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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第11話 想い

――side響――

 夜風に当たりたくて、六課の空間シミュレーターの側にあるベンチに座してぼーっとしてる。

 ホテル・アグスタで居た流と接触した女性に、俺の血を落としたであろう女性の目的が分からなさすぎて、思考が纏まらない。
 戦闘したアンノウンの関係者と考えるのが筋なんだろうけど……俺の血を落とすメリットって何だ? 
 もしかすると、密輸品の受け渡しに俺を使うとかそういう理由? でも、それなら指紋を付けた何かを落とせばいい。血である必要性は皆無だ。
 わかりやすく俺がそこに居たという事実を作り出すため? でも、俺は前線に出てて、なおかつアンノウンと交戦。しかも俺が設置したマスクマンのサーチャー以外にも、震離と流のデバイスに映像は残っている以上、俺がそこに居た事実はある。
 もしかすると、分身という手段もあるが……俺使えねぇしな。それに……だったら、地下の映像に俺が映る筈なのに、それもない。
 
 駄目だ、これ以上はアグスタの被害報告待ちだなぁ。裏取引とかだったら絶対上がらないはずだけど。
 
「……ヘックション!」

 ……5月も半ばだけど。やはり海沿い冷えるな。ぼちぼち帰りましょうか……って。
 
「もう戻るのか?」
 
「……シグナム副隊長」

 敬礼しようとするが、首を横に降ってきた。ということは、何かあるのかな? ……個人的にはあまり会話したくないんだけど。

「なぁ緋凰」

 ピリッと、空気に緊張が走る。
 これはちょっとお話をとかそういう訳じゃない……バレたか? そうすると最悪だな。俺に不利な札が多すぎる。

「私は聞いたな。どこかで会ったことが無いかと。初めて会ったあの日に、そして今日にも」

「……えぇ。そして、ありません。そう応えた筈ですが?」

「……あぁ。だが、私には覚えがある。管理局に入ってからは滅多に見なくなったあの一打を、何より、障壁(・・)越しに打ち込めるあの技を。
 薄っすらとだが覚えている。髪の長い奴だったと覚えがあるのだから」

 ――わぁ、最悪。
 
「答えろ。あの技術をどこで覚えたのか。そして、もし私の思う時期と一致したのなら――目的を聞かせろ」

 炎が煌めくと共に、その手に(つるぎ)が現れた。
 あの日(・・・)と違うのは、最初から抜かれて居るという事。 
 そして、それは……もう隠せないという事を。

「……限界、早かったなぁ――あぁ。でも丁度こちらも用が有りましたので」

 さぁ、どこまで行けるかな?
 
 ―――
 
 ――sideティアナ――

 ――集団戦での、私やティアナのポジションは、前後左右、全部が味方なんだから。
 
 一人では戦えない。それは……結局アタシ一人じゃ何も出来ない。そう思われているんだ。
 魔力が足りないから、力が足りないから……支えてくれる人も、特殊な能力も無いから……仲間の反応が無くなっても、助けに行くことも出来ない。
 結局、あの時救援にいけたのは響だけ……本人は偶然いけたって言ってたらしいけど、現れたアンノウンと渡り合ったというだけでも十分だ。
 
 ――その意味と今回のミスの理由、ちゃんと考えて、同じ事を二度と繰り返さないって、約束できる?

 言われなくても、2度とあんなミスはしない。
 アタシには力は無いけど、何もないけど。
 
 また、一つ一つ積み上げて、もっと強くなって、証明しなくてはならない(・・・・)んだ。


「ティアナ、そこまでにしとけ」

 パンパンと手を叩きながら駆け足でやってきたのは。
 
「ヴァイス、陸、曹?」

「ミスショットが悔しいのは分かるけどよ。精密射撃なんざ、そうホイホイうまくじゃあない……それに、一端やめとけ。隊長達が来る、庇うのは今回きりだからな」

 茂みに隠れるように膝をついて座る陸曹につられて私も姿勢を低くする。
 
「……いつっ」

 たった数時間の訓練で足に疲労が溜まっていたらしく、ヘタリと座り込んでしまった。
 そんな事じゃ……まだ。
 
「あんのバカ野郎。なんでよりにもよって……バカ野郎が」

 ? なんのことだろう? そう思って、足を引きずりながら陸曹の側まで行き、その見ている方を見る。
 
「……火花? ……何?」

 遠くで火花が散っていて、誰かと誰かが戦って……あの動きは剣を振ってる動きで、ぶつかっているんだ。
 じゃあ誰が? そう思ってよく見る……いや、六課で剣を使うのは二人しか居ない。そして、それは――
 
「……なんで、シグナムさんと響が?」

 意味が分からない。なんで……あの二人があんな所で……なんで剣で戦っているのか。
 しかも……響は怒ってる様にも見える。でも何に?
 
「ヘリの整備中、スコープでちらちらと見てた。ミスショットが悔しいのは……しかもそれが親友に、仲間に当たりそうになったってなら尚の事な。
 そしたら、その脇であの馬鹿野郎が剣抜いて切りかかりやがったのを見ちまった。ふざけんじゃねぇよ。ったく」

「……なんで。どうして?」

「……たまたまシミュの側で戦ってるから、慌てて遠隔でコンソール起こして話が聞いた。ちょうどいいから腕試しと、文句があるんだとよ……くだらねぇ」

 文句がある? 腕試し? 駄目だ……話が全く見えない。でも……。
 
 ギュウっと手に、拳に力が入るのがわかる。
 馬鹿なことをしてんじゃないとか、勝てるわけがないとか。そういうことじゃなくて。
 
「……やっぱり、強いじゃない……っ」

 シグナムさんと対等に……いや、二本持っているせいか、若干響が押しているようにも見える。あのシグナムさんを。
 
「……はぁ? あの馬鹿たれ……シグナム姐さんの気も知らずに! クソが!」

 地面に拳を叩きつけながら、陸曹が怒りを込めてつぶやく。
 もしかして聞こえてる?
 
「ヴァイス陸曹。アタシも聞いても?」
 
「あん? あぁ……待ってろ。ストームレイダー。ティアナのデバイスにも飛ばしてくれ」

 一拍置いた後、クロスミラージュが点滅して。

[Thank you.]
 
