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ヘルウェルティア魔術学院物語

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第三話「魔術学院本校1年Gクラス」

入学式が何事もなく終わりそれぞれのクラスに分かれて移動する事になった。俺はGクラスの看板がある場所に行く前に隣に座っていた緑の髪の女性に声をかける。

「さっきはごめんね。よく考えたらこの後いろいろ行事があったんだよね」

「い、いいえ。私も忘れていましたし」

そう言って笑う女性はとても可憐で頬が赤くなるのが分かる。

「…え、えっとそれで自己紹介なんだけど。俺はエルナン・ハルフテル。あまり家名で呼んでほしくないからエルナンでいいよ」

「私は、ルナミスと言います。家名は、ありません」

俺が名字を言ったからなのか女性、ルナミスさんは少し俯き気味に言った。名字を持つ者は基本的に貴族若しくは裕福な商人等に限られる。一応俺は公国の貴族だったけどこうやって他国を見る限りあまり祖国に国力があるとは思えないな。

「じゃあ、そろそろクラスに向かわないといけないから後で会おうな。因みにルナミス、さんはどのクラス?俺はGクラスだったけど…」

「本当ですか!?わ、私もGクラスなんです…」

これは驚いた。まさかこの美少女と同じクラスとは。一人の男としては今にも飛び上がりそうなほど嬉しいが目の前でそれをやらかせば俺の学院生活はひたすら魔術の訓練につぎ込まれるな。

「そうなのか。なら一緒にいかないか?」

「い、いいんですか?なら…」

俺は自然な形で手を出す。ルナミスさんはそれをおずおずと握り返してくれる。公国でこれをやれば「魔術にのめり込む無能が触んな!」とボコボコにされるからな。実際、一回やられたし。

しかし…。女性の手ってこんなに柔らかいんだな。俺は家族以外の人に触れあった経験なんてほとんどないからな。自然と手を出したけどすごく恥ずかしい。少し前に戻れるならこんなことをした俺を殴りたいくらいだ。おかげで俺はルナミスさんの報を向くことが出来ずただひたすら前を見ている事しか出来なかった。

「じ、Gクラスってここでいいんだよな?つ、着いたよ」

「あっ、はい。…ありがとうございました」

俺はGクラスの集合場所まで到着すると耐え切れなくて手を放す。これ以上は無理です。顔は熱いし見えないけどきっと真っ赤になっているだろう。それに顔に意識を集中させていないと嬉しいやら恥ずかしいやらで凄い事になりそうだ。

暫くそうしていると同じクラスメイトになると思われる生徒がやって来る。確か一クラス20人でAからGまでクラスがある。それが一学年で基本留年でもない限り本校だけで人学年140人。本校全体で420人いる。更に魔術学院国には支部校が三つあったな。人数は大体同じらしいからこの魔術学院国には将来の魔術師が1260人いる事になるのか。ていうか人多すぎだろ。

そう思っていると目の前から一人の教師が近づいてきてGクラスの前で止まった。

「全員いるな?俺はお前らGクラスの担任となったディートハルトだ。家名はあるが別に覚える必要はないからな。まあ、言うつもりもないしな」

Gクラスの担任と名乗った男は一言でいえば暗い人だった。ぼさぼさの黒髪に目の下には真っ黒い隈を作っている。髭も整えているようには見えず生えっぱなしであった。これで服が穢ければ浮浪者その者だが服は普通でそれが余計にディートハルト先生を目立たせている。

「早速お前らのクラスに行くからちゃんと道を覚えろよ」

ディートハルト先生はそれだけ言うとさっさと歩いていく。俺たちは慌ててその後を追いかけていくが途中他クラス、それもA、B、Cクラスとすれ違った時はなぜかこちらを見下しているような視線を多く感じたが今の俺にはそれが何なのか全く分からなかった。

体育館を出て校舎…と言う名の城に入る。何も知らない人が見れば魔術学院の本校舎はどっからどう見ても王様とかが住んでいる城にしか見えない。まあ、この国のトップは学院長らしいしその学院長がいるここが城と言っても問題ないかもしれないけど。

教室は二階にあるらしく階段を昇っていく。一応魔力で動く昇降機がこの学院にはあるらしいけど一般の生徒は使用しちゃいけないらしい。教師の手伝いや身体的欠陥のある人は利用できるらしい。

話はずれるが最近魔術が発展している国では魔力を用いた物が作られ、実用化されているらしい。ルグドゥヌムに立ち寄った時に住民から聞いた話だが共和国の首都パリスィに続く鉄道が二年後に開通すると言っていたな。丁度卒業の時期に開通か。遥か東方の連邦では大陸横断鉄道と呼ばれる長い距離を走る鉄道が八年前に開通したらしい。今では極東から送られてくる珍しい品が高値で売れてそれが連邦の収入にもなっているとか。残念ながら俺は極東の品を見た事がないためよく分からないが。

そんな事を考えているとどうやら教室についたらしくある一つの部屋の前で止まった。けど、教室と言うよりは物置に近いに感じる。だって中には木箱が天井近くまで積み上げられその間を縫うように机や椅子が置かれている。物置と教室を一緒に空間にしたような、そんな部屋だった。

「ここがお前らGクラスの教室だ。直ぐに説明をするから取り合えず全員中に入れ」

俺も含めたクラスメイトが茫然としていると横からディートハルト先生が声をかけてくる。先生も不快なのか顔をしかめつつも最初に入っていく。俺たちも慌てて中に入る。

「さて、勘の悪い奴でも流石に気付いているだろうがお前らGクラスの生徒は学院では落ちこぼれとして扱われる」

教室に入りそれぞれ好きな席…と言っても木箱の量が多く更にその隙間に机や椅子を押し込むように入れてあったため座る事は出来ず机の上に座る形となった。…なんか、学級崩壊した教室みたいになっている気がする。

「クラス分けは、受験時の成績のいい順に振り分けられる。受験時に優秀な成績を出した者はAクラスに入れられそこからB、C、D、E、F、Gと分けられていく。つまり、お前らは入学した者の中で最も実力が低い奴らと言う事になる」

ディートハルト先生の言葉に数人ほど納得いっていないのか「嘘だ」「あり得ない」等聞こえてくるがそれ以外の人は自分の実力を分かっているのか仕方ないと言った風に俯いている。

かくいう俺もとあるスキル(・・・)のせいで魔術師としてやっていくには難しい状態となっている。この学院にくればこのスキルを消す手段があるのではないかと期待しての事だったけどその前に退学とかにならないといいけど…。

「…とは言えこれはあくまで入学時の成績順に振り分けただけだ。今落ちこぼれだからと言ってこれからもそうとは限らない。現に学院を卒業した者の中にはGクラスから始まり卒業するころには卒業生の優秀者上位6位まで食い込んだ奴もいる。無論入学時から変わらなかったがために退学になった者もいる。だから、これから実力をつけていくのかそれともこのまま落ちこぼれのままなのかは今後のお前らの努力次第だ。分かったな?」

先生の言葉に俺は頷く。確かに今の俺は落ちこぼれかもしれないけどだからと言ってこのままで終わるつもりはない。俺の目標は世界の誰もが認める偉大なる魔術師の頂点賢者だ。まだ始まったばかり、これから実力をつければいいんだ!

「…よし、なら早速やってもらう事がある。それがこれだ」

そう言うと先生は教卓の下から大きな水晶を取り出した。青い輝きを薄っすらと放つその石の上に手を置き先生は続けてこう言った。

「お前らには自分のステータスを知ってもらう」
 
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