もシンプルに一言。
 当日ならば本部ではなく、予定通り六課へ戻ってきてください、と。

 また直ぐに返事が帰ってきて。

 ―――了解です。それでは失礼します。

 その内容を確認してから、ホッと一安心。これは私の予想やけど、多分色々向こうで合ったのを震離と流が頑張って説得してその上で二人で戻ってくるんやろうなって。
 本来なら第三者を入れないはずの場所に震離を送ったから、手荒い歓迎とか合ったかもしれへんな……戻ってきたらしっかり労わんとね。

 後は、地上本部の動きやねー。一応再三警戒するようにと伝えてるのに、一向に伝わらへんし、鼻で笑われる始末や。ナカジマ三佐の108部隊は本部警備や無くて、交通規制とかそっちの方に回されてもうた。
 この前六課に査察しに来た、人達も今回は皆出払うみたいやし、割りと状況は悪すぎて頭が痛くなってくる。

 そう言う意味なら、震離のメールは少し救われたなぁと感じる。流も帰ってくるという事は、特殊鎮圧部隊も地上が落ちるかも知れないと警戒してるからかもしれへんし。もしかすると味方になってくれるかもしれへんなって。

 色々メールを出して震離に聞きたいことはあるんやけど。多分その情報1つでも大変貴重なこと。特殊鎮圧部隊が存在するという裏付けになってまうから、出来へんよね……。

 せや、シャーリーから声かけられてたな。響の融合騎の事でちょっと相談があるって。

 ちょっと行ってみようかな。


 ―――



 ピピと、はやてのモニターにメールが届くと同時に、モニターに展開される。

 差出人は、ミッド語で書かれたシンリ・カナミ。その内容は。

『追伸、素敵な贈り物と一緒に戻ります』

 その表示のまま、プツリと画面が暗くなった。

 作業中の書類データが消えたことにより、はやての悲鳴が六課に響き渡ったのは言うまでもない。



 
 

 
後書き
 長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。 
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