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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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外伝~想定外の起動者~ 前篇

~古戦場~

「――――――少しいいか?」
「お前は…………確かこの国の皇帝――――――ヴァイスハイト皇帝か。」
「ジェ、ジェダル、ヴァイスハイト皇帝陛下はサロ王陛下と同じ”王”なのですから、もう少し言葉遣いを…………」
ヴァイスに声をかけられて返事をしたジェダルにリリカが冷や汗をかいて指摘したが
「ああ、他の皇はどうか知らんが別に俺は態度や口調等は一切気にしないから、いつも通りの感じで接してくれて大丈夫だ。」
ヴァイスがリリカの心配が無用であることを答えた。
「…………それで俺達に何の用なんだ?」
「あー…………俺もそうだが、俺の仲間達がお前達――――――特にそちらの”魔導巧殻”と非常に似たお嬢さんに興味があって声をかけたんだ。」
「ふえ?私ですか?というか確か”魔導巧殻”って――――――」
ヴァイスの答えに首を傾げた後にリリカが答えかけたその時
「あぁ…………!まさか生まれ変わってから、新型の”魔導巧殻”をこの目にする日が来るなんて…………!」
「いや、それにしては細部がいくつか違っているぞ…………っ!」
「貴女は一体いつ作られたのでしょうか?」
「そんなことを気にするよりも、貴女は私達の後に作られたのは確実なのですから、当然新型の貴女にとって貴女が作られる前から存在していた私達は”姉”!今日から私の事は”リューンお姉様”と呼びなさい!」
「な、な、ななっ!?」
ヴァイスの傍にいたリセル、エイフェリア、アル、リューンが興味津々な様子で次々とリリカに話しかけ、突然の出来事にリリカは混乱した。

「それにしても彼女の導力源は一体何なのでしょうね?幾ら何でもリューン達や当時の私と同じな訳ではないでしょうし…………」
「フム…………恐らくだが、魔制球で稼働しているのではないのか!?」
「魔制球…………そうか、ゴーレムと同じ技術なのですね。ですが、メルキア帝国でもここまでの小型化に成功したという事例は聞いたことがありません…………!」
「それよりも今の話が本当でしたらひょっとして貴女以外にも、私達の”妹”達がいるのですの!?」
「あの4人は何故リリカに興味津々なのでしょう?」
「さあ?ま、向こうにもリリカみたいな人形がいる事からして、多分その関係なんじゃない?」
「ア、アハハ…………(というかリセルもそうだけど、セリカの”実物”と会う事になるなんてね~。)
興味津々な様子でリリカに次々と問いかけるアル達の様子を見て困惑しているユリーシャの疑問にフルーレティは興味なさげな様子で答え、フィアは苦笑しながら見守っていた。

「あ、いえ、あのー…………私の身体は『魔導操殻』っていうんですよ。おそらくメルキア帝国から伝え聞いた技術を応用しているのかと。」
「なんと!それは興味深い話だ!」
「はい!従来の機械人形より汎用性を重視している性能なのでしょうか、兵器を装備されていない所を見るに、戦闘に特化している訳ではないというのが肝なのかもしれません!」
「ああ、まさか妾ですら実現できなかった量産型の生産が叶っていたとは!これは、心躍る話だ!」
リリカの答えを聞いたエイフェリアとリセルはそれぞれ目を輝かせて語り終えた後リリカにある事を頼んだ。
「ちょっとだけ、ちょっとだけでもいいから触らせてくれ!何もせぬから!」
「安心してください。敬意をもって触れることを約束します!」
「この場面でそう言う人に、何もしない人はいませんよ!?」
「その言葉には同意致しますわ。」
「二人の事ですから、間違いなく解体して、構造を調べようとするでしょうね。」
二人の頼みにリリカは近づいて来る二人から距離を取りながら表情を引き攣らせて反論し、リューンはリリカの意見に呆れた表情で同意し、アルは静かな表情で淡々と呟いた。

