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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第027話 5日目・2月04日『動き出す非日常』

 
前書き
更新します。 

 
それからお昼も終わりまたセイバーだけ屋上に残して志郎と凛は午後の授業に受けに教室へと向かおうとする。
だが降りていく前にセイバーからとある事を言われる。

「リン、それにシロ。お気を付けください。なにか胸騒ぎがするのです」
「それって、セイバーの直感のスキル………?」
「はい。それがなにか分かりませんが今日一日は何かが起こるのかもしれません」
「セイバーがそう言うのだったらそうなのかもね。アーチャーはどう思う………?」
「ふむ……そうだな。セイバーの直感は侮れないからな。私も用心しておくとするか」

アーチャーはそう言って気を引き締めながらも凛の背後で霊体化して消えた。

「うん。わかった。なにかあったらすぐに知らせるから」
「はい。シロ」

それで二人は校舎へと戻っていく最中で、

「凛さん、桜に顔を出していかなくて大丈夫ですか………?」
「ええ、平気よ。まだ今日は志郎の家で会えるんだからね」
「そうだね」

それで笑みを浮かべて二人はお互いに教室へと入っていった。
その際、一成や他のクラスメート達に凛とどんなお話をしたのかを聞かれたが志郎は曖昧に返答をしておくのだった。
凛の方も大まかには志郎とそう大差はなかったことを書いておこう。ただ綾子がやけにニヤニヤしながら

『後で志郎との馴れ初めとか詳しく話してもらうよ遠坂』

と、半分脅迫交じりに言われて凛は冷や汗を流したとかなんとか………。



そんな普通の学生にとってはほんの一区切りの時間もあっという間に過ぎていき、時間は放課後。
帰宅部の生徒はこの寒い季節もありさっさと帰り残っているのは部活の生徒か明日の準備をしている教師くらいのものだろう。
そんな中で志郎と凛はすぐに合流して、

「さて、それじゃさっさと魔法陣の基点を調べて帰りましょうか。弓道部の桜の帰る頃合いに合わせるくらいの時間でね」
「そうだね。今日はキャスターにも桜を連れて一緒に帰ってきてほしいって言われているから」
「キャスターから…?」
「はい。なんでも桜に用があるらしくて」
「そう」

それで凛は少し考え込む。
そしてすぐに霊体化しているアーチャーへと思念通話で話しかける。

《ねぇ、アーチャー?》
《なんだね?》
《私と志郎になにか隠していることは無いかしら?》
《ほう………さすが凛。察しがいいな。もう気づいたか》
《やっぱり。なにかやらかすつもりでしょう?》
《まぁな。だが今は静かに見守っていてくれ。凛にも後で詳しく話すのでな》
《むぅ………なにか隠しているのか知らないけどそれは桜にとってはいい事なのよね?》
《それは保証しておこう。それと志郎にはまだ内緒で頼む。志郎が今回の件で鍵を握っているのでな》
《そう………。わかったわ》

それで凛はそれを承諾して思念通話を切る。

「志郎。なにか大切な事でしょうからさっさと終わらせましょうか」
「え? う、うん。………凛さん、すっきりした表情だけどなにかあったの?」
「えっ? そんな顔してる?」
「うん。でも悩んでるよりかはいい顔だと思うな。やっぱり凛さんは綺麗だし」
「うっ!」

志郎の自然な不意打ちに凛は顔を赤らませる。
凛はここ数日の志郎との付き合いで志郎はいい意味で思った事は隠さずに言う子だという事は理解していた。
今回も志郎にとっては自然に発したセリフなのだろう。
だが凛にとっては慣れないものだった。
普段は優等生の顔をしているのであまり深い付き合いがない凛である。
綾子でもここまでじゃないのだからこの反応も仕方がない。
しかし志郎にとってはこれが普通なのだ。
志郎は不思議な魅力を持っている。
だからどんな人からも好かれているのだしこの笑顔を守りたいという輩も出てくるのも不思議じゃない。
当の凜でさえそんな事を思ってしまうほど志郎に好意を持ってしまっている一人なのだ。
この子の悲しい顔は見たくないと自然と凛も思うようになり、言葉選びも慎重にやっている。
心の贅肉じゃないけどこの子には自然と逆らえないんだろうな………と凛は思っている。
そんな凜の心情など知る由もない志郎は凛の反応に首を傾げる。
そんな仕草でさえも愛らしい。
凛は志郎を抱きしめたい衝動をなんとか抑えながらも、

「お、おだてたってなにもでないんだからね」

腕を組んで明後日の方に顔を向けるしかできなかった。

「あはは。そんなつもりはないんだけど………」

志郎も頬を掻きながらも笑みを浮かべる。
そしてそんなやり取りを霊体化しているアーチャーは客観的に見ながら、

(ふむ………志郎はスキルに魅了の効果でも持っているのだろうか。あの凛がここまで照れる姿も珍しい)

と思っていた。

「それじゃセイバーと合流しようか」
「そ、そうね」

それで志郎はセイバーへと思念通話を送ろうと意識を集中させようとしたその時だった。
外から………正確に言えば弓道場のある方向から悲鳴が聞こえてきたのは。

「なにっ!?」
「この悲鳴って!」

二人は思わず窓から顔を出して弓道場へと目を向ける。
そして目撃する。
弓道場だけ限定に赤い結界が展開されているのを。

「まさか!? 弓道場に張ってあった結界が起動されている!?」
「そんな! 慎二くん…!」
「志郎、落ち着いて! とにかく急いで向かいましょう! アーチャー!!」
「わかった」

