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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第91話 ペットは最期まで責任をもってお世話しましょう

 
前書き
久々の更新だったりします。そして、相変わらず家のなのは(シュテル)は空気を読まないみたいで 

 
「し・・・新ちゃん!?」

「あ、姉・・・上・・・」

 天井から降って来た新八の目線の先には新八の姉のお妙ともう一人、見知らぬ若い美男子風の男が其処に居たのに、新八は驚きを隠せなかった。

「あ、姉上・・・どうして・・・こんなとこに?」

「新ちゃんこそ・・・どうして・・・天井から降って来たの?」

「えっと・・・それについてはツッコミは入れないで欲しいんでスルーして下さい。そんな事より、其処に居る見知らぬ男は誰ですか!?」

「見知らぬとは酷いな。君が小さい頃に良く稽古に付き合ってやった事を忘れたのかい?」

 美青年のその一言に新八は一瞬戸惑ってみせたが、すぐにはっとした顔でその青年を見た。

「貴方は・・・もしかして、九兵衛さん?」

「久し振りだな、新八君。暫く見ない内に・・・随分と大胆になったものだな」

「へ・・・大胆?」

 言葉の意味が分かっていない新八に青年は顎をクイっと彼の下に向けて差す。

 それを受けてそっと真下に視線を移すと、其処にはついさっきであったばかりの桜色の髪をした少女が丁度新八に押し倒される形で仰向けになって倒れていた。

「いや! あの・・・これは事故みたいなものであってその・・・」

「そうじゃない。僕が言ってるのは・・・君の手だ」

「僕の・・・手?・・・!!!」

 今度は自身の右手に注目する。今現在、新八の右手は押し倒した少女の柔らかな胸を鷲掴みするような形で上に乗っかっている状況だった。

 サーっと一気に青ざめていく新八。まるで油の切れた人形のようにカクカクと視線を自身の手から少女の顔にまで戻してみると、其処には恥ずかしさと胸を掴まれた事によって生じたのだろう、頬を真っ赤に染めてこちらを睨む少女の姿があった。