「それ壊されてるじゃないですか!!絶対いやです!」
「あ、いえ、当然ちゃんと元に戻しますよ。改良したいというのならば協力しますし、むしろ積極的に手を加えていく所存です!」
「うむ!そういう内容で妥協するから、是非調べさせてくれ!」
「どう考えても妥協してないんですがー!」
リセルとエイフェリアの言葉に対してリリカは疲れた表情で声を上げて反論した。
「…………おい、そいつらを何とかしろ。リリカが嫌がっている以上、そいつらの行動を見過ごす訳にはいかない。」
「ふふ、愛だね。」
するとその時ジェダルが二人から庇うようにリリカの前に出てヴァイスを睨んで要求し、その様子を見たフィアは意味ありげな笑みを浮かべた。

「…………俺はリリカに雇われている護衛で、契約を護る傭兵だからだ。」
「そこは愛だって言い切ってくれてもよかったんですよ!?」
フィアの言葉に呆れた表情で指摘したジェダルにリリカが声を上げて文句を口にし
「ハッハッハッハッ!エステル達からある程度事情を聞いていたが、中々面白い連中がゼムリア大陸に迷い込んできたものだ。――――――リセル、エイダ、お前達の気持ちも理解しているがそこまでにしておけ。あんまりしつこいと、完全に嫌われて『魔導操殻』とやらについて何も知る事ができなくなるぞ?」
「ぐっ…………」
「ううっ…………」
ヴァイスは声を上げて笑った後リセルとエイフェリアに注意し、ヴァイスの注意にエイフェリアとリセルはそれぞれ唸り声を上げて黙り込んだ。

「――――――仲間達が失礼をした。改めて――――――今回の”アルスター”の件に加勢してくれたこと、心より感謝する。」
「…………俺達はエステル達との”契約”通りに動いただけだ。それよりもエステル達がお前達に俺達の事を話したという事は、お前達がこの国――――――いや、この世界での俺達の”拠点”を用意するのか?エステル達からクロスベルの皇族にも知り合いがいるから、そいつらに俺達の”拠点”についての手配ができるように頼むつもりだと言っていたが。」
「ああ。それでお前達に声をかけた理由だが…………お前達はミントによって元の時代に戻るまで遊撃士協会の協力者として活動するとの事だが、もしよければ俺達――――――”クロスベル帝国”が出す依頼も個別で受けてもらう事はできないだろうか?」
「――――――内容と報酬による。エステル達からこの世界の現状を聞いたがお前達――――――メンフィル・クロスベル連合とやらは確か”エレボニア帝国”という国と戦争しているそうだな。それを考えるとお前達が俺達に出す”依頼”はその戦争関連だろうが…………軍と軍がぶつかり合う戦いに加勢する依頼なら断る。幾ら何でも”戦場”にリリカを出す事はリリカの護衛として認められない。」
「ジェ、ジェダル…………」
自分の身の安全を第一に考えているジェダルの言葉を聞いたリリカは頬を赤らめ
「ああ、別にそういった類の依頼を出すつもりは一切ない。幸いにも今回の戦争、軍と軍がぶつかり合った所でメンフィル・クロスベル連合側の方が圧倒的に優勢だからな。――――――お前達にして欲しいと思う依頼は敗残兵となったエレボニアやエレボニアに雇われた猟兵達の”殲滅”、今後クロスベルやメンフィル領内に潜入すると思われるエレボニアの諜報関係者の”殲滅”に”黒の工房”のように戦争を”裏”から支える協力者達の始末に後は敵拠点の攪乱、破壊工作といった所だ。」
「要するに裏工作の類か…………――――――一つ聞く。何故そういった類の依頼を遊撃士協会もそうだが、猟兵団を使わない?その二つの組織は互いに天敵同士の関係とはいえ、結局は”傭兵”の組織なんだろう?」
ヴァイスの話を聞いて静かな表情で呟いたジェダルはヴァイスに問いかけた。

