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魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
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第6話 出張任務 後編



――side響――

 何も考えないって楽だなーと。

「ちょっとスバル! あんたさっきからお肉食べ過ぎっ!」

「え~だってぇ~……ってあぁぁぁ! ね、狙ってたお肉がぁぁぁ」

「ふっ、甘いでぇスバル。バーベキューの網の上は常に戦場や! 周囲を警戒し、尚かつ自分の領分をしっかり守る。それがバーベキューの基本中の基本や」

「了解ですっ! 八神部隊長!」

「ヴィータ。お前も少し食べすぎだぞ?……っ! 貴様っ! 私の焼いていた肉を全て取りおって!」

「ハッ、あめぇんだよシグナム。はやても言ってただろ?『バーベキューの網の上は常に戦場』だってな」

 カオスな現状ありきだけど……それでも無視するんだ俺。
 まぁ、それはさておき。現在行われてるのはバーベキュー。六課の隊長陣の友人さんからの差し入れを頂いて。網を二つに分けて食べてるんだけど。
 ものすごく食べるスバルと、それをコントロールしてるティアナに、肉を食べたいんだろうと思われるヴィータさんを中心とした肉取り合戦が、片方で行われてて、もう一つの網の方は、小食系のキャロになのはさんとフェイトさんという、安定してる中に居るエリオと、隊長の友人二人と奏がいる。

 え、俺? 俺はというと。

「はい、焼けましたんで、適当に食べてくださいねー」

 肉焼いて、野菜焼いて。合間見てウィンナーや、変わり種を焼いていって。肉奉行をしてる。
 理由は単純に隊長陣とそのご友人にさせるのは失礼だし、スバル達もなれない土地、初めての出張ということもあって、俺の方から肉を焼くって申し出た。
 あんまりこういうのは得意じゃないんだけどね。ぐるぐると思考が回り始めてたからちょうどよかったし……。
 奏にもって考えてたけれど、キャロに色々教えてる関係で忙しそうにしてたから頼まなかった。
 あ、焼きそばがある、途中で出そう。
 ちなみに俺の手元には焼けた肉とか野菜とか盛られた皿が3つ、ちなみに俺のも混じってる。そして残りの2つは、ここには居ない二人のためのものだ、食ってないとか言われたら洒落にならんしね。

「フリード、直接鉄板から食ったらやけどするから、ちゃんと待ってろよー」

 うん、フリード用の皿にも肉とか食べても問題のないものを? 食べさせてる、大丈夫かどうかは知らん、キャロが突っ込まないしね。
 あんまりこういうことは慣れないけど、皆が美味しそうに食べてくれるならそれはそれで良かったと思う。さ、もう少し頑張ろうかな。

――――――

「ごちそうさまでしたー!」

 やっと終わったか、うん疲れた。やっぱ皆で飯を食べるのは楽しいな、その度に俺食えてない気がするが。さて、俺の分が……無い?
 あれ、気がつきゃ皿がない。どこいったかなと周りを探していると。

「はい、響」

「え?」

 後ろから声を掛けられて、振り向いた俺の視線に写ったのは肉と野菜と焼きそばが!
 持っている主を見ると、そこにいたのは奏。

「お疲れ様、もしかしたらと思って用意してて良かったよ」

「あぁ、ありがとう!」

 奏から受け取って、とりあえず俺も飯を食う。うん、美味い! これで米があったら尚の事うまいんだけどなー。そういや俺が取ってた分かな? 奏がもってた辺り多分取られそうになってたんだな……怖いわ-……って。

「やべ、あいつらの分」

「ん、あいつらって……あぁ、流と震離ならもう合流してるよ」

「あらま、何時の間に?」

「響が焼きそば作り出した辺りかな?」

 視線を皆が居るところにやるとさっきまで居なかったくせに、普通に馴染んでる震離。それと、なんか悟りを開いた様子の流、そしてさっきもあった美由紀さんと、なんかどこかで見たことの有る人と、子どもが居る。

「そっか、それで皿が減ってたんだな」

「うん、合流して空いてたテーブルに、お皿が二つあったから多分と思ったけど……もしかして違った?」

「いや問題ないさ」

 奏の気遣いに感謝しつつ箸を進める。矢張り肉は美味いな、ていうか普通に良いところの肉だろこれ、脂のノリが良いもん。

「あ、響ー、さっき挨拶してなかったから、ちょっとこっちのみんなと自己紹介しようか」

「え、あ、はい!」

 とりあえず、肉と野菜とご飯を一気にかきこんで、胃に収める。一応口を拭いてからなのはさん達の元に行って、とりあえず挨拶していなかったら挨拶を。多分無礼講だろうし、階級とかはいいかな。

「緋凰響です、先程は顔を出さずに失礼しました」

「さっきも挨拶したと思うけど、アリサ・バニングスよ」

 はい、いろんな意味で知っています。ただ、意地でも知らないふりをするけどね!

「月村すずかだよ、よろしくね」

 月村さん。どっかで聞いたことが有るような無いような……こっちはわからんな。

「アルフだ、フェイトの使い魔改めハラオウン家の使い魔だ」

 これまた小さい、しかしフェイトさんの使い魔ならかなり強いんだろうなー。
 
「エイミイ・ハラオウン、フェイトのお兄さんのお嫁さんやってます、つまり義姉さんだね」

 ……あー通信補佐官。あのアースラの管制官かぁ……通りで見たこと有ると思った。

「で、さっきも紹介したけど、私が高町美由希、なのはのお姉さん」

 うん、こちらもさっき聞いたんだけど……聞いたんだけど、何でだ? いいやもう、聞こう。

「えーっと、美由紀さん、何でさっきにも増して、武装が増えてるんですか?」

 ピリっと、空気が張り詰めた。

 いや手首のバンドとか内ポケとか重そうだよ。なんだ、全員ボサっとして。さっきも見たけど、美由紀さんの手足とかすごい、とにかく無駄な肉が無い。
 手のひらにもタコがあるし、肩が張ってないから打撃じゃない、多分刃物使いだけど……他のものも使ってるはず、暗器系の物を。

 一瞬目が据わったけど、直ぐにパッと笑って。

「おー、よく判ったね、何でまた?」

「いえ、最初は重心ぶれないなーとか思って観察してたら、なんか士郎さんも美由紀さんも店員にしては無駄がないなと思って、更に観察していろいろ気づいたんです」

「へぇ、結構見るんだね」

「いえ、[[rb:密着戦 > ゼロレンジ]]で戦うことも有るんで、重心とか、手癖とか無いかなって観察するんですよ」

 結構重要なことだよね、観察って、相手が何が得意とかって体に出るし。
 俺は刀術重視だからそこまでだけど、六課だとスバルとかいろんな意味で体が詰まってるし。で、何で皆目が点になってんだよ? そして、お前何いってんだよって顔してんだよ?