それでアーチャーが実体化して志郎と凛を両脇に抱えて窓から飛び立つ。
誰かが見ているかもしれないが今は度外視した。
目撃者は後日に協会関係者がなんとかするだろうから。
そして地面へと着地した時にセイバーもすぐにその場へとやってきた。

「遅れました! ご無事ですか!?」
「私達は! でも弓道場には多分藤ねえや綾子、それに桜達がいると思う!」
「それはまずい………。これでは」
「ああ。計画に支障が出るな」

セイバーの呟きにアーチャーが同意の言葉を返す。

「とにかく弓道場の中に急ぎましょう!」

それで四人は弓道場の入口へと入っていった。
入った瞬間、志郎と凛は多少の眩暈に襲われる。

「…これはまずいわね。私達でこれじゃ一般の生徒なんかはひとたまりもないわよ」

見回せば周囲は赤い世界へと変貌していた。
そして倒れている綾子、藤ねえ達。

「あの小僧がこんな事はしないと思っていたのだがな。やはり間桐臓硯に脅されでもしたか!?」

思わずの惨状にアーチャーは毒づく。
とにかくこの惨状をどうにかしないと思い、その前に志郎は藤ねえ達へと駆け寄る。

「これは………」

藤ねえ達の姿に思わず凛は顔を背けようとするが、

「………まだ大丈夫」
「志郎………?」

志郎だけは冷静になっていた。

「衰弱して気絶はしているだろうけどまだ死んでいない。これならまだ助かるよ」
「本当に…?」
「うん。私………死体だけは見慣れているからこれくらいならまだ大丈夫」

それで凛は思い至る。
十年前の悲劇を生き延びたのだから死体を少なからず目撃していてもおかしくはないのだと。
その志郎の異常なまでの冷静さに一種の悲しみを覚えながらも今は心の隅に置いておくことにしてまずはこの結界を破戒する事を念頭に行動を起こすべきだ。

「ライダー! いるのだろう? 出てきたらどうだね!?」

アーチャーの叫びに志郎達も周りを見渡す。
すると射場と的場までの矢が通る広間である矢道の場所にすぐにライダーが実体化する。

「………」

無表情でその場に現れたライダー。
しかし相変わらずその眼帯のせいで何を考えているのか伺う事はできない。

「素直に現れてくれて感謝でもしておこうか。それで………これはどういう事だ?」
「どういう、とは………?」
「なぜ一般人を巻き込んだと言っている!」
「そうです。無辜の民を巻き込んでおいてただでは起きませんよライダー」

アーチャーにセイバーも続いて言葉を発して武装化して剣をライダーへと向ける。
だがライダーはセイバーの威勢もものともせずに志郎へと顔を向ける。
そして、胸を右手で二回叩く動作をする。

「ッ!?」

それで志郎は瞬時にライダーの意図を悟った。
そしてすぐに倒れている生徒へともう一度目を向ける。

「(桜が、いない………ッ!?)」

志郎が気づいたことを確認したライダーは、

「もうここには用はありません」

そう言って赤い結界を解除した。
すると周囲は結界が解かれたからなのか静けさを取り戻した。

「………何? なんのつもりだ、ライダー?」
「言ったでしょう? もうここに用はないと。それと、ふふ………着いてきなさい、アーチャー」

そう言ってアーチャーを誘う言葉を発してライダーはその敏捷性で場から逃走を開始した。

「アーチャー追って!!」

凜の叫びが響く。

「だが!………わかった!」

少し考えたアーチャーはすぐにライダーを追ってその場を後にした。
そしてその場に残された志郎と凛は協会へと連絡を入れて騒動に巻き込まれる前にすぐさまその場を後にした。
藤ねえ達を残していくのは心が痛んだが今この場ではしないといけない事があるという事でセイバーと凛を連れて志郎はとある場所へと向かう事にするのだった。

「………ねぇ志郎。どこに向かおうっていうの?」
「そうですシロ。ライダーは追わなくてよろしかったのですか?」
「うん。アーチャーには悪いけど私と慎二くんとの間にある茶番劇には付き合ってもらう」
「………茶番劇? それって………それにこの向こうって」
「今はまだ」

それ以降は無言になる志郎。
しばらく歩いた三人が着いた場所は衛宮の武家屋敷の前だった。
そこには、

「………やぁ衛宮。それに遠坂」

そこには気絶している桜を背中に抱えている慎二の姿があった。

「………間桐くん。どういう事? なぜあの結界を起動したの? それになんで桜を抱えているの?」

当然、凛は慎二にそう問いかけた。
だが慎二はなにも答えずに志郎に目を合わせてライダーと同じく胸を右手で二回叩く動作をした。

「(やっぱりあの時の合図が通じていたんだ)」

それで意を決した志郎は慎二と同じように胸を叩いた。

「衛宮………ありがとう。信じるからな」

そう言った慎二は意を決して衛宮の武家屋敷の門を強引に突破した。

「ちょっ!?」
「凛さん、追うよ!」
「ちょ、ちょっと少しは私達にも分かりやすく説明しなさいよ!」

桜を抱えている慎二は屋敷の敷地内に入るとその場でへたり込んでいた。

「はぁ、はぁ………」

息切れを起こしていた慎二は三人が来たことを確認し、

「これで、いいんだよな?」
「うん」

慎二の言葉に返答する志郎。
果たして二人はなにをしようとしているのか………?
それだけが凛とセイバーの疑問だった。

「これで、桜を救えるんだな」

慎二のセリフがこの場一体を包み込んだ。


 
 

 
後書き
慎二の行動の真意は一体………?
次回にその真相を話していきます。
桜が救えるか? 
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