「遊撃士協会の場合は”国家権力の不干渉”を掲げている為、基本”戦争”でどちらかの国に協力するような事はない。連中が戦争に協力、もしくは介入する唯一の例外は”民間人の保護”の為だ。で、猟兵団だが…………かつてクロスベルは猟兵団によって襲撃された経緯から、”猟兵”という存在自体に対する忌避が更に強まった為、幾ら戦争に勝つ為とはいえ、クロスベルが”猟兵”を雇う事は市民達もそうだが兵達の士気にも関わってくる上メンフィルも、今回の戦争勃発の原因の一つでもある”ユミル襲撃”の件で”猟兵という存在自体”を嫌うようになったから猟兵を雇うような事はないだろう――――――というか、そもそもメンフィルの場合”猟兵”を雇う程人手が足らないという事はないのだがな。」
「俺達――――――いや、俺も勝つ為なら手段を選ばない”猟兵”とそれ程変わらない。なのに何故その俺を雇おうとする?」
「理由は二つある。一つはお前達――――――特にルシティーネ卿を味方にする事で知る事ができる”魔導操殻”とやらの技術を知る為だ。」
「あのー…………先に言っておきますけど、私は専門的な技術についてはわからないですよ?あ、勿論私の身体を解体するのは絶対にダメですからね!それと触る事も!」
「あぁ、そんなご無体な…………!」
「せめて触るくらいはいいのではないか…………!?」
「二人の場合、その”触るくらい”という言葉すらも怪しいからなのでは?」
「あの様子ですと、隙あらばリリカを触ったり解体するつもりでしょうね…………どうやらリリカの”姉”である私がしっかりと見張る必要がありそうですわね!」
ヴァイスの話を聞いた後答えたリリカの答えにショックを受けている様子のリセルとエイフェリアにアルは静かな表情で指摘し、リューンはジト目で二人を見つめた後胸を張って答え
「いや、それ以前に私は貴女と”姉妹”の関係になる事を承諾した覚えがないのですが!?」
リューンに対してリリカは疲れた表情で指摘した。

「まあ、その件については落ち着いた時に後で話し合うとして…………もう一つの理由は”敵”にお前達という戦力を取られない為の措置でもあるな。」
「”敵”…………先程現れた”黒の工房”やお前達の戦争相手であるエレボニア帝国とやらか。雇われている訳でもなく、”貸し”がある訳でもない連中につくつもり等毛頭ないが…………そこまでして俺達が敵につかないようにするとは、初めて会ったばかりだというのに随分と俺達の事を高く評価しているのだな?」
「フッ、エステル達の話によると確かそちらの二人は”魔神”と”女神”なんだろう?その上ジェダルは先程”猟兵王”と互角の斬り合いをしたと聞いている。そんなお前達は俺達にとっては正直、二大猟兵団もそうだが結社や黒の工房よりも強力な戦力だ。――――――ならば敵に取り込まれる前にこちら側に取り込めようと思ったまでだ。」
「…………依頼内容に相応した”報酬”と俺達に依頼を受けるかどうかの選択権があるならば、内容次第で引き受けてやる。」
ヴァイスの説明を聞いたジェダルは静かな表情で答え
「フッ、決まりだな。改めてこれからよろしく頼む。」
ジェダルの答えを聞いたヴァイスは静かな笑みを浮かべた。

「フフ、中々面白い戦いが見れたな、ウォレス?」
「ハハ、正直相手が哀れに思えるような”蹂躙戦”でしたけどね。将軍が言っている戦いは”灰色の騎士”達もそうですて、”剣聖”の子供達の事でしょう?」
一方古戦場にある遺跡の一部から双眼鏡で戦いを見守っていたオーレリア将軍の問いかけにウォレス准将は苦笑しながら答えた。
「ああ。…………この戦いも”あの方の仰る通り”だったが、まさかアルフィン殿下まであの場で戦っておられた事まであの方は”見通していた”と思うか?」
「さて…………本当に底知れない方ですからね。ですが、アルフィン殿下が”灰色の騎士達の仲間になっているという事実”は”あの方”もそうですが我々にとっては”好都合”なのでは?」
「そうだな…………殿下の件も合わせて、あの方に朗報を伝えられるようで何よりだ。――――――行くぞ、ウォレス。長居は無用だ。」
「了解。」
そしてオーレリア将軍とウォレス准将はその場から去っていった。