 受信完了したらしく、直ぐに私にもあの二人の会話が聞こえてくる。
 
『……っ、てめぇがあん時、流ん所にまっすぐいけば、被害はもっと少なく済んでただろうが!』

『……その程度の戦略眼しか無いのかお前は!』

『はぁ? 音に聞いたヴォルケンの名が泣くじゃねぇかよおい! 盾の騎士がいて抜かれる心配でもしてたのか、ああ!?』

『話にならん……な!』

 ……え? だって、シグナムさんはあの時Ⅲ型の処理をメインにしてたはずで、あの時私達が前に出ていければ……いや、違う……響には、私達は……私はそもそも眼中に無かった? 私なんかじゃ助けられないって見切られてた? 何よ……それ?
 クロスミラージュを持つ手に力が入る。悔しい……と! ただ、その思いだけが溢れてくる。
 シグナムさんに――強い人に頼るのは当たり前だ。だけど……それでも。
 
 私はそもそも要らなかったと、響は言っている?
 
『シグナム二尉! 緋凰空曹! 何をしてるんですか!』

「……なのはさん達が来たな。ティアナ。今日はこの程度にしておけ。あと先輩……なのはさんが昔言ってたことを一つ。
 無理や詰め込みで、ヘンな癖つけるのもよくねェぞ」
 
 静かに陸曹が離れていくのにつられて、私も着いていく。
 
「……それでも、詰め込んで練習しないと……うまくならないんです。 凡人なもので」
 
「凡人、か。俺からすりゃあ、お前は十分に優秀なんだがなぁ。 羨ましいくらいだ……ま、邪魔する気はねェけどよ。お前等は体が資本なんだ。体調には気を使えよ」
 
 ……気遣ってくれてるのはわかる。でも、お礼を言う気力すら無かった。
 
 もっと……強くならなくちゃ。もっと、少しでも無理をしないと。少しでも詰め込まないと、追いつけない。だから、あの時(・・・)から決めたんだ
 そうしないと……アタシに……価値なんて無い。六課に居場所なんてないんだ。
 
 
  ―――
 
 ――side響――
 
 昨日、シグナム副隊長と刀……というか鞘持って、やり合った結果。懲罰房4日が言い渡されました。
 具体的な軍規違反は、上官侮辱と、まぁですよねっていう結果。
 真っ暗で、一畳程度の部屋なもんで正直暇。
 
「……何してんのバカ」

 不意に聞こえた声に、笑ってしまいそうになるのを堪えて。

「……接触は禁止されてんぞー、速く離れろよ震離」
 
「……うるさい、バカ。バカバカバーカ」

 ……バカバカ言いすぎだろうに。というよりまだ落ち込んでんな。外でちゃんとしてればいいんだが……まぁ、奏居るし問題ないかな。
 
「……すぐに離れるよ。流が起きたってだけ伝えに来た」

「マジで! あぁ……良かったぁ」

 震離の言葉に心から安堵する……って、え? あの怪我で……昨日の今日で? すげぇなおい。
 
「それだけ。あとシグナムさんと戦った理由聞いたけど?」

「え? あぁ、マジよマジ。それだけだ」

 ……表情は見えないが、ちょっとだけ何時もに近い声に。
 そして、一拍置いて。
 
 トントンと、何回かノック音と壁をなぞるような音が聞こえて……その意味を理解して直ぐに答える。
 
「……あぁ。あ、そだ。流によろしくな」

「うん……じゃあねばぁか」

 ……捨てセリフ吐いて行きやがった。
 
 しっかし、バレるのすっげぇ早かったなぁ。なんでだ? あれは見てたから走ってきたんだろうってレベルだったし。
 あー、それにしてもこっから出たくねぇなー。絶対なー睨まれまくるだろうし、ヴィータ副隊長からはわかりやすく圧掛けられるだろうし……怖いわ-。
 
 
 ―――4日後。
 
 ……わかってた。わかってたけど。ヴォルケンリッターの皆さんや、八神部隊長、高町隊長からの視線が超痛い。
 いやまぁ、やらかしたことを思い返せば全然温情。普通だったら左遷コースだし仕方ない。エリオとキャロはぎこちなくも接してくれてるのが癒やしだよ……ライトニング小隊はいい人ばっかだわぁ。
 
 とりあえず。流の傷の表面はほぼ回復して、見た目はなんとも無いらしい。内臓のほうにまだダメージが残っているらしく、シャマル先生と震離のせいで医務室で軽く監禁状態になっている。心配した時の震離は異常に強いからな。あらゆる手段使っておとなしくさせるし。まぁ、けが人がおとなしくするのは当然だし、出て行く流を脅せる手段もあれば、なんとかなるだろう。

 それよりも、問題が一つ。というよりさっき知ったんだけどね。

「なぁ、奏?」

「ん、どうしたの響? なんか疲れてる顔してるけど? 丸四日休みがあったんだから元気でしょ。さ、頑張れ」

 食堂の向かいの席に座る奏に話しかける。うん、軽いことでも心配してくれてありがとう! その後のトゲがあるのは流すけど。

「ティアナのこと。奏はどう思う?」

「はぁ、無茶したらいけないよって言ったのになぁ」

 ため息吐きながら紅茶を飲む奏。儚い感じで絵になる。あ、現実逃避に入ってた。まぁ、話は聞いてるからだいたい分かるんだけど。それでもな。

「……俺リアルタイムで居なかったしなぁ」

「……バーカ。それに目の敵にされてるってわかってるでしょ?」

「……あぁ、こっち見る視線に怒りを込めてるから分かるよ」

 そう、何よりもティアナからの視線が超痛い。同じく若干ましだけどスバルからも睨まれてる。
 なんかしたっけなぁ。
 
「……それよりも反省文、終わんねー」

「自業自得でしょう? 頑張って」

「……めっちゃ頑張る」

 奏のこれまでの話から、どうもティアナは、ミスショットしたあの日からずっと自主練をしてるらしい。どの程度無茶なことをと質問すれば、何時間もずっと続けてるらしい。一日の訓練後に、昨日からは朝練の前にスバルと自主練してるらしいし。
 奏曰く、それに気づいたのは今日との事。
 
 話を聞きたいけれど……今の俺じゃ話は聞けない。それどころか、避けられてるし。
 
 さて!
 