「そっか。家が実戦剣術やっててね、それで普段から色々と」

「へぇ、それじゃあなのはさんも?」

「にゃはは、私は運動が苦手だから」

 ……嘘だろ。普通そんな人が三次元運動してて教導官なんてやらないで、「エース・オブ・エース」なんて呼ばれないと思う。
 
 それで、その後適当に話に入った訳なんだけど、とりあえず言おう、俺魔力無しの戦闘で美由紀さん達と戦ったら、ほぼ勝ち目ないね。そして、武器指摘した瞬間の冷たい目が忘れられない。だからか、こんな人が普通にいるからヤバイ気がしてたのか。そして、お兄さんとお父さんはもっと強いらしい。なんとなく察してたけど、凄いな本当に。もっと精進しないとな。

 それからは色々昔話に花を咲かせたり、なのはさん達の昔話を聞いたりしたりで色々盛り上がった。スバル達四人とも色々話したかったけど、それはまぁ後々でも出来る。今は珍しい事を聞いておこう。

 そして、後から合流した流達と俺の食事が終わった頃、この後の業務は、設置したサーチャーの監視なんだが、皆でやるにしては効率が悪すぎる。しかも、衛星リンクしている関係もあって人を配置しておくのも実質いらない。ならば、今のうちに……なんて考えていると。

「次はみんなで風呂にはいるでぇ!!」

 部隊長ー、はっちゃけ過ぎでしょうに。というかいいのか? 同窓会やっている場で思うことじゃないけど、いいのかなー?
 というか風呂入るって、このコテージに風呂はないし、湖で水浴びする季節でもない。いや、頑張れば入れるよ、一応、苦行と称して、滝に打たれたこともあるけど。

「そうすると……やっぱり……あそこですかね?」

「あそこでしょう?」

 なんかはやてさんとなのはさん達がなんか顔を見合わせて笑ってんだけど。あそこって言われても俺らはわからない。

「さて。機動六課一同。着替えを準備して、銭湯準備っ!これより、市内のスーパー銭湯に向かうですっ!」

「スーパー……」

「セントウ……?」

 正直思った事を言おう、もうちょいなんかいい名前なかったの? あるだろうなんか、「海鳴の湯」とかさぁ!? あ、駄目だ発想が腐ってやがる。

「……響ー?」

「え、あ、今行く」

 なんか、皆車の側に移動してるし。なんか置いてかれた感が凄くてなんか寂しい。で、一つここで問題が発生してたんだ。
 俺らの目的地は「スーパー銭湯」って場所で、そこまでは、当然車で移動する。
 そして、今ある車は、フェイトさんと、アリサさん、エイミィさんの車の三台だけで。それで、問題が!

「皆乗れなくね?」

「うん、今、どうするって話しをしてる」

 うんその通りで、今いる人数と、車の数が合わないんだよな。だからって歩いて行くには、遠いし、この時間で飛んだら何あれって言われまくるだろうし。さて、どうするかね?
 ちょうどいいし、一人余るってんなら俺ここに居てもいいけどなー。

「じゃあ、流が私の膝に座ればいいよ」

「……は?」

 ……[[rb: 震離> バカ]]が逝った。
 普通なら絶対にってか、普通に流は断ったんだけど、はやてさん、悪ノリだけは天下一品らしく。普通に拒んだ流に、隊長命令という超荒業を発動。そして結果は。

「~~~~~~~!!!!」

「♪」

 言うまでもなく流が押し負けて。一応申し訳程度に奏を置いといたんだけど。
 乗っていた奏曰く、車に乗って、震離の膝に座ってた流は、ずっと真っ赤になって俯いてて、その様子を美由紀さんが写真を撮ってたらしい。
 到着して、扉を開けたと同時に流はさっさと震離から離れた。

「なぁなぁ、震離? 流どうやった?」

「最高です、抱き心地も最高ですし、そこまで重くもなかったし」

 で、高校生のノリで話してるんだけど。多分ってか確実に流は怒ってんだろうなと思って視線をやると、案の定、顔が赤くて、目が赤いけど、完全に不機嫌ってことが分かる。
 で、再び。

「あ、流~?」

 って、先程のことを忘れたんだろうって思うほど明るい声で震離が流に声を掛けるけども。

「……なんでしょうか? 叶望一士?」

「……ぇっ?」

 なんか、流の中で震離のランクが下がったらしく。苗字と階級で呼ばれてた。
 ここに来る前まではさん付けだったのに。で、少し立ち直ったらしく、よろよろとした脚付きでこっちに近づいてきて。

「……どうしたら良いの私」

「自業自得、因果応報、その他もろもろなんとやら、分かっててやったんだろ? 今更どうこう出来ねぇよ」

「響がひどいよ助けて奏……」

「……ごめん無理」

 まさに自業自得。お前好かれたいなら好かれたいでいろいろ方法が合ったろうに。何で自分から嫌われる方向に持って行くんだよ?
 
 しかし……震離が一個人にここまで入れ込むのも珍しいなぁとは思う。基本的にあまり踏み込まないはずなのに、それを演じるだけなのに……。
 まぁいいか。気に入ってるのなら無理に止める必要もないし。
 
 はやてさんに案内されるがままに付いて行くと。

「は~い。いらっしゃいませ~。海鳴スパラクーアへようこ……団体様ですかぁ~?」

「えっとぉ……大人15人、子供5人です」

 シャマルさんの発言になんか引っかかったらしく、スバルが小さく手を上げてから口を開く。

「えと、エリオとキャロと……」

「わたしとアルフと流ですよっ!」

 と、リインさんが答えてるけども、それでも納得いかないらしく、スバルが続ける。正直、死亡フラグだよね?

