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Back door night

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第一章

               Back door night
 扉なんて何処にでもある、それこそどんな部屋でも建物でもだ。和風のお部屋なら障子だけれどとにかく何処にでもある。
 私の部屋もそうだ、それで私は彼氏と同棲している部屋の中で一緒にゲームをしながら飲んでいる彼氏にその扉を見つつ言った。
「扉なんて何処でもあるけれど」
「そんなの言うまでもないだろ」
「ええ、けれどね」
「けれど?」
「いえ、その何処にでもある扉の向こうが」 
 それがと言うのだった。
「もう向こう側の世界よね」
「何か民俗学みたいなこと言うな」
「私社会学部だから」
 大学ではそこに通っていて卒業している、彼氏は歴史学部だ。それで二人共今は普通のOとサラリーマンだから日本の大学は少しいい加減だと思う。
 それでもだ、私はそのことを置いておいて彼にさらに話した。
「とにかくそれはそれで」
「ああ、民俗学はか」
「家の玄関の向こうはお家じゃないしトイレもね」
「扉一つでトイレになるな」
「全然違う場所になるでしょ」
「そうだよな、そこはな」
「そう思うとね」 
 その何処にでもある扉一つ開いて潜れば全く違う場所に行き来することがだ。
「不思議よね」
「それはそうだよな」
「言われてみればでしょ」
「ああ」
 そういえばとだ、彼も私の言葉に頷いてくれた。
「そうだな」
「そうでしょ、それでね」
「今もそんなことを言ったんだな」
「そうなのよ、どの扉もね」
 それこそだ。
「それ一枚向こうは全く違う場所で」
「俺達はそこをいつも行き来してるってことか」
「そうなるわね」
「そう言うと本当にあれだな」
「民俗学みたいっていうのね」
「ああ、歴史学と近いしな」
 彼が大学の時に専攻していたその学問の分野と、というのだ。
「それならな」
「そう思うのね」
「ああ、それでな」
「それで?」
「民俗学って結構妖怪出るんだよ」
 彼はゾンビゲームをしつつこうした話をしてきた、ゾンビ達は撃たれても撃たれても次から次にと元気よく出て来ている。
「これがな」
「ああ、そういえば聞いたことがあるわ」
 このことは私も言われて実際に効いた話を思い出した。
「柳田国男とかね」
「あの人がはじめた学問でな」
「遠野とかよね」
「それでその地域の風俗習慣や伝承を調べていくとな」
「妖怪のお話が多いのね」
「それでな」
 そのうえでというのだ。
「扉の向こうはってなるとな」
「違う世界で」
「それでな」
「妖怪もなのね」
「いてもな」
 それもというのだ。
「よくありそうだろ」
「そう言うと怪談とか都市伝説ね」
「そっちも民俗学の分野だよ」
「そうなの」
「ああ、口裂け女とか花子さんとかな」
 その都市伝説の妖怪達だ、とはいっても私は花子さんは知っていても口裂け女は名前位しか知らない。
「そういうのもだよ」
「民俗学で研究するの」
「そうなんだよ、俺も大学でちょこっと講義受けたしな」
 民俗学のそれをというのだ。 
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