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おっちょこちょいのかよちゃん

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12 決戦「次郎長」vs「義元」

 
前書き
《前回》
 杉山達組織「次郎長」は生前次郎長の名子分であった森の石松と出会う。そして彼から不思議な力を持つ石を貰う。そしてこの石を利用して組織「義元」に対抗する為の特訓を始めた!!

 ちなみに前回杉山君達が貰った石はポケモンの「進化の石」を元ネタとしています。 

 
 「次郎長」は石松から貰った力の石を使いこなす為の練習を続けており、調整を終了させて帰るところだった。
「よし、決戦は明日だ。絶対に基地を取り返すぞ!」
「おう!!」
 奪還を誓い合う四人だった。

 かよ子は夜も悩み続けた。
(杉山君・・・。ごめんね、秘密を知って・・・。でも無駄な喧嘩はやめて・・・!!)
「かよ子、御飯よ」
 母が呼んだ。部屋に入ると、娘は息苦しそうな顔をしていた。
「あら、どうしたの、かよ子?」
「お母さん・・・」
 かよ子は母に言うべきか悩んだ。しかし、この秘密をばらしてしまえばフローレンスの忠告を無視することになるのでさらに悩んだ。
「う、ううん、なんでもない・・・」
「そう、でも、何かあったら相談するのよ」
「うん・・・」
(きっと誰にも言っちゃいけないと言われている秘密があるのね・・・)
 かよ子の母は追及しなくても察する事ができた。
「ま、御飯食べて元気出して」
「ありがとう・・・」


 翌日、学校でかよ子は大野、杉山、ブー太郎、まる子の四人が集合しているのが見えた。
「いいか、今日決戦だ!」
「この石でコテンパンにするブー!」
 この会話はひそひそと会話していたので遠目で見ているかよ子には聞こえなかったが、今日あの秘密基地を取り返すつもりだと読む事ができた。
(今日、戦うつもりなんだ、杉山君達・・・)
 冬田も四人の会話を盗み見ていた・・・。
(大野くうん・・・)

 清水市の高校では濃藤は妹が喧嘩を鎮められるか気がかりだった。
「濃藤、やっぱり妹が心配なのか?」
 三河口が聞いてきた。
「あ、うん」
「俺達も止めに行くか」
「いや、俺達が関わると妹にも迷惑だからな」
「じゃあ、遠目から見物してみるか」
「うん、そうするか」
「君、いい兄貴だな。俺の兄貴とは大違いだよ・・・」
「お前、兄貴いるんだ」
「ああ、実家にね。でも、すぐ殴るし、細かい事で首を突っ込む奴だよ。正直、おばさんの家に居候してある意味楽だよ。従姉妹のお姉さん達がいなくなってちょい寂しいけど・・・」
 濃藤は三河口の生い立ちが過酷なものだったと改めて気づいた。

 かよ子達が住む街とは隣の地区の小学校。すみ子は川村に呼ばれた。山口にヤス太郎もいる。
「すみ子、今日も秘密基地いこうぜ!」
「う、うん・・・」
「どうしたんだ、元気ねえな」
「うん、あの基地を造った子達の事が気になって・・・」
「あいつらの事なんてどうでもいいさ。とったなら俺達の物だぜ」
(それで本当にいいのかしら・・・?)
 すみ子は思い切って和平交渉を試みようとした。
「でも、勝手に盗ってあの子達に酷い事したなって思うの。やっぱり本当の事を言って謝った方がいいわよ!」
「何言ってんだ!お前の為だぜ!!俺達が住むこの町をいつまでも守るつもりであの基地を貰ったんだ!今更何後悔なんかしてんだよ!」
「私は別に後悔なんて・・・」
「なら心配すんな!!」
「うん・・・」

 かよ子と冬田はこの日も秘密基地の取り合いによる喧嘩を気にしながら下校していた。
「山田さあん、やっぱり先に高台に行って大野君達の喧嘩を止めた方がいいんじゃあ・・・」
「ダメだよ、私もそうしたいけど、また首を突っ込んでやられたら意味ないよ。フローレンスさんとイマヌエルさんが教えてくれるよ」
「う、うん・・・」
(杉山君、ごめんね、秘密を知って・・・。喧嘩を沈めてくれたら絶対に忘れるようにするから・・・)
 かよ子は杉山への罪悪感を今でも忘れていなかった。

