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ほんわかホリデー

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第三章

「お気をつけて」
「ううん、神楽ちゃんがそう言うなら」
「そうして下さい、ましてやこの京都は悪い男の巣窟ですよ」
「そうだったの?」
「昔からもうお公家さんと女の人の」
 古典からの言葉だった。
「光源氏みたいな人がいて」
「源氏の君ならよくない?」
「よくないですよ、あんなプレイボーイ」
 神楽は名作古典の主人公を即座に否定した。
「女の子をとっかえひっかえで」
「そういえばそうね」
「お父上であられるしかも帝の奥方にもですから」
「帝の奥方ってね」
「大変なことですよ」
 あってはならないことである、言うまでもなく。
「しかもお父上ですからね」
「帝は」
「そんな変な創作みたいな」
「変なっていうと?」
「ですからそうしたですよ」
 神楽は顔を真っ赤にさせて千花に言った、二人で四条の街中を歩きつつ話している。二人から見て右手にある店達には多くの客がいて道も同じだ。
「その、あのですね」
「キスとか?」
「キスよりもずっと先にいったことですよ」
 神楽は顔を真っ赤にさせたまま話した。
「そのですね」
「ああ、そういうことね」
 ここで千花も顔を赤くさせた、それで言うのだった。
「あれはね」
「そんなことばかりする人なんて」
「神楽ちゃんとしてはなのね」
「確かに美男子で人格者ですけれど」
「女の人については」
「見境がないですから」
 そうとしか思えないからだというのだ。
「私としてはです」
「源氏の君は、なのね」
「私は安倍晴明さんですから」
 平安時代で好きな人はというのだ。
「ですから」
「光源氏さんは余計に」
「はい、部長にも言わせて頂きます」
「ああした人は気をつけてよね」
「如何にもなヤクザ屋さんや不良の人達もですが」
「そうよね、やっぱりね」
「はい、悪い男の人には気をつけて下さいね」
 どう見ても無防備で隙だらけの千花に言うのだった、神楽は実際にこの日は千花を守ろうと思っていた。
 だがこの日の二人は平和だった、それぞれが行きたい店に買いもので一緒に入ってそうして食事もだった。
 ファーストフード、ハンバーガーの店に入って食べるがここで神楽は千花にバニラシェイクを飲みつつ話した。
「何か今日は」
「今日は?」
「人が多くて賑やかですが」
 京都四条の常だ、ここは平日でもそうだ。
「私達は」
「美味しいわね、ハンバーガー」
「ハンバーガーも美味しいですが」
 話の主題はそれでないと言うのだった。
「平和ですね」
「そうよね」
「部長と一緒にいると余計に」
「平和に思えるの?」
「はい」
 神楽は千花に笑顔で答えた。 
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