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ユア・ブラッド・マイン 〜phantom vocal〜

作者:ケンケン4
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3話〜在るべき形

須藤幻が去った後の喫茶〜蜃気楼〜にて。

「ごめんなさいね。柊ちゃん。」
「いえ。まあ、当然ですよね。今日会ったばっかりですもの。」

マスターさんが幻のコーヒーカップを片付けながら謝ってきたので慌てて言葉を返すとマスターさんは笑って。

「そういえば初めて見たわ〜。幻があんなに騒いでる姿。」
「そうなんですか?」
「ええ、幻はいつもどこか冷めていてあんまり騒がない子なのよ。まあ、ネクラって言ってしまえばおしまいなんだけど……。」
「……。」
「どうしたの?柊ちゃん。」

私は少し考えてマスターさんに質問をした。

「マスターさん、聞きたいことがあるんですけど……。」
「何かしら〜。」
「幻ってここに来た時っていつ頃ですか?」

マスターさんはうーんと考えて、自分用のコーヒーを作りながら答える。

「そうね……2~3年前……。いえ、4年前ね。たしか渋谷の大抗争があった年にふらっと幻がやってきたから……。魔鉄暦になる前は反社会的勢力なんてあんまりいなかったらしいけど今は裏通り行けばうじゃうじゃいるねから。」
「え?」
「あら〜。怖がらせちゃった?けど大丈夫よ〜。この辺りから駅周辺にかけてはいないから。
……そうね。それより幻の話ね。幻は4年前にやってきてちょくちょくコーヒー飲みに来るんだけど。いつもコーヒー飲んで私と他愛ない話をして帰るだけ。あんまり身の上話をしないのよね。」
「……。」
「あ、でも。」

マスターさんは自分で作ったコーヒーを飲みながら何かを思い出したらしく顎に人差し指をあてて。

「そうそう、幻って記憶喪失があるって自分で言っていたわ。忘れてた。」
「……記憶喪失。」
「ええ、と言っても薄ぼんやりらしいけど。いかんせん4年前から前の記憶がぼんやりしてて分からないって言ってたわ。物の使い方とか勉学とかは覚えてるって言ってたけど。」

私はそれを聞いて胸に棘が刺さるような気持ちになった。やっぱりそうなんだ。でも……。
そんな私を見てマスターさんは心配そうに。

「どうしたの?柊ちゃん。」
「……なんでもないです。
それで幻ってマスターさんから見てどうですか?嫌いですか?」

それを聞いてマスターさんはふふっと笑って。

「あら〜?ひょっとしてさっきの幻の言葉を真に受けているのかしら〜?
……大丈夫よ。私もいるし、学校にはあゆみもいるしね。」
「あゆみ?」
「西川あゆみよ。あの娘が支えてくれてるみたいだしね〜。さすがは私の魔女だわ〜。」
「……え?マスターさんってブラッドスミスなんですか?」
「ええ。そうよ〜。」
「だ、大丈夫なんですか?魔女とブラッドスミスが離れるなんて……。」

マスターさんはそれを聞くと笑って。

「ええ、大丈夫よ。そんな事より……幻の事よろしくね。あの子、あんなこと言ったけどなんだかんだ信頼できる子が欲しいのよ。それがきっと貴女なんだわ。
さっきも言ったけどいいコンビになると思うわ。貴女達なら。」
「マスターさん……。」
「それに、貴女も訳ありみたいだしね。」
「……。」

私はそれを聞いて苦笑すると「ありがとうございました!」とお礼を言って店を後にした。










柊ちゃんが店を出ていくと私ははあとため息を吐いて。

「あゆみ、いつから聞いていたのよ。」

するとカウンター奥の扉から、あゆみが出てきた。
彼女はクスクスと笑って。

「残念、そんな前じゃないわよ。いまさっき帰ってきたの。」
「あら、そうなの?」
「それにしても……。」
「それにしても?」

私はキョトンとしてあゆみを見ると。あゆみは真面目な顔に戻って。

「幻ちゃんはきっと記憶がないけど柊さんを待っていたと思うのよ。今までの契約の失敗がその答え。数式と同じよ。解は基本、1つ。だからね。」
「幻の記憶喪失と柊ちゃんが関係あるって事?確かに柊ちゃん。幻の記憶喪失の話で顔が曇ったけど……。」
「まだ分からないけど。それも明日次第ね。
まこと、明日貴女も学校来る?」

私はそれを聞いて笑いながら首を振った。

「私はいいわ、私はあの子達の前では蜃気楼のマスター。首はそこまで突っ込まないわ。」
「そう、分かったわ。」
「それに……きっと明日もやってくるわよ。幻と柊ちゃん。この店に。その時に聞くわ。蜃気楼のマスターとして。あゆみ、コーヒー飲む?」
「ええ、いただくわ。」

コーヒーの香りが漂う喫茶〜蜃気楼〜は今日も平和だった。
 
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