 大野けんいち、さくらももこ、富田太郎、そして杉山さとしの四人からなる「次郎長」は高台に向かう。目指すは「義元」が乗っ取った自分らの秘密基地である。そこに組織「義元」はいた。
「懲りねえな、オメエら」
 川村の言葉に杉山は返す。
「この前は油断しちまってが、今度は負けねえぜ」
「俺達宇宙一のコンビだって事証明してやるよ!」
 大野は返上を誓う。
「お前も簡単にやられるなでやんす」
 ヤス太郎はブー太郎に挑発した。
「望む所だブー」
「行くぞ!」
 大野の掛け声で「次郎長」の四人は突進する。
「へへ、川村、バズーカで吹き飛ばせ!」
「おうよ!」
 川村はバズーカの発砲の準備する。地面を爆破して彼等を吹き飛ばすつもりだった。
「させるか!」
 大野が草の石を使う。周囲の草が伸び、川村の手足に絡まった。
「うわ、動けねえ」
「ヤス太郎、ほどけ!」
 山口はヤス太郎に命じた。
「了解でやんす!」
 ヤス太郎はパチンコを使う。
「『カッター玉』でやんす」
 ヤス太郎はカッター玉で川村に巻き付く草を()った。
「この野郎、俺のこの『硬直の矢』で動けなくさせてやるぜ!」
 山口は矢を放とうとする。杉山に向かって矢は飛ぶ。
「そうはいかねえぜ!」
 杉山はにやりと笑って雷の石を使った。矢は途中で止まり、電気の力を浴びる。そして山口の方へ矢は方向転換した。
「やべ、こっちに来る!」
「山口!」
 川村は山口を襲う矢にバズーカを放った。矢は吹き飛び、地に落ちた。
「この『眠り玉』で眠らせるでやんす!」
 ヤス太郎はパチンコで大野と杉山をを狙撃した。杉山は石の力で返り討ちにしようとするが、眠り玉は杉山の額に命中し、杉山は眠ってしまった。
「おい、杉山!」
「杉山君の敵とるブー!」
 ブー太郎が水の石の力を使う。強力な水鉄砲を発射し、ヤス太郎を襲った。
「冷たいでやんす!」
「ヤス太郎!」
 山口はブー太郎に矢を放つ。ブー太郎は今度は渦を作り出し、盾にして山口の矢から守ろうとした。しかし、渦は矢によって消失した。
「これは『無力化の矢』だ。どんな能力も打ち消しちまうぜ!」
「何!?この野郎!」
 大野は草の石の力で草や木の葉の嵐を作り出した。ヤス太郎は嵐の中の木の葉でパチンコを弾かれたが、川村はバズーカで大野に目眩ませの為の弾を放った。
「うおっ、見えねえ!」
 大野は眩しさで目を開けられず、抑えた。
「さくら、ブー太郎、やってくれ!」
「あいよ!」
 まる子は炎の石の能力を行使した。山口、川村、ヤス太郎に熱風を浴びせた。
「あ、あちー!」
「川村、バズーカで冷気を出せるか?」
「ああ!」
「させるかブー!」
 ブー太郎が水の石の力で大波を作り出した。山口も、川村も、ヤス太郎も溺れた。
「うわああ!」
「いいぞ、お前ら!」
 大野はブー太郎とまる子の奮闘を賞賛した。

 すみ子は基地にて震えていた。
(み、皆、もう戦うのやめて・・・!!)
 すみ子は己の持つ銃で何とか喧嘩を治めたかった。しかし、この激しい(いくさ)では和平交渉が難しいと感じて何もできなかった。

 フローレンスとイマヌエルはこの戦いを傍観していた。
「あの子達にもお伝えしなければなりませんわね」
「そうだな」
 二人は飛び立った。喧嘩を鎮める協力をしてくれる女子二名、山田かよ子と冬田美鈴に伝える為に。 
 

 
後書き
次回は・・・
「武器を授けた本当の意味」
 かよ子と冬田はフローレンス、イマヌエルと共に秘密基地のある高台へと急ぐ。そして「次郎長」と「義元」の激しい戦闘の中、仲間をやられたすみ子は追いつめられてしまい・・・。 
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