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バッファロー=カーフ=ロード=ウーマン

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第六章

「あれは女だ」
「あっ、あれは」
「確かにそうですね」
「あの戦士は男ではありません」
「女です」
「スー族の女です」
「そうだ、女だ」
 まさにとだ、クルックは言った。その女は今馬を撃たれて落馬した戦士に向かって囲みに激しい銃撃を浴びせていた。
 拳銃の弾丸が尽きると別の拳銃を出してだった、再び銃撃を再開する。そしてその激しい銃撃にだった。
 騎兵隊の者達も囲みを解いてしまった、彼等も数人倒されてだ。それで怯んで囲みを解いてしまった。そこにだった。
 女は馬で駆け込み若いインディアンのところに来て素早く下馬し彼を自分の馬に乗せるとだった。こう言った。
「兄さん、戻るわ!」
「お前が来たのか」
「ええ、そうよ」
 囲まれていたインディアンはカムズだった、そして彼を救わんと駆け付けてきたのは彼の妹だったのだ。
「どうしてもと思ってこっそりとついてきていたの」
「軍にか」
「そうしたら戦闘が行われていて」
「俺が囲まれているのを見てか」
「来たのよ」
「そうだったのか」
「それで兄さんはどうするの?」
 既に馬は駆けている、アメリカ軍は彼等を茫然として見ているだけで攻撃してこない。インディアン達も攻撃を止め彼等を見守っている。
「これから」
「まだ戦う」
 これが兄の返事だった。
「今はな」
「そうするのね」
「戦いは終わっていない」
 だからだというのだ。
「俺は軍勢に戻る」
「そう、じゃあそちらに行くわね」
「頼む、そしてだな」
「女は軍勢には入られないわね」
 自分の後ろに乗っている兄にだ、妹は顔を向けて笑って返した。
「だからね」
「俺を返したらか」
「村に戻るわ」
「そうするか」
「ええ、今だって過ぎたことね」
「女のすることじゃない、だが」
 それでもとだ、彼は妹に微笑んで話した。
「このことは死ぬまで忘れない」
「そうしてくれるのね」
「何度も言う、俺達の約束は絶対だ」
 インディアンのそれはというのだ、こう話してだった。
 妹は兄を無事軍勢に送り届けた、するとスー族の軍勢は彼等を喝采して迎えた。その状況を見てだった。
 クルックは唸ってだ、思わずこの言葉を出した。
「女でもあそこまで勇敢だ、ならな」
「はい、スー族の男はですね」
「どれだけ勇敢か」
「今戦っていますが」
「実感してもいますし」
「この戦いはアメリカにとって大変な戦いになる」
 部下達にもだ、クルックは述べた。
「間違いなくな」
「左様ですね」
「まだ戦いは続きますが」
「慎重に行わなければ」
「負ける」
 そうなるというのだ。 
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