「あのぉ、ヴィータ副隊長は~……?」

「あたしは大人だ」

 うん、子供五人としてカウントされてなかったから大体予想はついてた。……多分ヴィータさんに睨まれてたから、今後大変なんだろうなぁ。それより、この重苦しい空気どうしようか?

「は、は~いっ。ではこちらへどうぞ~」

 で、店員さんの案内されて、一行が進んだ場所は普通にロビーで、そこから男湯、女湯に分かれてる。少し遅れて会計を済ませたはやてさんが合流。
 だけど、正直一つだけ、俺の中で不安要素が一つ。
 ヘアバンド忘れた……。だって、出張とは言えどうせシャワーとか思ってたし。ちくしょう、マナー的にもアウトなのに、忘れるとか俺何やってんだ……。

「響ー」

「ん、何奏……って、ぉぅ?」

 なんか奏に物を投げられて、それが顔に被さる。なんだろうと思って見てみると、それは風呂用の黒いヘアバンドで。

「……ありがとう」

「どういたしまして」

 皆の視線がお風呂の地図に集中してる時だったから誰にも見られてないから、突っ込まれないし。正直スゲェ有難い。で、俺らがそんなコトして直ぐ側で。

「広いお風呂だって。楽しみだね? エリオくんっ。」

「あ、うん。そうだね。スバルさん達と、一緒に楽しんできて」

「……えっ? エリオくんは?」

「えっ!? ぼ、僕は、その、一応、男の子だし……」

「うん……でも、ほらっ。あれ見て?」

 隣でそんな会話してるもんだから、思わずキャロの指差す方を見る。そして納得。
ん? 何で納得かって? それはこう書いてあったんだ。

「女湯への男児入浴は、11歳以下のお子様のみでお願いします」

 エリオは10歳。見事に問題なくて、法律的にもセーフだ。
 だけど、キャロよ。英語で書かれてるとは言え、そんな所に気づくとか恐るべし。だけど、ただエリオと一緒に入りたいだけだろうから、エリオも断りにくいらしく、しどろもどろになってる。
 ……助け舟は……まぁ、キャロ相手だし、適当にやばくなったら判断して出すか。

「せっかくだし、一緒に入ろうよ?」

「フェイトさんっ!?」

 わーお。なんという追撃。まさかのパターンで思わず吹き出しそうになったじゃねぇか。ほぼ退路は立たれたけど、どうするエリオ? ミスったら女湯に直行だ。

「い、いいいや、ああああのですね。それはやっぱり、スバルさんとか隊長達とか、アリサさん達もいますしっ!」

「別にアタシはかまわないけど?」

「って言うか、前から頭洗ってあげようか~とか言ってるじゃない?」

 スターズの二人はなんてことない様子。ぶっちゃけティアナ辺りが嫌がるんだろうなーとか思ってたけど、無いんだなーと。

「あたしらも良いわよね?」

「うんっ」

「いいんじゃない? 仲良く入れば」

 おっと、隊長のご友人も問題ない様子。

「そうだよ。エリオと一緒にお風呂は、久しぶりだし……入りたいなぁ」

 うわぁ、極めつけはフェイトさんの追撃。ここまで見事に孤立無援になるとはエリオには悪いけど、正直面白い。他の女性陣に反対する気なんて無いみたいだし。奏も震離も問題ないみたいだし。
 さぁ、頑張れエリオ! 俺と流は先に行くから! そう考えながら流に視線をやって、先に男湯の方に向かう。
 ……しっかし、フェイトさんマジかぁ。男性が行ってほしいセリフを普通に言う辺り狙ってんのか天然なのかわからないなぁ。

「あ、あのっ。お気持ちは、非常に……なんですが……ほ、ほらっ! そうなると響さんが1人になってしまいますしっ!」

 ……えー、そこで俺に振るの? しかも1人って事はお前流の存在完全に忘れてるし。
 あんまりにも突然の振りに反応できなかったし、なんか女性陣の視線が俺に来てるし。しかも流はいつの間にやら男湯に入ってったし。

 えー、もう。普通に髪縛ってる紐に手ぇ掛けて、これから着替えて、風呂入りますって状態一歩手前なんだけど。

「……なーエリオー?」

「はい、どうしましたか響さん?」

 うわぁ、なんか期待に満ち溢れた目で俺を見て、女性陣……ってかフェイトさんとキャロの視線はなんか不安っぽいし。えー、俺に任されんの!? いいや自分で何とかするだろう。

「……まぁ、頑張れ」

「えぇぇえ!?」

 そう言い残してから、男湯ののれんを分けて入る。そしてすぐに髪を溶いて風呂入る用意。

「響さーん!? 戻って下さいー!?」

 流石にそろそろかわいそうになってきたし、助けるか。
 
「エリオもこう言っていることですし、せっかくですから、俺もエリオとお話をしたいですからココは男女別に入りましょう。
 それに中には傷心気味の人も居るし、一人でも多いほうが良いんですよ」
 
 パッと表情が明るくなるエリオに対して、フェイトさんとキャロは不満そうに。そして、一人申し訳なさそうに両手を合わせてるなのはさんとバッチリ視線が合う。
 やっぱりなのはさんも、流の事気にしてたことにちょっと安心。

「エリオ、行くぞ」

「え、あ、う、うん」

 エリオを引き連れつつ、もう一度男湯ののれんを潜る。

「あ、あったぁ~」

 不意に、そんな声が聞こえてがコチラには関係ないだろうとスルーして。中にはいってまず最初に思ったことは。

「……人居ねぇ」

「え、響さんどうしたんですか?」

「ん、何でもないさ、それよかロッカーの使い方は分かるか?」

「えと……100円を入れて、鍵が取れるから……これでいいの?」

「そそ。後は荷物を入れておくこと、取られることは無いだろうし、大丈夫だろ。さて、行くか……って、どうしたエリオ、ボケッとして?」

「いえ、少し考え事をしてたんです」

 ふぅん、表情から察するに、ちょっと何かが苦手なことか? まぁ、いいか。ちょっとちょっかい出せば、なんとかなるな。

「……考え事って、女湯の事か?」

「え、な、違います!」

 あっはっはっは、真っ赤になって否定してるけど。それは裏をかえせば行きたかったって捉えられるんだけど。今回は流すか。さて、流は既に行ってるし。俺たちも行こうか。しっかし、ある意味久しぶりの風呂だ。最近はずっとシャワーだったし。さっさと服をたたんで。それから。

