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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第50話 現状把握


 ――うそ……だと、言って下さい……今は夢を見ているだけだって。誰も! 居なくなってないって! あいつらは生きてるって!!
 
 遠くで誰かが泣き叫んでいる。
 
 ――■が死んでも良いんだ。■は死んだって構わないんだ……だから、だからぁ……■から■を奪わないでぇぇ……。
 お願いだから……コレは夢だって……皆はいるんだって、言ってくださいよぉ…■■■■さん!!
 
 悲痛にまみれた叫び声は、声の高さから女性だと分かる。
 わからない。
 女性にとって大切な人が死んだということは分かる。だが、それがどう俺と関係しているのか。
 知り合いの声……ではないと思う。だが、この女性の顔が見えない以上知り合いではないと断言できない。
 しかし、それでもだ。
 
 俺はこの人を知らないのに、何故……遠くから見ているんだろう? と。
 
――side響――
 
「……変な……夢」

 ぼーっと、木で出来た天井と、回っているファンを眺める。
 頭がクラクラする。いや、それ以前に……何処だここ?
 
 思い出せ。意識を飛ばす前何があったのか。何をして……。
 
「へいとさ……うゔぇ?!」 
 
 ベットから降りようとしたら顔から落ちる。そんなに痛くないはずなのに、目の前が涙で滲むのが分かる。
 
 なんで? 意味が分からない。こんな事で。フェイトさんは? 何処ここ?
 
 待て、落ち着け俺。なんか気を抜くと、思考がごちゃごちゃになる。
 やべ……なんか嗚咽混じりな泣き方になってきた。堪えろ俺。なんかこう……なんでこんな感情が操作効かないんだ?
 
「響起きた? ……って、大丈夫?!」

 ガチャリと扉を空けながら誰かがやって来た。
 しかし妙だと思ったのが、声はフェイトさんの筈だが……やけにトーンが高い。 
 
「……ぁ、へいとさん……ぐすっ」

 恥ずかしいわーと思いながら顔を上げれば。
 
「大丈夫? 響?」

 ツインテールに纏めた金髪の……子供がそこに居たのと、やけに周辺の物が高く見えるのは一体?
 と、言うか。
 
「……だれぇ?」

「……ぅ」

 急に顔を覆うこの子は一体? と言うかチョット待って。俺の声……高くね?   
 
 
――sideフェイト――
 
 目の前で涙目の小さい子……もとい、響が首を傾げているのを見て、ちょっと込み上がるものが。
 
 違う、そうじゃない。
 
 コホンと咳払いをして。倒れてる響に手を差し出して。
 
「立てる?」

「……はい、立てます」
 
 おずおずと手を伸ばして、私の手を取って一緒に立ち上がれば。
 
「……ぁれ?」 

 私のほうが背が高くなる。と言ってもいつもの身長に比べれば全然小さいけど。
 
「なん……あれ? 背が……え?」

 ……やっぱり混乱するよね。私も目を覚ましてからすっごく慌てたもん。
 響に視線を合わせるために、腰を落として。
 
「響、落ち着いて聞いてね?」

「え、あ……はぃ」

 ちょっと深呼吸して、ゆっくり落ち着いて。
 
「私は9歳頃まで体が縮んで、響は推定6歳位まで縮んで、女の子になってるの」

「……は?」

 ……だよねぇ。そうなるよねぇ。
 私も受け入れるまで結構掛かったもん。
 
 真っ青な顔で、静かに自分の体をペタペタと触って。
 前を裾を大きくめくろうとする手を、それは良くないと止めて。
 
「じょうだんでしゅよね?」

 体の変化についていけてないのか、ろれつが回っていない。 
 私はまだ、対応圏内だったけど……響の場合は余計にキツイと思う。そもそも性別が変わる。そして、その上幼くなるという。
 