「……息抜きにちょっと流見てくる」

「はいはい、いってらっしゃい。ちなみにシャマル先生は留守だよ」

「……ありがとさん」

 くっそ、気まずいってわかってるせいで、奏の悪どい笑みが嫌に映るわぁ……。

 一通り移動して、医務室入ると、相変わらず流のいる場所はカーテンで閉められてる。気配から察するに、流一人っぽいな。
 
「あー……流か? 入っても……いいか?」

「……緋凰さん。どうぞ」

 良かった。万が一拒否られてたら嫌だなーとか思いつつ、カーテンを開けて中に入る。そこに居たのは入院着を着た流。ただ、いつもと? 違うのはメガネを掛けて読書してた。

「具合。大丈夫か?」

「……えぇ、緋凰さんと叶望さんが助けてくれたおかげで」

「そうか、復帰はいつ頃になりそうとか、聞いた?」

「いえ、その辺りは全く。暫くは安静にするように、と」

 心なしか沈んでる様にも見えるけど、今一表現が薄いというか、なんというか。雰囲気で察しないといけないから大変だ。
 
「……映像見たよ。デバイス……いや、アークもしばらくは修理だってな」

「……はい。私が動揺した結果、無茶をさせました」

「いやぁ。砲撃食らって涼しい顔で手を伸ばしてきたら動揺もするさ、それよりも命があって何よりだ。
 まぁ、もっと速く来てくださいって思ってんだろうけど」
 
「いえ、そん……痛たた」

 否定の言葉を述べようとして、お腹に力が入ったのか前のめりになってる。
 ふと、流の足元の部分がやけに膨らんでるのが見えて捲ってみると。
 
「……こいつは」

 スースーと寝息を立ててる震離の姿が。若干疲れた様子なのはずっと流を見てたんだろう。こいつも手が完治してないのに。
 
「……ずっと居て下さってるんです。おかげでお手洗い行くのも一苦労です」

 くすりと、苦笑を浮かべる流。それはどこか申し訳なさそうにも見え……いや、絶対思ってる。
 
「そっか、でも。ありがとうな。震離を守ってくれて」

「……いえ、()のミスです。接近に気づいていればもっと」

「ストップ。そこまでだ。仮定はどうあれ、結果守れた、それを大事にしよう」
 
 申し訳なさそうに目を伏せた流の頭を撫でる。やっぱりこの子は……小さいな。あの怪我に、出血の量。無事だったと、手放しでは喜んではいけない。
 
「あの、その、緋凰さん? 恥ずかしいのですが……?」

「ん、あぁ、悪い」

 撫でていた手を止める。いかん、考え込んでた。

「さて、そろそろ俺は行くよ。安静にな?」

「……」

 戻る用意をしながら様子を見ると、なんか俯いてる。恥ずかしすぎたかな。少し悪いことしたなーなんて思いながら背を向けると。

「今日は聞かないんですね。どこから来たって」

 カーテンを開けようとしてた手が止まる。なるほど、やっぱり。

「……身を挺して守ってくれた奴を疑うほど、黒いつもりは無いんだけどな。それに」

「……それに?」 

「今疑われてるかもしれないのは俺達……いや、俺だけかもしれない……お互い抱えてる事が多いよな。また来る」

 カーテンをあけて、部屋を出る。正直、流がどちら側かはわからない。だけど、この子はスパイじゃなければいいなってただ思う。今ので、流も俺達の事をある程度知っている、そう捉えたほうがいいだろう。深く考えすぎかもしれない。

 さて! 切り替えて行こう!

 ……ティアナの自主練の問題って、そう言えば隊長陣は気づいているのか? いや、俺とシグナムさんのドンパチに直ぐに気づいて駆けつけた以上、直ぐに分かるはずだ。だとすれば、泳がしてる?
 
 でもまぁ。
 
 「教導官」で「隊長」やってる人が居るんだ。どうにかするだろう。
 
 それでも、どうにもならなかったら……その時は動く。
 今度こそ。重い処分が下されるかもしれんが……まぁ、そんな展開は無いだろ。
 
 ……無いって、信じたい。
 
 間違いなく今行っても、話して貰えないだろう。隊長たちの様子を伺おうとしても、今後の展開は多分聞き出すのは難しいだろう。
 
 あーぁ。ミスったなぁ。まさか預かり知らぬ所でこんなになってるなんて……ミスったなぁ。
 
 
 ――side震離――
 
 昨日、ようやっと響がお仕置き部屋から出てきた。ほんと、バーカとしか言えない。何してんのよバカ。
 太陽が昇るよりも先に、屋上に上がって深呼吸。朝方ということもあって空気が冷たくて頭が冴える。
 デバイスに入れてる数式図を展開させて、演算、修正、実行を繰り返す。
 それはこの前のアンノウンが使っていた防御の再現。一応磁石の反発のようなモノの疑似再現は出来たが、防御に使えるかと言えば駄目なもの。発動に時間が掛かるし、展開時間もほんの僅かだ。
 だから、その辺りを実践に使える様に調整すれば……次あった時防御を抜けるだろう。
 
 ただ、砲撃の中を飛ばされる事無くその場に待機していたのは別のからくり、違う術式だと思うが……パッシブで展開されてる防御を先に攻略しないと。今後困る。
 
 でも。
 
「……怖い」

 正直あの日以来、少し流を避けてる。話しをしたら嫌われていそうで、軽蔑されそうで、言葉を掛けてくれ無さそうで。けど、私はそれくらいのことを失態を犯した。それは間違いはない。
 そりゃシャマル先生に言われて流が訓練に戻ろうとするのを止めるけど、一言二言言葉を交わす程度で、会話には程遠い。ていうか私が「戻らないと、本気で止めるよ」って半分脅しをかけてる点もあるし。あぁ。
 
「駄目だなぁ。本当に」

 本当にそう思う。今日は各分隊でタッグでの模擬戦。私や響、奏は既にある程度の部分までいけてるから問題ないって事で、今回は見学に回るけど。見学に回ろうが回らないが私は参加できない。相方に近い流が今動けないし。うん、私のせいで……ヤバい、涙出てきた。

 それに気がつけば、太陽も頭を出し始めて、辺りが少しずつ明るくなってきた。そういえば朝起きたときにはもう奏は居なかったけど。何処に行ったんだろう? 何時もは起こされる側なのに。
 やっぱり、探したほうが……なんて、考えると盛大に腹の音が鳴った。誰もいないとは言え、コレは凄く……恥ずかしい。とりあえず、ご飯食べよう。そうしようそしたら少しは気分が紛れるだろうし。だけど、現時刻はまだ早朝という事は。

「……空いてるかな」

 実際その通りで、この時間から食堂って開いてたかな? 空いてても誰も居なかったらなにも食べられないし。私は料理出来ないし。どうしよう。なんて考えているうちに。食堂の前に到着。うん。分かってたよ電気が付いてないからまだ食堂の方達まだ来てないのは分かるよ。だけど、だけど!