「ありがとうございますっ」

 お風呂の出入り口から、明るい声が聞こえた。聞こえた瞬間ちょっとだけ苦笑。
 そういうことだったかって。

「……えっ?」

 エリオも気づいたらしく、振り返って。
 
「あはっ。エリオくんっ」

 長めのタオルを纏ったキャロがそこにいた。

「キャ、キャキャキャキャキャロ。キャロッ!」

「?」
 
「ふ、ふふっ服、服っ!」

「うん。女性用更衣室の方で脱いできたよ? エヘッ。だからほら。タオルを……」

「見せなくて良いから~~っっっっっっ!!!!」

「……あ……えへへ。ごめん」

 うん、何の恥じらいもないかもしれないキャロと、耳まで真っ赤にしてるエリオ。すげぇな、天然かなとは思ってたけど、この場合は単純に一緒に入りたかっただけかな?

「あのっ! っていうかっ! こっち男性用っ!」

「女の子も11歳以下は男性用の方に入って良いんだって。注意書きの方にも書いてあったよ?」

「あ、いやっ、その……」

 うん、キャロの言うとおりだ。
 もうここまで来てんだ、別に追い返すわけにもいかないし。一緒に入るか。
 しかし懐かしいなぁ。俺の知り合いの今女子湯に居る金髪ショートの女子は11まで人の家の風呂に「俺が」居るときに突撃かまして、髪洗わせてーだの、背中洗ってーだの、言って来てるから別に耐性なんぞとうの昔についてるんだよなぁ。……思い出すと悲しくなってきた。

「仕方ない、ほれ二人とも行くぞー」

「はいっ」

「ええ!? 響さん!?」

「エリオー、もうここまでキャロは来たんだから、もう腹くくって一緒に行くぞー」

 ニコニコのキャロとは対象的に、顔を真っ赤にして頭を抱えるエリオはしばらく唸ってから。

「ぅぅ、わかった」

 やっとこさ観念したらしく。ガクリと肩を落としてる。なんだろうかこのコンビは、なんか片方は自然ガールでもう片方は都会ボーイじゃーん。
 まぁ、そのうち慣れるだろう。つーかほぼ服脱いでるからさっさと風呂行きたいしね。寒いし。さて、二人を連れて、いざ風呂場へ。

「うわぁ~……すごい、きれいですね、ここのお風呂」

「う、うん……そうだね……」

 へぇ、健康ランドみたいなもんだと軽く舐めてたが予想以上に良い設備じゃん。ただ、天井を見ると、多分女湯とつながってるだろうな。まぁ、完全に独立してるわけ無いしよくある話だ。

「はいっ!」

「はい、どうしたキャロ?」

 元気よく手を上げるキャロに、発言の許可を出す。

「皆で背中流しっこしたりしましょうよ」

「うん、元気よく片手あげるのは構わんが。タオルがずれるから気をつけなさい」

「はいっ」

 うん、テンション高いし、ご機嫌だねぇ。まぁこう言うことあんまりやったこと無さそうだし。別にいいか。付き合うのも悪くはない。

「あぁ、いいぞ。流しっこしようか」

「え、響さん!?」

「まぁ、諦めろー、こういう機会はほぼ無いんだ、楽しんだもん勝ちだよ。あ」

 これから二人を座らせて体を洗わせようとした時にふと気づく。あいつは……あ、半身浴の所にいた。へぇ、その隣は普通の風呂か。ていうか流、お前翆屋にいた時以上に女の子っぽいな。まぁそれはいいや。

「流ーお前はどうするー?」

「……自分はもう洗いましたので、遠慮しておきます」

 うん、だろうな。浴槽の前の桶にタオルとか、石けんとか入ってるからもう終わってるんだろうなと思ったよ。と言うか翠屋で先に入ってたか。

「あいよ、わかった、さて、三人でやるとして順番はエリオ、俺、キャロの順な? キャロは湯船以外じゃタオルとっちゃいかんぞ?」

「はいっ」

「うぅ、分かりました……」

 とりあえずキャロに釘は打っておく。だってねぇ、別に俺はロリの人じゃないから問題ないけど、そうしないとエリオが倒れる。
 ……今の流を見たらエリオワンチャン倒れるんじゃ……や、考え過ぎか。

 いいやもう。久しぶりの風呂だもんよ、ゆっくり浸かりてぇよ。
 
「エリオ、痛かったら言えよ? そしてキャロ、力一杯やっていいから」

「うん。うんしょ、うんしょ」

 うんさすがに凄く上手いとかそう言うのは全く無いけど、声でわかる。凄く機嫌がいいなって。
 そのせいか、何時もみたいに丁寧語が混じってない。

「響さんの髪の毛って凄く綺麗で、羨ましいなって」

「ん、あぁ、これは母さん譲りなんだよ。それよりもキャロ?」

「はいっ?」

「要所要所で敬語は必要だけど、今みたいにキャロも普通にしてくれたら俺は嬉しい。もちろんこれはエリオも同じだ。あまり気をはらなくても良いところじゃもう少し気楽に接してくれ。何なら好きに呼んでくれても構わんし」

「……えと、じゃあ……お兄ちゃん?」

 ん、一気にランク上がったなぁー。普通に名前の方がいいと思うんだが……まぁいいか。
 
「ん、それでいいよ、エリオは痒いところはあるか?」

「ううん、平気。えと、その、僕も呼んでいい?」

「ん、いいよ」

 うん、二人の顔は俺の位置だと見えないけれど、二人揃って凄く機嫌が良くなったのは凄く分かる。
 キャロなんて、鼻歌交じりだし。だけど、アレだ。エリオの背中を洗ってて、キャロが背中を洗ってくれてよく分かる。
 ……俺たちもそうだったはずだけど、こうして俺より小さい子が前に出てることが正直怖い。それはスバルやティアナにだって言えることだ。実力があるからここに居るのもわかるけど……難しいところだな。

「……お兄ちゃん? どうしたの?」

「ん、何でもない。さて、キャロとエリオ交代。エリオ頼むよ?」

「分かった」「うんっ」

 今度は入れ替わって、キャロの背中を洗う。うん、やっぱりキャロもまだ小さいし、男女の差がそれほど出てない。さすがに女性特有の柔らかさがあるけど。それでも小さいな。
 よっしゃ。こんだけ洗えばもういいだろう!

