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おぞましい見当違い

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第四章

「わしの方はな」
「そう言うか」
「わしは一つの結論に至ったからな」
「結論?」
「そうだ、人は何故裏切られ行き詰るのか」
 自分が受けたことからの言葉なのは明らかだった。
「それは弱いからだ」
「それが答えか」
「強い、理性も何もかもを完全に捨てて己の野生を完全に開放すれば」
「強うなるか」
「そうだ、わしはその結論に至った。それでだ」
「この研究所でか」
「研究所全体を使って実験をしたのだ」
 そうしたというのだ。
「獣やモンスター達を隔離していたのを開放してだ」
「ガスも撒いてか」
「完全に自由な状況にしてみた、異世界から悪魔や天使も召喚し」
 見ればそうした装置も所長室にあった。
「そしてだ」
「悪魔や天使も実験に使ったんやな」
「すると見ての通りだ」
 まさにというのだ。
「彼等は理性がある時より見違えるまでに強くなった」
「そしてそこまで強くなればか」
「弱さとは無縁になる、弱くなければ」
「浮気されんか」
「行き詰まることはない、わし自身もな」
「もう二度とやな」
「そうだ、そしてわしを止めるなら」
 それならとだ、所長は今度はだった。
 二人にゆっくりと近付いてきていた。そうして術を放とうとしたが。
 アグアルーザはそれより前にだった、前に出て所長の腹を殴った、それで気絶させて彼を拘束してしまった。所長は精神鑑定を受け狂気に陥っていると診断され強制入院となった。幸いにして死者はいなかったのでこのことは考慮された。
 ことはこれで終わった、だが。
 研究所の修繕を行い獣やモンスター達を元の場所に戻し悪魔や天使達に帰ってからだった。アグアルーザはカブラルに話した。
「所長は勘違いしてたか」
「弱いとか言うてたな」
「強いとかな」
「獣性を開放してやな」
「理性をなくすとな」
 その所長の言葉を思い返しつつ言うのだった。
「強うなるってな」
「言うてたけど」
「それがやな」
「とんだ勘違いやった」
「見当違いとも言うかも知れんが」
 それでもというのだ。
「少なくともな」
「間違えてたな」
「そう思うわ、奥さんの浮気はな」
 アグアルーザはまずはこのことから話した。
「自分の見る目がなかった」
「そんなんする人と結婚したことがやな」
「間違えたけど弱さやないやろ、それで仕事のな」
「行き詰まりはか」
「これはあるやろ、そんな時も」
「そうしたもんやな」
「それでな、どっちも弱さとはな」
 狂気に陥った所長が日智恵したそれはというのだ。
「ほんまにな」
「関係ないか」
「そら弱いからそういうのに耐えられんけど」
 妻の浮気や仕事の行き詰まりからというのだ。 
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