「うわぁぁ! ご、ごめんなさい! わざとじゃないんですわざとじゃ!」

「そうよね。まぁ、わざとだったら眉間を打ち抜いてたけどね」

「すっごく怖いんですけどこの子ぉぉぉ!」

 先ほどまで青かった顔がさらに青くなる。冷や汗が滝のように流れ落ちていく感覚に一種の気持ち悪さを感じたが今はそれどころじゃない。

 その後は、少女は無言のまま立ち上がり体に着いた汚れなどを軽く払い落としていた。

 そんな二人の光景を見たからか、青年はフッと笑みを零して見せた。

「安心したよ。これならば君のお姉さんももう心配せずに済みそうだな」

「え、姉上が? それって一体どういうーーー」

「彼女は今日からこの僕、【柳生九兵衛】の妻として我が柳生家に嫁いで貰う。その相談を今していたところだったのさ」


 彼の話はおよそ数刻前に遡る。

 銀時達が屋根の上で修復作業を行っていた頃、お妙と九兵兵は今の部屋で二人きりでいた。

「久し振りね九ちゃん。帰って来たんだったら連絡くらい入れてくれればご挨拶に伺ったのよ」

「気遣い有難う妙ちゃん。だけど、僕が帰って来た事は家の人間は誰も知らないんだ。誰よりも早くこの事を妙ちゃんに知って欲しかったからね」

「九ちゃん・・・」

 見つめあう二人。この場には今二人しかおらず、しかも此処は見合いとかデートとかそう言った大事な場面で良く使われる施設な為に無駄な騒音も演出もない。

 静かな時の流れだけが二人の間を支配していた。

 そんな静かな時を破るかの様に突然瓦のような物が砕ける音と野獣の叫びのような物が響き渡って来た。

「何? 今の悲鳴は」

「・・・・・・」

 咄嗟にその悲鳴を聞いたお妙の視線が一瞬九兵衛の視線から外れた。

 そう、本当に一瞬だった。その一瞬の内に九兵衛はお妙を後ろからそっと抱き寄せ、彼女と密着したのだった。

「ちょっ! 何?」

「会いたかった・・・ずっとずっと・・・会いたかったよ、妙ちゃん」

「九ちゃん・・・」

「前に約束したよね。僕が強くなったら・・・僕のーーー」




【僕の・・・股の玉になってくれる・・・て】




「はっ!!!」

 九兵衛のその一言にお妙は頬を染め、口元を抑えた。そう、それは彼女が過去に交わした約束だった。

 何気ない、子供同士の他愛無い約束。だが、九兵衛はそれを愚直に守り通して今お妙の前に現れた。

「僕は強くなった。今度は妙ちゃんが約束を守る番だ」

「・・・九ちゃん・・・御免なさい。それは出来ないわ」

「どうしてだい?」

「家の事情・・・九ちゃんなら知ってるでしょ?」

 お妙のその一言に、九兵衛は静かにうなずいた。

「知ってるよ。ご両親を亡くされたんだよね」

「今、私が九ちゃんの元へ嫁いだら、弟は独りぼっちになってしまうの。あの子はまだ独り立ちするには弱いし幼い。姉である私があの子を見守っててあげないといけないの」

「新八君の事か・・・相変わらず姉離れが出来てないんだな。だが、彼ももう16だ。いつまでも妙ちゃんがそばに居たんじゃ、彼は何時まで経っても一人で生きていく事なんてできやしない」