「さて、体も洗ったし、風呂に行くぞー」

 持参したヘアバンドを頭に装備して、髪が湯船に浸からぬように注意してから、半身浴の隣の普通の風呂に入る。うん、いい湯だね!
 うん、キャロも気持いいみたいで、風呂を楽しんでるけど、エリオよいい加減慣れろよ。仕方ない。一つネタでも教えるか。

「エリオ、キャロ? 見てみ、タオルの真ん中を持ち上げながら外縁を沈めると空気の山ができるんだ。
 このタオルに包まれた空気の固まりを水中で握りつぶすのがおもしろいんだ、やってみ?」

「あ、本当。タオルが丸くなってる、なんか、可愛いかも?」

「ハハッ、それで後両手をこういうふうに組んで、水を手の中に入れればっ!」

「わっ、結構飛ぶね!」

 風呂に客が居ないから、二人に軽い遊びを教えてる。広い風呂だとどこまで飛ぶかやってみたりして楽しいよね。一人だとゆっくり浸かる方を選ぶけども。
 さて、視線を辺りに回してからの……うん、あった。なんか書いてあるな……何々。『子供用露天風呂』12歳以上の男子立ち入り禁止。よし、オッケィ!

「なぁ、エリオ、キャロ? あそこに『子供用露天風呂』がある。一緒に入ってきたらどうだ?」

「えぇえええ!?」

「あ、ホントだ。お兄ちゃんも行くの?」
 
「……無理、この世界の法律が許してくれないからな。それにいろいろ風呂もあるんだ今のうちに体験しとけよ、露天はいいぞ? 風が気持ちいいしな」

「うん、じゃあ行ってきます! エリオ君行こっ!」

「う、うん……」

 良し二人とも露天風呂に行ったな。さてと、少しの間ゆっくり浸かるかね。後はあの二人の問題だしね。これで更に仲良くなればいい事だ。さて、と。少し離れた所の違う湯船に浸かってる流と二人きりになった所で。

「なぁ、流?」

「はい、なんでしょうか?」

「ちょっと、話しないか?」

「……えぇ、構いませんよ」

よしよし、やっぱ風呂だと結構話してくれるな。

「そうだな~、そうだ、得意な魔法は?」

「……砲撃系、斬撃系のこの二つですね」

「へぇ、すごいな、じゃあさ、スリーサイズは?」

「……測ったことありません」

「はは、そうか悪い。じゃあ、好きな食べ物は?」

「……基本的には何でも食べます」

「好きな色は?」

「……白と黒の二つですね」

「そうか~、えーと、あとさ、あとさ」

「……」

「――どこから来た?」

 さて、どう出るかな? 一応背中越しに声をかけてるから、顔の表情はお互いに見えない。そういうふうに話しかけたのは、コチラも事情有りきだから。

「……はぁ、はぁ、どこから、と言いますと?」

 ん? なんか息が荒いな、さっきも少し肩で息してる感じだったけど、何だ?

「流はどこから来たって、文字通りの意味だよ」

「……ん、ふぅ、そこの入り口からですよ」

 んー、何だなんか微妙に話が噛み合ってないな、わざと話題を変えてる……のか?

「単純な話、普通の地上の部隊が、総合AAAを取る優秀な人材を排出するわけがないっ話だ。で、そんな流は本当はどの部隊から来たのかってお話」

「……」

 うん、とりあえず聞きたいことを聞いておく。まぁ、ちょっと流が「あいつ」からの差し金かどうか確かめるだけなんだけど。だけど、これを聞くってことは。普通に俺が流を信頼していないって証拠だよなぁ。

「……緋凰さん?」

「んー?」

 おぉ、釣れたかな? だけど否定するかな、どっちだ?

「……失礼……ですが、逆に……聞きますね?」

「おぅ」

 なんか途切れ途切れで話ししてるけども流は大丈夫なのか? だけども、ここまで来て引き返すのも何だかなぁ……。

「……どうして、貴方は……上に……ボコボコボコ……」

 ん、急に途切れて、ボコボコ……って?

「流ーーーー!?」

 慌てて振り返ると、そこには湯の中に顔から倒れてる流の姿が。慌てて流をひっくり返して、抱き上げる。って、よく見たら全身真っ赤で、お湯に浸かり過ぎてたせいで体も熱くなってる……早い話が。

「……ミスったぁああああ、流も一応ミッドの人なんだったぁぁあああ……」

 正直、本気でミスった。普通に日俺らの感覚だった。流も一応始めての風呂だったかもしれないんだ……しくじった!

「流? おい、聞こえるか?」

「んっ……ん」

 OK、落ち着け俺。目の間で抱き上げてるのは男だ。よし落ち着け。

「お湯は飲んでないが……正直やばいな、直ぐに熱を冷まさないと」

 直ぐに流を湯船から脱衣所まで移動させる。ちなみにおんぶ等だと色々アウトだから、流を横に抱っこして移動させる。とりあえず、移動させて、流にひと通り服を着せるけど……脱衣所なんかよりロビーで休ませたほうが一番いいんだけどなぁ、正直、今の状態だとアウトすぎるが体を拭けば何とかなった。
 問題は俺で、髪を少し拭いた程度じゃ全然乾かない。
 でも……どうしよう、流をそこにおいておくのは凄く気が引けるし、かと言って。俺がそこにいて床を水浸しにさせるのも悪い。

 んー、どうしたら……あ。そうだ。

――――

「というわけで、頼んだぞ震離! 俺は髪拭いてくるから」

「あいよ、りょうかーい」

 とりあえずロビーの長椅子に流を横にして、助っ人を女湯から念話で呼び出した。奏だと髪を拭くのに時間がかかるからキツイだろうし、エリオ達に頼もうと思ったけど今頃多分露天を満喫してる頃だろうし。野暮な真似はしない。
 そして、いろいろ考えて震離が多分うってつけだろ考えた。