「誰か居ますよーにっ」

 小さく呟きながら、食堂の扉を少しだけ開けて、中を確認。まず最初に厨房の方の電気が付いてて、美味しそうな匂いが鼻をくすぐるから……良し、居るな! そう思って勢い良く開けると。

「……あれ?」

 正直に言おう、今一番ってか気まずくて会えない人がそこにいた。うん、もう分かると思うけど。

「……叶望さん? こんな時間にどうかしましたか?」
 
 うん、流? 今医務室に居なきゃだめだよね? って言葉が言えなかった。だって、普通にエプロン付けて料理してるんだよ? 一瞬思った何処のお母さん? と。……それよりも、流が凄く変な顔してるから思わず笑いそうになる。私の前でもこんな顔してくれるんだって分かって。それが嬉しくて。

「そういう流こそ、何でここにいるの?」

「え、あ、その、なかなか寝付けなかったので、しばらく起きていたのですが……」

「そう、つまり流もお腹が空いたって事なの?」

「……ぅ、はい」

 なんか雰囲気的に小さくなった気がする。最初の頃の固い雰囲気じゃなくて、全体的に少し柔らかくなった感じがする。うん、普通に料理してるってことは。普通に作れるってことだから……よし。

「そう、えっと、その。お願いがあるんだけど?」

 プライドなんて投げ捨てる!って思って話しかけるけど。正直やっぱり気恥ずかしいもので。自然と目線が泳ぐ。でも言いたいことは言い難くて……どうしようかと思ってたら。

「いいですよ。そこで座って待ってて下さいね」

 そう言って私の思ってることは既に見ぬかれてた。そのまま厨房の道具をいろいろ使いながら料理を再会するけど。その前、流が移動する前に一瞬だけ。一瞬だけ優しい顔つきになったのを私は見逃さなかった。そして思う。

 凄く可愛い。と!

 うん。本当に可愛い! あぁ、私も料理……辞めとこ。響達に怒られる。絶対に。なんて思って待つこと数十分。私と流はそれぞれ目の前の席に座って、俗にいう相席だ。で。

「……」

「……どうかしましたか、叶望さん?」

「……」

「……もしかして口にあいませんでしたか……?」

 目の前でどことなく不安そうな顔をしている流。ちなみに流が作ったご飯は、ご飯とわかめ入りのお味噌汁。それに玉子焼きという。日本の一般的な朝御飯で。多分、私に気を使ってくれたと思う。確信はないけど。
 だけど流が作ったご飯を一口食べて、今の状況なんだけど。なんだけど。本気で全力で思ったことを言おう。というか心に浮かんだ言葉を言おう。

「流?」

「……何でしょうか?」

「結婚しよ?」

「……ぇ?」

 ……うん、何いってんだろう私。心に浮かんだ言葉をそのまま口に出したら、私の口はなんか馬鹿な事を吐き出しましたよ? あぁ、あぁ、あぁ。顔がどんどん熱くなってくるのが分かる。視線が泳ぐけど、なんとか流を捉えるけど。その流もなんか私を見たまま固まってて。あぁ。あぁ!

「え、あ、そ、その! 今の間違いだから! そのご飯美味しくて、つい口からなんかポロって! だから、気にしないで! 間違いだから気にしないで! ね!」

 生まれて初めてここまで恥ずかしいと思ったことはない。目の前にあったご飯を何時もの倍以上のスピードで食べ進めて。慌てて自分の食べた分を片付けて。

「ぜ、ぜ、ぜっちゃい、き、気にしにゃいでにぇ!?」

 もう自分でもなに言ってるか分からない言葉を吐きながら、本気でその場から離れる。そして、思う。もう修復不可能かな……と。うぅ、泣きそうです。ちなみにその後、自室に戻って、ベット入って、布団をかぶって。ずっと左右に転がってました。
 
 ……そう言えば、流普通にご飯食べてたけど。お腹大丈夫なのかな? 


――side響――


「……来ちまったよ、今日が」

「そうだね。そして私たちは見学。間違いがあったら言ってくれたら助かるって」

「マジかぁ……あの二人……ティアナとスバルの動き。奏はどう思う?」

「……本音を言うと、あの二人の動き。悪いとは思えない。でもあれは突撃じゃない、特攻だよね」

 視線の先に、正確には木々の隙間から少しだけ観える二人の姿を観察する。じっくり見れば木があっても問題ない。普通に大体の動きがわかればいいしね。

「あぁ、そうだな。だけど今回のは模擬戦だ。どんな事言っても本質は変わらないよ」

「……うんでも、なのはさんは練習だって」

「あぁ」

 でもさ、奏よ。

「……仇でも無いのに、毎回攻め方変えてくれてんのに……今、なのはさんだけ(・・)を倒す練習したって意味がないのに」

「……うん」

「……そんなの、なんの意味がある? そうじゃないだろう」

「うん。でも、どうなんだろうね。難しいよ……」

 本当そう思うよな。俺もそう思うし、思ってることは多分正解じゃない。でも多分間違いじゃない。それはなのはさんとて同じ。あの人の考えも正解じゃないかもしれない。でも間違いじゃない。だけど今回のティアナ達の動きは。正直いうと正しくとも間違いでもない。何れ仮想的じゃなくて、なのはさんとして戦う時も来るだろう。
 でも、それはまだ早いことだ。だから。なのはさんが……いや、高町隊長がどうやってあの二人を叱るのかただそれだけが気になる。それは「隊長」として叱るのか、それとも「教導官」として叱るのか、ということを。
 
 だから。

「何もなく普通に終わればいいんだけどなぁ」

「うん、そうだね」

 朝日がどんどん登ってく、模擬戦まで後少しだ。


 ――――――――


 心の中じゃ何処か信じていたかもしれない。「教導官」であるよりも「隊長」であるよりも、一人の「人」として、分かってあげているのかもしれないと。俺はこの時は本気でそう思ってしまった。