「そうか…………”猟兵王”まで”騎神”を…………」
「”蒼の騎神”や”ジークフリード”という人物の事といい、内戦のように今回の戦争の裏にも何らかの事情が隠されていそうですわね…………」
「はい…………オズボーン宰相もそうですが、お父様も”アルスター”の件についてご存知の上あの”アルベリヒ”という人物のする事を本当に受け入れたのでしょうか…………?”アルスター”はオリヴァルトお兄様と亡きオリヴァルトお兄様の母君であるアリエル様の故郷でもあるというのに…………」
「姫様…………」
同じ頃部下達に戦後処理を任せた後集まってそれぞれが戦った相手について話し合っている時にステラ達から事情を聞いたリィンとセレーネは考え込み、辛そうな表情を浮かべているアルフィンをエリスは心配そうな表情で見つめた。
「…………アルティナ、念の為に聞くがアルベリヒもそうだが、ジョルジュ先輩やジークフリードに見覚えは?」
「ありません。…………というかわたしはルーファス・アルバレアの元に”出荷”された時点で”黒の工房”にいた頃の記憶は抹消されている為、”何も覚えていないのです。”」
「…………やはりミリアムと同じか。」
「”出荷”とは穏やかな言葉ではありませんね…………」
「ま、猟兵達に民間人を虐殺するように依頼する連中なんだから、碌な連中でない事は最初からわかっていた事じゃねぇか。」
アルティナの答えを聞いたリィンが複雑そうな表情で考え込んでいる中、真剣な表情で呟いたステラにフォルデは呆れた表情で指摘した。
「何はともあれ、今回の戦いの相手はエレボニアだけでない事が判明しましたね。」
「ああ…………二大猟兵団に結社の残党、そして”黒の工房”…………内戦の時とは比べ物にならないくらいの強敵揃いになりそうだな。」
エリゼの指摘に頷いたリィンは表情を引き締めた。

「ま、それでもメンフィル・クロスベル連合軍(俺達)の方もそんなとんでもない連中も圧倒できる面子が揃っているんだから、むしろ手柄を狙っているお前からしたら”手柄首”が増えた事に喜ぶべきじゃねぇのか?」
「ましてや今のリィンさんにはメサイア皇女殿下を始めとした心強い異種族の方々と”契約”を結んでいるのですから、例え結社最強の”執行者”や”猟兵王”が相手だろうと、内戦の時と比べると明らかに戦いが有利になると思いますよ?」
「ハハ、確かに言われてみればそうだな…………」
そしてフォルデとステラの指摘にリィンが苦笑したその時
「――――――リィンさん!」
バスから降りてティーリアと共に走ってきたカイがリィン達に声をかけた。

「カイさん…………!」
「それにティーリアさんも…………」
「そういえば君達もアルスターに住んでいたな…………アルスターの民達が昨夜の襲撃の際に遊撃士達に猟兵達から護ってもらった話は聞いたけど、こうして無事な姿を見る事ができて安心したよ。」
二人の登場にセレーネは驚き、アルティナは目を丸くし、リィンは優し気な笑みを浮かべてカイ達に声をかけた。
「はい…………突然の事が続いて今も色々と混乱していますけど、リィンさん達とまた会えてよかったです…………!」
「うん!それにアルティナさんも…………!まさかこんな所で再会できるなんて、思いもしませんでしたけど、また会えて嬉しいです…………!」
「…………どうも。」
リィンの言葉にカイが答えた後嬉しそうな表情で声をかけたティーリアにアルティナは静かな表情で答えた。