 理由はひとつ。少しでも信頼回復のために。幾ら何でも同じ部隊で仲が悪かったらねぇ、駄目だろう。一応同じ日に異動になった者同士だし。

 とにかく、まぁ、あいつに任せるかね。

 ……後で牛乳とか買って持って行こう。うん、そうしよう。


――side震離――

 ……突然の連絡に驚いたけど、結果的に来てよかった。流の寝顔、可愛いな……本当に。
 顔は若干赤いせいか、なんか色っぽいし。これで男の娘だから……あ、字間違えた。まぁ、それでも。

「本当に、昼間は迷惑掛けたなぁ」

 我ながら本当にそう思う。普通に考えると、女装をさせて喜ぶ男の子なんて普通いない、それは流も同じで、全力で嫌がってたし。

 だけど、途中から、言葉に変化が訪れた。最初は淡々と拒否の言葉を言ってたけど、少しずつ歳相応の、言葉を使っての否定。そして気づく。

 私の膝の上で熱を冷ましてるこの子の事が少しだけ分かった。
 最初に流の一人称が「私」だと言う事に。多分これが流の……ううん、この子の素の部分なんだろうな。使い慣れてない感じなんて微塵も感じないくらいに、自然に私って言ってたからね。

 だけど、この後が問題なんだ。多分、美由紀さんも、桃子さんも……それこそ響も気づいてないと思う。流の異常性に。

 事の発端は少し前の翆屋のあの時。

 私が流に白いゴスロリ風の服を着せたときに、私が冗談で言ったんだ。

「これなら、何時運命の人が来ても誓のキスができるね」と。

 正直に言う。普通この言葉を言った瞬間、よほど慣れてる人とか以外の反応は真っ赤になってそんな人居ない。とか、照れる程度で、逆に慣れてる人はこちらをからかいに来る。もしくは全力で知らないふりをするだろう、それでも少しの反応でだいたい分かる。

 だけど、流の反応はその何方でもない。

「……誓いの……キス?」

 私は顔には出さなかったけど、正直に言おう。本当に驚いた。私の考えが……受け取り方が間違いじゃなければ、たしかにあの子の中ではこう思ったんだろう。

「それはなんですか」って?

 私はこの返しにはっきりとした違和感を覚える。
 流の年は14。別に珍しい年でもない、現にスバルの一つ下だしね。だけど、それでもおかしい。普通なら14という年は、ある程度の事を知っているはずだ。勿論さっきの「誓いのキス」の意味も。それがどんな箱入り息子であってもだ。

 だけど、私の考えてることは、おそらく私一人の空想だろう。だからこそ考えられる。「風鈴流」の異常性を。

「ん、んん?」

「あれ、起きた?」

「あ、あれ、わた……自分は……あ、失礼しました叶望さん」

「ほら、まだのぼせてるんだから冷やさないとだめだよー」

「わっ」

 そう言って起き上がった流を私の膝に寝かせて、うちわで仰ぐ。私の膝の上で横になる流は、先ほどとは違った意味で顔が赤くなる。

 だけど、それでも私の中の疑問は尽きないし、流に対する別の考えも止まる事は無い。けれど、それは絶対に疑いじゃない、ただ、ただ、私はこの子と―――

「ほい」

「ひゃ?!」

 急に声が聞こえたかと思ったら、首筋に冷たいものがピトってくっついた。思わず飛び上がろうとするけど、膝に流を寝かせているから反応できず、変な声だけが漏れた。
 やった犯人がわかるけど、直ぐにいつもの私という仮面を被って。

「何すんの響!?」

「いや、終わったから差し入れ替わりに牛乳買ってきたんだが……要らない?」

「あ、ありがとー」

 わーい、牛乳だ。正直これを飲んだところで胸が大きくなるわけじゃないけど、なんか悔しくて。今女湯に居る人達が恨めしくて……何で、あんな大きくなるの!? って聞けば、牛乳かな? って、毎日飲んでるよ、毎日飲んでも胸なんて、胸なんて……。

「え、あの叶望さん……?」

「うぅ、なんでもないよ」

 とにかく貰った牛乳を一気に飲みほして、一言!

「もう一本!」

「……買ってくるけど、腹壊すなよ?」

言われなくても分かってるし!

――――

――side奏――


「もうやだこのカオス」

「……頑張りましょう」

 気まずそうに言う流に対して同意しか出来ない。
 ちなみに私と流は今海鳴の河川敷グラウンド上空で待機して、下ではティアナ達がロストロギアの捕獲に当たってて、そのロストロギアが逃げないように上空から適当な攻撃をしてるんだけど。だけど、だけどね!?

「何で4人中2人しか動けないの!?」

「……さぁ、それは自分もわかりません」

 隣で流が牽制しながら私の問に答えてくれる。ごめんね忙しいのに。ちなみにここに居ない、震離はというと。

「……待って、大丈夫行けるから」

「貧血で立ちくらみ起こしてる人が言っても説得力はないから後ろで私達と援護するの、分かった?」

「……大丈夫、ちょっと血が足りないだけで、問題な」「分かった!!?」

 うん、これだけ釘を刺せばさすがに震離も黙ってくれる。というかこの子、昼間のアレのせいで現在進行形で貧血起こしてついさっき倒れそうになってたんだよね。
 で、まだ震離はいいよ、スターズだし、一応弾幕張ってるし。でもね?

「もうヤダこの小隊」

「……」「……まぁ、アレは仕方ないよ、何で攻撃されてるのか分からないけど」

 うん、私もそう思う。そして、その問題の響はというと。

「がっ!? ちょ!? まっ!?」

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」

 うん、これが一番のカオスなんだよね。金色の渦の中から腕が一本生えてる。状況は簡単、フェイトさんがなんか響に攻撃してるんだ。

 ことの発端はついさっきで。

 ――数分前。

 銭湯から出たと同時に設置していたサーチャーが反応して、皆でそこに急行。そして、河川敷グラウンドに居たんだけど。

「な、なにこれっ!? ぷにょぷにょスライム?」

「ちょっと、かわいい……」

「うん、結構かわいいね!」

 スバルはともかくとしてもさ、何で震離とキャロはアレを可愛いと言えるんだろう?
 なんか普通に気持ち悪いなー程度にしか見えないんだけどな。

「これ、全部本体ですか?」

「ん、あぁ、それはない、なんか危険を察知するとダミーを増やすんだとさ、けど本体は一つ」

「うん、そして本体を封印すると、他のダミーも纏めて消えるんだ」

 実際その通りでこの類のロストロギアは高価で貴重なものだから比較的楽なものなんだ。
 たまに、凄い変なロストロギアとかあるけどね。

「放っておけば、増殖したダミーが町中に広がっちまう。空戦チームは広がったダミーを迎撃。そっちはお前らがやって見ろ」

「素早く考えて、素早く動く!練習通りでいけるはずだよっ!」

「はいッ!」

 ヴィータさんとなのはさんの指示のお蔭で即座に分担して行動開始。
 でも、空戦チームって私達もカウントされてるから今回は私達も援護に回るんだ。正直この部隊での初任務だからちょっと頑張ってみようかと思ってたんだけどな。響が言ってた通り今回はスバル達の為のお仕事になったみたいだね。
 さて。私たちは四人で集まって指示を仰ぐかな。