「それは分かってる! でもーーー」

 その時だった、突然天井が音を立てて崩れ落ち、更に其処から新八と謎の美少女が重なり合う形で振って来たのは。




「と、言う訳さ」

「何だよそれ・・・何だよそれぇ! 昔の、子供のころの約束だか何だか知らないけどふざけんな! 人の姉を勝手に嫁に貰うなんて一方的にも程があるじゃないか!」

「約束は約束だ。それに、妙ちゃんの方も既に了承している」

「え? あ、姉上・・・」

 信じられないとばかりに新八がお妙の方を見る。だが、お妙の表情は何処か艶やかにも見えた。

「新ちゃん・・・知らない間に大人になったのね」

「な、なに言ってるんですか姉上! 僕はまだーーー」

「だって・・・それじゃぁ貴方のそのそそり立ってる〇〇〇は一体何だって言うのぉ!!」

 お妙の指さす先、それはちょうど新八の〇〇〇な場所だった。そして、其処には山のようにそそり立つそれがあった。

「んがぁっっ!! こ、これは・・・その・・・」

「見事じゃないか新八君。それだけ立派なものを持っているならば君はもう立派な侍だ。それに、其処に居る彼女も君の連れなんだろ?」

「へ? 私の事?!」

 唐突に話題に加えられた事に驚き、思わず声が詰まってしまった少女にまともな返事など出来る筈がないのであり。

「ちょ、ちょっと待ってよ! 私は別に彼とは何の関係もーーー」

「ごめんなさいね。あの新ちゃんに貴方みたいな素敵な子が居たなんて気づかなかったなんて。これじゃお姉さん失格ね」

「だからぁ、私は別にそういう関係って訳じゃぁーーー」

「そうだわ、今度家にいらしてちょうだい。二人の門出にお赤飯炊くから。後卵焼きもね」

「姉上ぇぇ! 人の話聞いてますかぁ!? さっき彼女が違うって言ってるじゃないですか!?」

 一向に少女の話を聞こうともしない暴走状態のお妙についに弟新八が声を挙げた。

「彼女じゃない・・・そんな! 既にあなた達はもうそれ以上の関係にまでなっちゃったと言うのぉ!?」

「「だから違うってぇ!」」

「負けたよ新八君。既に君は彼女を物にしてしまったようだな。これは僕も負けていられない」

「いや、其処は張り合わなくて良いから。ただのあなた達の勘違いですからねぇ!」

 話にならないとはこの事だろう。この時新八はそう思えた。最早何を言っても話を聞く気配じゃないだろうし、逆に変に誤解をされそうに思えた。

「あの・・・何て言うか、すみません。こんな事に巻き込んじゃって」

「本当にね。今の私にはこんな事に使ってる時間はないんだけどね」

「ほ、本当にごめんなさい・・・この埋め合わせは何とかしますから」

「まぁ、埋め合わせだなんて。新ちゃんってば気が早いわねぇ」

 やばい。これ以上此処で話をしていては余計な誤解を招きかねない。かと言って実の姉を此処に野放しにしてはいけない。
 
「とにかくですよ! 僕は姉上の結婚なんて反対ですからね! 幾ら相手が九兵衛さんでも僕は認めませんよ!」

「随分と嫌われたものだな。そんなに僕が君の義兄になるのが嫌かい?」

「あぁ、嫌だね! いきなり出てきて、いきなり姉上を自分の嫁にするだなんてそんなの認められる訳ないだろうが!」

「やれやれ、少しは大人になったかと思ったが、相変わらず姉離れが出来ていないみたいだな」

「なにぃ!?」

 苛立ちを隠そうともしない表情を見せる新八の目の前で、九兵衛は一瞬の内に目の前にまで距離を詰め、そのまま彼の胸倉を掴むと遠心力を利用して弧を描くように持ち上げた後に床へと叩きつけた。

「がっ!! はぁっ!!」

「反応が鈍いな。噂では異世界とやらに行って腕を上げたと聞いてきたが、とんだデマだったみたいだな。或いは、異世界の人間が相当弱かったか・・・だな」

「ぐっ!!」

 新八は歯噛みした。

 今の九兵衛の言葉は聞き逃す事が出来ない。先の言葉は前の戦いで共に戦い知り合った者達に対する侮辱にもとれる言葉だ。

 それを聞いて許せる訳がなかった。

「と、取り消せ! 今の言葉を取り消せ!」

「事実を言って何が悪い。弱い奴は弱い。当然の事だろう?」

「な、何だと!?」

「悔しかったら掴みかかってきたらどうだ? 噛みついてきたらどうだ? それすらも出来ず惨めに吠える事しか出来ない君を見て、弱いと判断しない奴など居ない」

 とても冷めた視線だ。氷の様に冷たく突き刺さるような冷徹な視線が新八に向けられていた。

 その視線に、新八は動きを封じられてしまっていた。本来ならばそいつの言った通り掴みかかるか殴りかかるかすべきだっただろう。

 だが、それをすべき筈の新八は氷のような視線を一身に受けたが為に抵抗するすべを奪われてしまっていた。

「う・・・ぐぅ・・・」

「それでも侍なのかい? 何とも情けない事だ。色恋沙汰にうつつを抜かしてないで少しは己を鍛える努力をすべきじゃないのかい?」

 反論など出来る訳がなかった。彼が言う通りだったからだ。己を鍛える事を怠ったことも、自分自身が無力だったことも。

「さっきから聞いてれば、随分な言い草ね」

「え?」

 反論出来ない新八に代わって、隣に居た彼女が口を開いてきた。

「この地の風習とかそんなのは私自身良く知らないけど、言い分としては弟君の方が正しいんじゃないの?」

「さっきも言っただろう。僕と妙ちゃんは夫婦の契りを結んだ仲だとーーー」

「それは正式な契りなの? それともただの口約束? もし口約束だとしたら、それは貴方の横暴になるんじゃないの?」

「・・・・・・」

 彼女の言葉に今度は九兵衛が黙ってしまった。

「反論しないって事はただの口約束みたいね。だったら弟君の言い分が正しいって事を認める事になるけど」

「残念だが・・・その論議をするには一足遅かったみたいだな」

 懐から一枚の書類を取り出し、それを二人に見せた。其処には【婚姻届】と書かれた書類と、直筆で書かれた九兵衛とお妙の名前が書き連なれていた。

「見ての通り、こうして正式に僕と妙ちゃんは夫婦となった。これで文句はあるまい」

「こ・・・婚姻届けって・・・しかも、あの字は・・・姉上!」

 書類に書かれた文字に見覚えがあった。間違いなくお妙の文字だった。

「そんな・・・そんなのって!」

「これで文句はあるまい。新八君も、其処の君も、もうこれ以上僕と妙ちゃんの仲に口出ししないで欲しい」

 もう打つ手がなかった。もし九兵衛の言い分がただの口約束だったならば幾らでも手段があっただろうが、既に書類込みとなってしまっては手の打ちようがなかった。



 バキバキッ!!