「少し、頭ひやそうか……」

 隊長の指から走る光弾はティアナを撃ち抜き

「ティアー!! っバインド!?」

「今日の模擬戦は二人とも撃墜されて終了」

 多分最悪に近い形で、それ問題となって現れた。正直この光景を見て、俺は本気で驚いた。
 そして、ティアナが落ちそうになった瞬間。ティアナの落下ポイントを見て、唖然とする。直ぐに落ちた所まで行って、ティアナを抱き抱える。

「響、ティアは」

「大丈夫、気絶だ。医務室に運ぶ」

 何時も震離と同じくらいに笑っているはずのスバルは、何時もの笑顔がなく。なのはさんも俺に目を合わせなかった。

 とにかく。シャマル先生のもとへ連れて行くか。正直、ここにいると何するかわからん。ここが教導隊なら何も思わないで済んだはずなのに。

 きっとティアナと話すと思ってた。全部終わった時に、このコンビネーションの問題を指摘すると。その上で話をするんだ、と。
 
 だけど、そんな考えとは正反対に、話すどころか、気絶までさせるのはさすがにやりすぎではないのかと。現に話すことさえ出来ない。正直この事に怒りを……いや、呆れを感じた。
 だがあんなに頭の切れるティアナが取り乱して、なにより疲労も溜まっていたので、気絶してしまっても仕方ないと何とか納得する。
 何にしてもこれでなのはさんもティアナのこともわかっただろうし、後で二人で話し合って丸く収まるのを待つばかりだ。だけど、俺が一番気になったのは、ティアナを撃つときのなのは隊長の目が気になった。あれは悲しみと悔しさ……そして怒りだった。

 直ぐにティアナを医務室に運び、そっと寝かした。簡単な診察の結果は一応大丈夫らしい。シャマル先生の話だと明日以降にはダメージが残らないように設定されていて、それでいて強力である。シャマル先生の診察に安堵するスバル達、他の隊長達はなのは隊長のところ。震離と奏は俺が言って、煌達の元に行ってくれと頼んだ。この後のことを話すために。ちょっと俺の方で動きが合ったことを伝えるために。
 下手をすれば、しばらく接触できなくなるかも知れないから、と。

 そして、今回の問題はここにあるんだ。

 なのは隊長が。いや高町隊長がティアナにやったことは「教導官」としては満点。いや、それ以上の事だ。それだけ上手いんだからな。

 だけど、今、医務室に居る隊長組はシャマル先生しかいない。流も居るし、倒れたティアナも居るからな。そりゃそうだろう。
 でも、全員が全員知り合いを優先したんだ。他の隊長陣は、高町隊長の技量を信じているから、ティアナは大丈夫と、特に後遺症は無いって思っている。だから、隊長のメンタルケアを上位においた。

 うん、友人関係としては満点だ。普通にいい友情で、関係の深さがよくわかる。だけど「隊長」として。上司としては……考えられる限りの最悪だ。

 ……まぁ、いいかもな。俺も人のこと言えないけど若いんだし。あの人もちゃんと人だもん。何でもかんでもできるわけ無いし。早い話がまた同じこと繰り返さなきゃいいんだ。
 
 ……今までの教導でも、こんな事あったろうに。

 とりあえず、スバル達三人を椅子に座らせて、お茶を買ってきて飲ませて落ち着かせる。うん、ある程度は落ち着いたな。だけどそれでも一番落ち込んでるのはスバルだなやっぱり。
 まぁ、恐らくあれだけ練習したのにって落ち込みだなこりゃ、開始直前は興奮気味だったしな。さて。

「で、スバル達はどうしたい?」

 うん、返事がない。いきなりだとわかんないだろうしな。

「……わかんない」

 小さくエリオが呟くと、他の二人も小さく頷く。まぁ。

「エリオにキャロ。そして、スバル。なんでティアナがあんな行動とったか分かるか?」

 そう言って皆の顔を見る。だけど、誰もわからないと言った様子だ。まぁ、人間、分かり合うなんてそうそうできるものじゃない。簡単にできたら誰も苦労しないよ。

「……ティアは、ティアは」

「……勝って自分達は強いって価値を、想定を超えてるって所を見せたかった?」

 ……分かるよ。そう見せたいって、ちゃんと力をつけてるよって。

「……うん」

 うん、こんだけややこしくなってしまった以上。ティアナからも直接話しを聞いた方がいいな。スバルも自分の感情に整理をつける時間だろう。皆も、そして俺自身も。ここに居てもよろしくないと、そう思って移動する。
 


「で、柄にもなくイライラしてるわけ、か」

 若干日が沈みかけた頃、屋上で皆で集まる。さっきまで顔には出さなかったけど、ここに来てから正直隠すのが面倒になって顔に出してる。何時もはケラケラ笑ってる煌も今回ばかりは普通に真顔だ。まぁ、今回の件結構深いし。幼馴染の皆で集まって、普通にお茶飲みながら。奏がポツリと。

「だけど、壁が出来てるなぁとは思ってたけど、まさかここまで来てると思わなかった」

「ん、だね、私や紗雪、煌に優夜はFW組とはほぼ喋ったこと無いけど、それだけは分かる。FWの子達は4人で派閥を作ってるし……だけど、それは仕方ないと思う」

 うん、時雨の言うとおり。この前のアグスタ以降軽い冷戦気味になったなとは思ってたし、なんとかなると思ってた結果がこれだ。その上ティアナ達は四人で派閥作ってるし。早い話が隊員同士と隊長達で組が出来ちまってるんだ。
 何より……。
 
「努力してきた。仲間のために必死でがんばった。その思いだけは間違ってはいない。ただ、やり方が間違っていただけだで、それを正すのがなのはさんだと……あの叫びを聞いてなにかすると思ってた」

 わかってる。きっとなのはさんはこう考えた。違う、そう言ってた。訓練を受けたふりをして、本番で違うことしたら意味がない、と。
 
 ティアナのミスショットの原因の一端が分かってる以上、他に理由がないかを考えるが……くっそ、余計な事して房に入ってる場合じゃなかったクソが。

「で、どうすんだ。俺ら事務組はそっちの面々あまり知らないからお節介は出来ねぇぞ」

「……出来る限り修正できそうならしてみる。無理なら必要悪を建てる。というか立ち掛けてる」

 空気に緊張が走る。シグナムさんに吐いた言葉はおそらく大体の人の耳に入っただろう。別にこれでいいんだが、タイミングが悪すぎる。
 しかし、常々感じてた問題がこうして出てきたのもタイミングが悪い。スバル達と隊長達の見えなくて自覚出来ない壁が原因だ。
 スバルは特に、なのはさんに憧れの感情が強いせいで、下手に突っ込んだ会話が出来ない。ティアナも、どこか距離を取って……いや、普通に上官である以上それが正しい。
 その上、隊長達の付き合いは十年という長年の知り合いという名の厚い壁。結果的に派閥になってる。
 