「どうする響?」

「あぁ、普通にティアナ達の援護に回る……んだけど」

 ん、なんか響の様子がなんかおかしいよ?どうしたんだろう?
 
「響、どうしたの?」

「んー、今回は楽な任務だし、とりあえず言おう。俺今日戦闘ほぼ出来ない」

「あれ?」「え、貧血起こして立ちくらみ起こした私よりも元気じゃん?」

 震離の理由はともかくとして、それは今どうでもいいよ。

「まぁ、聞けよ。昨日の模擬戦以降さ、刀整備してなかったせいで、正直今こんな状態」

 セットアップしてるから、響のその手に刀が鞘に入った状態で手に現れる。
 そして、その刀を二本抜いてみると。一応の形は残っている者の、罅が入ってとても使える気がしない。その気になれば多分大丈夫なんだろうけど、何か考えがあるんでしょ。

「昨日からこれだから戦闘は出来なくはないけど、正直キツイね」

「あー、うん、分かった、一応私達三人でやるから……震離いける?」

「ふっ、任せて奏! これから私がぁあああ……ちょっとタイム」

 なんか震離も杖に魔力刃を展開して、振り上げたと思ったら、なんか膝ついたよ?

「ちょっと、貧血が」

「……何で?」

「……昼間のアレで、血を出しすぎて」

 ……どんだけ出したのさ? いろいろ聞きたかったけど止めとく。だって隣で普通に流が顔赤くしてたし。
 え、ちょっと待って。今響がほぼ戦闘できないで、震離の調子が悪いって事は、私と流しかまともに戦えないじゃない。

『そんな、攻撃手段が封じられるなんて……』

『さすがはロストロギア。見た目はかわいいですが、侮れません……!』

 おや、下じゃちょっと苦戦してるっぽいな。援護は……って響がなんか言おうとしてるし、任せようかな。

「エリオ、キャロ、よく観察して。その辺りにオリジナルは居ない。それでだ、オリジナルの現在位置は……キャロの南西50のポイント付近に居るぞ!」

『ありがとう、お兄ちゃん』

 へぇ、響もうあの二人に懐かれたんだ。響の顔も何となく嬉しそ……って!?
 なんか、エリオとキャロの二人に「お兄ちゃん」って言われた瞬間、目の前に閃光が走って――
 
「……はぁっ!?」

 気づいた時には、響の体が横にくの字に折れ曲がって、そのまま吹っ飛んでいった。
 ……え、何!? 私も驚いてるけど、流も驚いてるみたいで、キョトンとしてて、震離は開いた口がふさがらず唖然としている。

「ぐぉぉおお……何!?」

 響が体勢を立てなおして、自分を吹き飛ばした人物を見る。
 そこにいたのは自分のデバイスである「バルディッシュ」を構えて起き上がるのを待っていた、フェイトさんが居るんだけど、後ろ姿からでも分かる、その姿が死神が今にも魂を刈り取ろうとしてる様に見えるんだけど……何したの響?

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」

「え、何!? 何が!? ちょ、フェイトさぁあああん!?」

 なんか響が叫んだと同時に、なんか惨劇が始まった。

 金色の体積の固まりのようなものが響がいたであろう場所に叩きつけられていく。既に最初の一撃で、もう響は金色の気体に包まれてみることができないでいた。正直もう響の姿なんて見えないし、何が起こってるかわからない。だけど。

「フェイトさん、とりあえず落ち着きましょう……ぉおおお」

「どうしてどうしてどうしてどうして」

 ……まだ息があるのか。と言わんばかりに、さっきよりも容赦のない攻撃が続けられていく。どうやらまだあの金色の固まりの中にいるみたいだけど、なんか余裕に聞こえてくるのは私の気のせいかな? あ、なんか金色の渦の真ん中から腕が……なんか赤く染まった腕が顔を出した。うん響はそこにいるのは分かったけど……何で赤くなってるかは気にしたくない。

「とにかく、状況を、ガフゥ!」

「なんでなんでなんでなんで」

「言ってくれないと、グハァ!! さすがにっ、俺も、ガァ!?」

 もう、痛々しくて聞いてはいられない。なんか響の悲鳴の度に腕が痙攣しているのが生々しいし。

「あ、グゥっ! 分かったから、ブフッ! とりあえず、ゴフッ! 止まって、ブハッ!」

「どうしてどうしてどうしてどうして」

「とりあえず……ッ!!」

 言葉が途中で途切れたと同時に、赤い腕がまた金色の渦の中に沈んでいくんだけど。
 なんか、最後の言葉が何時もと違ってて、それでいて終わったように聞こえたのは私だけかな?