「「「「!!!」」」」

 突然、壁をぶち破る音と共に、新八達の居た部屋に勢いよく誰かが飛び込んできた。

「ぎゃあぁぁぁ!」

「ゴリラが! ゴリラがぁぁぁ!」

「ゴリラってどっちのゴリラァァァァ!!」

「ちょっと勲さぁん! 何であのゴリラ達あんなに怒ってるんですかぁぁ!」

「落ち着いて下さい皆さん! 此処は私が対ゴリラ用殺獣装置を作りますのでその間時間を稼いでくれれば万事解決ーーー」

「する訳ねぇだろうが! 大体なんだそのどこぞの怪獣映画とかに出てきそうな物騒な名前の代物はよぉ! メーサーか? メーサーでも使うつもりかコノヤロー!」

 ギャンギャン大騒ぎしながら飛び込んできた銀時、神楽なのは(シュテル)、近藤、後見知らぬ女性とそれを追いかけてくる巨大ゴリラ二頭。

「だぁぁぁぁ! 何ですかこれはぁぁぁ!」

「でかぁぁっ! 何あのゴリラでかっ! 此処って巨大ゴリラの生息してる星だったのぉ!?」

「違うからね! あんな恐ろしい生物居る筈ないから。ってか銀さん! これ一体どうなってるんですかぁ!」

 大慌てしまくる新八と彼女を前にして銀時は非情に申し訳なさそうな顔をしだす。

「えぇっと・・・とりあえず説明が面倒だから場面移すわ」

「あんた小説だからって好き勝手してんじゃねぇよ!」





     ***




 それは、丁度新八と謎の女性が揃って屋根をぶち抜いて階下に落下してしまった時の事だった。

「あ~あ、あの野郎折角修理した屋根に大穴開けやがって。どうすんだよこれ」

「問題無いネ銀ちゃん。こうなったら煙突でも立てて誤魔化せば良いアル」

「成程、そうすりゃクリスマスにサンタさんが此処を通ってやってきますよって言い訳出来るもんな。神楽お前冴えてるなぁ」

「ですがお父様。その煙突を作る材料が足りませんが」

 等と、落下した新八の事など誰一人心配していない様子だった。

「あぁ? 別に素材なんて何でも良いだろ? この際段ボールとか発泡スチロールとかで誤魔化せんだろうよぉ」

「お父様、流石にそれはないと思いますよ」

「良いんだよ。どうせ煙突なんてリアルで見た奴なんて一人もいねぇんだから適当にやってりゃ問題ねぇって」

「銀ちゃん! だったら私空き缶で煙突作りたいネ!」

「でしたら私はルナチタニウム合金製の煙突を作りましょう。ちゃんとメガ粒子砲も撃てるようにしますよ」

「うっし、そんじゃ早速煙突でも作って誤魔化すーーー」

 その時だった、修理用に置いておいた予備の瓦が突然滑り落ちるかの様に屋根の上を滑走して、そのまま大地へと落下してしまった。

 その後に聞こえて来たのは瓦が落下して砕ける音と獣の断末魔とも思わしき悲鳴が聞こえて来た。

「あ~あ、瓦落としちまったよ」

「銀ちゃん。なんか変な叫び声聞こえなかったアルか?」

「えぇ、聞こえました。何と言うかゴリラっぽい生き物の悲鳴が聞こえてきました」

 瓦が砕ける音はともかくとして悲鳴が聞こえて来たのは少々不味いかも知れない。
 
 もし誰かしらに当ったりしたらそれこそ面倒毎になりそうだ。

「あ~、すんませぇん。さっき瓦落としちゃったんですけど大丈夫でしたかぁ? ・・・あれ?」

「よ・・・万事屋」

「あり? ゴリラじゃねぇか」

「ほんとだぁ。ゴリラが袴着てるネ」

「こんにちは。ゴリラ局長さん」

 銀時、神楽、なのは(シュテル)の三人がそれぞれ屋根から顔を覗かせて階下に居た近藤とアリアの姿を目撃する。

 その姿を見た直後に近藤のお尻のダムが決壊し、丸まる一本飛び出してしまったのはほぼ同時であった。

(な、何で此処に万事屋が来てんだ。しかも、そのせいで全部出ちまったよ。丸まる一本いっちまったよ)

