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雲外鏡

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第四章

「実際に」
「やっぱりそうなんだ」
「雲外鏡っていいまして」
 裕貴は妖怪の名前も述べた。
「百年経った鏡がなるんです」
「百年だね」
「ものは長くあると付喪神になりますが」
「それ言われてるわね」 
 亜弓もこのことは知っていた。
「じゃあうちは古いお家だから」
「そう、だからね」
 裕貴は亜弓にあらためて話した。
「こうしたね」
「古い鏡があって」
「それでね」
「付喪神、妖怪になったのね」
「そうだよ」
「成程ね、そのことはわかったわ」
「それでだけれど」
 優斗は真剣な顔で裕貴に尋ねた。
「この鏡は亜弓さんが蔵にお掃除で入ってね」
「その時に見付けたんですね」
「そうしたものだけれど見ても何もなかったし」
「お掃除の時に」
「今持っても何もないね」
「それで悪いことをしたり災いをもたらしたり」
「そうした妖怪もいるから」
 それでというのだ。
「僕はこのことが心配だけれど」
「特にないみたいですよ」
 優斗の心配ごとにつてもだ、裕貴は答えた。
「ただ顔が鏡に出るだけで」
「古い鏡だからだね」
「それで付喪神で魂はありますけれど」
 それでもというのだ。
「何か悪いことをしたり災いをもたらすとか」
「そうしたことはだね」
「ないみたいです」
「じゃあ心があってだね」
「はい、顔があるだけで」
 ただそれだけでというのだ。
「怖くはないです」
「そうなんだね」
「別にあっても何もないのね」
 亜弓も裕貴にこのことを尋ねた。
「この鏡は」
「うん、それよりも百年経った鏡なんてよくあるね」
「うち他にもあるわよ」
「そうした古いものが」
「じゃあひょっとしたら」
「他にもあるかもね」
 付喪神がとだ、それで実際に四人で蔵を調べると。
 付喪神がこれでもかという程あった、それで亜弓は調べ終わった後でこんなことを言った。
「いや、まさかね」
「こんなにりるとはだね」
「思わなかったわ、うちは古いお家で」
「古いものも一杯あるからね」
「付喪神も大勢いるのね」
「そうしたことだよ」
「いや、面白いね」
 優斗は微笑んでこんなことを言った。
「妖怪がこんなにいるお家もあるんだね」
「優斗様のお家も古いですから」
 それでとだ、亜弓は自分の許嫁にも話した。
「きっと蔵には」
「そうかも知れないね」
「はい、ですが害はないとのことなので」
「安心していいね」
「そうですね、じゃあ今日は教えてもらって探して見付けてもらったから」
 それでとだ、亜弓は裕貴と美和子に向き直って話した。
「お菓子ご馳走するわね」
「お菓子ですか」
「和菓子でいいかしら」
 お菓子と聞いて目を輝かせた美和子に笑顔で答えた。 
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