 完全に、全部が全部裏目った。
 
 色々と思い出して、頭痛がしてくる。が、突然目の前にモニタが開いたと思ったと同時に警報が鳴り響く。空を見上げると既に暗くなっていて星が見えてて……正直面倒事は一度に来られると大変なんだけどなと思った時だった。
 
 直後に屋上に集合ということで、俺と奏、震離はそこでそのまま待機だったんだけども。今の今まで。俺ら6人揃っていたせいで、煌達まだそこにいるんだよなぁ、存在を殺してるだけで。
 で、ぼちぼち皆揃ったなぁと思った隊長達とスバル達が集まってきて、ティアナが起きてるところを見ると大丈夫と思ったが。どうも落ち込んでるみたいな表情で、少し心配……かと思ったらなんか睨まれてんだけどなんで?
 
「今回は空中戦だから私やフェイト隊長、ヴィータ副隊長。そして響と奏だけで行くからみんなは待機ね」

 って全員揃ったのを確認してから、なのはさんがそう言う。またかよって思うよりも先に……ある程度折り合いを付けたか? まぁ、これで後はちゃんと二人で話しあえば……とりあえず今回は終わりそうだけど……絶対にないよなぁ。
 そして、俺必要ないよね? 震離も出動は出来るって言われてるらしいし。なんで俺?
 
「今回ティアナは待機から外れておこうか」

 この言葉を聞いた時、別の事が頭に浮かんだが、思ったとおりなら何の問題もない。
 
 そう思って、ティアナを見て……しまったと後悔した。

「え、ちょ、響?」

 ヘリの影に高町隊長を連れて行く。ヴィータさんがなんか言ってけど、そんなの後回しだ。それよりも、それよりもだ!

「何を言ったのかわかってるんですか、高町隊長……ッ! 上官にそこまでする義務はないと知っています。だが、あのティアナの状態で、それを言うか……ッ!? 役立たずって捉えられるって考えなかったか……ッ!?」

 ここまで伝えてようやくその意味が伝わり。サッと顔が青くなった。
 
「違う、そんなつもりは!!」

 徐々に敬語が抜けていく。同時にどんどん腹が立っていく。この人達は何がしたいんだと。
 いや、分かってるメンタルのケアなんて必要ないって、普通の部隊ならそんなの小隊長のやるべきことだと。尉官がすることじゃねぇって知ってる。
 でも……心を折る場所かどうかくらい、あの叫びを聞いた上での言葉じゃないだろう? 
 だけど、俺の考えなんて二の次だ。問題はティアナだ。視線をティアナに戻す。
 だけどやっぱり。さっきのあの言葉で顔面蒼白で、多分俺らの会話なんて聞いてないんだろう。下手すりゃ、ティアナの中でさっきのあの言葉は懸念していた意味で捉えているかもしれない。それを見たのか高町隊長はティアナの側に行くが……もう遅い。

「言うことを聞かない奴は……使えないって事ですか」

 懸念したとおりだった。何時も気丈なティアナから漏れる悔しさ。本当なら当然だと返す。でも、今それをしたら……間違いなくティアナは折れる。
 そうなってしまえば、今までような前線組の動きは期待できない。
 
 でも……まだ。
 
「待ったティアナ。落ち着け」
 
 違うよという事を伝えようとする。
 
「何でアンタが……!! そうね、アンタなら分かるでしょう? 私なんか……いくらだって代わりがいる事を! あの時、二人の反応が消えて、私に何の期待もしてなかったアンタなら!?」

 ……は? あの時? 二人の反応が消えて? 何の期待もしてない? 俺が? なんで、そうなってる?
 いや、違う。まずは落ち着かせないと……。
 
「……あたしは、あんたみたいに、シグナム副隊長と渡り合えないし、スバルやエリオみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルも無い。少しくらい無茶したって、死ぬ気でやらなきゃ強くなんかならないのよ!?」

 ……ティアナ、お前……いや、そうだ。当然の帰結だ。あの日から特訓をしていたのなら、六課周辺のどこかに居たはずだ。
 シグナム副隊長と戦ったのは伏せられてること、でもそれを知ってることはあの日……近くに居たのか。
 よりにもよって、それを……聞いてしまったのか。
 
 だからティアナは俺に対してあんな目を、スバルもそれを聞いて……。
 
 違う、今は俺のことはどうでもいい。
 ティアナの心からの叫びを聞いて、潰されそうになる、痛いほど、死にたくなるほど分かる。自分の技を、射撃を突き通したいって言う気持ちが、これだけは負けないってものを磨いているこの子の気持ちが。
 諦めてる(・・・・)俺と違って上に……もっと高くいけるのに!
 でも、どうして……誰も動かない? 
 
 なら、俺は。
 
「震離」

「え、あ、はい!?」

 静かな声で、震離を呼ぶ。シグナム副隊長が動こうとしたけど俺の発言で止まった。

「持ってけ」

「え、あ!?」

 俺のデバイスをアイツに投げ渡す。早い話が。

「震離、俺の代わりにやってくれ? どうせ奴さんは、くっだら無い事調べようとしてるみたいだし」

「え、あ、でも」

「あぁー大丈夫だー変態はかせさー、多分ガジェットが威力偵察、ま、データ取りに来てるはずなんだよ、だから俺よりもお前がいったほうが楽だろう。比較的ガジェットを知ってるお前なら、わからないように破壊することも出来るだろ?」

「ちょ、お前!?」

 震離とそんな会話をしていると隣からヴィータ副隊長の怒号が聞こえる。ちょうどいいやカマかけよう。

「作戦通りにっ!」

「……ならばなぜ、俺と奏なんですか? 戦力としては、接近戦しかできん俺よりも、震離の方が優秀で貴女がたの予想したであろう戦力調査としては最適ですよ。それに同じ分隊から出すとかおかしいでしょう? そして、何より俺が何もない空で戦えるはず無いでしょう?」

