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レーヴァティン

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第百十二話 若狭も手に入れその三

「これもね」
「欠かせないですね」
「鉄火場にはね」
「あのお寿司はあの場でこそ」
「食べるといいんだよ」
「左様ですね」
「そして今はね」
 桜子は飲みつつ笑って話した。
「琵琶湖の傍だと」
「琵琶湖で獲れたものを食べる」
「鯉も鮒もね」
 即ち鯉の刺身も鮒寿司もというのだ。
「近江のお酒も飲みながらね」
「そうだ、だが他にもな」
 英雄は刺身を食べつつさらに言った。
「いいものがある」
「それは何だい?」
「近江の西は若狭から甘鯛や鯖を運ぶし牛もだ」
 こういったものもというのだ。
「あるからな」
「ああ、鯖街道にだね」
「近江牛もな」
「そちらも楽しむんだね」
「そうだ、今は近江の掌握を進めるが」
 それと共にというのだ。
「食うこともな」
「楽しんでいくんだね」
「酒もな、勿論菓子もな」
 甘いものもというのだ。
「楽しく」
「そうするんだね」
「楽しむことは楽しむ」
 英雄は桜子にいつもの表情で述べた。
「それが俺だからな」
「戦もしながら」
「そのうえでだ」
 それと共にというのだ。
「馳走と酒もな」
「楽しむんだね」
「そしてだ」
 英雄はさらに言った。
「もう一つの楽しみもな」
「女の人もだね」
「楽しく」
「それは女には言わない方がいいよ」
 桜子は英雄の今の返事にはやれやれという顔で返した。
「やっぱりね」
「それはそうだな」
「そうだよ、あんたの楽しみはいいとして」
「仲間内でもだな」
「そうしたことはね」
 女、そして男のことはというのだ。
「言わない方がいいよ」
「ではな」
「これからはね」
「言わない」
「そうした方がいいよ、あとあんたもね」
「この世界ではだな」
 英雄は桜子の今の言葉の続きを察して応えた。
「そろそろ」
「身を固めることもね」
「考えるべきだな」
「それもね」
「そうなのか」
「そろそろね」
 まさにというのだ。
「あんたも考えたらいいわ」
「そういうものか」
「こう言ったらあれだけれど」
 桜子はさらに言った。
「正妻、いや正室ね」
「正室か」
「そう、そうした人を迎えて」
 そうしてというのだ。
「ちゃんと家庭を持ったらね」
「いいか」
「あたしは男は旦那一人で」
 桜子はこの世界ではもう結婚している、そうしてしっかりと家庭の生活を楽しみ満足もしているのだ。 
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