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最も相応しい生贄

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第一章

               最も立派な生贄
 マヤに伝わる話である。
 フン=フナフプという者がいた、この者はとかく身体を動かすことが得意で特に球技に秀でていた。
 それで冥界シバルバーの王の前での試合の球技でも活躍した、だが。
 王はその彼の試合での活躍を見てそれで周りに言った。
「次の生贄はあの者だ」
「フン=フナフプですか」
「あの者を生贄にしますか」
「そうだ、あの者をだ」
 まさにというのだ。
「次の祭りの生贄にする」
「ですが」
 周りの大臣の一人が王にどうかという顔で話した。
「あの者は」
「球技でか」
「はい、活躍しました」
「ならばか」
「殺すには惜しいです、これからもです」
 まさにというのだ。
「試合で活躍してもらい。戦でもあの身体の動きですから」
「戦ってくれるか」
「間違いなく、ですから」
「いや、見事な者だからだ」
 それ故にとだ、王は言うのだった。
「神も喜ばれるではないか」
「生贄にすれば」
「そうだ、生贄に捧げる者は立派でなければだ」
「神は喜ばれない」
「だからだ」
 王は言うのだった。
「あの者をだ」
「次の祭りではですか」
「生贄にする」
「そうされるのですか」
「あの者こそな」
 こう言ってだった、王はフン=フナフプを実際に次の祭りの最後で神の生贄とした。そして彼を首だけにして木に吊るした。
 だがフン=フナフプは首だけになっても生きていた、それで王に対して怒りの言葉と呪詛を言い続けていた。
「この怨み、必ず晴らすぞ」
「そなた、まだ生きているのか」
 王に謹言した大臣が彼に問うた。
「首だけになっても」
「死んでたまるものか」
 フン=フナフプは大臣に強い声で応えた。
「何故俺が殺されねばならん」
「だからそれはな」
「生贄に相応しかったからか」
「そうだ、お主がだ」
「試合で見事な活躍をしたからか」
「見事な者だとな」
「王が言ってか」
「そしてだ」 
 そのうえでというのだ。
「お主は生贄になったのだ」
「ふざけるな、俺はまだだ」
「死ぬつもりはなかったな」
「まだまだやりたいことがあった、それなのにか」
「立派な者を捧げてこそな」
 大臣はまた彼にこのことを話した。
「神も喜ばれると言われてだ」
「立派な、だな」
「そうだ」
「ではこの世で最も立派な者こそがだ」
 フン=フナフプは首だけの顔で怒って言った。
「生贄になれ」
「立派なか」
「そうさせてやる」
 こう言ってだった、彼は首だけになっても生き続けたが。
 彼の前に若く美しい女神シュキックが来ると彼女に言った、
「お前ならだ」
「私ならですか」
「何故ここに来た」
「貴女の噂を聞いて」
 それでとだ、シュキックはフン=フナフプに話した。 
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