「ッ!? それは……」

 この反応、まさか。

「それは? それはなんですか? それとも、俺と奏じゃなきゃいけない理由ってあります?
 こういう問題が起きてる時に側に居ないと何しでかすかわからないから、そばに置きたいんですか? ああ、なるほど。そっちに近いのか」

「ちがっ……そうじゃない」

 ……そうか。フェイトさんのその反応で十分ですよ。俺と奏の評価を。もう大体理解したから。
 なるほど、やはり疑われてたわけか。まぁ中立って言ってるし。そりゃそうさ。当然の帰結だよ。
 そう考えると、いや、既に俺の視線は一人の人へと向けた。
 
「ちがう、響。ちがうんだ」

 フェイトさんがそれに気づいたらしく、側に来る。けれど、その前に背を向ける。分かってますよ。でもね。

「高町隊長、ハラオウン隊長。早く行ったらどうですか?」

「え?」

「え、じゃなくて出動でしょう。越権行為、命令違反、上官侮辱の処罰については皆さんが戻ってから受けます」

 そう言ってから、なんかハラオウン隊長が後ろで何か言ってるけど、聞こえない。聞きたくない。奏が震離を引っ張り連れてヘリに乗って隊長達もヘリに乗ってそのまま飛んでいった。そして。
 
「何もなければ、部屋に帰ってとりあえず休め。完全にダメージ取れてないだろ? 少なくとも今日はもう……威力偵察もこれ以上は無いし、地上に配置するにしても余計に警戒強めるだけにつながるからな。
 きっと……大丈夫だ。だからちゃんと休んで明日からまた、ちゃんと話を聞いていけばいいよ」
 
 静かに立ち尽くすティアナに声を掛ける。びっくりするくらい静かに声が出たが……もう俺じゃ届かんな。
 てっきりヴィータさん辺りから後で顔貸せって言われるかと思ったが、無い辺り思う所有りか、何かあったか。
 いつの間にかスバルがティアナの側に来てて。

「命令違反は、絶対に駄目だよ……さっきのティアの言葉とか。確かに私も駄目だと思う!」

「……」

「けど、自分なりに強くなろうとすることとか! 大変なときに、頑張っちゃいけないの!?」

「……」

「自分なりに努力するとか、やっちゃだめなの!?」

 うん、分かるよ。分かる。でもね、そうじゃないんだよスバル。だけど、って言葉を言おうとしたけど。

「自主練習はいいことだし、強くなるための努力もすごくいいことだよ」

 不意にこの場にいないはずの人の声がして、俺たちは声の方を向いて、そこにいたのは、とても辛そうな顔をしたシャーリーがいた。

「持ち場はどうした?」

 シグナムさんの言葉に、まっすぐこちらを見据えて。

「メインオペレートはリィン曹長が居てくれますから。……なんかもう、みんな不器用で……見てられなくて。みんなロビーに集まって、私が説明するから」


 そう言われて、皆でロビーに集まる。そして、なのはさんの教導の意味を伝えると言って映されたのは、なのは隊長の魔法との出会いと戦い。そして敗北。シャマル先生とシグナム副隊長の解説の元知らされた。知らない隊長達の歴史が、この場にいたFW5人に伝えられた―――



 ―――だけど。



「なのはさんはみんなが怪我をしないように」

「そこまで」

 そこで止めた。
 だって……。

「……関係ない話だろう。無理をした、だから撃墜されても仕方なかったって、馬鹿でも分かる話でもしたいのか」

 キッと俺を睨みつけるように。

「私はなのはさんがどんなに必死なのかを」

「バリアジャケット見りゃ、嫌でも分かるよ。あぁ、この子らは期待を……じゃないな、本当に可愛がられてるんだなって。羨ましいほどに。そんな人達に出会ったことは……一度しかなかったから。
 フィニーノさん(・・・・・・・)さんよ。隊長達の個人デバイスに囲まれて感覚麻痺った? 一部隊が主力前線メンバーに、個人専用のデバイスを用意するなんて、俺は5年勤めてて初めて聞いたよ」

「な、そんな事!」

「……無いとは言うなよ。ま、逸れたから戻すぞ。隊長陣に分担して教えてても、必ずコメント残す程度に、六課に入ってからレベル上がったって、熱心に励んでる事くらい分かってるよ。
 それでも、自分の事で一杯一杯だったからこうなったんだよ。
 だから当ててやるよ。高町隊長は悪くない。あの人の人格は完璧だって。だから、ティアナのことを考えてるんだってアピールしたかったのかもしれないけどよ」

「ち、ちが!」

「第一だ、怪我してリハビリを遂げたっていう情報だけで良かったろ……たった9歳でエリオやキャロとそう変わらない年で、魔法を覚えたばかりの人の、今の(・・)ティアナ達に出来ない芸当を見せて、どう思うか考えなかったのか?」

 あの圧倒的な光景を目の前にティアナは絶望……こそしなかったかもしれないだが、確実に何か思うことがあるだろう。
 ……少なくとも。

「正直俺はこう思ったよ。魔力量、レアスキル、それ等に恵まれなくとも弛まぬ努力でカバーできるなんて、そんなのは口先だけのことで、才能こそ必要だ、と。
 でもね、どっちも腹割って話をしてたら、そもそも回避できた問題だ。高町隊長だって、訓練の先を示せば良かった。ティアナだって、それを知っていたら切れる手札も変わったはずだ。
 ……ただ、これは……俺の失言も切欠の一つだがな」
 
「緋凰。それは!」

 睨みつけるようにシグナムさんを制し、苦々しくも止まってくれた。
 ま、今はもう思っちゃいないけど……少なくとも昔は考えたよな。さて。
 
「……ティアナ。空戦の最低ランクがどれに指定されてるか、分かるよな?」

「……え、ぁ……Aラン……く」

 完全に頭が冷えてるんだろ。どこか怯えたような声だけど……それでもこれは話しておこう。

「そう。Aランク。そして、俺はA-。理由はいくつかあるが、まぁ何だ。一番は……魔力が少ないから、Aランクに見合った……硬さがない。速さがない。中距離択がない。
 だから、フロントアタッカーとして満足に機能出来ない。ガードウイングとして、素早く処理を、遊撃できない。センターガードとして、中距離支援が出来ない。でも、空は飛んでるからA-だと。
 そしてな。ティアナが見たシグナムさんとの勝負。あれ半分本当で半分嘘なんだよ」
 
