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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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砂漠

<アッサラーム>

まだ日も昇りきらない早朝、ささやかな事件が発覚した。
昨晩の体験を追い払うが如く、一人で魔法の特訓をしていたウルフが、特訓を終わらせ割り当てられた自室に戻ろうと宿屋の廊下を歩いていると、リュカの部屋から1人の女性が気配を消しながら出てきた。

「あれハツキ?何やってんの?…そこ…リュカさんの部屋だろ…え!?ま、まさか…うぐっ!」
リュカの部屋からこっそり出てきたのを、ウルフに目撃されたハツキは、慌ててウルフの口を手で覆い喋れない様に羽交い締めにする。
そしてそのまま宿屋を出て、人気のない物陰へと連れ込む!

「…っぷは!ハ、ハツキ…お前もしかしてリュカさんと…」
ハツキの怪力から逃れたウルフが、ハツキに問いかける…
「そ、そうよ…だって…リュカさん…格好いいんだもの…」
俯きモジモジするハツキの顔は、薄暗くてもハッキリ分かるくらい真っ赤だ。

「あ、あのね…みんなには…黙っててほしいの…」
「何で?」
「だって…その…恥ずかしいし…」

「俺は構わないけど…すぐにバレると思うけどね…」
「い、いいの!それより、アンタこそ昨日はどうだったのよ!」
ともかく話題を変えたくて、ウルフの昨晩の事を聞き出そうとするハツキ。
「………頼む…聞かないでくれ…お願いだ…」
どうやらトラウマになる様な事があったらしく、ウルフは半泣きで頼み込む……いったい何が?




<砂漠>

アルル達一行は灼熱の砂漠を突き進む。
サンサンと輝く太陽の光を遮る物は何もない…
ただ、いつの間に買ったのか、リュカが青く大きなパラソルを差し日陰を作り出している以外は…

しかしパラソルで作られた日陰に居ても、体力の消耗は著しく、リュカに合わせて歩くだけで精一杯の様だ!………リュカ以外!
リュカは異様にテンションが高く、パラソルを上下に揺らして歌っている。
歌うは『東京音頭』………ツバメ好きか?
だが誰も文句を言わない…この暑さで文句を言う気力も無くなってるのだ。


小さなオアシスを見つけた一行は、側に生えてある木を利用して簡易テントを作り、休める場所を確保する。
「ちょっと早いけど、今日はここで一晩明かすか…」
木陰でへたばるアルル達の為に、野営の準備を黙々とこなすリュカ。
簡易食を手早く作り、皆を起こして食事をさせる。

「リュカさん…ありがとう…でもリュカさんは元気ですね」
「ほんま…何でそんなに元気なの?」
「僕は寒いの苦手なんだけど、暑いのは平気なんだ!女性が薄着になるしね!それに以前、砂漠より暑いダンジョンを探検した事があるんだ!あそこは凄かったよ!」
昔を語り調子に乗ってきたリュカは、元の世界での冒険談を話し始める。

殺された父の遺志で、伝説の勇者を捜す冒険談を…
攫われた母を助ける為、伝説の勇者を探す…その為に天空の武具を見つけ手に入れる事…そして天空の盾を手に入れる為に挑んだダンジョンの事…

「ほなリュカはんは、盾を手に入れる為にフローラっちゅう娘と結婚したんか?」
「ううん。フローラとは結婚してないよ。滝の洞窟へ向かう前に再会した、ビアンカって言う幼馴染みと結婚したんだ!」
「でもフローラさんと結婚しないと、天空の盾が手に入らないんですよね!?それじゃお父様の遺志を果たせないじゃないですか!?」
アルルも父の遺志を継いで、バラモス討伐に旅立った為、思わず過敏に反応する。

「うん。そうだね…でもね、ビアンカが言ったんだ『リュカは沢山不幸な目に遭ってきたから、もう幸せになるべきだ』って…確かにフローラと結婚すれば幸せになったかもしれない…莫大な財産、巨大な権力、美しい妻…そして父の遺言の天空の盾」
「じゃ何で結婚しなかったんだよ!」
「簡単だよウルフ…僕を最も幸せに出来るのはビアンカだけだからね!」
皆がリュカの話を噛みしめている…納得できる部分も出来ない部分も…

「じゃぁ…結局、伝説の勇者様は見つからなかったのですか?」
そんなハツキの質問を受け、リュカが笑い出した。
「あはははは!それがさ、笑っちゃうんだけどね…もし僕が真面目に勇者様捜しを続けていたら、永遠に見つける事は出来なかったんだよ!」
皆、不思議そうな顔でリュカを見続ける。

「僕が自己の欲望に負けてビアンカを選んだからこそ、勇者様と出会えたんだ!」
「ど、どういうことや?」
「なんと!伝説の勇者様は………僕の息子なのさ!あはははは、ちょ~うける~!勇者を見つける為に…天空の盾を手に入れる為に、フローラと結婚してたら、伝説の勇者は誕生しなかったんだ!『伝説の勇者なんかどうでもいい!ビアンカと結婚できれば、世界なんてどうでもいい!』って結論に達したから勇者に出会えるなんて…何なのこの嫌がらせ?だから僕は神なんて信じないんだ!」
リュカという男の人となりに、皆がそれぞれ驚いている。

特にエコナにとっては…
金儲けを夢見ているエコナ…何れは大きな権力を手中に入れたいと思っているエコナには…
《ウチには考えられへん!金と権力を手に入れた後に、愛人にすればええやん!それで全てが手に入るやん!》

「なぁリュカはん…こんな事言うたら怒るかもしれへんけど……金と権力を手にした後で愛人にすれば良かったんとちゃう?奥さんもリュカはんの事好きなんやし、問題無かったと思うんやけど?」
人は誰しも、自分の思考の範囲内でしか物事を計る事は出来ない。
エコナもまた人である。

「う~ん…出来なくは無かったと思うけど…」
「なんや、煮え切らんな!」
「………心は…どうなってただろうね?」
「「「「心?」」」」
アルル達が一斉にハモる。

「僕はビアンカの心も愛してるんだ。でもビアンカを選ばなかったら、彼女の心はどうなってただろう?その後で『一番愛してるのはビアンカだ』と言っても、愛より金や権力を選んだ僕の事を、心から愛してくれるだろうか?」
リュカは怒るどころか、優しく問いかけてきた。

「…そ、そうは言うても、全てを手に入れるなんてムリやん!金、権力、美女…それに伝説の勇者!こんだけ手に入れば十分やん!」
「全然十分じゃないよ…美女の…ビアンカの心が手に入らなければ…」
エコナの瞳を見つめ、悲しそうに語るリュカ…

「逆に言えば、ビアンカと彼女の心が手に入れば、その方が十分満足なんだ!他の物は…まぁ、何とかなるでしょ!?」
そんな満面の笑みで妻の事を語るリュカ…そして話は、惚気話へと発展して行く。
ウルフにはともかく、少女3人には苦痛となる時間だった!

ハツキの後日談だが…
『エッチの時の話まで、する必要は無いと思います!』
………あの男、何考えてるんだ!?



 
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