 突然の万事屋の遭遇に青ざめる近藤。そんな近藤の事など一切気に留めず、一同はすぐさま屋根の上から降りてこちらに近づいてきた。

「つぅかお前こんなとこで何してる訳? しかも紋付なんて着ちゃって」

「銀ちゃん。これってアレアルかぁ? 見合いみたいな奴アルかぁ?」

 神楽の確信めいた発言に銀時もなのは(シュテル)もうなずきだす。

 まずい、こいつらに見合いしているなんてばれた日には何されるか分かったもんじゃない。

 何とか誤魔化さなければ。最悪の事態を回避する為にもーーー

「い、嫌だなぁ坂田君。僕たちアレだよ。ペットのゴリラを散歩させてただけだよ。それでたまたまばったり会っちゃったんでこうして話してただけなんだよ。ね、ねぇアリアさん?」

「え、・・・ええぇぇぇーーー!!!?」

 突然話題を振られた事に慌てふためくアリア。そんな彼女を前に銀時達三人の冷ややかな目線が突き刺さってくる。

(お願いだぁぁ! どうか察してくれぇぇアリアさんーーー! こいつらに俺が見合いしてるなんてばれた日にゃ何言いふらされるか分かったもんじゃないんだよ)

(え? 何、何なの!? 一体ぜんたいどうなってるの? ってか、この人達勲さんの知り合いか何かなの? もう急展開過ぎて何が何やらさっぱり分からないんですけど。一体どうすれば良いの私はぁぁーーー!)

 近藤の無茶ぶりのせいでアリア自身も結構パニックに陥ってしまっていた。まぁ、元々リリカルキャラである彼女に銀魂的ノリを即興でやれと言う事そのものが無理だったのだろうが。

「はぁ? ゴリラの散歩? お前自分がゴリラだって自覚持ってる訳ぇ?」

「べ、別に良いじゃないか! ゴリラがゴリラ飼ってたって何も問題ないだろ? そ、それよりもアリアさん、俺達もそろそろ部屋に戻るとしましょうかねぇ?」

「え? え、えぇ・・・そ、そうですね」

 適当なところで会話を切り、一秒でも早くその場から立ち去りたく足早にその場から動き出した近藤。

 そんな近藤の袴から何やら得体の知れない物が転がり落ちて行った。

 茶色くて太くて、そして何故かモザイク処理が施されたとても汚らしい何かが袴から転げ落ちたのをこの時誰もがその瞬間をとらえてしまった。

「あ・・・」

「あ!!!」

 誰もが一言、一言だけ言葉を発した。それ程までに衝撃的光景であったのだ。

(や、やっべぇぇぇ! 袴の下はトランクス一枚だったから零れ落ちちまったあああああああああ! 一本〇ソが丸まる零れ落ちちまったああああ!)

 零れ落ちたそれを見て真っ青になる近藤。何が落ちて来たのかいまだに理解しておらずギョッとした顔をするアリア。んでもって毎度の事なので相変わらず冷めた目線の銀時と神楽。

 だが、その中で一人なのは(シュテル)だけは対応が全く違っていた。

「皆さん! すぐに離れてください! これは危険な寄生型エイリアンに違いありません!」

 と、いきなりそんな事を言い出す始末であった。

「おいなのは、あれはどう見てもあのゴリラのケツから出て来たウ〇コだろ? 寄生型エイリアンな訳ねぇじゃんか」

「甘いですよお父様。世の中には細胞レベルの大きさしかないエイリアンだって存在しているんです。もしかしたらこの排泄物の中に混じってエイリアンが他の生命体に寄生しようとしているのかも知れません!」

「あ、一応ウン〇ってのは認識してるんだお前」

 一応それを〇ンコと認識していてくれて一安心な銀時だが、そんな銀時の目の前で突如なのは(シュテル)は完全防備体制を取った後に、近藤の落としたソレのサンプル回収をし始め出したのだった。

「おいいいぃぃぃぃぃ!! 何やってんだお前はぁぁぁ!」

「無論、検査です。もし万が一この排泄物の中に侵略型異星人が紛れ込んでいたら一大事です。その前にこうして検査をして除去してしまおうと思ったのでこうしてサンプル採取をしているのです」

