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ある晴れた日に

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654部分:悪魔その十五


悪魔その十五

「御前等のその決意をな」
「だからかよ」
「それで」
「ああ、金はどうとでもなるんだよ」
 それはいいというのだ。
「そんなのはな」
「大きく出たな」
「それはまた」
「どういう風の吹き回しよ」
「昔から言われてるんだよ」
 また皆に対して述べるのだった。
「これな。親にな」
「ああ、親御さんからかよ」
「言われてたの」
「そうなんだよ、金は大事だけれどな」
 それは確かだというのである。
「けれどな。それ以上に心は大事だっていうんだよ」
「心は、か」
「それ以上になのね」
「そうだよ。そう言われてたんだよ」
 こう皆に話すのである。
「昔からな」
「いい親御さんだよな」
「そうよね」
「こいつの親には思えないよな」
「全くね」
 とは言っても本心は違っていた。彼の両親を内心で褒めていた。
「それでか」
「それでだったのね」
「そうだよ。それでなんだよ」
 また言う彼だった。
「今日はいいんだよ、それでな」
「それだったらな」
「出さないわけにはいかないわね」
 しかしであった。ここで皆言うのだった。
「御前のそういうの見せてもらったらな」
「何で払わないでいられるのよ」
「俺達だってあれだぜ。覚悟したんだぜ」
「それじゃあな」
 こう言うのだ。しかしだった。
 佐々も佐々でだ。意地を見せて言うのだった。
「いらないって言ったぞ」
「いや、こっちもだよ」
「払わないわけにはいかないのよ」
「わかるよな、それはな」
 彼等も彼等でなのだった。
「絶対にだ。払うからな」
「受け取りなさいよ」
「何度も同じこと言わせるなよ」
 佐々も本気だった。あくまで受け取ろうとしなかった。そうして言うのであった。
「いらないって言ったよな」
「いや、だからな」
「それは駄目よ」
「私達だってね」
「わかったよ」
 いい加減双方衝突しそうになったところでだ。桐生が言うのであった。
「皆支払えばいいじゃない」
「おい」
「ただし」
 佐々に対して言うのだった。
「佐々は受け取らない」
「受け取らなくていいのかよ」
「いいんだよ」
 穏やかな声で彼に話した。
「受け取らないでね」
「ちょっと待ってよ」
 奈々瀬が首を傾げながらその桐生に言ってきた。
 
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