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戦国異伝供書

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第五十三話 三度南へその八

「信濃を元に戻し」
「そして武田殿をですか」
「そうです、仕置きを行い」
 関東管領としてというのだ。
「そうしてこそです」
「天下の法と義は成り立つと」
「そうでありますので」
 こう雪斎に言うのだった。
「この度はです」
「武田殿をこの川中島で」
「はい、仕置きを行うべきとです」
「上杉殿はお考えですか」
「左様です」
「そうですか、ですが拙僧の見たところ」
 政虎にも言うのだった。
「今戦をされても」
「仕置きは出来ないと」
「はい、ただこの川中島を荒らし」
 戦でというのだ。
「そして多くの民を苦しめ兵達もです」
「血を流すと」
「そうなりますので」
 だからだというのだ。
「この度はです」
「無用な戦になるからですか」
「はい、国と民のことからです」
「兵を退けと」
「お願いします」
 こう政虎に言った、だが政虎が動かぬと見て雪斎はこうも言った。
「この度は申し上げましたが我等がお館様のお考えです」
「今川殿の」
「はい、駿河と遠江の守護であられ」
 関東管領として幕府の権威を絶対としてその下で動いている政虎が従うしかない言葉をあえて言ったのだった。
「若し足利様に何かあれば」
「その時はですね」
「将軍を継がれる方として」
「わたくしに言われますか」
「はい」
 そうだというのだ。
「そうです、武田殿にも」
「そうですか、では」
「はい、お館様は公方様にもお話出来ますし」
「では」
「この度はどうか」
「公方様のお言葉ともですね」
「思って頂ければ」
 こうも言うのだった。
「有り難いので」
「そうですか、では」
「はい、この度は」
 どうかと言うのだった。
「お願い出来ませぬか」
「公方様のお話が出る前に」
 政虎は将軍に苦労をかけさせるよりはと思った、義元の血筋のことも知っていて彼が実際に将軍家と話が出来ることも知っていた。ここで自分が首を横に振ると雪斎は実際に義元に将軍の仲裁を頼むとだ。
「ここは」
「左様です」
「そうですか」 
 政虎は雪斎の言葉に彼の考えを見た、それでだった。
 暫く考えてからだ、こう雪斎に答えた。
「わかりました」
「それでは」
「はい、この度のお話をです」
 それをというのだ。
「受けさせて頂きます」
「そうして頂けますか」
「はい、ただやがてはです」
「信濃をですか」
「必ず元に戻します」
 室町幕府が定めた通りにというのだ。
「その様に」
「そのことは、ですか」
「小笠原殿、村上殿他の信濃の方々に誓いました」
 その彼等を見ての言葉だ。 
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