「止めろぉぉぉぉぉ! 年頃の娘がおっさんのウン〇を採取してる光景なんて俺ぁ見たくねぇんだよぉ! 頼むからやめてくれ! 300円あげるからさぁ!」

「さ、300円ですって!!? 私の2か月分の研究費用(お小遣い)を提供して下さるだなんて。これは是が非でも研究を成功させねばなりませんね」

 逆効果だった。却ってやる気を出させてしまっただけだったようだ。

「ちょっ、なのはちゃん止めてくんない。そりゃ確かに俺の肛門から出て来た代物なんだけどさぁ。それを君みたいな女の子が弄繰り回して良い光景じゃないよ。これきっと読んだリリカルなのはファンとかが絶対卒倒しかねない光景だからさぁ」

「ご心配なく。その時には倒れたファンの方々を回収し私自ら監修の元改造手術を行います。そうすれば些細な事で一々気絶するような軟弱な精神などかなぐり捨てた超人へと生まれ変われる事でしょう」

「うん、とりあえず全然大丈夫じゃない事は分かったからさぁ、とにかくもうそんな事止めてくれない? 見てるこっちの方がなんか辛いからさぁ」

「確かに辛いです。ですが誰かが業を背負わねば人は前に進めないのです。人類を新たなステップへと進める為ならば私は喜んでこの身を汚す覚悟があります!」

「すっげぇ重いんだけどぉ! 何この子! まるで何処かの赤い彗星とか言われてる人みたいな事言ってるんだけど。小惑星とか地球に落下させて核の冬とか起こしそうなんだけどこの子ぉぉ!」

 近藤の説得も失敗に終わってしまった。まぁ、最初から近藤の言葉などに耳を貸す事はないだろうなぁと銀時は思っていたので然程気にしてはいないのだが。

「いい加減にするアルよなのは!」

「か、神楽さん!?」

 そんななのは(シュテル)の暴挙を止めたのは意外にも今の今までだんまりを決め込んでいた神楽であった。

「そんなゴリラのケツから出て来たウン〇に触ったらゴリラ菌が移るアル。なのはの顔もゴリラ顔になっちゃうアルよ!」

 これが神楽なりに出来る説得方法だった。普通ならそれで万事OKなのだろう。だが、それは説得相手が彼女でなければの話だ。

「何ですって!? ゴリラ菌なる物が存在していると言うのですか!?」

「え?」

「こうしてはいられません。今すぐにでもサンプルを採取しなければ。となればこの排泄物でも構いませんがもっと確実にデータを取る為にも血液を採取しなければ。と言う訳ですので近藤様。血を200ccほどお譲り下さい」

 あ、こりゃ駄目だ。完全にスイッチが入ってしまっている。内心銀時は諦めていた。

 こうなってしまったなのは(シュテル)を止める手立ては今の所ほぼ皆無だと言える。

 彼女は姉的存在に当るなのはと違い豊富な知識と情報吸収能力を有しており、戦場に立てばさながら名軍師にでもなれるのではないだろうかと言える程知略に富んだ逸材でもあった。

 が、そんななのは(シュテル)にも致命的な欠点がある。それは一度凝り始めると修正不可能なまでに脱線してしまう事と壊滅的なまでに空気を読まない事にある。

 現に今現在も彼女の脱線しまくった思考のせいで本来の話の道筋が全く見えなくなってしまっていた。

「いや、えと・・・一体どうしたんだいなのはちゃん。何時ものなのはちゃんじゃないよね。君ちょっと変じゃない?」

「御託は良いのです。一刻も早くそのゴリラ菌とやらを発見し早期に撲滅しなければ人類はゴリラ菌に負けてしまいます。菌の繁殖速度は恐ろしいのです。舐めてはいけませんよ!」

