| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

金色に輝く女

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第五章

「衣吹ちゃんってやっぱり」
「だから言ってるでしょ、毛深いの」
「そうなのね」
「お口だってちょっと油断したら」
「あっ、お鬚ね」
「うっすらと出るから」
 髭がというのだ。
「産毛がね」
「それじゃあ口元にもなのね」
「クリーム塗らないとね」
「これまでは剃ってたけれど」
「ええ、それもね」
「大変ね、まあ私もね」
 由香も由香で言うのだった。
「前お話した通りね」
「体臭なのね」
「それが気になるから」
「あっ、由香ちゃん今もいい香りするけれど」
「シャワー浴びて来たから」 
 衣吹の家に来る前にというのだ。
「そうしてきたのよ」
「大変ね」
「それで来てるから、それで夜もね」
「シャワー浴びるのね」
「お風呂よ、夜は」
「お風呂なの」
「シャワーは流すだけだけれどお風呂は汗をかいて」
 そうしてというのだ。
「匂いの素が出るから」
「いいのね」
「だから夜はね」
「お風呂入ってるのね」
「それで香水も付けてるから」
「由香ちゃんの方が大変かもね」
「一緒位じゃない?とにかく身だしなみはね」
 これを整えることはとだ、また言うのだった。
「大変よね」
「それはそうよね」
「何かと大変で」
「困るわよね」
「本当にね」
 そうしたことを話してだった。
 二人は麦茶を飲んで水羊羹を食べてゲームをしようと思ったが由香はここでまた衣吹に言った。
「太ることもね」
「そのことね」
「水羊羹はあまり糖分ないわよね」
「和菓子系はね」
「じゃあ安心ね、けれど甘いものもね」
「食べ過ぎない様にしないとね」
「太るのも駄目だし」
 こう衣吹に言うのだった。
「大変よね」
「私ね」
 衣吹はここで困った顔になって由香に返した。
「この顔でスタイルでしょ」
「太ってるとか言われる?」
「脂肪率は普通なのに」
 女の子の標準だというのだ。
「ちょっと太るとね」
「言われるのね」
「太ったってね」
「今で言われないぎりぎりで」
「ちょっと太ると」
 そうなればというのだ。
「言われるのよね」
「それも難儀なことよね」
「かなりね、だからね」
「気をつけてるのね」
「部活文芸部だけれど」
 尚由香は吹奏楽部だ、二人共部活動には熱心である。
「それでもね」
「気をつけないとっていうのね」
「そう思うし」
「じゃあ歩くことよ」
「散歩ね」
「歩くとそれだけで運動になるから」
 それでというのだ。
「いいわよ」
「そうね、じゃあね」
「歩くこともね」
「やってみるわ」
 そうした話をしてだ、衣吹はもう水羊羹は食べなかった。そうして入浴の時にその夜母が買ってきてくれた脱毛クリームを塗ってだった。毛を処理して。
 母や姉も誘って散歩に出た、衣吹も本当に大変だった。


金色に輝く女   完


                 2019・2・17 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