「あら?アルティナさんとティーリアさんはお知り合いなのですか?」
「そういえば”紅き翼”がアルスターに支援物資を届けに行った時もアルスターにいたようだが…………もしかして、その時にか?」
「ええ、お二人も知っているように機甲兵を盗んだ脱走兵の捕縛任務でアルスターを訪れた際に。」
ティーリアと知り合いの様子のアルティナをセレーネは不思議そうな表情で見つめ、ある事を思い出したリィンの問いかけにアルティナは静かな表情で頷いて答えた。
「あれ…………?リィンさん達もアルティナさんとお知り合いだったんですか…………?以前支援物資を届けに来てくれた時はご一緒ではなかったですけど…………」
「え、えっと………まあ、知り合いではあったけど、当時は一緒に行動していなかったんだ。」
ティーリアの問いかけにセレーネと共に冷や汗をかいたリィンは苦笑しながら答えた。

「あれ?貴方達も二人と知り合いなの?」
するとその時エステル、ヨシュア、ミントがリィン達に近づいてきた。
「貴方達は確か遊撃士協会の…………」
エステル達の登場にステラは目を丸くし
「うん、あたしはエステル。エステル・ファラ・サウリン・ブライト!よろしくね!」
「僕はヨシュア・ブライトです。以後お見知りおきを。」
「ミントはママ達の養女のミント・ルーハンス・ブライトだよ!えっと………そっちの蒼銀の髪の貴女がツーヤちゃんの妹のセレーネちゃんだよね?」
エステル達と共に自己紹介をしたミントは興味ありげな表情でセレーネに声をかけた。

「は、はい…………という事は貴女がツーヤお姉様が異世界であるこちらに迷い込んだ時にツーヤお姉様にとっての大親友になったミントさんですか?」
「うん!ツーヤちゃんの手紙でもセレーネちゃんの事が書いてあったけど、実際にこうしてセレーネちゃんと会えてとっても嬉しいよ!よかったら、セレーネちゃんもミントの友達になってくれるかな?」
「ミントさん…………ふふっ、わたくしでよければ喜んで。」
「アハハ、よかったわね、ミント。――――――初めまして、リィン君。君の事は”色々”と聞いているけど、こうして会える事ができて嬉しいわ。」
新たな友人関係を築き始めているミントとセレーネの様子を微笑ましそうに見守っていたエステルはリィンに声をかけた。
「ハハ、それについてはお互い様ですよ。――――――クロスベルではエリゼがお世話になりました。」
「う~ん…………どっちかというと活躍していたのはエリゼちゃんだったような気がするから、お世話になったのはあたしたちの方よ。」
「ああ、彼女は僕達よりも早くロイド達に加勢していたし、”碧の大樹”でもアリオスさんとの激闘でもアリオスさんと同じ”剣聖”である彼女には世話になったよね。」
「…………恐縮です。」
「エ、エリゼ…………ロイド達と共に”碧の大樹”に突入して攻略した話は聞いてはいたけど、”風の剣聖”とまで戦った事があるのか…………」
「姉様は私達の知らない所で一体どれほどの戦いを潜り抜けたのでしょうか…………?」
エステルとヨシュアの話を聞いたエリゼは静かな表情で会釈し、その様子を見守っていたリィンとエリスは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「あ、それとあたし達は呼び捨てにしてよ?歳だって一つしか違わないんだし。」
「君達のように僕達もロイド達とはお互い呼び捨てだから、僕達ともロイド達に接するような態度でお願いするよ。」
「はは…………それじゃあお言葉に甘えて。よろしく、エステルにヨシュア。」
エステルとヨシュアの申し出を聞いたリィンは苦笑しながら答え
「うん、こちらこそ!」
「会えて嬉しいよ。」
エステルとヨシュア、それぞれと順番に握手をした。

