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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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くえすと?

「すいませーん。やってますかー?」

ダンジョンに行く前に、とある店に立ち寄った。

青の薬舗という薬屋だ。

こないだフラウ様に町を案内して貰った時に見かけたのだ。

ドアを開けて中へ。

カウンターに人は居ない。

でもショーケースの中には色とりどりの液体を湛えた瓶が置いてある。

「やってる………よね…?」

「……誰?」

そこで奥から女性が出てきた。

背の低い(とは言え僕よりは大きい)人だ。

茶髪、眠たげな目、垂れた耳。

あと何故か左右で袖の長さが違う服。

「あ、こんにちは。ポーションを買いに来たのですが、やってますか?」

「やって、なくはない」

気だるげだ。

「あ、じゃぁポーション二本ください」

「ん」

彼女はショーケースから緑色の液体を二本取った。

「合計、1000ヴァリス」

「はい」

代金を置いて、ポーションを受け取る。

「お買い上げ、ありがとうございます」

「あ、はい」

受け取ったポーションをサイドポーチに入れてダンジョンへ。





「じゃぁ、今日はヘルハウンド狩りでもしようか」

「ヘルハウンドですか?」

「うん」

バベルの前で落ち合って、僕らは中層へ向かった。

「大丈夫なのですか? サラマンダーウールも無しに」

「大丈夫だよ」

リリにバルグレンを見せる。

「それは………あの時の…」

「うん。リリなら大丈夫かな…」

バルグレンをサッと振ると、焔が起こる。

「魔剣…ですか?」

「いや、僕の魔法で作ってる武器だよ。このままならマインドは減らないけど、遠距離攻撃したり破壊されたらマインドが減る。
特に、破壊されたら気絶するくらいには精神にダメージが来る」

「はぁ…、なるほど」

「この剣は焔を操る。ヘルハウンドの焔は吸い込んでマインドに還元できる」

「本当に、英雄譚の魔剣みたいですね」

英雄譚の武器ではあるけどね。



その日はバルグレンの相性とリリの手際の良さが相まってかなりの額を稼いだ。











三回目くらいに(栄養ドリンクみたいに飲んでるので毎日買っている)青の薬舗に行った時だった。

「クエスト?」

ポーションを受け取った後に、ナァーザさんに話を持ちかけられた。

「うん、報酬もきちんと出すから、そのメモに書いてある物を、取ってきて欲しい」

渡された羊皮紙には、モンスターの名前、アイテムの名前と数が書いてあった。

一番下には、ポーション2ダースとある。

「これは?」

「それが報酬。駆け出しのベルには、破格とまではいかないけど、好条件だと思う。
たりない?」

「いえ、十分です」

「急ぎじゃなくてもいいけど、できるだけ早いと、たすかる」

「わかりました」

受け取った紙をサイドポーチに入れて店を出る。








いつもの待ち合わせ場所。

「っていう訳なんだ」

「はぁ…なるほど?」

リリに話すと怪訝な顔をされた。

「依頼主はベル様の本当のレベルをしっているのですか?」

「エイナさんが情報止めてるから無いと思うよ」

「おかしいですよそれ。普通は常連といえど下級冒険者にクエストなんて出しませんから」

「そうなの?」

「ナインヘルに教わったりはしなかったのですか?」

「リヴェリアさん? いや、教わってないかな。僕は基本的にダンジョンの事と戦闘しか教わってないから」

「うーん…それはそれでナインヘルに一言物申したくありますね…。
いえ、彼女もきっとベル様がクエストを受けるなんて思ってもみなかったのでしょう」

ふーん……。

紙を渡すとリリが依頼内容を確認する。

「ベル様、騙されてないですか?」

「僕が?」

「はい。ブルーパピリオの羽は状態によってはポーションより高くつきます。
知識のないベル様をいいように騙しているとしかいえません」

「うーん……でもうけちゃったし…」

「どうせ口約束です。破っても証拠は残りませんよ」

「えー……」

「はぁ…しかたないですねぇ。今回は付き合ってあげますよ。ベル様」

そうしてダンジョンへ入り、向かった先は七階層だ。

ブルーパピリオの出現エリアとされている。

「ブルーパピリオってレアモンスターだよね。なにか策はあるの?」

「ええ、あります。ベル様はこの道を通った覚えはありませんよね?」

「うん。無いよ」

正規ルート…下に向かうための最短ルートではない。

「こっちの方角にはこの階層のパントリーがあります」

「なるほど待ち伏せだね?」

「ええ、そのとおりです」

向かった先は、クリスタルと泉のある場所で、まるで縮小版のリヴィラのようだった。

「さ、ベル様、こちらに」

リリがバッグから取り出した大きな布を被りながら手招きしている。

「それカモフラージュ?」

「はい。効果は保証します」

リリに手を引かれて、壁際へ。

バサッと頭から布を被せられる。

「ベル様ベル様。もう少しくっついてください」

「え?? いやリリに悪いよ」

「貴方みたいな見た目の人がくっついたって気にしませんよ」

「地味に凹むような事言わないで……」

リリの以外と柔らかい体(ますます年上に思えてきた)に密着すること約五分。

「あ、来ましたよベル様」

入り口からひらひらと羽ばたきながら、ブルーパピリオが入ってきた。

「あの泉ってなんかのアイテム?」

「ええ、ポーションの材料です」

うーん……ま、今日はいいや。

「あのブルーパピリオが出ていったら追いかけますよ」

「OK、リリ」

得物を弓に持ち変える。

「リリ、矢ある?」

「ありますよ」

受け取った矢の状態を確認する。

うん。いい矢だ。

しばらくして、ブルーパピリオが出ていった。

カモフラージュを解き、後を追う。

「ベル様、もう大丈夫ですよ」

「OK」

矢を引き絞り、狙いをつける。

ダンジョンはいい。

風が無いから楽だ。

手を放すと、風切音と共に飛び出した二本の矢がブルーパピリオの羽の付け根を貫いた。

「つくづく化物じみてますね」

「どう? カッコいい?」

「いえ、どっちかというと可愛いです。子供っぽくて」

「うぐぐぐ……き、君も可愛いぜべいべー」

「はいはい。さっさとトドメさしてください」

「うぇーい……」












1日で依頼の物を全て揃え、青の薬舗へ。

そこでトラブルが起こった。

「これがポーション? 笑わせますねぇッッ‼」

「あー、リリ?」

「お人好しで騙されやすいウサギは黙っててください」

「あっはい」

その後は怒涛の勢いだった。

どうやらナァーザさんが売ってたポーションが粗悪品だったらしい。

「とりあえずこの件はヘスティア様とナインヘルにチクります。決定事項です!」




さー大変な事になったぞー。

と他人事のような感想しか出なかった。
 
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