「え?」

 不思議そうに皆の視線が……シグナムさん以外の視線が集まるのが分かる。
 
「魔力なしの勝負だから……拮抗してたんだよ。前に訓練で高町隊長とシグナムさんの同時の訓練あったろ? あの時も俺はマッチアップどころか、震離と流に対応してもらってやり過ごしたけど……アレ単純に速度も火力も空戦機動も勝てないって分かってたから変わってもらったしね」

「……ぁ」

 思い出したようにティアナの目が開いた。裏を返せば……そうか、いつかの優夜とシグナムさんの勝負の時点でそう考えてたんだなぁ。
 もっとちゃんと話すべきだった。馬鹿みたいに警戒して壁作ってる場合じゃなかった。

「……そして、多分あの日の言葉を聞いたって言うなら……被害が少なくなったの部分にはティアナ達も含まれてるんだよ。
 別にアレは勝手な俺の怒りで八つ当たり、そうじゃないって知ってるし、戦力分布も知ってた。ヴォルケンリッターの皆さんを侮辱したかったわけじゃない。まぁ、吐いちまった以上何言ってるんだって事になるけどね」

 ふと、遠くからヘリの音が聞こえて、止まったと思えば。息を切らせて走りこんで来たのは、まず高町隊長。直ぐに場の空気を察して、呼吸を整える。そして、後からやってきたフェイトさんにヴィータ副隊長に奏と震離。そしてまた静かになった。

「ティアナ、正直に。否定なんて絶対にしない……だから、ティアナの思ったことを話して?」

 なのはさんの言葉は、いつもの優しい声で紡がれた。それを聞いて、一瞬ティアナの目が潤んだが、堪えて。
 
「……私、は………凡人……だから、もっと、強くなり、たかった、兄さんは役立たずなんかじゃない、ランスターの魔法は負けないって」

 そうして語る過去の話、兄が殉職した、そして上司はそれを無能とメディアで断じた。だから証明する、兄の夢の執務官を、兄の得意だった魔法でたどり着くことで証明しようとしてた。

 正直うらやましい。俺は受け継いだものを諦めなきゃいけなかったから。ティアナみたいに磨いても、どうしようも出来ないって、実践に落とし込めるか分からないって、わかったから。
 だけどティアナは急いでしまった、努力しなきゃ、無茶をしなくちゃ、夢はかなえられない、と。
 何より、ずっと一緒に居たスバルと並べるように、と。
 ……でも、皆と同じようにやったって夢を叶えられる保証はない。特に周りの急成長と比べて伸びてないと感じてしまえばそれは重く辛く感じるだろう。
 自分だけ、取り残されている……と。
 
 それはとても辛い。置いていかれることも、それが出来ない自分への絶望も……割り切ってしまえばいい。でも……割り切るなんて、ギリギリまでしてからじゃないと、それでも出来ないって知らないと……割り切れない。
 
「……言葉足らずでごめんねティアナ。だから私も……正直に話すよ。
 私はティアナの指揮能力に甘えてた。同時に、ティアナならきっと大丈夫だってそう信じてた……だからね。ティアナがどうしてそうしたのか分かっていないのに、八つ当たり紛いな事をしてしまった……苦しんでいる事、追いつめられている事に気づかなかった事に……分かってあげられなかった」

「ちが……わた、私は……私が」
 
 唖然とした後に感極まったみたいに泣き出した。
 
 ……そうだよな。尊敬してる人にそんな事言われりゃ感極まるよな。
 
「これからはティアナを、皆をちゃんと見る。悩んでもちゃんと一緒に答えを探していこう。苦しんでも手を差し伸べる。挫けそうになったら立ち止まって一緒に考える。これからなんだ。私も、ティアナも」
 
 うん、この問題は、これで終わりだな。やっと。さて、あんまり泣いてるところに居るわけには行かないし。黙ってさっさと席をたつ。出来るだけ気配を殺して行ったし、皆は高町隊長と、ティアナを見てるから多分問題ない。

 ――すぐに確認をとろう。

 そう思って隊舎を出て、海沿いのテーブル付きのベンチに座ってると。そこから優夜と煌が黙どかっと座って、時雨と奏、震離が向かいの席に座った。離れた場所にあの場から遅れて付いてきたもう一人が居るけれどそれは置いといて、さて。

「正直に聞く。感づかれたって気づいたのは?」

 そう言って、手を上げたのは震離だけだ。まぁ、そうだな。それは仕方ない。

「……そうか。じゃあ今回の件全員聞いたな?」

「……」

 皆にそう聞くと、無言で首を縦に振った。

「じゃあ、まだ仮定だけど。今回の件。既に「アイツ」が動いてたと思う。そして俺が情報を流してることに、六課陣営が気づいたと思うんだ。最近送ってこいって催促されて、実行したしな」

 皆の目が鋭くなる。俺も皆に見せないように拳に力が入るのが分かる。
 
「はい。それは響が上官侮辱して明けだったからという線はない?」

「それもあるが、だったら何故俺だ? 奏だけでも……俺だけでも良かった。前者なら何も思わないし、後者なら疑問をいだいて質問した。
 もっと言えばだ。上官に文句垂れた奴を連れて行くとは思えないんだよな。命令を効かない恐れがあると判断されて。
 少なくとも俺だったら、そいつは今日は使わない。士気に関わるからな」
 
 考えられることは沢山あるが、それなら震離も含まれててもおかしくないのに、割と放任気味だ。対して、俺と奏の配置はニコイチの上に、大体奥まった場所だった。よくよく考えれば妙なところだ。
 セット扱いかと思えば、今までもどちらかと言えば奏と震離でペアを組ませて、俺は指示をっていうのが多かったのにここに来てからだ。奏とタッグを組むことが多いのは。
 
「……ちなみに聞くが響よ? アレ、大丈夫なの?」

 と、優夜が指差すのは、あの場から付いてきた人が居るであろう場所。

「まぁ、大丈夫。俺ら……や、俺以外は中立だって認識してる人だし」

 一瞬間を置いて、全員の顔が青くなった。
 まぁだよね、としか。

 現状で話せることを、ちゃんとあの人にも聞こえるように皆に話して同時に伝える。
 下手をすると……いや、俺が六課から異動の可能性も大いに有りだと。

 
 

 
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。  
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