「何だろう。今すっごい傷つけられた気がするんだけど。俺のガラス細工のハートをチェーンソー的な何かでガリガリ削られてるような気がするんだけど」

 自分の胸を強く抑えて蹲ってしまった近藤。そんな近藤を心配そうに介抱しようとしたいのだがどうすれば良いのか困り果ててしまっているアリア。

 そして、面倒臭さそうなので余り関わらない方が良いかな? と思い我関せずを決め込もうとしている銀時と神楽。

 そんな中だった。突如として二匹の巨大ゴリラが起き上がりだしたのは。

「ウホウホホッホ!(いたた、急に何かが頭の上に落ちて来たぞ)」

「ウウッホウッホウッホ!(本当に痛かったわ。きっと瓦が落ちて来たのよ。あれ結構痛いし)」

 相変わらず外見がまんまゴリラな為か会話もウホウホで済んでしまっている。

「わっ! でっかいゴリラアルなぁ」

「本当だなぁ。あれがお前の飼ってるペットって奴なのか?」

「そそ、そうだよ坂田君。あれが俺の家で飼ってるペットなんだよ。いやぁ大事に育ててたらあんなに大きくなっちゃってねぇ」

「ふぅん、それじゃもう一匹は?」

「え!? えぇっと・・・」

 滝のように冷や汗を流す近藤。チラッチラッとアリアに視線を送る。その視線に気づいたアリアはハッとなり一歩前に出た。

「わ、私の飼ってるゴリラなんです。勲さんとは此処で一緒にゴリラ談義をしていただけなんですよ」

「へぇ、あんたみたいな別嬪さんがねぇ。世の中分かんねぇもんだなぁ」

 そう言って繁々とアリアを見回していく銀時。結構視線が艶めかしいと言うかエロ親父のそれっぽかった。

「んでよぉ、お前ら今日会ったばっかなんだよな?」

「そ、そうだよ。俺とアリアさんは今日会ったばっかだよ」

「そうですよ。勲さんの言う通りですよ」

「じゃぁさ、何でそんな親しげに下の名前で呼び合ってる訳?」

(し、しまったああああああああああああ!)

(完全にその事は頭に入れてなかったわあああああ!)

 二人揃って墓穴を掘ってしまった瞬間であった。思わず青ざめてしまったが、既に後の祭りである。

「なぁんか怪しいよなぁお前ら」

「え、えぇっと・・・」

「まぁさぁかぁ、お見合い・・・だったりして?」

「「ギクゥッ!!」」

 いきなり確信をついてきた銀時のそれに近藤とアリアが揃って肩を震わせてしまった。これはもう「はい、その通りです」と言っているようなものだったりする。

「あれあれぇ? もしかしてマジなの? マジなのそれ? おいおいゴリラぁ。とうとうお妙の事は諦めて新しい女に暮らすチェンジしたってかぁ? しかも結構グラマーな姉ちゃんじゃねぇか。羨ましいねぇコノヤロー」

「ば、馬鹿な事言うな万事屋! 俺の中ではいまだにお妙さんこそが至高の存在であり究極の存在なんだ!」

「近藤様。それを見合い相手の目の前で言うのは些か常識知らずかと思われますが?」

 正直その台詞は今一番なのは(シュテル)に言われたくないと誰もが思った筈だ。

 その時だった。つい今の今まで散々無視されてきていた二頭のゴリラ達が突如ブッツンきたのか凄まじい暴れっぷりを見せ、かつ銀時達目掛けて襲い掛かって来た次第だった。

「ぎゃああああ! ゴリラがぁぁ! ゴリラが襲い掛かって来たアルゥゥゥゥ!」

「おいゴリラぁぁぁ! あれてめぇのペットなんだろ? だったら何とかしやがれゴラァ!」

「無理無理無理無理!! あれ俺の言う事聞かないから無理ぃぃぃ!」

「ざけんなよゴリラがぁ! ペットはちゃんと最期まで責任をもって世話しろやゴラァ!」

「ちょっとちょっとぉぉぉ! いきなり何なのよこれはぁぁあ! どうして見合いに来ただけなのにこうも巻き込まれなきゃならないのよぉぉぉ!」

 必死に逃げ惑う銀時達を追いかけ回す二頭のゴリラ。それから逃げる際に思わず屋内へと逃げてしまい、結局先の展開に繋がるのだそうな。




     つづく 
 

 
後書き
原作のシュテルは間違ってもこんな面倒くさいキャラじゃないでしょうね。・・・多分だけど

なのは(シュテル)
「何ですか? 今私は超光速万能大型変形合体マシン兵器の開発で忙しいので質問は後にして下さい。急いでこれを完成させて遥か宇宙のかなたに居るであろう宇宙怪獣との決戦に臨まねばーーー」

 うん、そんな設定ないからね。やらないからね間違いなく。 
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