 この前の見た響の子供の頃とそっくりなのが可愛いんだけど。
 
 それ以上に、うまく感情がコントロール出来てないらしく。顔見たらすぐに分かる。それどころか。涙目になってるけど……多分気づいてないんだろうなと。
 
「本当。事実私は縮んじゃったし、響も小さくなって、花霞にスキャンしてもらったけど……女の子になってる」

「……う、うそぉ……」

 ポロポロと涙を流してる事に気づいて、なんで泣いているのか分からない様子で自分で拭っている。
 正直、私も判断を誤った。その結果がこれだ……。
 
 今居るのはミッドのとある喫茶店。このお店を経営している元管理局員のマスターに助けられた。 そのマスターの名前はキャデラック・フリートウッド元二等空佐。またの名を、ブルートパンツァーと恐れられていた第一線で戦っていた人だ。
 
 10年前、とある件で会った事がある……あるんだけど。
 
 まさかメイド服着て、喫茶店の店主をしているということは知らなかったなと。しかも、喫茶店S.H.F.って、何かで聞いたことあるけど……知らなかったなぁと。
 昔見たイメージと違い過ぎて気づかなかったかな? 名前も本名ではなくて愛称のキャディってなのってらしたし。
 
 そして、クロノから聞いた事だと。この人は……。
 
「……きゅぅ」

 あ、響が情報量オーバーでもう一回気絶しちゃった。 
 
 ――――
 
『申し訳ない。フェイト執務官……これは君たちを派遣した私のミスでもある。本当にすまない……!』

「い、いえそんな! どうか頭をお上げ下さい閣下!」 
 
 まさかの人物に頭を下げられ、慌ててしまう。隣でキャディさんがニコニコと笑っているのが気になるけれど……それ以上に、ラルゴ・キール閣下に頭を下げられるなんて……とんでもない。
 
「私と、ひ……緋凰の確認不足が招いた事です。どうかお気になさらないで下さい」

『いや。公開陳述会が近いこのタイミングで、この事態……儂が依頼を出さなければ防げた事態じゃ。
 機動六課にはやらねばならぬ事があるというのに……すまぬ』
 
 歯ぎしりが聞こえそうなくらい、凄まじい表情をしてて……私の血の気が引いていくのが分かる。
 
「たいちょ? 謝罪は良いから。この後どうするつもり? 流石に六課にこれを報告したら不味いんじゃない?」

『うぅむ……』 
 
 六課に戻っても良いんだけど。正直少し恥ずかしい事と、戻ればライトニング小隊が機能麻痺することが確定してしまう。
 それ以外にも、様々な所に影響を及ぼしてしまうし、下手をすればロストロギア相手に不用意な行動をしたと咎められ、はやての足を引っ張ってしまいかねない。
 
(デバイスの身で失礼致します。フェイト様?)

(へ? あ、どうしたの花霞?)

 不意に響のデバイス、花霞から念話通信を貰ってちょっぴり驚く。

(ロストロギアの件なんですが、あのロストロギアはキャディ様が封印処理しましたが……あれが発動したとき、流様が変わったときと同じ反応でした。なので)

「それじゃあ、二、三日もあれば戻れる……?」

(おそらく)

 目の前が開けたような気がする。ということはだ。
 
「閣下、そしてキャディさん。少しお話が――」 

 それならば、と、お二人に相談を持ちかける。


――side響――

「……はっ?!」

 ガバっと起きれば、さっきと変わらない風景に、自分の格好をよくよく見れば自分のバリアジャケットの一部。和服の外装を纏ったままだ。
 ゆっくりと周りを見れば、フェイトさんは居ない。その間に、もう一度自分の体を確認して……はい。かれこれ17年ほど付き合いのある子が居なくなっていました。
 
 マジかぁと……動揺が止まらねぇ。そもそも此処が何処か分からない不安が拭えない。
 フェイトさんが普通にしてたってことは、此処は安全な場所?
 駄目だーわっかんねぇ。
 
[二度目の覚醒ですね主?]

「あー花がしゅみ……ろれつが回らないー。俺本当に女子?」

[はい。ただし流様と同じパターンかと。なので……]

「ということはすぐ戻れる、本当?」

 ……考えたことが普通に口から漏れた。何だこれ?
 
[しかし主? 本当に色々幼くなっていますね?]

