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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第026話 5日目・2月04日『学園での日常・Ⅱ』

 
前書き
更新します。 

 
「あ、そうだ」

志郎が自分の教室に向かう道中で、ふといつもの日課である生徒会室への顔出しを志郎は思い出した。
それなので志郎はいつものように条件反射で生徒会室のある方角へと足を向け歩を進める。
………だが、志郎は気づいていない。熱烈なファン達の影を。
志郎にとってはいつもの日課のようだがそれは当然他の生徒にも知られている事であり、いつも向かう時は少なからず志郎が微かな笑みを浮かべていることを。
そしてそんな表情が常に目撃されている事を。
そんな表情をされるなんて羨ましいなと。
だからなのか志郎は知らない事だが一成は裏では志郎ファンクラブの連中に『シロちゃん独占禁止法』なるものを言い渡されていて常日頃から困っているとかなんとか………。
一成本人はそんな気はさらさらないのだが、嫉妬に駆られた彼、彼女らには言葉は届かないようだ………。
さすが学園のマスコットキャラの二つ名は伊達ではない人気ぶりである。
それでも一成は志郎との付き合い方を変えない辺りは彼も男の子だったという訳である。
兄の零観にも一度は、

『この気持ちはなんなのか………?』

と打ち明けてはみたが零観は笑みを浮かべながらも、

『一成、お主もまだまだ若造だな、この未熟者め。俺が若かった時はな………』

と軽くあしらわれさらには自身の若かりし時に藤村大河との間に起きたハプニングを聞かされることになった。
危うく藤村組の連中にけじめを受ける羽目になりそうだったと恐れもせずに笑い飛ばしていたが。
だからか自身で考えなければいけない問題なのだと日々悶々とした想いを念仏を唱えながら沈めている純情な男である。



―――閑話休題



志郎は生徒会室へと足を踏み入れると待っていたかのように一成が学園の資料を見ていた。
そんないつも通りの姿に日常風景が戻ってきたような気持ちになって志郎はやはり笑みを浮かべる。

「………む? ああ、衛宮か。おはよう。今日はいつもより早いのだな」
「うん、おはよう一成くん」

軽く挨拶をした二人はそれから打ち合わせでもしていたかのように、

「一成くん、お茶淹れよっか? まだ朝礼まで時間があるから」
「いつもすまないな。では頼む」
「うん!」

それで慣れた手つきでお茶の葉が入った急須にお湯を適度に注いでいる志郎の後ろ姿を見てただただ和む一成であったが、すぐに気を引き締めて資料へと目を向ける。
そんな最中で、

「…ねぇ一成くん。なにか最近おかしな事とかないかな?」
「む………? おかしな事とは?」
「こう…なんていうかおかしな事件に巻き込まれているとか、かな………」
「いや、そんなことは特には無いぞ。突然どうしたのだ………?」
「ううん。なにもなければいいの。あ、お茶できたよ」

そう言って志郎は一成の前にお茶が入ったコップを出した。
一成はいつもながらありがたいと思いながらもお茶を飲む。
そして志郎自身も自然と一成の席の隣に座ってお茶を一服。

「はふー………あったまるね」
「うむ。衛宮の淹れてくれるお茶はいつもながら美味い」

二人はその静かな時間を楽しみながらも飲み終えて、

「馳走になった」
「お粗末様でした」

そんなやり取りをしながら二人して笑みを浮かべあう。
それからしばらくして朝礼五分前のチャイムが鳴り、

「では教室に向かうとするか」
「うん」

それで教室へと向かおうとしたところで一成が志郎にある事を聞く。

「ところで衛宮。つかぬ事を聞くが間桐が今日は来ていないらしいが友人である衛宮はなにか聞いていないか………?」
「ッ!」

そんな質問をされて志郎は現実へと気持ちが引き戻された。
そうだ、問題が片付くまではこんなにゆったりとしていてはいけないのだ。
それで気を引き締めながらも、

「…ごめんね、なにも聞いていないんだ」
「そうか。ならばよいのだ」

親友に嘘をつくのが心に響くがこればかりは仕方がないと志郎は思う。
魔術の世界の人間ではないものを巻き込んではいけないのだ。

「それじゃいこう」
「うむ」

それで二人は教室へと歩を進めていった。





それから志郎と凛は午前中の授業をいつも通りに受けて、そしてあっという間に時間は経過して現在お昼時。
志郎は凛に言われた通り屋上に向かうためにお弁当を持って教室を出ようとしていたところ教室が騒がしいことに気づく。

(どうしたんだろう………?)

