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飛び立った天女

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第三章

「まさにか」
「そうか、だが私が頼んでもな」
 村長自身がとだ、彼は俯いた顔で述べた。
「あまりにもだ」
「厚かましくてか」
「聞いてくれないのではないか」
「ほな私等がその人のところに行ってな」
 そしてとだ、ベッシーは自ら名乗り出た。
「頼んでくるわ」
「そうしてくれるのか」
「村長さんはそうして欲しいやろ」
「それはそうだが」
「なら頼み受けるわ」
 村長の顔を見ているとそうしたくなった、これが自分の神託だと思っていたがそれ以上にこの気持ちが強かった。これはニャメも同じだった。
「是非な」
「そうしてくれるか」
「今からガオに行って来る」
 ベッシーは村長に確かな声で約束した。
「そうしてくるわ、それでその薬剤師の人やが」
「どういった者かだな」
「そや、種族聞きたいけどな」
「赤目だ、外見は人間の黒人と同じだ」
「村長さんと同じやな」
「そこはな、しかし背は一七〇位で細みだった」
 彼が知るその薬剤師はというのだ。
「目は丸く唇は黒人の中でも分厚い」
「そうした体格か」
「そして名前はブサム=コサムといった」
「ブサム=コサムさんやな」
「そうだ、そして職業は薬剤師でな」
 村長はこのことが重要と思いあらためて話した。
「あの街にいる、ずっと移動していないらしい」
「お店をやってるか」
「そう聞いている」
「そこまでwかあったら充分や」
 ベッシーは頷いてだ、そうしてだった。
 ニャメと共にガオに向かった、途中砂漠のモンスターや獣達がいたが二人は何なく倒した。そのうえで。
 ガオに着いてすぐにその薬剤師を探した、街の者達に話を聞くとすぐに彼の店の前に着けた。その店の扉を叩いて中に入ると。
 そこに村長が言う通りの外見の初老の赤目の男がいた、ベッシーとニャメは男にすぐに村長から聞いた話を全て話した。
 するとだった、薬剤師は深刻な顔で述べた。
「事情はわかった、だが」
「村長さんとのことがあってか」
 ベッシーは薬剤師に応えて述べた。
「やっぱり薬の調合は出来んか」
「それは出来る」
「そうなんやな」
「もっといえばわしも今は結婚して」
 薬剤師は自分の話もした。
「子供もおる」
「奥さんのことは振り切ってか」
「いい思い出だ、彼とのこともな」
 このこともというのだ。
「今はな」
「何もかいな」
「そうだ」
 まさにと言うのだった。
「あの頃から怨んでいない、わしは正々堂々と勝負して負けた」
「それならかいな」
「もう悔いはない」
「その頃はあったんやな」
「当時はな、だから村を去ったが」
「今はやな」
「思い出だ」
 そうなったというのだ。
「とてもな」
「そうだったんか」
「そうだった、しかし」
 それでもと言うのだった。
「薬を造ると」
「どうなるんや」
「彼女は天界に帰るだろう」
「天界?天女やからか」
 ニャメは薬剤師の言葉からこのことを察した。 
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