「もうやだこのカオス」

 なんか響が死にかけてるのを見てるうちに、下じゃ封印終わってたしね。少ししか援護できなかったよ……。

 なにはともあれ、出張任務は終わったんだけども……次の日に響が普通に休んだのは言うまでもないかな。

 ……まだ二日目でこのチームワークでこれから先私達やっていけるのかな……主にライトニングとして……。



――sideはやて――


 あれから封印処理を施しつつ、アリサちゃんやすずかちゃんには申し訳なかったけれど、海鳴への滞在を断ってミッドチルダ。ううん、機動六課へと戻ってきた。
 今回はFW陣に経験を積ませることが目的とは言え、本当に危険な場所はまだ数多く存在する。もしかしたら今も、レリックを巡ってどこかで戦闘が起こっているかもしれない。

 管理外世界へ渡航した各申請書類を片付けながら、最近の――響達の経歴を思い出す。
 彼ら7人は12歳でミッドチルダの訓練校へ入学。だけど、わずか[[rb:1年 >・・ ]]経つか経たないかで、それぞれ違う部隊へと編入された。
 響と奏、震離の三人は[[rb:地上 >・・ ]]の前線警備部隊へ。優夜と時雨は時空管理局辺境部隊の事務官へ。煌と紗雪は自然保護局事務員として。それぞれ別の道へと行った。
 
 ここで疑問になるのは、地上の警備からどうやって本局の武装隊に異動となったかというポイント。響達の入った訓練校自体は、地上にも海にも通じては居る……が、卒業した後まで面倒を見るわけもない。
 加えて、どうやって魔法を知ったかは置いておいても。至って普通の経歴だということ。
 そんな人が誰と通じて、どこに情報を流そうとしているのか……。
 
 前線へ送られた三人に対し、後者四人は事務員といったデスクワークの能力を評価されて、だ。訓練校のデータも取り寄せてみたけれど、4人は適正はDと評価されていた。
 だけど、引き抜きがあったからと言われれば、たしかにそれぞれは光る物をたしかに持っている。実際に前線で戦ってた三人は前の部隊の中核を成していたし。
 裏方や事務員としての道を歩んでる4人もたしかにそうだ。経験の薄い機動六課にはほしい人材やったし、事実、彼らが来てくれたお陰でロングアーチの能力は私達が想定してたよりも向上している。

 本当なら……響達の件を聞くまでは、彼らをロングアーチに編入しようかと考えていた。楽観的すぎるとは言え。

 話を聞いてから、そして、彼らのつながりを聞いてからは、あまりにも、経歴がおかしすぎる。
 特に魔力という概念のない地球から、わざわざ訓練校へ行った事務の4人の違和感もや。魔力がないにもかかわらずミッドへ来て、訓練校に入ったのは……もしかすると魔力が成長すると考えたから? もしかすると、身内、知り合いに管理局員がいてそれで知った? それにしても妙や。
 そう考え、私の目が届く範囲、各隊長達の手が届く範囲に置こうと思っても、彼らは事務員が良いと言う。理由は何かと聞けば、大体定時に帰れるし。残業になりそうでも、明日回せる分しかないからという。何より、[[rb:魔力が無い >・・・・・ ]]から資格取得のための勉強もしたいという。
 ある程度落ち着いて来たら事務に戻すし今だけどう? と伝えても、十分にロングアーチが育って、後は経験値を稼ぐだけだから、自分たちは邪魔になると拒否された。

 彼ら四人もスパイの可能性があると言われてからは、たしかに怪しく感じた。付かず離れずの距離を保っているようにも見えるし、何よりこれと言って情報収集の為に動いてないようにも見える。

 なんというか、意識すれば怪しく見えるが、そうでなければ全然そんなこと無い普通の存在なのだ。事実、彼らはまだFW陣。つまりスバル達とはまだそんなに話せてないし、時間が噛み合わないからわからないという。
 これもまた意外だった。事務員故に、時折作戦の報告書にも目を通すが、あくまで簡略化されたものしか見てない以上、さらなる情報を引き出すために、FW陣と仲良くなっていてもおかしくない。

 最近ようやくFW陣を見るようになったけれど、それはあくまで響達が来てからの話で、相変わらずまだ話せてない様子だ。

 彼らの疑念については一旦置いておこう。次に最近機動六課に来た4人。特に響達3人について、だ。
 これが最近の悩みのタネだ。少し前にアヤさんと連絡を取り合った後。メールで彼に付いての情報を頂いた。
 響に関しては大体の行動原理が謎と書かれていた。正確には、作戦中、たしかに的確に指示を出して居るけれど、単独行動もしている模様。そして、姿が見えなくなった時、そういう時に限って何か面倒事が起きているらしい。スバル達が響と初めて会ったあの日も、彼が目を離し、席を外したその後にロストロギアの反応が発生。更にはガジェットも現れたという。
 それ以外にも、今の部隊でこそ減ったものの、それまで所属していた部隊の不祥事がことごとく表面化しているという。特に彼が所属してからそういうことが頻発するとまで言われている。

 それが本当ならば、私達も気をつけなければと、改めてなのはちゃんやフェイトちゃんにもこの事を伝えた。守護騎士の皆にも、だ。だけど、意外だったのがシグナムや。
 シグナム曰く、そういうことをするような者ではないかと、と言っていた。大事な家族の証言やし、尊重したいけれど。それでもまだ不安要素であることには変わりないんや。

 一応それを踏まえて、暫くは泳がす事を決めた、けど……。

「……とてもそんな風には見えへんのよね」

 ほんのわずかな期間で、既に同じ隊であるエリオとキャロと仲良くなっている。それどころか、今日の話を聞いていると既に兄と呼ばれるくらいに懐かれている。
 それに対してフェイトちゃんが羨ましそうにしてたけど、これは置いとく。けれど、ただの武装隊員ではないというもの今日の事で気がついた。美由紀さんの事を見抜いた辺り、観察力があるんやろう。なのはちゃんの実家のことをある程度教えてもらったとは言え、私らもまだ見破れるかと言われてもまだわからない、それほどまでに普通の生活に溶け込ませているにも関わらず、響はそれに気づき突っ込んだ。まだ、確証は得られないにしろ、これで響がスパイならば面倒なことになる。

 考え事をしながら作業をしていたせいか、既にある程度作業が終わっており、一息つこうと背伸びをする。ギシッと椅子が軋む音が聞こえ、緊張の糸が緩んだのを感じた。

 ふと思い出す。奏も震離をいい体やったなーと。奏の方はボン・キュッ・ボンのナイスバテー。対して震離は胸こそ少し小さいけれど、あれはあれで良い美乳。体も全体的に無駄についてない感じや。
 更には、私は生では見れなかったけれど、流の女装姿。あれは良いものやなー。やっぱり恥ずかしがる表情が映える子はええなぁ。美由紀さんから貰ったデータを後でじっくり見よう。
 流については……うん、もう泳がせよう……こんだけやられたんや。何かしら動きあるやろうし、しばらくはなのはちゃんの監督不行き届きにしておこう……うん。

 さぁ、もう一踏ん張りや。ほな頑張ろ!

 
 

 
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。  
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