志郎はそんな疑問にかられたが教室の外には凛が何度も自分の教室の前を通っていることに気づいてすぐに向かった。

「ごめんなさい凛さん。待たせちゃったかな………?」
「そんなことはないですよ衛宮さん。それじゃ行くとしましょうか」
「はい」

二人はなんでもないようにお弁当を持って教室を出て行ったが、同じ教室の生徒や凛の後を着けていた数名の生徒は驚いた顔をしていた。

―――曰く、あの遠坂さんとあんなに親しげに…さすが衛宮嬢でござるな。と見た番組によってその日の言葉遣いが変わる生徒。
―――曰く、な!?まさかもう衛宮は遠坂の魔の手に!?と嘆く寺の坊主。
―――曰く、なんで由紀っちの誘いは断るくせに!?と自称・冬木の黒豹。
―――曰く、自分から誘うとは。もしかしたらあの二人は……、とぶつぶつと呟く恋愛探偵。

その他にも志郎や凛のファンクラブの猛者達とかetc、etc……

アーチャーはその光景を霊体化で客観的に生徒達を見ていて正直驚いていた。
凛は当然として志郎がここまで人気を持っているものなのか、と。



教室でそんな会話をされていたことは露知らず志郎と凛は屋上に到着した。
そこにはすでにセイバーが目立たないところでシートを広げて待機していた。

「待たせたかな、セイバー?」
「いえ、そんな事はありません。お日様の下でしたのでいい日向ぼっこができました」
「それでセイバー、一昨日に調べた結界だけどどうにかなりそう?」
「いえ、ここまでとなりますとセイバーの私では到底理解できない代物です」
「そう…それじゃ志郎と、って…どうしたの、志郎………?」

凛が気づいた時には志郎は結界の魔方陣の基点に触れて目を瞑り調べていた。

「………、うん。この魔方陣を解析魔術で調べてみたんだけどどうにも解呪に関しては手に負えなさそう」
「どういったものかは当然わかったんでしょ?」
「ええ。発動したら凛さんの言った通りの効果が出ると思うわ。とりあえず凛さん、なにか効果を阻害できる魔術は使える? 私はそこまでのものは知識があってもまだ実戦で使えるものじゃないから」
「え、ええ。できるわよ。少し待って…」

凛は何節かの呪文を唱えたら魔方陣から重圧感が減り少し体が軽くなった感じがした。

「これでよし、気休めに過ぎないけどね。それと大体の基点の場所は学園中を調べてもらっているアーチャーが発見したみたいだから放課後になったら回りましょう」
「わかりました」
「手回しがいいですねリン」
「こうでもしないと被害が出てからじゃ遅いからね。解呪は出来ずとも発見だけはして対処はしておかないとね」
「ですよね……まあ、でも発動自体させない方法もあるんだけど………凛さん、最終手段だけど聞きたい?」
「…すごく嫌な予感がするけど聞いてあげてもいいわよ?」
「うん。あくまで方法の一つだけど誰もいないことを確認した後セイバーの宝具で「やっぱりいいわ!」…やっぱりダメだよね」
「当たり前じゃない! そりゃ確かに被害者が出るのは避けられるけど、代わりに莫大な被害が出るじゃない!?っていうかそんな考えを持ってたの!?」
「…凛さん、とりあえず落ち着いて。だから言ったでしょ? あくまで最終手段だって………」
「シロの言うとおりですよリン。私の時代でも何度かやむ負えないことがあれば城落としもやりましたから」
「…まあ少し落ち着けたけどセイバーがいうとなぜか真実味がいっそう高まって怖いわ。ま、それなら今日は学園が終了したら基点を一つずつ潰していきましょう」
「わかりました」

今日の方針が決まったことなので一同は食事を開始したのであった。
そこにアーチャーが遅れてきたのか実体化してセイバーに話しかけた。

「セイバー。君は午前中は屋上にいたのだから衛宮志郎の話で聞いたが見張っていたそうだな。誰か入ってきたかね? ………そう、例えば間桐慎二とかだな」
「いえ、今のところは誰も入っては来ませんでしたね。ライダーもうまく気配を隠しているのでしょう。今は感知できません」
「そうか………」

それでしばし無言になるアーチャー。
そして内心で間桐慎二の扱いに困っているアーチャーであった。
自身の知る間桐慎二とは性格も根性も違う。
よって次にどう行動を起こすのか把握できないのだ。
アーチャーが知る限りの間桐慎二ならばこの結界を起動して自己顕示欲を満たすだろうがこの世界の間桐慎二は正義感に満ちているからその可能性は限りなく低い。
その代りに間桐臓硯がまた介入してくるかもしれないという不安もある。
あの怪物もどこで機会を伺っているか分からないのが厄介だからだ。
よって今度間桐慎二と遭遇したらすぐさまに無力化をして事態悪化を防ぐ事を重点に置いた方がいいだろうというのが今のアーチャーの考えだ。
この結界がもし起動すれば少なからず志郎が傷つく。
それだけは防がなければならない。

………アーチャーは気づいていないがマスターの凛よりやはり妹である志郎の方が優先度が上なのが性格を表しているとも言える。

「わかった。では私も気を付けるとしよう。それと衛宮志郎」
「なんですか」
「あまり、気負いはするな………」
「えっ………」

それだけ伝えてアーチャーは霊体化した。
志郎はなぜアーチャーが自身を気遣ってくれるのか少し悩んでいた。
凛とセイバーだけは知っている為に顔を合わせて笑うのであった。

《まったく………不器用な性格ねアーチャー》
《うるさい………。分かっているから指摘してくれるな》

そんなアーチャーの様子に凛は微笑ましい感情を抱いていた。


 
 

 
後書き
アーチャーは少し気を許しています。 
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