「……うっさい」

 一番自覚してますよー……いや、それよりも。
 
「花がしゅ……花が……はな。現状教えて?」

[あら。私のニックネームで呼んでくれましたね。ありがとうございます]

 え? はなって略称つけたっけ? まぁいいか。
 
 で、話を聞いて驚いた。
 
 まず地下で光を浴びた結果、俺が最初に変わって、次いでフェイトさんも幼くなってしまったらしく、そのまま二人して気を失って居た所、元管理局員のキャデラック・フリートウッドさんが助けてくれて、そのままミッドのお店まで連れてきたとのこと。
 そして、此処はそのお店だとのことだけど。この時点でいくつか疑問が。
 まず、なんであんな所に元管理局員が? と考えたが、フリートウッドという名字に心当たりがある。
 今回の依頼を出してきた上層部を継いでくださった、カテラ・フリートウッド事務官と一致したという事は、知り合いの可能性がある。
 もっと言えば、閣下とも繋がっている可能性が高い。もしかするとその関係で手助けに来た?
 
 まぁ、それは一旦置いておこう。駄目だ、関係性考えだしたらきりがないのだけど……。次の問題はフェイトさんがそれを信じたということだ。
 俺は名前を聞いて、仮説を立てることが出来たけれど。フェイトさんが信じるに足る何かがあったのかということ。
 
 これについては花霞から伝えられた。
 フェイトさんと、キャデラックさんが昔の知り合いとの事。ただしフェイトさんは思い出すまで時間がかかったらしいが……。
 それを踏まえて信じた、と。正直それはどうかと思うが……俺が立てた仮説も合わせりゃ信用出来るなーと。
 
 さて、疑問は解決したが。これを六課に持って帰れるかと言えば……正直不味い。まず移動すれば少なからず現状を六課関係者以外の第三者に見られる可能性が高い。
 本来ならきちんと報告せねばならないが……正直今の六課では不味い。遺跡調査の結果、遺跡崩落という結果を出し、先日は封印処理を誤り、教会シスターが裏切る現場に居合わせてしまった。
 更には、ヴィヴィオを助けたあの日も、レリックの片割れを奪われたという認識をされてしまっている。
 つまるところ、失敗続きと判断されている。勿論人名優先で大体に理由を着けることが出来るが……印象は悪いままに変わりはない。

 その上……フェイトさんがロストロギアの被害に合いましたと報告して、六課内で秘蔵しても……どこからか漏れる可能性が高い。

 さて、これをどうするかと考えていると。
 
「響ー起きたー?」

 かちゃりと扉を開けて入ってきたのは、金髪の子供……もといミニフェイトさん。
 
「……すいません。なんとか起きました」

「あ、あはは……まだ納得出来てないよね。そうだよね」

 いや、なんで思考読まれた? 
 
「顔に出てるよ? すっごくわかりやすく」

「……え? 本……当ですか?」

 クスクスと笑われる。
 いや、それ以前に気になったのが。
 
「……なんでそんな格好されてるんです?」

 ……あまり言いたくないが、かなり破廉恥な格好をされてるなーと。
 黒いマントを羽織っているが、その中身は水着かな? と思えるほど薄く、腰には大きめのベルトにスカートっぽい装飾あるけど……意味あるのかなー?
 
「? 昔のバリアジャケットだよ? バルディッシュの内部データに保存されてたから、丁度いい服も無かったしね」

 ……嘘やん。
 
「む。これでもちゃんと戦い抜けましたよー。何なら今度シグナムに聞いたらいいよ。シグナムとよく試合してたから」

 ……そんな紙装甲のお手本みたいなもので!?
 いや、速度特化だからか? でも、そんな当たれば落ちる格好で? マジかやべぇ……。
 
「本当だよ? それは置いといてね。ね、一つ決めたことがあるんだけどいい?」

「はい。何でしょう?」    

「しばらくね。此処にお世話になろうかなって」

「……はい?」

 ……言ってる意味がよくわかりませんでした。
 
 

 
後書き
 非常に短くなってしまいました。大変申し訳ございません。
 長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。 
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