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戦国異伝供書

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第五十二話 籠城戦その七

「それがわかります」
「そしてです」
「この小田原の城もまた」
「そうした城で」
「十万の兵で囲んでいますが」
「それでもですね」
「攻めどころが見えません」
 政虎は唸って言った。
「若し迂闊に攻めても」
「攻めきれないですね」
「ここまで大きな城ですと」
 到底というのだ。
「しかも堀も深く広く」
「石垣も城壁も高いです」
「これではです」
 どうにもというのだ。
「攻められません、ですが」
「このままですね」
「囲みます、そして攻めどころを見出せば」
 その時にというのだ。
「攻めます、そして」
「そこから一気に」
「攻め落とします」
「そうしますか」
「今はその時を待ちましょう」
「さすれば」
「しかしです」
 ここで宇佐美が政虎に言って来た。
「我等は確かに十万の兵で囲んでいますが」
「それでもですね」
 政虎も宇佐美の言いたいことを察して応えた。
「わたくしが自由に動かせる兵は二万」
「十万のうちで」
「越後の兵のみ」
「後の八万は自由にはです」
「わかっています、ですが例え二万しか動かせずとも」
 それでもとだ、政虎は宇佐美にさらに話した。
「機を見れば」
「そこで、ですか」
「わたくしは二万の兵を率い」
「そのうえで」
「城を攻め落としましょう」
「さすれば」
「今は待ちます」
 こう宇佐美に言うのだった。
「機を」
「では」
「暫し囲みます」
 こう言ってだった、政虎は十万の兵で小田原城を囲み続けることにした、そうして暫し待ったがその機はだった。
 来なかった、政虎は粘り強く待っていたが関東の諸大名と彼等が率いる兵達は違っていた。次第にだった。
 城を囲む中で次第に戦に倦みだした、それで言うのだった。
「早く城を攻め落としたいのう」
「全くじゃ」
「領地のことも気になる」
「田畑や街のことも」
「少し長く戦が続いておる」
「これ以上続くと困るのう」
「早いうちに終わらぬか」
「そろそろそうならぬか」
 こう言うのだった。
「この城を攻め落とせば戦が終わるな」
「攻め落とせぬのなら領地に帰りたい」
「そうしたいが」
「管領様はどうお考えか」
「これ以上の戦は困るのう」
 特に足軽達が気になりだした、しかもだった。
 武田、今川が動くとの報も入った。これで彼等は余計に言いだした。 
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