「ふふっ、それにしてもオリヴァルトお兄様がリベールの旅行時代にお世話になった方々とこんな所で会えるなんて、これも空の女神の導きかもしれませんわね。」
「いや、だからその言葉はエイドスは滅茶苦茶嫌がるからあんまり言わない方がいいって…………オリビエが”お兄様”?」
「まさか貴女はエレボニア帝国皇女の…………」
アルフィンに声をかけられたエステルは苦笑しながら答えかけたがある事に気づくと目を丸くし、ヨシュアは驚きの表情でアルフィンを見つめた。
「名乗るのが遅れて申し訳ありませんでした。わたくしの名はアルフィン・レンハイム。”元エレボニア帝国皇女”であり、オリヴァルトお兄様の妹でもあり、今はリィンさん――――――”ご主人様”専用の使用人兼娼婦ですわ♪」
「姫様…………せめて、”娼婦”を名乗る事は控えてください…………」
「えええええええっ!?という事は貴女が”帝国の至宝”の一人であるあの…………!」
「わあ…………!まさかエレボニアのお姫様にまで会えるなんて…………!あれ…………?でも、どうしてエレボニアのお姫様がクロスベルに…………」
アルフィンの自己紹介の仕方にリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エリスは呆れた表情で指摘し、我に返ったカイは驚き、目を輝かせたティーリアはある事に気づくと首を傾げた。

「オ、オリビエさんの妹さん!?」
「ちょ、ちょっと待って!何でオリビエの妹――――――エレボニアのお姫様がリィン君達――――――メンフィル軍と一緒にいるの!?しかもリィン君専用の”使用人兼娼婦”ってどういう事!?」
「まさか貴女はメンフィル帝国の要求に従って――――――」
一方ミントと共に驚いたエステルは困惑の表情で訊ね、ある事に気づいたヨシュアが複雑そうな表情を浮かべて推測を口にしかけたその時
「――――――少しいいか。」
ジェダルが仲間達と共にリィン達に近づいて声をかけた。

「ジェダル?どうしたの?」
「…………ユリーシャがそこの黒髪の剣士に聞きたい事があるとの事だ。――――――ユリーシャ。」
「はい。…………確かリィン殿と仰いましたよね?何故リィン殿はこの身の事を存じていらっしゃるのでしょうか?」
エステルの疑問に答えたジェダルに促されたユリーシャは頷いた後前に出てリィンに訊ねた。
「ハハ…………その件についてはこれから起こる事を見てもらえれば、わかるかと。――――――来い、”ユリーシャ”!」
ユリーシャの疑問に苦笑しながら答えたリィンは自身が契約しているユリーシャを自身の傍に召喚した!

「な――――――」
「えええええええっ!?」
「ユリーシャが二人…………だと?」
「ど、どどどど、どうなっているの~!?」
「へえ?…………なるほどね。私には何とくなく事情が読めてきたよ。」
リィンが契約しているユリーシャの登場にジェダルの”守護天使”である守護天使ユリーシャは絶句し、リリカとジェダルは驚き、フィアは混乱し、フルーレティは興味ありげな表情をしていた。
「…………お初にお目にかかります、”並行世界のこの身達”。この身はかつての主であったジェダル様に娼婦として売られ、後に今の主であるリィン様達との出会いによってリィン様の守護天使となった能天使ユリーシャです。」
「へ、並行世界の!?し、しかもこの身が”娼婦”として売られた…………!?」
「”並行世界”とは一体何なんだ?」
「えっと、”並行世界”というのは――――――」
複雑そうな表情で自分を見つめるユリーシャの自己紹介に対して守護天使ユリーシャは驚き、ジェダルの質問にリリカが説明をし、ユリーシャはゼムリア大陸に来た経緯を軽く説明した。
 
 

 
後書き
前回予告した内容は長くなってきたので、前篇、後篇にわけました。そして今回の話で予想通りリセルとエイフェリアが暴走しましたww 
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